セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話   作:にゃるまる

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いえーい(暴走します)
後また先の設定が出てきますがもしかしたら(以下調ちゃん誕生日の時と一緒)



師匠の誕生日

 

――キャロル・マールス・ディーンハイムは目の前の光景が理解出来なかった。

否、恐らくこの場にいる全ての面々が理解出来ずにいた。

何故か?それは――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わ、わわ、私を、う、受け取ってください師匠ッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――顔を真っ赤にしながらスク水一枚姿でそう叫ぶ自らの弟子がいるからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は少し遡る。

 

「マスターのマスターへの誕生日プレゼント、ですか?」

 

日課となったセレナの部屋の掃除。

自らの主君たる彼女に貢献する事を喜びとする彼女からすれば絶対に欠かせない日常の1つ、それを成している時にその主君から受けた相談にオウム返しする様に聞き返す。

 

「そうなんです…実は師匠へ送るプレゼントが決まらなくて…」

 

今日の日付は3月1日。

来る3月3日、師匠であるキャロルの誕生日に向けて各々が準備をする中、セレナの目下の悩みは彼女へ渡すプレゼントにあった。

彼女とてキャロルの弟子としてかなりの時間を共に過ごして来た仲。

キャロルの好みは熟知しており、それを用意すれば良いのだと分かってはいる。

分かってはいるのだが―――その内容が余りにも≪誕生日プレゼント≫と言う枠組みに収めて良いのか怪しい品でしかないのだ。

 

「あー…なるほどですね」

 

ガリスもまた理解する。

キャロルが喜んで受け取る物――それは錬金術関連の品々となる。

数百年と言う長い人生、そのほとんどを錬金術と父の命題を果たす為に注いだ彼女はとかく娯楽とは無縁の生活を過ごして来た。

そんな彼女にプレゼント何が良いですか?と聞けば帰って来る返答は錬金術関連となるのは明白。

だが錬金術に関わる品と言うのは――優しく包んでいっても見た目がかなり悪い。

生き血や薬草、動植物や曰く付きの品、果てには死体でさえも錬金術からすれば貴重な素材となる。

そんな物を誕生日プレゼントとして送ってみろ、パーティーの雰囲気は最悪と化すだろう。

しかしかと言ってそれを排除して考えるとなるとこれまた難しい問題となる。

娯楽を知らない彼女からすれば最近流行のプレゼント――ぬいぐるみや衣装、小物と言った品々は何だこれ?レベルの認識でしかないはず。

そんな彼女が喜び、なおかつ誕生日プレゼントとして渡しても可笑しくない品――――

 

はっきり言おう、難しい。

 

「ん~…」

 

「ん~…」

 

2人は考える。

誕生日プレゼントとして渡しても可笑しくなく、尚且つ師匠が喜ぶプレゼントの存在を、考える。

ひたすらに思考の海を漂い、答えを求めて泳ぎ続ける。

答えを求めて思考する2人は自然と黙り込み、必然的に部屋が静かになる。

そんな部屋に迫る足音が1つ。

迷いなく進む足音は部屋の前で止まったと思いきや――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちびっ子~、遊びに来てあげたわよ」

 

 

 

 

 

―――恐らくこの場において絶対に出現してほしくないと願う人物、ガリィがノックもせずに部屋へと入って来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふ~ん、マスターへのプレゼント、ねぇ」

 

せんべいを齧りながらガリィは2人から受けた相談にへ~とどうでもよさそうに答える。

実際の所ガリィは既にマスターであるキャロルへの誕生日プレゼントを決めてある。

その品はセレナ達で言う≪誕生日プレゼント≫と言う枠組みに入れても良いのか?的な品ではあるが、そんな事構う事はない。

彼女達からすれば大事なのは誕生日パーティーの雰囲気を守る事ではなく、主君たるキャロルが喜ぶ事こそが優先なのだから。

そんな感じでプレゼントも決まり、後は当日を待つだけのガリィからすれば暇な時間が出来たのでちょっかいでも掛けようとして来たらこれだ。

ガリィからすれば自らのプレゼントこそがキャロルを喜ばせる品だと自負しているので、そんな自負しているプレゼントを無自覚に上回ろうとしている2人からの相談は面白くはない。

かと言って自身の主の為に必死に考えているのを阻むのもまたどうか…と考えながら次のせんべいに手を伸ばし―――

 

「―――――あ」

 

ふと、思い出す。

少し前に入手した書籍、その1つに≪面白い≫のがあったのを思い出す。

ニヤリ、とガリィは悪そうな笑みを浮かべると―――

 

「良いわよ。その悩み、このガリィちゃんが協力してあげるわ。その代わりちびっ子、アンタには頑張ってもらうわよ」

 

「え、あ、はい!!師匠が喜ぶなら私≪何でもやります≫!!」

 

―――言ったわね、ガリィは清々しい程の悪そうな笑みで笑う。

その手に握る録音機が得た言質を手に、嗤うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガリィの案内で向かった先は、レアとレイの部屋。

最近の若い子、をモチーフに作られた彼女達はファッションに興味津々であり、勝手に街に出ては衣服を買い漁る為、その量は一杯一杯。

特別に私室とは別の衣裳部屋を作ってもらっている程だ。

そんな2人の部屋にどうして?と疑問に思うセレナであったが、ガリィが部屋の入口で一言二言話すと扉がすぐに開く。

どうやらガリィから2人へ既に話が通っているらしく、部屋の入口からはガリィが、中からは2人は笑顔でどうぞと入る様に促してくる。

―――その手に幾つかの衣服を手に持って―――

 

――此処に至ってセレナは初めて危機感を抱く。

 

このまま部屋に入ってはいけない、そんな防衛本能が彼女を駆り立てすぐに部屋から逃げ出そうとするが―――その逃走を阻んだのはまさかのガリスであった。

 

「ど、どうしてッ!?」

 

セレナは絶望する。

人癖も二癖もあるオートスコアラー・シスターズにおいて常識人(セレナ観点)であるガリスがどうしてこんなことをするのか。

理解出来ない、掴まれた腕を信じられないと凝視するセレナにガリスは申し訳なさそうに頭を下げる。

 

「…すみませんマスター…私はオートスコアラー・シスターズ…本来ならばマスターの為に行動しないといけないのに、こんな事をして本当にすみませんマスター……ですが…あの姉の策略に乗るのはアレな気持ちもあるんですけど、今回ばっかりは乗らないと…いや、絶対に乗らないといけないと思ったんです!!それ故にこのガリス!!一時だけマスターへの忠誠心よりも己の欲望を取りました!!お許しくださいッ!!」

 

「よ、欲望ってなに!?え、ちょ、は、離してガリス!!ガリス!?ガリ――ぁ―あああああああああああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

その様子を偶々見ていたアルカ・ノイズは後に語る。

4人の人形によって部屋に引き摺られていくマスターの姿はさながら地獄へ連れて行かれる罪人の様だった、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして迎える3月3日。

 

「キャロルちゃん誕生日おめでとうッ!!」

 

響の音頭から始まりを告げた誕生日パーティー。

美味い食事、色鮮やかな飾りつけ、賑わう会場。

予定の都合上、OTONA達は参加する事は叶わなかったが、それでもS.O.N.G.のほとんどの面々が勢ぞろいする会場の中で本日の主役たるキャロルはワインを飲みながら自らの為に行われている誕生日パーティーを満喫していたのだが―――不意に気付く。

今日はまだセレナを見ていない、と。

 

「誕生日おめでとうなワケダ、キャロル」

 

「――驚いた、お前も来ていたのかプレラーティ」

 

「あーしもいるわよ♪」

 

「私もだ。誕生日おめでとうキャロル」

 

S.O.N.G.、キャロル陣営、パヴァリア光明結社

恐らく人類における最大勢力3つが勢ぞろいしている光景は、少し前までは誰にも想像する事も出来なかっただろう。

そこに至る道は過酷で時に争い、時に傷つきあいもしたが、それでも今現実として此処にある。

この現実を築いたのは此処に居る全員の努力と結束もあったが――そのきっかけとなったのはやはりセレナだ。

この場にいる全員が彼女に感謝しているし、彼女もまた全員に感謝している。

この優しい時間を作ってくれてありがとうと互いに感謝しているのだ。

 

「そう言えば…あいつはどうしたワケダ?まだ見ていないワケダが…」

 

「お前もか?実はオレもだ。全く、どこでサボっているのやら…」

 

こういうパーティーにおいて一番に働くセレナが居ない。

そのことに僅かに戸惑いながらもその姿を探す2人であったが、そんな思いを知らない響が設置されたステージへと昇る。

 

「それじゃあそろそろキャロルちゃんへプレゼントタイムといきましょーう!!」

 

イエーイ!!とテンション高めな面々は次々とキャロルにプレゼントを渡していく。

愛らしいぬいぐるみや書物、武者鎧や手作りのお菓子、小物や衣類等々。

多種多様なプレゼント、過去の想い出のほとんどを焼却している彼女からすれば実質初めての誕生日プレゼントに小さく微笑みながらそれらを受け取っていく。

受け取り切れない程のプレゼントの山、それらを壊す事ない様にとアルカ・ノイズに命令して私室へ運ばせていると―――

 

「し、師匠!!」

 

聴こえて来たのは聞き覚えのある声。

探していた人物であるその声に安堵しながら視線を向けて―――困惑する。

そこにいたのは確かにセレナではあった。

だがその姿は黒いローブを頭から被った姿。

声が聞こえなければ誰かさえも分からない程に深々とローブを被った彼女に、どうしたと声を掛けようとするが、それより先に手渡された物があった。

 

「…?なんだ?」

 

受け取ったのは1枚の封筒。

シンプルなその見た目の封筒に困惑しながらも開けると、中にあったのは1枚のメッセージカード。

表には≪師匠へ≫、そして裏には―――

 

 

 

 

 

≪誕生日プレゼントはわ た し≫との文字。

 

 

 

 

 

「――――何だこれは。おい馬鹿弟子これはどういう――――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして物語は書き出しへと戻る。

黒いローブを脱ぎ捨てたセレナは―――スク水だった。

それも白、白いスク水。

ご丁寧に胸元には≪セレナ≫の名前入りときた。

そんな服装のセレナは沸騰するのではないか、そう思わせる程に顔を真っ赤にしたセレナは教え込まれた決め台詞を叫んだ。

 

 

「わ、わわ、私を、う、受け取ってください師匠ッ!!!!」

 

 

衝撃発言と共に訪れるは一瞬の沈黙―――そして―――

 

 

 

 

「響は見ちゃダメ!!」

 

「え!?ど、どうしてなの未来!?」

 

「せ、セレナッ!?その姿はいったいどうした!!」

 

「…やべぇ、あれはやべぇ…アタシでもクラってきやがった…」

 

「うへへぇい!!僕の英雄が此処に居るって聞いてやって来――ギャフンッ!!!!」

 

「男どもは見るなッ!!!!!特にお前は見るなッ!!!!」

 

「あわわ…し、調…エッチデスよぉ…大人の階段上ってるデスよぉ…」

 

「――エロい("´∀`)bグッ!」

 

「はわわわ!!せ、セレナさんエッチです!!スケベはいけないですよ!!」

 

「―――ニコリ(無言の録画開始)」

 

「………わぉ、マスターエロい、です。ロリエロ、です」

 

「わぉ!!見てみてレア☆やっぱりスク水が一番似合うよね☆」

 

「本当だねレイ☆個人的には白ビキニとかも良かったけど、こっちも最高☆」

 

「ん~?マスターまだ夏は先だぞ?泳きたいのか?だったらアタシが温泉プール作ってやるぞ!!」

 

 

 

 

 

生まれる多種多様な反応。

その中においてキャロルは―――大方の事の展開とその犯人が誰であるのかを推察する。

今この会場に居ない犯人であろう彼女については後で絞めるとキャロルは呆れながらセレナに落ちていた黒いローブを被せた。

 

「し、師匠!!食われるんですか!!?喰われちゃうんですか!!?」

 

「喰うか馬鹿たれ!!全く…大方ガリィに言い包められたんだろうが…もっと身体は大事にしろ。オレはともかくあそこにいる変態科学者にそれ言ってみろ。文字通り食われるぞ」

 

「いえ、あの人だけには絶対に言いませんので」

 

ぐはッ!!と2度目のダメージを受けているドクターを尻目にセレナは説明し始める。

ガリィ達に連行される以前の事を。

ガリィ達に連行された先で、見せられた書籍(R18)の存在を。

この通りにやれば満足してもらえると聞いて一世一代の覚悟を以て臨んだ事を、話した。

 

「―――絞める。あいつ絶対に絞める」

 

説明されたキャロルの脳裏に浮かんだのはこの状況を仕出かした青い人形に対する怒り。

とりあえず彼女の事は後回しにして、眼の前で暴走してしまった弟子に優しく声を掛ける。

 

「あのな馬鹿弟子、確かにオレはお前の言う通り数百年を父の――パパの命題に答える為だけに捧げて来た。娯楽なんて楽しんだ覚えもないし、誕生日なんて論外だ…もうパパと過ごした誕生日でさえも記憶に残ってない」

 

けどな、と笑う。

過去を燃やし、自らが生み出した父の命題の答えを果たす事が出来なかった少女は、笑う。

その表情に一切の曇りを無くして笑う。

 

「――今はそれでも良いって思ってる。パパの出した命題の答えを知った。お前と言う存在のおかげで過去を生きるのはやめられた――未来を生きる選択を選べた。全てはお前だセレナ。お前のおかげだ。オレにとって――キャロル・マールス・ディーンハイムにとってお前と言う存在こそが最高のプレゼントだって思ってーーいや、そうだと確信している。だからそんな無理する必要などないさ」

 

「――――師匠」

 

照れくさい事を言ったなと珍しく顔を赤くしながらキャロルは顔を逸らす。

その様子は少し前までの彼女ではとても想像出来なかった事。

それをエルフナインは優しい笑みで眺める。

彼女と同じ記憶を持つ人として、彼女が辿り着けた明るい未来に笑みを浮かべる。

 

「ふん、それでもまだプレゼントがしたいと言うのなら―――あれだ、あの言葉だけで良い」

 

あの言葉、それが何を意味しているのかすぐに理解出来た。

セレナは笑う。

あれだけ必死に考えてたのが馬鹿馬鹿しいと思えるくらいに笑って、そして――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お誕生日おめでとうございます!!師匠!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誕生日を祝うその言葉を発した。




「くひひ、今頃ちびっ子真っ赤になってるでしょうね~♪早速見に行ってやろ―――」

キャ「(#^ω^)」

ガ「Σ(゚Д゚)」

キャ「ε≡≡ヘ(#^ω^)ノ」ガ「ε≡≡ヘ( ´Д`)ノ」












「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」





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