セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話   作:にゃるまる

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…XV6巻が届かないのデス
どういう事デスかAm○zon先生…
なんで…なんで9日郵送なんですか…わっち早く最終回みたいのん…(´・ω・`)
(予約し忘れており、予約したのが先月の25日だった男の末路)


第90話

 

「――何を、言っているの?」

 

 理解が出来ないと小日向未来は首を傾げる。

演技などではない、正真正銘彼女には心当たりが無いのだ。

つい先程その力で――神獣鏡の輝きで友達である筈の雪音クリスを殺しかけたと言う事実を未来は覚えていないのだ。

彼女が覚えているのはただ1つ、もうすぐ出来上がる素晴らしい世界を否定する≪敵≫を排除しようとした、それだけなのだ。

 

 仮面の少女は――セレナはそれを見て彼女の状況を理解し、そして憤る。

あの優しい人を、私の友達を、良くもこんな目に合わせてくれたと怒りが彼女の拳を力強く握らせ、その視線は上空を飛び回っているF.I.S.のヘリへと向けられる。

あそこにいるであろうあの男――ドクターウェルに対して収まりきらない怒りを以て睨みつける。

しかしその瞳がドクターを視る事も、ナスターシャの治療で外の様子を知る事が叶わないドクターもまたその瞳に気付くことはない。

 

 だが、だがだ。

もしも怒りに満ちたその視線をドクターが気付いていれば、彼は間違いなく歓喜していただろう。

何故か?単純だ。

 

ドクターウェルは――既に仮面の少女とあの死神が同一存在である事を見抜いているからだ。

 

 仮面の少女が初めて彼らの前に出現したライブ会場。

その際にドクターはネフィリムの覚醒を確かめる為に小型デバイスを会場へと持ち込んでいた。

ちょっと弄れば盗聴される様な通信機と同レベルかちょっと上レベルの機器しかないF.I.S.(マリア達)とは比べものにならない、独自に改造を施した特殊なそれを、だ。

それ故に――ファラが放った妨害電波の中においてもそれは無事に起動し、ドクターは彼の少女のデータを入手する事が出来た。

 

 そして二回目、彼が理想の英雄として憧れを、そして愛を抱いたあの死神の出現。

無論、この時もこの男はそのデバイスを持っていた。

理由は同じく、ネフィリムの成長を確かめる為に、だ。

その予定は滅茶苦茶とはなったが…その代わりに彼の死神のデータも収集する事が出来たのだ。

 

 こうして得た2つのデータ。

ドクターはそのデータを調査する過程である事実を発見。

それは、仮面の少女が発するシンフォギアに酷似した波長パターンが死神が発するそれと類似していると言う事実に………

この時点においてはまで「もしや」と言う仮定でしかなかったが……今は違う。

2つのデータから生まれた疑問を、3度目の出現である今日、再確認したドクターは確証を得たのだ。

あの死神と仮面の少女は同一であると。

 

 だからこそ男は喜ぶ。

憧れの、愛を抱いた英雄から向けられる感情に身を悶えさせ、喜びを噛み締めるだろう。

向けられた感情が何であれ、だ。

それがこの男にとっての――≪愛≫なのだから。

 

 しかしそんな事を彼女は知る由もない。

ヘリへ向けた怒りを抑えて、少女は眼前へ――小日向未来へと向き合う。

 

「――先程言いましたね。争いのない、誰もが笑顔でいられる世界を作る、と」

 

――セレナは思う。

もしも、そんな世界が本当にあるとすればそれは間違いなく素晴らしい世界だろう。

誰も争わず、誰も傷つかず、誰もが笑顔でいられる世界。

とても良い世界だと思う、彼女の言う通りの素晴らしい世界だと思う、それは間違いなく本音だ。

けれども――――

 

「そうだよ。それはもうすぐそこまで来ていて、後少しなんだ。だから私が行かないと―――」

 

 精神が操られている状態の未来でも会話が出来る相手を傷つける、と言う判断は下せなかったのだろう。

仮面の少女を避ける様にして先へと向かおうとするが――それを阻むのは海面と言う鏡面から飛び出した無数の黒い手達。

絶対に通さない、そう示す様に立ち塞がる黒い手を背に仮面の少女は――セレナは語る。

 

「――争いのない世界、誰も傷つかない世界…ええ、とても素晴らしい世界だと思います」

 

「だったら―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――けど、その世界は本当に貴女が望んだ世界ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人は誰しも必ず争う。

自身の為、友の為、家族の為、国の為、世界の為。

己にとって絶対に退けない想いや信念、理由があるからこそ人は争う。

時に他人を蹴落とし、時に他人の怒りや嘆きを糧とし、時には他人の命を奪う。

そうして人類は今日まで≪争い≫と共に生きて来たのだ。

もはや人類から争いを除く事は難しいだろう。

人は恐らくこの先もずっと争い続ける、それはどうにもならない事実なのかもしれない。

だからこそ、彼女の言う世界に僅かでも賛同していた。

争いなんて無ければ良い、そう思っているのは間違いなく本心で、彼女の語る世界に夢を抱いているのもまた事実だから。

けれども―――

 

 彼女が――いや、彼女を操るドクターウェルが目指すその世界にあるのはそんな明るい世界ではない。

―――待っているのは≪支配≫だ。

誰もが笑顔でいて、誰もが争わない世界。

それは――誰もが心の中に本心を隠し、誰もが力に怯える世界だろう。

あの男が、己の欲望のために他者を傷付けるあのドクターウェルが作り上げるのはそんな世界だと確信を以て言える。

だからこそ聞く、それこそが本当に望む世界なのかと、本当にそうなのかと、小日向未来に問いかける。

 

「―――――」

 

―――沈黙。

小日向未来は問われた言葉をぼやける思考で考える。

誰もが笑顔で居られる素晴らしい世界、その世界でなら響が傷つく事は永遠にない、そう確かにあの男の人は言ってくれた。

その世界を作るのに力を貸してほしいとも、親友を救えるのは貴女だけだとも彼は言った。

辿り着いた先にある素晴らしい世界でなら他の皆も救われると彼は言った。

 

―――だったら、考える必要などない。

 

 小日向未来は行動を以て返答とする。

展開する神獣鏡、その矛先は――仮面の少女へと向けられる。

語る言葉はもはや必要ない、既に話し合いは終わったのだから。

 

「――邪魔をしないで、私は皆を――響を救うんだから」

 

 向けられた敵意、彼女から――未来お姉さんから向けられる事は永遠にないであろうと思っていたそれに、目元が熱くなるのを感じる。

頬を伝う涙を拭い去り、セレナもまた覚悟を決める。

 

絶対に、そう絶対に―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴女を止めます――未来お姉さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

此処に1つの戦いが始まりを告げた。

 

 

 




ナツカシノメモーリアー カウント ???
おや?カウントの様子が………?

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