僕のお父さんは円卓最強の騎士   作:歪みクリ殴りセイバー

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はい。というわけでFGOはシリアスな展開で行くゾ〜。嫌な方はブラウザバックやで
特異点Fってうろ覚えだわ未だ謎が明かされてないわで書きづらきことこの上なし。今回は進行パートだから面白みはなし。ギャラハッドのセリフが少ない? あれだよ、前作主人公によくあるあれですよ。あんまでしゃばんないんですよ


奮闘と成長

 未だ燃え尽きることのない街の霊脈への道程で、マシュは立香への説明を済ませる。サーヴァント、マスター、レイシフト……全て初めて聞く単語に立香の頭上には疑問符がいくつも浮かんだが、自分なりに噛み砕いて理解した。

 

「えっと……英雄の幽霊みたいなのがサーヴァント? で、すっごい強くて、マスターはそれを補佐する人のことで私がそのマスターで……この赤いアザみたいなのでサーヴァントを一時的に強くできる……で合ってる?」

 

「大枠は捉えているので間違いないかと……。付け加えるなら、私はギャラハッドさんから力を貸してもらっているだけなので、厳密に言うとサーヴァントではないのですが……」

 

 説明途中に立香の顔を盗み見ると、なるほどわからんという表情をしていたため具体的な話は中断する。今はとりあえず自分達でこの特異点の原因を突き止め、解決するという最終目的さえ理解してもらえれば行動には支障がない。

 

「そのギャラハッドさん? は今マシュに憑依してるんだっけ?」

 

「はい。ギャラハッドさんは私の中から魔術を使ってサポートしてくれたり、戦闘時に助言をくれたりするんですよ」

 

 ———————————助言とサポートなら任せてくれて構わない。

 

「へー、でも自分の中にもう一人別の人がいるって違和感とかあったりしない?」

 

「私にとって、ギャラハッドさんはもう自分の半身のような存在ですから……むしろ、いない方が違和感があるかもしれません」

 

「そういうものなんだね……」

 

 ガールズトークにしてはあまりに華がないが、気を緩めず、かといって張り詰めすぎないようにするためにはこれくらいの会話がちょうどいい。霊脈を目指す中途でガイコツ兵に遭遇することもあったが、いかに戦闘が苦手とはいえ、サーヴァントの力を持っているマシュの相手ではない。

 ギャラハッドの魔術サポートに加え、実戦というこれ以上ない経験にこれらの装備の本来の使い手であるギャラハッドというこれ以上ない師匠からの指導(アドバイス)によって、マシュは恐ろしい速さで成長していく。

 たった今も敵を粉砕し、多勢に無勢だったのを物ともせず本人だけの力で打ち倒した。英雄の力の一端を目の当たりにし、自分があの力を御する存在だと言われてもイマイチピンと来ない。まるで映画でも眺めているような心地に陥るのだ。

 

 ————————————気持ちはわかるよ。

 

「うわっとぉ! え? 誰!?」

 

 突如自分の脳内に響いた聞きなれぬ男性の声に、立香は思わず体を硬直させる。戦闘を終えたマシュが突然に不審な様子を見せた彼女の元に駆け寄り、彼女の説明を受けて状況を把握する。

 

「ああ、それは多分ギャラハッドさんですね」

 

「え、今のが!? 英雄ってテレパシーも出来るの……?」

 

 ————————————いや、これは立香ちゃんがマシュのマスターだからだと思うよ。

 

 また何処からともなく声が聞こえてくる。慣れていないのもあるが、脳に直接人の……それも異性の声が届くということに違和感と気恥ずかしさを感じる。まるで脳で考えていることを覗かれているような気分だ。

 

「ナルホドォ、廊下でマシュが一人でブツブツ喋ってるのってこういうことだったんだ……」

 

 ————————————ヨロシク、立香ちゃん。

 

「あ、呼び捨てでいいですよ。大体みんなからもそう呼ばれてたので!」

 

 着実に彼らは関係を築いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『なるほど、一通りの説明は済ませてくれたようだね、ありがとう。こちらも分かったことがある』

 

 合流地点から二キロほど歩いた先、龍脈で再び繋がったカルデアとの通信でロマニからの情報は入った。ここは2004年の冬木。その年、冬木では聖杯戦争が起こっており、そこで何かしらのイレギュラーが起こったために特異点化した場所である、と。

 

『……聖杯戦争の舞台ということは、敵対するサーヴァントがいてもおかしくない。それもマシュというサーヴァントを連れているマスターならなおさらだ』

 

 正直に言ってマシュは弱い。確かにスケルトン程度の敵対生物ならサーヴァントであるマシュの敵ではないが、相手が同じサーヴァントなら彼女に勝ち目はないだろう。新米サーヴァントに新米マスターで生き残れるほど聖杯戦争も特異点も甘くはないであろうことは素人である立香にも容易に想像がついた。

 

『正直に話そう。マシュ、それに立香、この特異点で君達の命の保証をすることは僕には出来ない。それでも、やるのかい?』

 

「……私には何が起きてるのかサッパリわからないけど……多分、これはやらなくちゃならないことだってことはわかる。だから……やります」

 

「マスターがやるならもちろん私もやります。大丈夫ですドクター。こちらにも正真正銘の英雄であるギャラハッドさんがいるんですから!」

 

 ————————————……まぁ任せてください、出来る限りのことはするので。

 

 何を為すにも、まずそこに意志がなくてはならない。でなければ、このような絶望的な状況で人は容易く折れてしまう。自分を奮い立たせる理由が何であれそこにある、と図らずも確認させたロマニは大きく頷いた。

 

『————それでは、これより特異点Fの調査に本格的に動き出す。各員迅速かつ自分の命を最優先に、この特異点の歪みの原因を見つけてくれ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァァァァァァッ!」

 

 裂帛の声と共に、彼女の唯一の武器である大盾を力の限り振るうもすんでのところで躱され、逆に投擲された鎌に命を晒す。だが青い魔力壁が命を刈り取る刃物を防ぎ、その隙を突いて再び接近して先程よりも速く盾を振り抜く。

 

 ————————————逃がさん! 

 

 相手が回避する方向に壁を作り出し、逃げ道を塞ぐとサーヴァントの脚力から発揮されるスピードそのままに壁にぶつかり、辺りに轟音を響かせると同時に致命的な隙を晒した。

 

「マシュ、今ッ!」

 

 追い討ちをかけるが如く立香の右手の甲に宿る令呪が赤く光り、マシュの人から並外れたサーヴァントの力が更に増幅される。本来三画しかなく、使いどころの見極めが重要な切り札である令呪だが格上の相手を確実に仕留めるために使用した立香を責めるものはいないだろう。事実、令呪によって破壊力を増したマシュの全力の一撃で敵対サーヴァントは致命傷を負い、体を粒子に変えて空気に溶けた。

 

「勝った……? ……勝ちました! ギャラハッドさん! マスター!」

 

「イェーイ! お疲れ、マシュ!」

 

 ————————————ふーっ……、何とか勝てたね……。

 

 結果を見れば、謎の黒い影に覆われて思考力が鈍っていた上にマスターもいないサーヴァントを実質三人がかりで戦い、貴重な令呪を消費してしまったが、間違いなく英雄と呼ばれた存在に自分達が勝ったのだ。喜ばないわけがなかった。

 

 ————そして、油断したところを狙うのが暗殺者だ。

 

 ————————————! クッ! 

 

 咄嗟に防御魔術を展開出来たのは、それが彼にとっての得意魔術だったからだろう。そしてそのおかげで今立香は生きている。

 ギャラハッドに遅れて二人が姿の見えない敵からの襲撃に対して戦闘態勢に入る。だがどうしようもなく分が悪いのはカルデア一行だ。ただでさえ先程格上の相手に神経をすり減らし、使った魔力も決して少なくない。マシュにどれだけ余力があるかまでは彼には分からないが、表情を見る限り限界はそう遠くないだろう。

 

「セセセ聖杯ヲ我ガ手ニ……」

 

 最早そのサーヴァントは正気を保っておらず、譫言のように聖杯をと口にしている。どこからか取り出された短刀の投擲をしっかりと防ぎ接近するも、短刀での牽制や軽々とした身のこなしで距離を詰められない。体力の問題で早期決着をしたいマシュが歯嚙みを始めた時、戦況はさらに悪化する。

 

「————マシュ、上!」

 

 その言葉に反応したのはマシュではなくギャラハッドだった。立香を信じて上に目を向けることもなく、魔力防壁を展開すると甲高い金属音が辺りに響いた。

 奇襲を仕掛けて来たのは二騎目のサーヴァントであるという事実は一騎でも手に余る戦力しかない彼女らにとって絶望的な知らせだった。

 

「……諦めません……!」

 

 だがマシュは再び持ち手を固く握り締め、闘志を萎えさせることはしなかった。

 物語で読んだ彼は諦めることをしなかった。ならばその力を受け継ぐ自分がどうして諦めることが出来ようか。

 

 —————————————マシュ……。

 

 彼女はもう、大人達の都合に振り回されるだけの子供じゃない。彼女はもう、戦う力を持たない弱き者ではない。一人の(サーヴァント)がここで生まれたのだ。

 

「————いいな、嬢ちゃん。諦めが悪いのは嫌いじゃねェ」

 

 まさにマシュに飛びかからんとしていたシャドウサーヴァント達に爆炎が直撃し、風と共に砂が舞い上がる。この場で唯一か弱い人間の体を持つ立香は盛大にむせた。

 

「嬢ちゃん、あんたはそっちのやつをやりな。手傷は負わせたから一対一なら今のアンタでも勝てるはずだ」

 

「はっ、はい!」

 

 獰猛な獣のような目を携えた男性に従い、再びアサシンのシャドウサーヴァントに盾を構えて向き直る。

 

「マシュ・キリエライト、行きます! ギャラハッドさん、マスター、バックアップはよろしくお願いします!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ……!」

 

 すでに疲労困憊だったところを突かれての連戦の終盤は最早声を出す体力すら残っていない。微かな鋭い吐息と共に振るわれた盾はアサシンの胴体に直撃し、霊核を砕くまでに至る。敵の消滅を見届けたマシュは張り詰めていた精神を緩め、疲労からか足に力を入れることが叶わず大地にへたり込む。結局敵を倒すのにまた令呪を使う羽目になった。

 

「おう、お疲れさん。まだまだ拙い部分はあるが見どころあるぜ、嬢ちゃん。そこの見るからに新米のマスターもな」

 

 涼しい顔をして労いに来る辺り、あのもう一人のサーヴァントでは相手にならなかったらしい。

 

「さて、じゃあそちらさんの事情を聞かせてもらおうかね」

 

『説明は僕からさせてもらいます、キャスターのサーヴァントよ』

 

 さすが英雄と言うべきか、キャスターはロマニから特異点の話やカルデアの目的を聞いても大して驚いたりはしなかった。

 

『……以上がカルデアの目的です。それで、この特異点で何があったのかを聞きたいのですが……』

 

「ワリィが何が起こったのかは俺も知らん。俺が知っているのは一夜にして人が消え、サーヴァントだけになったことと、その異常事態にも構わずに再び聖杯戦争をおっぱじめたセイバーにオレ以外のサーヴァントは斬られ、あんな訳の分からん姿になっちまったってことだ」

 

 異変はすぐそばに迫っていた。




特に書くことがないので、マシュの名前のエモい由来とそこからの考察
・マシュの由来はMatthew。これはヘブライ語で「神の贈り物」という意味。キリエはKyrie。ラテン語で「主の」という形容詞。ライトは普通にlightで光。

以下考察
・神の贈り物とは生命の誕生はしばしば神秘であると考えられ、デザインベイビーという特殊な境遇から生まれた来たマシュという存在そのもののことを指すのではなかろうか。

・ラテン語のキリエの「主」とは神やキリストを指すのだが、今回は普通にあるじという意味……つまりマスター(主人公)と考えると、名字のキリエライトはマスターの光、ということになる。

・ここで最早マシュのキャラソンと言っても過言ではない坂本真綾さんの『色彩』という歌詞から考えてみよう。こんな歌詞がある。『私は女神になれない。誰かに祈りも捧げない』。名前の由来の単語に神という単語を含むマシュが女神になれない。一般的に向ける対象は神である祈りも捧げない、というのは作詞者の意図を感じる気がしないだろうか?

・そして、こんな歌詞もある。『私に色彩をくれた人』。これはわざわざ言わずともいいだろうが、マスター……つまり主人公だ。色彩、というのはつまり色合いだ。そして色とは、物が光を反射することで生まれる。そう、マスターは彼女に光を与えたのだ。これが名字のキリエライトである。

つまり、マシュは神の贈り物……つまり生まれという人生の始まりを意味し、キリエライトで色彩をくれたこれから、つまり未来を表していると思わないだろうか?
つまりマシュ・キリエライトとは、一人の少女の始まりと未来を意味してつけられた名前だと私は考える。異論反論質問は受け付けるが、ひとまずQ.E.D.

幕間でやるなら?

  • 円卓の騎士時代の話
  • 特異点の話
  • カルデア(事件前)の話
  • それ以外に出てくるキャラとの絡み

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