僕のお父さんは円卓最強の騎士 作:歪みクリ殴りセイバー
今回はシリアス目です。原作の主人公の設定的にこういう話があっても良さそうだなと思い書きました。ぶっちゃけ内容は飛びすぎですが、長く書きすぎてもアレなので詳しく知りたい人は本家をやろう!(ガチャ地獄に引きずり込む)
いつも誤字報告や感想、評価に感謝してます!
あと今更ながら後書きに主人公のプロフィールを載せるという……よかったらご覧くだされ
因縁の相手という言葉がある。
その因縁は人によって様々であるが、ギャラハッドにとってその対象にあたるのは実父でもあり、円卓最強の騎士であるランスロットになる。
ブリテンを崩壊させるキッカケになったから……ではない。その理屈で言うならば、モードレッドや王妃ギネヴィアもその対象にあたる。何より崩壊を知っていながら、未然に防ぐことなく歴史に従うことを良しとした自分が彼らを責められるはずもない。……好き嫌いは別としてではあるが。
ギャラハッドが彼を因縁の相手とするのは、もっと個人的な理由である。即ち、彼はランスロットに勝ったことがないのだ。
勝ったことがないと言ってはいるが、実際に彼らが戦ったのは一戦のみである。それもギャラハッドの身体が成熟しきる前の話であるのだが、戦績だけ見れば一戦零勝一敗。勝率にして零パーセントである。
ランスロットが紛れも無い強者であることは重々承知している上で、
「AAAAaaaaaaaaaarrrrrrrrrrr!!!!」
ただ惜しむべくは、その雪辱相手が正気を保っていないことであろう。その口から発しているのは喜びか、怨嗟かはたまたただの雄叫びか……。その意味を誰もうかがい知ることの出来ない狂気を滲ませていても、彼がかの湖の騎士であることはギャラハッドには一目瞭然であった。
———————————……アルトリア様といい、ランスロットといい、これは神様からのイタズラか罰なのかな?
サーヴァントというのは英雄の一側面を強調して写し出した存在でもあるが、ギャラハッドはあそこまで暴れ狂うランスロットを知らない。あれが自分が昇天した後の成れの果てだと言うならば、あまりにも哀れだ。
「……私は湖の騎士であるランスロットさんのことはよくは知りませんが、苦しそうに見えます……」
救国の聖女は、猛り狂う漆黒の騎士を手負いの獣のようだと称した。その必死さはどこから来るのかなど皆目見当がつかない。それを知りうるのは、彼の不義を知る二人だけだ。
「……国を滅ぼした愚者と、国を守らなかった外道。実に似た者親子ではありませんか? 久々に飽きるほどやり合いましょう、ランスロット……いえ、我が父よ」
「マシュ……じゃない?」
普段と全く様子が違うマシュの姿をしたナニカ。背筋が凍るほど冷たい彼女の視線であるが、それは真っ直ぐにあの黒騎士へと向けられている。
『……あれはマシュじゃない、ギャラハッドだ。今までサポートに徹して来た彼が自ら相手しなくてはならないくらいに強力なサーヴァントなのか、因縁の相手故か……とにかく、総員そこから退避することを推奨するよ』
「Gaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」
まるで仇敵を見つけたが如く荒ぶる獣がマシュの姿をしたギャラハッドに突貫していく。それを見据えたギャラハッドも盾を構え、真正面から受け止めようとし————吹き飛ばされた。
「えっ?」
間抜けな声を晒したギャラハッドが、雄大な大地を転がり土煙を巻き起こす。幸いにもそれが敵の視界を遮ることになり、追撃を許さなかった。
「……なるほど」
元は一般人であったギャラハッドがあの神秘が跋扈するブリテンを幼い頃から生き抜けたのは、ギャラハッドという存在の身体スペックによるものが大きい。もちろんその身体能力と同等のものをマシュに望むべくもない。
それに使える魔力の制限に、マシュの身体をギャラハッドが手動で動かし戦闘すること自体がここまで魔力を食うとは知らなかった。日常生活ならば、さほど問題はなかったのに。
諸々の事情が合わさり、理性をなくし、技の精緻を若干とはいえ欠いているランスロットの一刀すら自分の身一つで受け止めることが出来なくなっていた。
「Grrrrrrrrr……! Gaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」
「ギャラハッドさん!」
「うっそ銃火器!? 世界観違いすぎるでしょ!」
仮にも円卓最強の騎士がマシンガンに頼るなんて、騎士道はどこへ行ってしまったのだろうか。というか幾ら何でもブリテンにあんな前衛的な武器はない。そもそもこの時代のフランスですらまだ開発されていない武器のはずなのだが……。
防御障壁を幾重にも張り巡らせ、何とか銃弾の嵐を耐え凌ぐ。魔力強化した脚で一気に距離を詰め、穢れなき聖盾で一切の手心なく兜に向かって振り切った。
破片と血が青い芝生に散らばり、一部を赤く染めた。砕かれた頭部の装備からランスロットの顔が覗き、苛烈なまでの慚愧の表情を見てギャラハッドは何も言えなくなる。
「Aaaaaarrrr……thurrrrr……」
今は亡きかつての主人の名を唱え、闘志の炎を再び胸に灯した。だがそこから振るわれた剣は、何の重みも感じぬ虚ろなものだ。一合受け止める度に何とも言えぬ苦々しさがギャラハッドの胸に込み上がって来た。
「……取り敢えず、アルトリア様とアグラウェイン卿とガヘリス卿。それに……ガレスに謝りましょう」
幾度の殴打を受けて倒れ伏し、金色の粒子へと変わった自らの父に呟いた。
勝った気はまるでしない。彼の胸中には、そんな晴れやかさとは真反対のどうしようもない遣る瀬無さが渦巻くのであった。
「あの……ギャラハッドさん」
——————————ん?
先程の激情は当然同じ体を共有するマシュに伝わっていたが、あまりにいつも通りの声音であるギャラハッドに何も言えなくなる。
湖の騎士ランスロットについては当然マシュもよく知っている。円卓の騎士最強にして、ギャラハッドの実の父。湖の妖精に育てられ、アロンダイトを握ってアーサー王の敵をなぎ倒し……最後は王妃との不義でブリテン崩壊のキッカケになった人物だ。
普通の親子関係をよく知らないマシュでも、この二人の関係は異質なものであることは何となくわかる。もし自分がギャラハッドの立場であったならば、英霊の座で実父が守るべき国を滅ぼすキッカケになってしまったと知れば怒りに震えるかもしれない。
でも彼はそれをしない。
当然、怒るほどの愛着を国に持っていなかった訳ではないだろう。それは彼の話を聞いて来た自分が誰よりも理解しているつもりだが、ならば何故怒らないのだろうか。自分も故郷のようなカルデアを壊す輩がいたならば、きっと憤慨している。
「……ギャラハッドさん、まだ私にはギャラハッドさんの考えていることはよくわかりませんが……辛かったら頼ってくださいね」
———————ありがとう、マシュ。でも本当にあの人に対して何か思ってるわけじゃないから大丈夫だよ。
時々、マシュは彼と距離感を感じることがある。普段の生活で感じることはないが、こうして特異点で彼と縁のある人物と出会うと、彼から決まって困ったような感情を感じるのだ。
マシュはそこに踏み込めないでいた。言葉にせずとも、彼が触れてくれるなと言っているような気がして……。
彼が自分の物語を語る時も同じ疎外感を感じる。何故、と問われたらマシュもわからないと答えるだろうが、その感覚が偽りのものではないことは本人はよく知っている。
珍しく、彼と彼女の認識に齟齬が生じない出来事であった。
かくして、オルレアンの最終決戦は近づいていった。
最終的なカルデアの戦力は、聖処女ジャンヌ・ダルクをはじめとする現地のサーヴァント七騎と、マシュ・キリエライト。そして人類最後のマスター藤丸立香である。
結論から言ってしまえば、カルデアは見事に特異点オルレアンを修復することに成功する。そのことをカルデアスタッフ達は大いに喜び、浮かれ、涙を流す者すらいた。
当然、特異点で起こったことはそれだけではない。レイシフトした当の本人達の表情は浮かないものであった。特にマスターである藤丸立香の精神バイタルは安定しているとは言い難い。
今のカルデアは人材が異様なほど少ない。そういったメンタルケアは医師であるロマニの仕事であるが、世界を背負いながら慣れない総指揮官を務め、その後処理に回っている彼の手がそこまで回らないことを責められる人物はいないだろう。
「……今回は彼に任せるのが吉かな?」
唯一立香の状態に気づいたダヴィンチは、敢えて何もすることはなかった。理論的な根拠はないが、強いて言うなら……天才の勘、というヤツであろう。
レイシフトを終え、カルデアに帰還した日の深夜。
立香はベッドの上で枕を抱きしめながら座っていた。眠くないわけじゃない。体はこれまでの人生で一番クタクタだというのに、なぜか寝れる気はしなかった。
特異点を修復し、聖杯を持ち帰るという大金星を挙げた彼女ではあるが、その戦果とは打って変わって胸中は不安でいっぱいであった。
——————————や。
「ウヒィ!? ……なんだぁ、ギャラハッドさんか……びっくりさせないでよ、もう」
——————————マシュは寝たし、立香が起きてたからせっかくだし二人でお話しようと思ったんだけど、迷惑だった?
「……んーん、迷惑じゃないよ」
思えばこんな落ち着いた状況で二人きりで会話するのは初めてのことである。コミュニケーション能力にはある程度の自信があったが、深夜に男の人と二人きりでお喋りするのは初めてで、少し緊張する。
暫くはただの雑談に興じていた。カルデアのこと、マシュのこと、フォウのことやお互いのこと……そして特異点の話になった途端、立香の顔に翳がさした。
「……特異点Fの時は、いきなりで必死だったからガムシャラでよくわからなかったけどね? 改めてレイシフトして、色々な状況にぶつかって……指示が出来なくなっちゃったんだ。正しいかどうかなんてわからないし、間違えたら未来がなくなっちゃう。……重いよ。私には、凄い重いよ」
いつも明るい少女の涙交じりの独白は、少なからず彼に突き刺さる。
藤丸立香は一般人だ。ここに来るまで魔術のまの字すら知らなかった正真正銘の素人である。
レイシフト。サーヴァント。マスター。人理焼却。自分がしくじれば全てが終わる。その双肩にのしかかるのは、比喩でもなんでもなく世界そのものだ。一人の少女が抱えるにはあまりにも重すぎる荷物だった。
—————————……僕さ、自分が英雄って呼ばれるような存在になるなんて思ってなかったんだよね。普通に生きて、普通に死ぬものだと思ってた。友達を作って、仕事して、いつかは結婚して、子供ができて、その成長を見ながら老いていく……そんな人生だと思ってた。
前世は凡そその通りだったであろう。そこそこの大学を出て、何とか企業に就職し、優しい恋人もいた。その人とぼんやり結婚する未来を考えて……過労で死んだ。そして、縁もゆかりもない
誰も逆らえない流れのせいで一般人だった自分が英雄にならなくてはならない。転生の話を抜きにして、そんな話をギャラハッドは語った。
そういう意味ではこの二人は似た者同士であるのかもしれない。
「……ギャラハッドさんもそうだったんだぁ……」
立香にとって英雄とは理解が及ばない存在だった。
カーミラのように驚くほど残虐な逸話を持つ者もいれば、ジャンヌみたいに己が殺されたことにすら怒ることのない聖人もいる。正直言って、立香には理解し難いことである。
人を好んで殺す気持ちなんてわからないし、自分を殺した人々を恨まない気持ちもよくわからない。身近にいて共に戦っていても、どこか遠い存在にしか思えなかった。
焼却された世界を救うなんて所業、紛れもなく英雄並みの苦行である。それを成すには物語の英雄のように何でもできなくてはいけないという強迫観念に囚われていた立香は、自らがそうある必要はないのだと気づく。
特異点Fで言うならばキャスターがいた。オルレアンで言うなら、ジャンヌやマリーなど沢山のサーヴァントが力を貸してくれた。
自分に足りないところは沢山ある。だがそれを特異点のサーヴァントやマシュ、カルデアスタッフやギャラハッドが埋めてくれる。最終的に世界を救えるならば自分一人で頑張ろうが、皆と頑張ろうが同じことだ。
本当にそれを為せるのかという不安が完全に拭えたわけではないが、一先ず疲れと眠気が一斉に襲ってくるくらいにはリラックス出来た。
「……ん、眠くなって来ちゃった。おやすみ、ギャラハッドさん」
————————うん、おやすみ。
光源が一つもなくなり真っ暗になると、自分が地に足着いていないことをより強く自覚してしまう。
もう彼は前世の自分の名前も、彼女や親の顔も思い出せなかった。
確たる自分はどこにもなくて、あるのはただギャラハッドという重い名前と人理修復をするマスターの手伝いという大きすぎる使命だけ。
—————————……お互い大変だよねぇ。
そう呟いたきり、夜が明けるのを待った。
【悲報】邪ンヌ、キングクリムゾンして倒される。キャスジル出番ナシ!w
今回のまとめ
ぎゃらはっど「英雄になるとは思ってなかった(前世を振り返って)」
立香「あんな凄いギャラハッドさんも最初はそんな感じだったんだ(説話を思い出しながら)」
ぎゃらはっどの前世経歴
名前.???
性別.男
年齢.28
家族構成.父(56)、母(54)、妹(17)。年はぎゃらはっどが亡くなった時のモノ
備考.享年28歳。死因は過労。就職難でどうにか漕ぎ着けた内定がブラック企業であり、新人の分の仕事の一部も自主的に請け負っていたため過労死。一人暮らしをしていた自宅の扉の前で倒れて亡くなっているところを発見された。大学時代から付き合っていて、結婚を考えていた彼女がいた模様(コイバナの時の恋していた人はこの人が該当する)。
性格は温厚だが、余裕がなくなるとテンションがおかしくなる。アドリブに弱い。他人の異変によく気がつくのは前世で新人や歳の離れた妹の面倒をよく見ていた賜物であるが、反面口下手な部分もあり、強く自分の意見を伝えるのは苦手。出来たらブラック企業を辞めてる。
前世はブラック企業で過労死し、転生したら崩壊寸前の国で戦場に駆り出され、マシュに憑依したら人理修復をしなければならない仕事漬け。きっと無限の労働(アンリミテッド・オーバーワークス)が使える。
そんな過酷な状況を体験して来たからこそ、その中でも頑張るアルトリアを尊敬していたが、めちゃくちゃ自分に激怒していると絶賛勘違い中。アルトリアの恋路はいかに!?
幕間でやるなら?
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円卓の騎士時代の話
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特異点の話
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カルデア(事件前)の話
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それ以外に出てくるキャラとの絡み