僕のお父さんは円卓最強の騎士   作:歪みクリ殴りセイバー

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お気に入り登録10000人ありがてぇ…!まぁ投稿したら一日くらいの間、登録者数減るんですけどネ!
さて、感想でも御指摘ありましたが削除した話があります。これはぶっちゃけ展開が思いつかなかったのとなくても構わないところだったので……ブリテン時代や特異点の話は本編行き詰まったら幕間でちょこちょこ書くスタイルにします
本編では序章、一章、四章、六章、七章、終章を書きまする
四章ではギャラハッドの内面掘り下げをしたいで候
今回の話で勘違い(シリアス)をするのはぎゃらはっど君です。長々と書いてしまいすまないさん


歪み

 カルデアの人理修復の旅も第四特異点まで来た。

 オルレアン、ローマ、オケアノスという三つの特異点により着実に自信と実力を身につけて来たカルデアの次の目的地はロンドン。

 そう、現代におけるイギリスの首都である。

 つまり、その土地柄に縁がある英霊が召喚されているのは自明の理であった。

 

 

 

 

 

 

「ギャラハッドォォォォォォォォッ! 会いたかったぜ、テメェをこの手でぶちのめす為になぁっ!」

 

「モードレッド……!」

 

 甲高い金属音が霧に覆われたロンドンに響き渡る。英霊としての力を余すことなく用い、仇敵を討たんとする彼女の名はモードレッド。叛逆の騎士にして、円卓の騎士の一人である。

 

『ど、どういう状況だ!? なんで彼の円卓の騎士、モードレッドがギャラハッドにそこまで強い怒りを……!?』

 

 ロマンが驚くのも無理はない。これは世界中どんな書物を漁ろうとも知り得ぬ因縁。本来であれば、あるはずのなかった激情なのだ。

 いつまでも続くと錯覚しそうなほど絶え間ない剣戟はギャラハッドがクラレントを押し返し、モードレッドがその力に逆らわずに距離を空けたことで一先ずの終わりを迎える。

 

「待てモードレッド。落ち着くんだ」

 

「テメェと話すことなんざ何一つありゃしねぇ!」

 

『ま、マギ☆マリ! 何とかしてくれ! ……ん? 「無理☆ごめーん」じゃないよ! 立香ちゃん! とりあえず無力化するなり対処して!』

 

「えっ!?」

 

 無茶振りに思わず声をあげる。いや、そもそも止める必要はあるのだろうか? ここに至るまで数多くのサーヴァント達の戦いを見て来たが、本気でやりあう時のピリつきがないように感じるのだ。それが殺気ということに立香はまだ気づいていない。少なくとも、マシュの姿をしたギャラハッドからは。

 

「モードレッドよ、何故怒る? お前が我が王を討とうとしたのを邪魔したが故か?」

 

「あぁ!? 確かに言われればそれもムカつくな。お前に負けたのもムカつくし、オレと戦っておきながら涼しい顔をしてたのもイラついた……だがな、オレが一番腹を立ててんのはそこじゃねぇ」

 

「……ならば、何故?」

 

 カムランの丘以前、モードレッドとは仲がいい訳ではなかったが、特別悪い訳でもなかった。顔を合わせれば会話くらいはしたのだ。こんなに殺気を迸らせるほどの理由があるとすれば、さっき述べたことしか心当たりが見当たらない。

 

「テメェ、何故オレを生かしやがった」

 

「———————」

 

 邪魔されたのは腹立たしいが、いい。負けたのも悔しいが、まぁいい。だが、舐められるのだけは許せなかった。それは女と侮られぬため、強く生きてきた自分を否定するものだ。許せるはずがなかった。

 

「オレが女だから侮ったか? オレの境遇に情けでもかけたか? オレの方が弱いからと驕ったか? ————ふざけるなよ、円卓の騎士第十三席ギャラハッド」

 

 あの時……ブリテンで反乱を起こした時、モードレッドは必ずしもギャラハッドに勝てない訳ではないと思っていた。ギャラハッドがいない時を狙って反乱を起こしたのが示す通り、一円卓の騎士としての実力について疑う余地はなかったが、いざ実戦となれば五分五分くらいにはなるだろう、と。

 確かに防御では名だたる円卓の騎士を寄せ付けぬほどに卓越した技倆を誇ったが、反面彼は剣や槍などの殺傷武器を持たなかった。そこに付け入る隙があると思っていた。……結果は悲惨なものであったが。

 

「あの時、オレは全てを賭けた。命だけじゃない、誇りも矜持も信念も、文字通り全てだ。勝ったら生き、負けたら死ぬ。それをお前は踏み躙りやがった。あろうことか、父上に理想の騎士とまで呼ばれたお前が!」

 

「…………」

 

 ギャラハッドにも返せる言葉はあった。そもそも叛乱を起こした自業自得である。価値観を押し付けるな。或いは、勝者が下した裁定なのだから甘んじて受け入れろ、という横暴な言葉もあっただろう。

 

 だが、彼がそれを言うことはなかった。

 

 それは、本来ならばなかった恨みなのだ。自分がたった一度だけ突き通したワガママが生み出した歪みによって、モードレッドにいらぬ恨みを抱かせたのは他ならぬ自分だ。あの戦いは原典(オリジナル)にはなかったのだから。

 そもそも、あの戦いで何かが良い方に変わったのだろうか。結局、誰かを救えなどしなかった。ガレス達は原典通りに死に、モードレッドは復讐の鬼となり、救えたと思ったアルトリア様は僕に対して怒りを抱いている。

 

 ————なんだ、無意味だったんじゃないか。

 

 唯一自分の感情に従った結果がこれとは、あの丘で偉そうにモードレッドに説教した自分を殴りたいくらいだ。やはり、僕は英雄(ギャラハッド)にはなれなかったらしい。

 

「踏みにじったつもりなどなかった。全力でやったさ。それでも、君がそう感じたのならば……僕に、それを受け止めるだけの器がなかったのだろう」

 

「はぁ? 心にもないことを言ってんじゃねぇぞ、気色悪ィ」

 

「偽らざる本心なのだが……」

 

「じゃあ何か? 大した器もないお前に負けたオレはそれ以下ってことか? 舐めてくれるな」

 

 暖簾に腕押し、とは正にこのことだろう。彼が何を語ろうと、彼女は否定的にしか捉えない。

 ブリテン時代に凄惨な争いの中で生きてきたとはいえ、かつての仲間と戦うことに関して何も感じなくなるほどの外道に落ちたつもりはないし、原典に於けるギャラハッドもそんな人間ではないだろう。

 

 彼ならば……英雄ならば、どんな言葉をかけるだろう。わかるはずもない。自分は、そんなご大層な人間ではないのだから。

 

「……晴らせぬ恨みが僕を斬ることで消え失せるのならば、甘んじてそれを受けよう。だが、今は勘弁してくれないか?」

 

「おいおい、白けること言うなよ。今勘弁してやる理由がオレにあるか?」

 

「ある。君が誇り高き円卓の騎士であり、英雄であると自負しているならば」

 

「ほー……?」

 

 体を焦がすほどの強い怒り。それすらも抑える重大なことがあるという事実にモードレッドの興味が惹かれる。

 人理焼却、特異点、レイシフト。

 カルデアのこれまでの旅路と経緯を聞いた彼女は苦々しげに顔を歪め、苛立たしげに叩きつけられたクラレントが石畳を砕く。

 

「チッ……ロンドン(ここ)でキナ臭い何かが起きてるとは思ったが、オレのブリテンどころか世界をぶっ壊すだと? ……気に食わねぇ」

 

 ギャラハッドは確かに気に食わない。こちらがいくら言おうとも、のらりくらりと追及を避ける———実際にはただの天然なのだが———態度も、まるで自分を敵としてみなしていない振る舞いも、とにかく彼女の心をいら立てる。

 過去にこれまで彼女の心に怒りの炎を燃やさせた存在はそうはいないが、それを更に上回るほどの不遜な輩がいるとは彼女自身ですら予想していなかっただろう。

 そもそも、ここでギャラハッドと戦うことを続行し、勝てたとてその事実はどこにも残らない。史になど残らなくても構いはしないが、それを自分自身すら覚えていない……或いは自分の存在そのものがなくなっては意味がない。

 叛逆の騎士と言われ、どちらかと言えば悪名のイメージが付き纏うであろうモードレッドも誇り高き円卓の騎士の座を己の力で勝ち取った、紛れも無い英雄である。その彼女が人理焼却なんてものを見逃す訳もなかった。

 

「チッ……テメェの口車に乗せられたみたいで気に食わないが、ひとまずこの剣は収めてやる」

 

「あっ、ありがとうございます!」

 

 立香には話の内容はてんで分からなかったが、取り敢えず話がまとまったことに安堵の息を漏らす。マスターとして数ある英雄譚を学習した成果だけでなく、マシュの影響でギャラハッド……ひいては円卓の騎士について知った立香もモードレッドという英雄についてはよく知っている。

 モードレッド本人を知る人(ギャラハッド)から実際に聞いていたこともあり、実情は想像とそう違いはない。乱暴な感じで、獣のような獰猛さ。成る程確かに叛逆をしそうだ。

 だが、引っかかる部分もあった。

 モードレッドがブリテンを滅ぼした原因だというのは余りに有名なエピソードであるが、その理由については断定はされていない。彼もその理由については『思い当たる節はあるが、断定は出来ないから言わないでおく』と言っていた。ブリテンが滅ぶ前に昇天したのだから知らぬのも当然かもしれない。

 アーサー王に不満があった。自分が王になりたいという野心があった。もしかすると魔が差したなんて理由かもしれない。

 だからこそわからないのだ。

 アーサー王へ憎しみを抱くなら誰もが納得するだろう。自分の命を奪った張本人であり、理由は何であれ叛逆に至るまでの思いがあったのだから。

 だが、彼女の憎しみは疑いようもなくギャラハッドに向けられていた。それも生半可なものじゃない、オルレアンで見た黒いジャンヌ・ダルクにすら勝るかもしれない強いものだ。

 聞き、見て、読んだ話と明らかに食い違う現実がそこにあった。

 それが何のせいに依るものなのか、少なくとも立香にもマシュにも、ロマンにも答えは分からなかった。

 それを知るのはたった一人、有名無実な彼だけであった。




今回の話のそれぞれの視点による食い違い説明
・ギャラハッド視点……自分が唯一明らかに原典に背いたことによってモードレッドに強い憎しみを植え付け、アルトリアに怒りを植え付けたという風に思っている。本来原典にそんな描写はなく、ただ悪い方向に向かわせてしまった、という思考。そのくせ他の誰かを救えた訳でもない、全部改悪されてしまったという考え。アルトリアの狂愛を知るのは幸か不幸かどちらなのか…

・モーさん視点……個人としては父に認められているギャラハッドが嫌いだが、一騎士としては彼を認めている。だがカムランの丘で全てを賭けた自分に対して命を奪うことがなかった彼は、自分を歯牙にもかけていないと思うようになり、強い憎しみを抱く。ある意味彼を認めていることの裏返し

・アルトリア視点……ギャラハッドに依存気味ゆえに抱くことになった執着心と嫉妬心が裏目に出て、自分がギャラハッドに対して強い怒りを持っていると思われた可哀想な人。ある意味この作品ナンバーワン不遇なヒロイン。

・カルデア's視点……史実と事実の食い違いに混乱している模様。彼が敢えて嘘を言っていることから、それが地雷なのではと間違ってもないけど合ってもいない勘違いをしている。

幕間でやるなら?

  • 円卓の騎士時代の話
  • 特異点の話
  • カルデア(事件前)の話
  • それ以外に出てくるキャラとの絡み

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