僕のお父さんは円卓最強の騎士   作:歪みクリ殴りセイバー

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ッスー……オヒサシブリデス(小声)
考えはあるのに文字に興すのめんどくてエタる病患者です(自己紹介)
あぁ^〜新予告ムービーでメインストーリーの続き気になるんぢゃあ^〜!


変化

 ————初めは憧憬だった。

 

 理想の騎士とまで呼ばれ、王に認められた誉れ高き騎士のように自分も認められたいと思っていたのかもしれない。

 

 ————次は妬みだった。

 

 何もかも守るほどの力を有し、それを私欲のために用いることもせず、最高の騎士と呼ばれるようになったアイツが、自分とは違い王に信頼されているアイツが妬ましくて仕方がなかった。

 

 ————最後は殺意だった。

 

 あの戦いの後に目を覚ました時、ただ生きていることが不思議でならなかった。あの時代、敗者に待っているのは死か度し難い陵辱、略奪と恐怖だけだ。

 だが、自分は生き残ってしまった。敗れたのにもかかわらず、五体満足で何をされたわけでもなく……まるで、自分など眼中になかったかのように。その事実はある意味で一番の陵辱だったのかもしれない。

 それを許せるだろうか? ……許せるはずがあるまい。必ず殺す、自分の方が強いのだと証明してみせる。それしかこの胸の怒りを雪ぐことはできない。

 結果だけを見れば、国一つを滅ぼした彼女の憎しみと怒りはたった一人に向けられることになった。だが猛る彼女の気持ちに反して、彼が彼女の前に姿を現すことはなかった。当然と言えば当然である。ギャラハッドは原典の通り、聖杯と共に昇天したのだから。

 しかし、それしきのことで彼女が諦めるはずもなかった。奇しくも、あれ程すれ違った親子は感情のベクトルは真逆と言えど同じ人物を探し求めて晩年を迎えることになった。

 自らの死因が何であったか、彼女自身ですら定かではない。崩壊したブリテンで飯が食えなくなったのか、壮絶な戦いの果ての戦死か、彼への怒りによる憤死か……理由など些細なことだ。重要なのは、自分が雪辱を果たせないままに死んだことただ一つである。

 聖杯に願うほどに望んだ遭遇は、奇しくも人理焼却というイレギュラーによって引き起こされた。

 愛剣から無意識に雷が漏れ出る。それはかつてのものとは似つかない、黒く禍々しいものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ——最近、夢を見るのだ。

 

 言葉にするまでもなく当たり前で、平凡な男の人が営む生活の夢。自分が取り返そうと戦っているものの一つ。

 朝起きて、仕事に行き、ご飯を食べ、風呂に入って寝る。なんの面白味もない風景がふと夢に出てきて、そのたびに「ああ、これは夢だな」と独りごちる。不幸なことに今の自分を取り巻く環境はそんな普通のものとは真逆の、命を……いや、世界を懸けた戦いの最中だ。

 では。

 では、この夢は……この夢に出てくる男は何者なのだろう。自分がかけられた魔術だとすればあまりに害意がなく、それ以外の理由だとしたらあまりに無意味だ。

 ふわふわと夢の景色が白んでいく。これもいつも通りだ。恐らく次に意識を取り戻した時に見る風景は、ロンドンにあるどこかの建物のどこかの部屋の天井だ。泡沫の夢が終わり、また戦いが始まるのだと考えると億劫だし怖くて仕方ない。

 それでも自分は目覚めなくてはいけない。最後にして唯一のマスターである自分にしか出来ないことがあるのだから。

 最後に男の顔を盗み見る。彼はささやかな幸せを噛みしめるように笑っていた。その表情を見ると、なぜか胸が苦しくなるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 虚ろな視界がだんだんとクリアになっていき、見慣れない天井が目に入る。どうやら寝てしまっていたらしい。

 最近はサーヴァントという超人達に囲まれているから忘れがちだが、自分はただの人間である。多少魔術を使える人をただの区切りに入れていいかはわからないが……少なくとも、サーヴァント達と比べれば常人の範疇である。比べる相手が悪いとも言う。

 ともあれ、変わりようのない事実として藤丸立香は人類最後のマスターである。常人とは比べものにならないほどの荒波が待ち受ける人生であることは誰にも否定できないだろう。

 そんな荒波の一つなのだろうか、なんとも言えない時間に起きた立香はなんの気なしに窓からロンドンの街並みを見下ろして……一人の人物を見つけてしまった。武術のぶの字も知らない立香が見ても流麗だと思う剣の捌きに目を奪われる。物々しい鎧に覆われていた体を今は露わにしながら黙々と振るい……動きを止めた。

 何かあったのだろうか? と考える間もなく眼下の彼女と目が合った。それと同時に、背中に氷水をかけられたような寒気が奔る。この感情を立香はよく知っていた。この世界を救う旅が始まってから幾度となく経験し、その度に命の危険を感じてきた。

 

 ——これは、恐怖だ。

 

 ギャラハッドに向けた憤怒でも、自分達に向ける粗暴な目でもない。昏いのだ。かつて見たあの黒い聖女と似た性質を持った目。それが余すことなく自分に向けられている。

 急に自分を地球に引きつける力が強くなったのかと錯覚するほど体が重くなり、膝を突きそうになる。常人である立香には耐えがたいほどの重圧は、モードレッドが視線の主が立香であると認識した瞬間に解かれ、知らずに止めてしまっていた息をゆっくりと吐いた。

 ようやく息が整い、再び窓の外に目線を向けると先程とは別人かと思うほどに表情を柔らかくしたモードレッドが手招きをしている。吊り上がった目元と相まって、まるで猫のようだとふと思うがさっきの瞳が頭から離れない。行くべきか行かざるべきか逡巡したが、結局逆らうことは出来ず軽く身支度を整えてからあてがわれた部屋を出る。

 立香がやけに重たい足を動かし階下に降りるのと同時に玄関の扉から手ぶらのモードレッドが入ってくる。さすがに霧が立ち込める家の外で話すつもりはないようだ。

 

「よっ」

 

「おはよう」

 

 堅苦しいのは嫌いだ、と言うモードレッド本人の言でタメ口で話す。自分もどちらかと言えば気軽に接せた方が気楽ではあるのでありがたいのだが、いかんせん彼女に対する恐怖心を未だ拭えずにいるため若干躊躇ってしまう。

 

「えっと……何の用? もしかして何か進展あった?」

 

「んや、そっちは特にねぇな。個人的に興味があるんだよ、お前に」

 

 勘弁して欲しい。

 率直な立香の感想であった。幾度も特異点を乗り越え、数々の非常識が常識になってきたと言えども、いきなりマシュ(というよりギャラハッドであるが)に斬りかかる人物からの呼び出しなんて良い話の予感が全くしない。下手をしたら「汝は関係者! 罪ありき!」なんて冤罪攻撃を喰らうかもしれない。

 さりとて、断れる理由も勇気もないので大人しく従うのだが……。

 

「さて……あいつもいねぇし、ちょうどいいな。……ぷっ、はは! 緊張し過ぎだろ! 別に何かしようってわけじゃないからもうちょい肩の力抜いたらどうだ?」

 

 ……どうやら本当に危害を加える気はないらしい。ゴロンと寝転び、薄く笑みを浮かべながら目を瞑っている姿はやはり猫のようだ。

 

「何か……私に聞きたいことでもあるんですか?」

 

 形式上訊ねてはみたものの、彼女が何について話したいのか察しが特別いいわけではない自分でも容易に想像できる。

 

「ま、言わずともわかると思うが、アイツについてだ」

 

「……ギャラハッドさんですか?」

 

 ギャラハッド、と口にした瞬間、モードレッドの中の何かが揺らめいた。ほんの些細な差ではある。しかし、その些細な差は再び立香の体を強張らせるには充分過ぎる理由だった。

 

「……あ、悪い」

 

 しまったという言葉を表情にしたらきっとこんな感じだろう。それほどバツが悪そうに頭をガシガシと掻く彼女が、出会い頭に斬りかかってきた狂戦士と同一人物であるとはとてもじゃないが思えない。悪い人ではない……のかもしれない。

 

「で、あれだ。聞きたいことってのはだな、あのヘンテコな状態のアイツのことなんだけど、あれ一体どういう状況だ? 性転換でもしたのか?」

 

 これほど「お前が言う!?」と言いたくなったのは、藤丸立香十数年の人生の中でも一番である。どこのラノベ? と言いたくなるほどに性転換しまくっている過去の偉人達——いや、実際は違う性別が歴史として伝わったのかもしれないが——はお腹いっぱいである。吐きそう。

 

 この後めちゃくちゃ説明した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 話を聞いてざっくりまとめると、どうやらマシュという少女に憑依をして力を貸している状態らしい。どうやら見ない間に性転換をしたわけではないそうだ。……だが、非常に困った事態だ。

 アイツには霊体(からだ)がない。マシュを器とすることで擬似的にサーヴァントとして現世に留まっている状態であり、つまりアイツを殺した場合、同時にマシュも死ぬことになる。

 

 ————————……モードレッド卿。いや、モードレッド、お前はガキだ。上手くいかず、イラつくことがあれば相手の気持ちも周りへの被害も考えることなく、感情的に動くただの子供だ————————

 

「チッ……」

 

 嫌なことを思い出した。いつか言われたそんな言葉。まるで自分の全てを知っていると言わんばかりの自信に溢れた物言いに、自分を上から諭す態度。思い返せばそういうところも気に食わなかった。

 しかし、そんなアイツに負けたのも事実だ。

 ならばオレは、そんな過去の自分と決別し、さらなる高みへと上り詰めてみせよう。感情に身を任せて関係ないやつ(マシュ )を巻き込むことをせず、自分の力のみで打ち倒してみせる。そうして初めて、モードレッドはヤツを超えた証明になるのだ。

 

 ————————全ては、理想の騎士(ギャラハッド)を倒すために。




実はFGO本編の下地があるより完全妄想で書けたブリテン時代の方が書きやすかった裏話
てか新規プレイヤー増やすためにも一部の1〜5章リメイクとかないですか? ……ないですか

幕間でやるなら?

  • 円卓の騎士時代の話
  • 特異点の話
  • カルデア(事件前)の話
  • それ以外に出てくるキャラとの絡み

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