僕のお父さんは円卓最強の騎士 作:歪みクリ殴りセイバー
突然だが、望んだ仕事に就くためにもっとも必要なこととはなんだろうか?
能力? 違う。コミュニケーション? 違う。自己表現力? 断じて違う!
答えはコネである!
能力もコミュニケーションも自己表現力も自分という存在を試験官に認識してもらうための要素の一つにすぎない。人より優れた部分は輝いて見える。だから採用されるにすぎない。もともと自分を知っている相手に改めて自己アピールなどするだろうか? いや、しない(反語)
つまり、僕が何を言いたいのかというと、『ちょっとくらいクソ父さんのコネを使ってもいいよネ!』ってことである。
うん、自分でもクズであるとは思わなくもない。だがちょっと待ってほしい。僕も散々アイツに迷惑をかけられてきたのだ。だがそのおかげで母さんと出会えた? 妖精と出会えたおかげでここまで強くなれた? ああ、全くその通りである。
だがしかし! それとランスロットが父親の義務を放棄して僕を捨てたのは別問題である! (正論) 実母? だって誰か知らないし。
ならばちょっとくらい融通を利かせてもらってもいいはずだ。正直もう一度ランスロットと会うのはストレスで髪が脱色しそう(もともと白髪)だが、騎士になれる可能性は少しでも上げておきたいのだ。
オラァン! 野生のランスロット出て来いヤァ!
ランスロットにとって、その少年と出会ったのは全くの偶然であった。ランスロットが王命によってたまたま来ていた深い森の中で、彼らは再会を果たした。
「そこな少年、迷子か? 良ければ近くの町まで送って行こう」
「……必要ないです。僕は、この森に用があって来たのですから……。その目的も今達せられましたが」
——強い。
数多の戦場を駆け抜けたランスロットの細胞一つ一つが、少年への警戒を促した。剣こそ腰に佩いていないものの、円卓の騎士に勝るとも劣らない武の臭い。隙のない立ち姿をしている彼に仮に今ランスロットが剣を叩き込んだとしても、大盾で容易に防がれる未来が見えた。
「……こんな森の中になんの目的が?」
「ああ、すみません。正確に言うとこの森に用はないんです。目的は——貴方ですよ、ランスロット卿」
先手必勝。
ランスロットの圧倒的な剣力を以って振るわれたアロンダイトを、ギャラハッドは苦もなく正面から受け止めてみせた。続く二の太刀をも軽々と受け流し、反撃にと振るわれた盾を籠手で受けとめるも予想以上の膂力に吹き飛ばされる。
円卓の騎士と一括りにされてはいても、その強さにはやはりブレがある。円卓最強と名高いランスロットの本気の一撃——それも不意打ちに近い物を軽々と防ぎ、あまつさえ反撃を食らわせられる者が一体どれだけいるだろうか?
——————————————————この男は危険だ。ここで私が仕留めねば……。
「最後に一つ聞いておく。貴様、どこの者だ?」
「さて、どこの者なんでしょうね?」
答えるつもりはないらしい。もはや会話は不毛だった。
ランスロットの意思に答えるように、アロンダイトも輝きを増す。過剰に剣に注がれた魔力は嵐のようにうねり、保存しきれない魔力が光となって暗鬱な森を照らす。
もちろんギャラハッドもただ見ているだけではない。持てる全ての魔力を盾に回し、防御術式を起動していく。巨大化していく魔力盾は留まることを知らない。彼の持つ盾を中心とした魔力は森をも覆い、真っ向から円卓最強の至高の一振りを受けとめる気でいた。
「——最果てに至れ。限界を超えよ。【
「我が術式よ、我を守り給え。————魔術障壁展開」
のちのブリテンの剣とブリテンの盾が本気でぶつかり合ったのはこれが初めてのことであった。爆発的な魔力の奔流は嵐となり、二人のいる森を更地に変える。土煙が晴れ、露わになった二人の姿はお互いの獲物とは対照的に満身創痍である。
「クッ……やっぱり円卓の騎士の一撃を受け止めるにはまだまだ力不足か……」
特に真っ向から必殺の一撃を受け止めたギャラハッドの損傷は酷いものである。五体満足でこそあったが、盾を握っていた右腕の骨は砕け散り、爆風に焼かれて火傷した跡があちらこちらにある。誰がどう見ても戦闘不能であり、動くこともままならなかった。
だがランスロットの代償も安くはない。身につけていた鎧は八割がた消滅し、剣を握り締めた手のひらはどちらもギャラハッドと同じように砕けていた。ろくに剣も握れない状態だ。
彼が生きている以上、ランスロットはトドメを刺さなくてはならない。だが彼が顕現した大盾は精緻で、誇り高く……何より美しかった。比べるのは不敬かもしれないが、それは彼の主であるアーサー王が振るう聖剣にも劣るものではない。
あそこまで強く、何かを【守る】意志を感じさせる魔術を扱う者が本当に悪人なのだろうかと思うのだ。剣と剣を交わし、相手を知るという風習が騎士にはあるが、今回は魔術でギャラハッドの一端に触れることとなった。
何よりお互いもう戦えない状態だ。いがみ合う気力すら先程の一撃で使い果たした。その証左に大盾の担い手はピクリともしなかった。
「……なぜ私を狙った? 君は何処の者だ?」
「……狙った? 狙ったとはどういう意味です?」
「いや、君がランスロット卿が目的と言ったのだろう?」
「確かに言いましたが、この辺りにランスロット卿がいると聞き、ぜひ僕を騎士に推薦してもらえないかと思い……」
血をダラダラと流すギャラハッドとは対照的に、ランスロットは冷や汗をダラダラと流し始めた。つまり、まとめると。
ランスロット、王命で森へ→ランスロットがいることを知ったギャラハッド、ランスロットを追い会合→ギャラハッド、ランスロットに騎士に推薦してもらいたいという話の最中ランスロットに斬りかかられる→そして半殺し
……よく考えなくてもまずい事態である。自分に会いに来た子供に斬りかかったどころか大人気なくも本気を出し、半殺しにボコボコにのしたのだ。騎士道以前に人としてどうなの? と言われるレベルだ。
「……うん、君は騎士になりたいんだね? 任せなさい。この私とここまで互角に渡り合ったんだ、これ以上ない推薦状を我が王に渡すことを約束しよう」
哀れ最強の騎士。子供相手にご機嫌を取り始める。
妖精の力でお互い動けるくらいまで回復させると、足早に森をあとにした。最強の騎士を敗走させた少年は、ポカンとした表情を浮かべていた。
僕の父はどうやら種蒔き馬なだけでなく、抜刀斎の気もあるらしいことが判明してしまった。
何? 用があるって言ったら斬りかかられるの? (※言ってません)
何処の者だとか聞かれて「(育った町の名前がわからない的な意味で)さて、どこの者なんでしょうね?」って言ったらナンカスゴイマジュツをブッパしてくるタァ戦闘狂のパパンが考えることは僕にはわかりません。全力防御してコノザマってあの人ホントに人間か?
体も心もズタボロよ! そのくせ盾と鎧には傷一つついてないのが腹立たしいわぁ。君らの仕事って僕を守ること違うん? あ、使いこなせてない僕が悪いですかそうですか。
というかランスロットの剣であの威力って、エクスカリバーどうなっちゃうん? 国滅ぼせちゃうんじゃないの? いや、まさかねぇ? 流石にないよね? (フラグ)
何はともあれ、ランスロットと戦えたのは意外であったが収穫もあった。僕は剣道ならぬ盾道を極めてみせる!
——————————————————いってぇぇぇぇぇ! 腕思いっきり負傷してるの忘れてたぁぁぁぁぁぁ!
ギャラハッド十五歳。最強の騎士にして実父であるランスロットに試合に負けて勝負に勝つ。
今回の原典引用
・ギャラハッドは成長するとランスロットを訪ね、騎士としての試練と叙任を受けて騎士になった
幕間でやるなら?
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円卓の騎士時代の話
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特異点の話
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カルデア(事件前)の話
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それ以外に出てくるキャラとの絡み