僕のお父さんは円卓最強の騎士   作:歪みクリ殴りセイバー

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おいおい、お気に入り登録が五倍近くになってるんですけど!? 誰かゴベェ界王拳使った? 体壊れますよ? ありがとうございます!
今回後半部分勘違いなしとかいう勘違いタグがある作品にあるまじき話。ブリテンはどうしてもシリアスになるから許してちょんまげ……
あと今回話が性急すぎてわけわからんという方は後書きにて本編で書くと長くなりすぎるためにカットした補足があるので是非。それでもわからなかったら感想で聞いてくだされ。あと今回時系列めちゃくちゃなのは自覚してるので突っ込まないでね♡

とりあえずギャラハッドはなんやかんやで円卓生活を楽しんでいて、アルトリアも尊敬していたとだけ頭に入れるだけでもわかりやすいかと

※10月6日 日刊ランキング3位達成!ありがとうございます!

※10月6日 日刊ランキング1位、だと……!?マジで感謝……!


別れ

 ———————————我こそは、誉れ高きアーサー王の忠臣にして、誇り高き円卓の騎士が一! 円卓の第十三席、堅守のギャラハッドである! 

 

 久々の朗報に国は大いに湧いた。新たな英雄の誕生。それはすなわち、この終わりなき戦争から解放される一筋の希望の光である。

 ギャラハッドが若き騎士であることも新たな風の予感を民の心に届け、彼は大きな期待を寄せられて円卓の騎士最後の一席に座ることとなる。

 かかる期待と比例して、当然ギャラハッドの仕事も激務となる。

 ブリテンの地を汚さんとする蛮族の掃討のため、彼はあらゆる戦場に駆り出された。なにせ文字通り国を守る力があるのだから、常に最前線に駆り出され、まるで兵の損失を抑える装置のように扱われていたことを、当時を振り返ったアルトリアは否定出来ない。

 それでも、民を守れるのならと彼は休むことなくブリテン全土を駆け回る。西へ東へ。魔力が枯渇しきった状態で報告を済ませ、王室を出た途端に気を失うこともしばしばあった。

 そんなことがあっても、情けないことにブリテンはギャラハッドに頼らざるを得ないのだ。いつからか、同じ戦場で軍を率いることになった時以外に、彼の姿を見かけることは無くなっていた。

 それでも彼がしたことが報われたのなら、多少の救いはあったのかもしれない。

 ブリテンはもう長年凶作続きで、とても国民全てを食わせられる食料なんてなかった。それでもなんとかやってこれたのは、皮肉なことに、戦争によって人が死ぬからであった。

 ギャラハッドはその均衡を崩してしまった。彼が率いる軍は死なない。彼が守るからだ。

 結果、ブリテンでは例年にない大規模な間引きを行い、それが民からも騎士からも大きな反感を買うことになる。悪意をぶつけられるのも、もう彼女は慣れていたが、今回はそれだけに留まらなかった。

 年々積もりに積もったその悪意は最早アルトリアだけに留まらず、この大間引きを引き起こしたキッカケとなったギャラハッドにも向くことになる。

 守るべき民を守り、救うべき命を救ったはずなのにその民達からは悪意をぶつけられるギャラハッドの心境はどうだったであろうか。それは王であるアーサーにも推し量ることは出来なかった。

 そんなことがあってもなお、彼は円卓の騎士であることを辞めることはなかった。

 騎士はもちろん、円卓の一員であったトリスタン卿ですら(わたし)を見限り離れていったというのに、当の本人であるギャラハッドは以前と変わらず戦場に出張る。つい先日も、長くブリテンを苦しめているピクト人を退けた。死者を出すことなく、だ。

 かつてマーリンが私に「ギャラハッドはランスロット以上の騎士になる」と言った通り、歴代最高の円卓の騎士になった。だが民も騎士も、最初に向けていた尊敬の眼差しは憎悪に変わり、そして恐怖となる。

 凡そ人が人に向ける視線ではないソレは、いかなる攻撃を以っても傷一つつかないギャラハッドに、唯一深い傷を負わせるものだっただろう。その証拠に、彼はキャメロットに帰ると自室に引き篭もり、かつて私に料理を振る舞った時の優しげな表情を見ることはなくなった。

 

 ———————————————何故だ? 何故こうなったのだ? 

 

 ギャラハッドを円卓の騎士に任命したからか? 彼を戦場に出したからか? ……違う。ギャラハッドが現れるより前に均衡は崩壊しかけていた。ギャラハッドはあくまでもキッカケにすぎない。

 

 ———————————————私だ。

 

 私が、ブリテンを救えなかったからだ。(いや)! 今からでも救わねばならない! 

 国が疲弊し、正に存亡の危機にあるブリテンが縋る先は一つしかなかった。

 

 そう。——————————————聖杯だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうも、ギャラハッドであります。

 僕は今、とても疲れています。でもそれ以上に疲れている上司(アーサー王)がいるから休めません。

 まさにブリテンは大暗黒時代だ。ただの騎士が辞職することは結構あったが、先日円卓の騎士であるトリスタン卿すらも辞めてしまった。フッ、やつは円卓の騎士(してんのう)の中でも最弱……! しかしあんなに頑張っている王に対して、あんな酷いこと言うとは思わなかった。ちょっとゲンメツ。

 来る日も来る日も戦場。たまに帰れても書類仕事が待ち受けていて、部屋に缶詰である。恐らく表情は死んでいる。悪口? そんなもん気にしてたら前世のネット社会で生きていけないわ! おかげでかつての妖精達の毒舌に耐えられた。サンキューパソコン。君が恋しいよ……。

 さて、僕は内政に干渉したことはないので詳しい国情はわからないが、王様の様子を見るに相当まずいのだろう。挙げ句、聖杯なんて胡散臭い物に手を出し始めたらしい。

 

 —————————————え、僕が探すの? 過労死させる気? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 聖杯の探索は思わしい結果を得られなかった。

 名だたる騎士でも見つけることは叶わず、円卓の騎士も投入した。にも関わらず、聖杯を手に入れることは叶わなかった。

 そうなると、次に誰を派遣するかは考えが一致していた。

 今やランスロットに代わり、円卓最強を名乗っても差し支えないであろうギャラハッド……国を守る英雄を、やはりこの国は最後まで使い潰すつもりのようだ。

 アーサー王は反対したが、すでにここまで国を追い込み、聖杯探索を失敗した王の発言は弱く、ギャラハッドの聖杯探索は確定する。

 ギャラハッドは嫌な顔もせずに頷いた。いや、すでに嫌と想う心があったのかすらわからない。

 

 —————————————-ごめんなさい、ごめんなさい。

 

 心中で何度も謝った。国を守れぬ弱き王を、貴方に頼らねばならぬ頼りなき王を、貴方をここまで傷つける愚かな王をどうか、どうか。

 

 —————————————-許さないで欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、ギャラハッドが居なくなったブリテンは大いに揺れた。

 キッカケは、王妃とランスロットの不義であった。当然これを見逃していては王としての示しがつかぬと、アーサー王は王妃であるギネヴィアを処刑しようとするも、ギネヴィアを助けに来たランスロットが円卓の騎士を打ち倒し、ギネヴィアと共に逃亡。

 アーサー王はランスロットの討伐に向かうも、その中途で円卓の騎士モードレッドの反逆が起こり、ブリテンは円卓の騎士達による内乱の戦火に晒された。

 まるで示し合わせていたが如く、全てがギャラハッドのいない時に起こされていた。当然だ、死なない軍団を率いる人物との戦争なぞやり合うほうが馬鹿らしい。

 度重なる失態で求心力を失ったアーサー王の味方をする者は少なかった。ランスロットに兄弟を殺され、怒りに震えるガウェインはランスロットに敗れた。もはや、ブリテンはこれまでだった。

 そんな内乱が一年以上続く。外敵とではない、かつて味方だった者との戦争なんて外国からしたら侵略のチャンス以外の何物でもない。……だが、だからこそ遠国にいたギャラハッドの耳にも届いたのだ。

 決戦の地、カムランの丘。

 激しい戦闘で次々倒れていく兵達を消耗し、両軍は間もなく決着を迎える。アーサー軍千に対し、モードレッド軍は実に一万以上。誰がどう見ても、アーサー王はここまでだった。

 

「——防御術式展開」

 

 誰もが、モードレッドですら勝ちを確信したその時、彼は現れた。

 

「ギャラハッド……ッ!」

 

 モードレッドにとっては最悪のタイミングであった。すぐそこに、アーサー王の首があるというのに、ここに来てブリテン最強の男が現れるとは。

 焦るモードレッドに対し、アーサー王の心は穏やかだった。それはギャラハッドが助けに来た……からではない。そもそも彼が忠を尽くす王などもういない。いるとするならば、彼が恨む権利のある愚王だけだ。

 

「……モードレッド卿。いや、モードレッド、お前はガキだ。上手くいかず、イラつくことがあれば相手の気持ちも周りへの被害も考えることなく、感情的に動くただの子供だ」

 

「うるっ……せぇっ!」

 

 怒りに任せた一振りを、避けることも逸らすこともなく真正面から受け止める。全力で剣を振り切ろうとするモードレッドに対し、ギャラハッドの目は冷ややかだ。それを見たアルトリアの背筋が凍る。

 

「テメェに何がわかるってんだ! 望んだもの全てを手に入れてきたテメェなんかに!」

 

「わかるさ。僕はお前の生い立ちを知っている。君が何を思って円卓の騎士になったかなんて、皆お見通しだったさ」

 

「なら俺のジャマをするんじゃねぇ! そこを退け、ギャラハッド!」

 

 兜をしていてクラレントを解放出来ないはずのモードレッドから赤雷が迸る。辺り構わず拡散していくその殺戮兵器を魔力の盾で全て防いでからギャラハッドは重々しく口を開いた。

 

「————僕は、ランスロットの子だ。君と同じように認知されなかった」

 

 ギャラハッドが初めて明かした生い立ちに、モードレッドもアルトリアも周りの騎士達も例外なく目を見開いた。

 

「そして僕はとある修道院で、シスターを母親代わりにして育った。モードレッド、君とのたった一つの違いはきっと、幼い頃に愛情を注がれたかどうか。それだけだ」

 

 それまで淡々と語っていたギャラハッドが、次の瞬間には怒りに満ちていた。

 

「……だが、僕を愛してくれた母さんは死んだ。お前らが起こした内乱のせいでな」

 

 ギャラハッドの、本気の怒り。それを受けた騎士達はみな、金縛りにあったかのように身動きが取れなくなる。

 

「……モードレッド、君は子供だ。君の親を恨む気持ちもわかる。親に認められたいという気持ちも当たり前のことだ。だが、なんでこんな手段を取ってしまったんだ……! 王に敵として認めてもらうのが君の望みだったのか?」

 

「……何だ? ヤケに王の肩を持つじゃねぇか。惚れでもしたか?」

 

「……なぜそこで色恋沙汰の話になる?」

 

 ……本気で挑発を理解していないようだった。仕掛けた側のモードレッドも眉をヒクつかせている。

 

「……まぁいい。メンドクセェ問答はこれまでだ。お前が邪魔するなら、お前ごとブッた斬るだけだ!」

 

 反逆の騎士モードレッドと円卓の騎士ギャラハッドの戦いが始まる。モードレッドは王を斬らんとする剣。ギャラハッドは王を凶刃から守る最後の砦だった。

 やはり、というか戦局はギャラハッドが優勢である。モードレッドの剣を完璧に捌き切り、反撃に当てられる盾での殴打も決して安くない攻撃だ。殴られた部位から鎧が剥がれ、血が滴る。

 

「……モードレッド。君の王への怒り、怨念、恨み、全てを王の盾である僕が受け止めてみせよう。逃げも隠れもしない。———来い」

 

「……上等だ、後悔すんなよ盾野郎!」

 

 モードレッドの兜が弾け飛ぶ。それが意味するのは燦然と輝く王剣(クラレント)の解放。すなわち、モードレッドの本気だ。

 

「此れこそは、我が父を滅ぼす邪剣! ———————『我が麗しき父への叛逆(クラレント・ブラッドアーサー)』! 

 

 凄まじい赤雷の奔流が龍の如く、ギャラハッドをその後ろにいる王もろとも飲み込まんとうねり、迫る。元々強力だったモードレッドのクラレントが王への妄執によって邪剣と化し、更なる威力を含んだ一撃へと昇華したモノ。間違い無く、モードレッドのこれまでで最強の一撃だった。

 それを見てもギャラハッドは慌てることなく、いつものように盾を構える。

 

「……モードレッドよ、我が父よ。これが君達が捨てたものだ。そして我が王よ、これが貴女が今まで守って来たものだ」

 

 邪剣にも劣らぬ魔力がギャラハッドに集まっていく。だが、アルトリアは気づいていた。ギャラハッドは今までとは違う質の魔力を纏い、盾を振り下ろし……高らかにその名を呼んだ。

 

「魔力防壁、展開……此れは全ての騎士、全ての円卓が集いし、我らが故郷——顕現せよ、————-『今は遠き幻想の城(ロード・キャメロット)』! 

 

 王都にあるはずの白亜の城が、ギャラハッドによって戦場に顕現される。文字通り、ギャラハッドはモードレッドの全てを受け止めるつもりだ。続く第二撃もキャメロットに傷一つつけることすら叶わない。三撃、四撃……幾度となく落雷に等しい一撃が降り注ぐ。

 やがて、モードレッドが膝をついた。あれだけの威力の攻撃を考えもなしに連発したら、さしものモードレッドも魔力切れ(うちどめ)だ。

 言葉の通り、モードレッドの全てを受け止めたギャラハッドは傷一つない白亜の城の顕現を解き、しっかりと二本の足で立つ。どちらが勝者でどちらが敗者かなど、一目瞭然であった。

 

「……まだ暴れ足りないなら時間が許す限り相手をしよう」

 

「……チッ、全力の攻撃を防がれちまったんだから勝ち目なんてねーだろ。負けだ負け。殺すなり犯すなり好きにしやがれ」

 

「……じゃあ遠慮なく」

 

 言うや否や、ギャラハッドの拳がモードレッドの頰に突き刺さる。モードレッドは配下の騎士達を巻き込みながら吹き飛んで行き、砂塵と人垣の彼方へと消える。

 

「……無抵抗の人を甚振るのは、きっと母さんが望まない。だから、さっきの拳で勘弁してあげるよ」

 

 決着は、着いた。

 数の上ではモードレッド軍の圧倒。だがギャラハッドにとって数など問題ではないことは、かつて味方だったからこそ誰もが知っていた。誰も身動きせず、カムランの丘は沈黙に包まれる。それを破ったのもやはりギャラハッドだった。

 敵には目もくれず、一直線にアルトリアの方へと歩いて行く。報復か、復讐か。これまでブリテンが彼にした仕打ちを考えれば、アルトリアがギャラハッドによって裁かれるのも当然のことだとアルトリア本人ですら思った。

 ——しかし、彼はアルトリアに剣を……否、盾を向けることはなかった。それどころか片膝をつき、拝礼の姿勢すらとってみせた。

 

「……王よ、帰還が遅くなりました。また貴女の盾であると言われ、それを自負していたはずなのにブリテンを守れなかった僕を、どうかお許し下さい」

 

 ギャラハッドは王を恨んでなどいなかった。最後まで……いや、ブリテンが滅んでもなお忠臣であり……紛れも無い、円卓の騎士であった。

 騎士達から……或いはアルトリアから流れ出た涙は、どの感情に起因するものであろうか。それは本人達ですらわからないが、その涙が止まることはなかった。

 

「……何故です? 私はもう、ブリテンの王ではありません。貴方が仕えるべき王は……アーサー・ペンドラゴンは、もういません」

 

「恐れながら王よ。……いえ、アルトリア・ペンドラゴン様よ。恐れながら、僕はアーサー王に仕えたのではありません。アーサー王が貴女だったからこそ仕えたのです。モードレッドやランスロット……いや、アグラウェイン卿やケイ卿、ガウェイン卿がアーサー王であっても、僕は恐らく仕えなかった」

 

 本当に苦しい時、辛い時。そこで他人より頑張れる人がどれだけいようか? 自分を犠牲にし、周りを守ろうと奔走する人が何人いるだろうか? 

 確かにギャラハッドは未だ若輩だ。だが、そんな人はごくごく稀にしかいないことを彼は知っている。何故か? それは彼が、ギャラハッドとは別の人生も歩んだことのある【転生者】だからだ。原典とか、歴史だとか、そんなものは関係なくギャラハッドはアルトリア・ペンドラゴンに仕えていたかった……それだけの話なのだ。

 

「……ですが、私は貴方を酷い目に遭わせ、 ブリテンすら守ることが出来なかった愚王だ」

 

「僕も、貴女がそこまで憔悴しきってしまうほど貴女を守れなかったダメな騎士です」

 

「……貴方は立派に私の盾として役目を果たしてくれました。国を守り、民を守り、そこに生きる全ての者の命を救った」

 

「いえ、確かに僕は民を守り、国を守ったかもしれません。……ですが、まず何よりも守るべき持ち主(あるじ)を守れていなかった」

 

「……私は王です。民を守り、国を守るのが使命だ」

 

「……これは陳腐な言葉になりますが、民を守り、国を守るのが王……そこに異論はありません。ですが、なら民を守り、国を守る王を守るのは一体誰ですか?」

 

 国や民を守る存在はいれど、王を守る存在はいなかった。アーサー王から命じられた意図とは違ったが、ギャラハッドは王を守る盾であらんとした。

 

「……初めはなんとなく騎士になろうって思ってました。いきなり円卓の騎士になり、なんとか仕事をこなし、大変でしたが……楽しかった。僕は、いつからかそんな気持ちを立場関係なく、王とも分かち合えるような、そんな時代になるといいなと思ってました」

 

 そんな時代、少なくとも彼らが生きる時に来ることがないことは知っていた。理想を追い、そして破れた……実に英雄の皮を被っても一般人らしいありふれた結末だ。

 

「……ですが、どうやら時間切れです」

 

「……え?」

 

 原典において、ギャラハッドの最期とはどのようなものであったか? 戦死でも餓死でもなく、天使による昇天だ。聖杯を見つけたギャラハッドは異国の地で、旅の途中で見つけた数々の宝具級の品々と、聖杯を抱えて昇天したと言われている。

 ならば、人類史にギャラハッドがアーサー王を救いに来たという事実はあってはならない。ギャラハッドが昇天を選ばず、カムランの丘に現れる。それは《もしも》の話であり、《事実》ではない。世界は、その《もしも》を許さなかった。

 

「僕は、最後の最後で本筋(ストーリー)に沿えなかった。本来僕は貴女と再び出会うことなく、昇天していたのです。それを破り、ここに来てしまった僕を、世界はきっと許さない」

 

 ギャラハッドとして長年を過ごすうちに、彼は何となく「こうしなければいけない」という考えがどこからか湧くことがしばしばあった。きっとそれが原典の大筋に沿うことであり、事実その通りであった。

 だが、そんなことはアルトリアにはわからない。

 

「何を、言っているのですか……?」

 

「アルトリア様、貴女の盾という任、暫しのお暇をいただきます」

 

「貴方までいなくなったら、私はどうすればいいのですかっ……!」

 

 そんなことは、ギャラハッドにもわからない。彼が知っているアーサー・ペンドラゴンは聖剣を湖の乙女に返し、アヴァロンにてその旅路を終えることまで。その先、アーサー王はどうしたのか、誰も知らない。

 

「……そうですね、アルトリア様は謂わばずっと仕事をして来たわけですから、今度は女性としての幸せを掴むのはいかがですか? 自分の心が選んだ人物と結婚し、子を成し、育てる……そんな生活もアリかと」

 

「そうですか……?」

 

 男女の関係は確かに知らない。王でなくなった今、そんな風に生きるのもいいのだろうか。そんなことを考えていたばかりに、ギャラハッドがアルトリアを【女性】と言ったことを聞き逃す。

 

「えぇ。どうかお幸せに。命は繰り返し、生まれ変わる。僕は生まれ変わったその人生でも、アルトリア様のお幸せを願っています」

 

「ご達者に。貰い手がいなければ押し売りに行きますので」

 

「はは、それは光栄なことです。————それでは」

 

 最後は笑顔で、ギャラハッドは旅立って行った。慣れない冗談だったが、誰かを笑わせることが出来るなら冗談も悪くない……少なくとも、アルトリアはそう思った。

 

 ——————————————またどこかで会いましょう。敬愛すべき我が盾よ。

 

 たった一つ残された、彼がいつも使っていた雪花の盾を握り締め、アルトリアもまた笑った。王としてでも、主としてでもなく、友としてギャラハッドを見送りたかった。

 アルトリアを暖かい魔力が包み込む。それは数えきれぬほど我が身を守ったギャラハッドのものであり、最後の残滓だった。やがて魔力は薄れ、なくなり、消えていく。それでも彼から貰ったものは消えることはなかった。

 

 ——————————————大丈夫です。故郷(キャメロット)は今でも、私の胸の中にあります。

 

 風がふわりと彼女の肌を撫でた。それを契機にカムランの丘の戦い……或いはブリテンの内乱は終わりを告げる。かつての王として……また、アルトリア・ペンドラゴンとして、彼女は新たな一歩を踏み出した。

 

 

 

 ギャラハッド二十五歳。自らが生きた証である盾だけを残し、昇天する。




性急すぎた話を補足する解説(本編でやれ)
・前書き通りギャラハッド君は何やかんや円卓生活を楽しんでいて、辛くても頑張ってるアルトリアに心を打たれて、人として尊敬していた。キャメロット生活に対する思い入れも結構あった

・モードレッドに対しての子供発言は、確かに親に認知されない悔しさや悲しさ、怒りはわかるが、中身が成熟しきった大人なギャラハッドからしてみれば、それで周りを巻き込み感情的になるのは子供の癇癪と大差ないと思ったから。

・アルトリアを尊敬した理由。王に盲目的だったこの時代の人々とは違い、ギャラハッドにとってはアーサー王など課長や部長と変わらない役職名に過ぎない。どんな役職かではなく、誰がその役職かを重視した違い。その上で、誰もが苦しみ、辛い時に己の身を削ってまで仕事をするアルトリアをギャラハッドは人として大いに尊敬した

・宝具の詠唱の変更については、FGOのはあくまでマシュ視点の詠唱で、そのまま引用すると反乱が起こっているまさにこの時に全ての疵や全ての怨恨を癒すとか言えなくない? と変更を決意。其→此れにして、より実感のこもった距離感の近い感じにし、全ての騎士、全ての円卓が集うについては言葉通りの意味。「今は遥か理想の城」から「今は遠き幻想の城」としたのは理想は割りかし現実的な意味を持つらしく、幻想は現実には存在しないものを思うことらしいので、全体を通して、もう現実には存在しないキャメロットでの楽しき生活をギャラハッドは未だに夢見ているというモチーフのもと詠唱を改変しました。気に食わない方がいたらすみません(変えると言ってない)

・なんで後半に勘違い要素がないのかというと、さすがに育て親を殺されて勘違い展開してたらただのサイコパスになると思い、断念。緩い感じを期待した方はすまない(バルムンク)。本編に書いてあるのがそのままギャラハッドの本心だと思ってください。その結果、ギャラハッド(偽)がギャラハッド(真)になってて、作者も困惑中。どうしてこうなった

以下毎度の原典解説
・アーサー王の城で聖杯の幻視が見えるようになり、アーサー王は円卓の騎士に聖杯探索を命じるも、誰も持ち帰ることはできなかったため、ギャラハッドに白羽の矢が立つ。見事ギャラハッドは聖杯を手に入れる。その途中で白い盾、ダビデ王の船と剣、ロンギヌスの槍などを見つける

・聖杯を手に入れたギャラハッドは本当に色々あり、一年近く国を治めることとなり、やがてヨセフという人物に「この世を去りたい」と申し出て、旅の途中で見つけた物と聖杯を抱えて天使に昇天された。そもそもギャラハッド自体がアーサー王の凄さを知らしめるために付け足された人物という説が多く、完璧な人物として描かれていた。ギャラハッドはそんな己の人生をどこかで達観していた、というのが昇天の理由として挙げられる

・モードレッドに明らかにされたランスロットとギネヴィアの不義により、ギネヴィアは処刑にされるところをランスロットが救出し、フランスへ逃亡。その際ガウェインの弟達であるガヘリス、ガレス、アグラウェインを殺害。それに激怒したガウェインはランスロットと一騎打ちするも敗北し、重傷を負う。アーサー王はランスロット討伐しにフランスへと向かうも、その際にモードレッドがブリテンで叛逆を起こし、先遣隊としてブリテンへ戻ったガウェインは重症が響き殺害され、アーサー王とモードレッドはカムランの丘で相見え、相討ちで深手を負う。そしてアーサー王はベディヴィエールに聖剣の返還を任せ、傷を癒すためにアヴァロンへ向かったとされている。

・ちなみにアーサー王の死後、ギネヴィアは自分を迎えに来たランスロットを拒絶し、出家する。友と円卓の騎士に多くの犠牲を出したことに責任を感じたランスロットもまた出家。二人は二度と生きて会うことはなかった。やがてギネヴィアが亡くなったことを知ったランスロットは、自ら食を絶って餓死したという。

※この原典解説はかなり簡略化し、ガバガバなためアーサー王ガチ勢の方が見たら怒るかもしれませんが参考にした部分を書き出してるだけなのでお許しください

次回、後日譚

幕間でやるなら?

  • 円卓の騎士時代の話
  • 特異点の話
  • カルデア(事件前)の話
  • それ以外に出てくるキャラとの絡み
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