お爺さんが女子高生   作:桂ヒナギク

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1.お爺さんが女子高生

 ワシの名は深山(みやま) (むつみ)。現在、75歳。残り数年かもしれない人生を恙無(つつがな)く生きている。

 いや、生きていたと言った方がよかろうか。

 ワシは今、鏡を見ている。

 鏡には端正な顔立ちをした黒長髪の女の子が映っていた。

「こ……これは?」

 何が何だか訳がわからなかった。

 どうしてワシが若い女子(おなご)の姿になっているのだろうか。

 辺りを見渡せば、部屋の様子も全く違う。

睦美(むつみ)ー、朝ごはんよ! 降りてらっしゃい!」

 部屋の外から、女性の声が。

 睦美というのはこの女子のことか。

 ワシはとりあえず、トイレを済ま……せようと思ったが、これは恐らく他人のもの。勝手に見るわけにもいかない。しかし、脱がないとできないわけで、仕方なくトイレに入り、余計なことはせず用を足して食卓に向かった。

「睦美、日曜日だからっていつまでも寝巻き着てないの」

 この女性は母親か、疑問符。

「おはよう、お母さん」

「睦美、ご飯食べたら着替えるのよ」

「はーい」

 ワシは朝食を食べると、部屋に戻って着替えようと思ったが……。

 女子の着替え方がわからない。

「えっと……」

 とりあえず、クローゼットを開ける。

 クローゼットの中には女性らしい可愛い服が詰まっていた。

 ワシは服を取り出し、試行錯誤(しこうさくご)しながら、なんとか着替えを済ませた。

「どうするか……」

 特にやることがあるわけでもない。

「あ!」

 ワシは部屋にあるパソコンに向かった。

 インターネットで入れ替わりについて検索してみる。

 漫画やアニメなどに関する情報は出てくるものの、実際に入れ替わったという情報は皆無だった。

 それでは、解離性同一性障害。

 いや、しかし、それだとワシの75年間の記憶に説明がつかない。

「そうだ!」

 ワシは女子の財布を探し、キャッシュカードを取り出した。

 何も手を加えてなければキャッシュカードの表示情報だけでネットバンクにログインできるはず。

 ワシはネットバンキングを開き、女子の口座情報にアクセスした。

 金は10万ほど入っていた。

「よし!」

 ワシは口座情報からキャッシュカードのパスワードを確認し、銀行へ行ってお金を下ろし、ワシの本当の家に向かった。

 ……。

 …………。

 ………………。

 ワシの家に前に、警察官たちが集まっている。

「すみません、ここで何か?」

「ああ、詳しいことは言えないんだけど、この家の住人が殺されてね。君は」

 ワシは妻に先立たれ、一人暮らしだ。ということは。

「殺されたのって、深山 睦という方ですか?」

「……!? ちょっと待って」

 制服警官が中の刑事に報告に行く。

 報告を受けた刑事が制服警官とともにやってくる。

「君かい? 被害者の名を知ってるのは」

「ええ。知り合いなもんで。でも、殺したのは私じゃないですよ」

「誰もそんなことは。とにかく、身元を確認したいからついてきて」

 ワシは刑事に連れられ、現場に足を踏み入れる。

 寝室のベッドに、老人男性が血まみれで横たわっている。

 その時、ワシの身に何が起こったのか、脳裏にフラッシュバックが流れた。

 ワシは、この女子に殺されたのじゃった。

 鬼のような形相(ぎょうそう)で、執拗(しつよう)に切りつけられた。

 想像を絶するような痛みだった。

 しかし、謎だ。ワシはなぜ、ワシを殺した犯人になっているのだろうか?

「深山さんで間違いないですか?」

「え? ああ、はい」

 それにしても、血なまぐさい。

 ワシは刑事に連れられ、現場を出るとそのまま帰路に就いた。

 

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