ワシの名は
いや、生きていたと言った方がよかろうか。
ワシは今、鏡を見ている。
鏡には端正な顔立ちをした黒長髪の女の子が映っていた。
「こ……これは?」
何が何だか訳がわからなかった。
どうしてワシが若い
辺りを見渡せば、部屋の様子も全く違う。
「
部屋の外から、女性の声が。
睦美というのはこの女子のことか。
ワシはとりあえず、トイレを済ま……せようと思ったが、これは恐らく他人のもの。勝手に見るわけにもいかない。しかし、脱がないとできないわけで、仕方なくトイレに入り、余計なことはせず用を足して食卓に向かった。
「睦美、日曜日だからっていつまでも寝巻き着てないの」
この女性は母親か、疑問符。
「おはよう、お母さん」
「睦美、ご飯食べたら着替えるのよ」
「はーい」
ワシは朝食を食べると、部屋に戻って着替えようと思ったが……。
女子の着替え方がわからない。
「えっと……」
とりあえず、クローゼットを開ける。
クローゼットの中には女性らしい可愛い服が詰まっていた。
ワシは服を取り出し、
「どうするか……」
特にやることがあるわけでもない。
「あ!」
ワシは部屋にあるパソコンに向かった。
インターネットで入れ替わりについて検索してみる。
漫画やアニメなどに関する情報は出てくるものの、実際に入れ替わったという情報は皆無だった。
それでは、解離性同一性障害。
いや、しかし、それだとワシの75年間の記憶に説明がつかない。
「そうだ!」
ワシは女子の財布を探し、キャッシュカードを取り出した。
何も手を加えてなければキャッシュカードの表示情報だけでネットバンクにログインできるはず。
ワシはネットバンキングを開き、女子の口座情報にアクセスした。
金は10万ほど入っていた。
「よし!」
ワシは口座情報からキャッシュカードのパスワードを確認し、銀行へ行ってお金を下ろし、ワシの本当の家に向かった。
……。
…………。
………………。
ワシの家に前に、警察官たちが集まっている。
「すみません、ここで何か?」
「ああ、詳しいことは言えないんだけど、この家の住人が殺されてね。君は」
ワシは妻に先立たれ、一人暮らしだ。ということは。
「殺されたのって、深山 睦という方ですか?」
「……!? ちょっと待って」
制服警官が中の刑事に報告に行く。
報告を受けた刑事が制服警官とともにやってくる。
「君かい? 被害者の名を知ってるのは」
「ええ。知り合いなもんで。でも、殺したのは私じゃないですよ」
「誰もそんなことは。とにかく、身元を確認したいからついてきて」
ワシは刑事に連れられ、現場に足を踏み入れる。
寝室のベッドに、老人男性が血まみれで横たわっている。
その時、ワシの身に何が起こったのか、脳裏にフラッシュバックが流れた。
ワシは、この女子に殺されたのじゃった。
鬼のような
想像を絶するような痛みだった。
しかし、謎だ。ワシはなぜ、ワシを殺した犯人になっているのだろうか?
「深山さんで間違いないですか?」
「え? ああ、はい」
それにしても、血なまぐさい。
ワシは刑事に連れられ、現場を出るとそのまま帰路に就いた。