緑セミのヒーローアカデミア   作:ソウクイ

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第10話

 

 

雄英体育祭のメインイベントと言っていい最期の競技。その第一試合、その試合には観客、いやプロヒーローさえこの一戦に注目を集めていた。

 

第一の試合と言う理由もある。ヒーロー科ばかりが残る本選でサポート科同士の対決というレアな事も注目の理由にある。しかしこれは注目の理由としては弱い。殆どの注目の理由は彼だ。

 

神像セル

 

ジャージのズボンだけ履いてるが見える部分は、全体的に緑色と黒の斑点の異形系。異形系に良くある嫌悪されたり恐ろしいと思わせる姿ではなく、むしろ格好いいとも言える容姿だ。

 

外見からは個性が何なのか判らない。

 

力は今判明してるだけでもプロの度肝を抜くほどの超パワーの蹴り、巨大な金属が蒸発する光線、瞬間移動を思わせる飛行能力。そして単体でもプロヒーローが相手にしたくないと思わせる超スペックの複数の分体、子供の作成。どれか1つでもトップクラスのプロヒーローに成れるほどの能力が複数あると素人目線にも思わせた。

 

これでサポート化

 

今現在既にネット観客席問わず。なんでヒーロー科でないと言う意見が出ている。あれだけの能力でヒーローでない事は大損失だと。

 

これには雄英教師陣としても同感だったのだが、肝心のセル本人にヒーローになるつもりがない。しかし放置するには勿体無く危険すぎる。今後どうするか雄英の教師は頭を悩ませた。

 

まぁ雄英で一番苦慮してるのは担任のパワーローダーだろう。この競技中のセルの度重なるやらかしに体(胃)を痛め。ついには(胃を)負傷しリカバリーガールの所に急患として運び込まれていた。 

 

『誰がこんなマッチメイク決めやがった!第一試合からピックアップカードの対決!奇しくも同じサポート科!奇しくも騎馬戦でチームメイトだった二人の試合だ!いったいどんな試合が起きるか予想がつかない……と、言いたいところだが正直、発目ガールが勝つの無理だよな』

 

プレゼントマイクのフリにイレイザーは答えた。

 

『たしかに……これまで神像の見せた戦力を考えればマトモに戦えば勝ち目はないだろう。しかし神像はサポート科だ。意外な結果になる可能性もある』

 

『おお!意外な結果って事はまさかまさか!発目ガールに勝ち目があるのか!その言い方だと勝ち目のキモはサポート科らしいがどういうことだイレイザー!』

 

『……先ずサポート科はアイテムで様々な手段が使える。有効な手段を取るには相手を知らなければいけない。神像の事を知り得る同じサポート科で、様々な手段を取れるサポート科が発目だ』

 

『対策を用意していても、あり得ないなんて事はないな!』

 

『その他にも真っ当な精神があるなら男が知り合いの女を傷つける事には拒否感を持つのが自然。ヒーロー科なら女子相手でも戦う覚悟は当然有るだろうが、サポート科は先ずそんな覚悟はないだろう。女子相手だからといって遠慮をして足元を掬われるなんて事もありえる』 

 

『ガールに弱いのは男の本能だありえるな!どうやら発目ガールにも勝ち目も有りそうだ。と、喋ってる間にご両人が配置についたようだ!』

 

歓声を浴びながらサポート科の二人は舞台に上がった。

 

片方は重武装。片方は対照的に手ぶらだ。

そして二人の表情は有利な点を説明されても誰もが敗けると予想される発目は笑みが浮かべ、勝つと予想されるセルは無表情だ。

 

「先生、私は棄権する」

 

「はぁ棄権?」

 

『ま、まさかまさかの2度目の棄権!!神像ボーイはどれだけやる気が無いんだ!!女子相手は無理なのか!ミッドナイトどうする!』

 

「………………却下、試合をやりなさい」

 

『ってことだ!試合は行われるぞ!』

 

セルは溜め息を吐き発目と改めて向き合った。

 

「セルさん……貴方とは入学してからの付き合いになりますね。わたしセルさんの事を大切な友人と思っています」

 

発目明は何時もと違い真面目な声で対戦相手のセルに話し掛けていた。

 

「……」

 

セルは無言でいた。

 

「なので一回戦から戦う事になりとても残念です」

 

「……」 

 

「もちろん私では貴方に勝てないです」

 

「……」

 

「セルさんのスペックなら私は瞬殺されますね」

 

「……」

 

「それはわかっていますので、私は自分から場外におります。ただ降りる前に友達としてお願い事があります」

 

「……」

 

「棄権する前に私のベイビーのアピールをやらせてください!あ、アピールが終わりましたら私はサッサと舞台を降りますので!」

 

そう発目明はドストレートに願望を告げた。

本当ならセルに装備を押し付けてアピールをしたかったが、試合前に見つからなかったので妥協してこの場で言った。

 

『おいこら!!』

 

第三競技はどの選手にとっても絶好のアピールタイムでもある。多かれ少なかれアピールしようと思っている選手達ばかりだが、完全にアピール目的しかない選手は発目明しかいないだろう。

この勝負、サポート科同士で打ち合わせをした茶番試合。既に勝敗が決している。"両方とも"相手を勝者にしようとしていた。

 

『はぁもう……それでは試合はじめ!』    

 

「セルさんではいきますよ」

 

「ああ」

 

セルはニヤリと笑った。

 

「ベイビーのアピールは次の試合でやってくれ」

 

その台詞とともにセルは全力で"場外に向かって"飛んでいた。

 

「スマナイが君より私が先に降りさせてもらうよ。これで発目嬢の思惑を外しリタイアもできるまさに一石二鳥だな」

 

 

第一競技での飛行速度を遥かに越える勢いでセルの体は場外に飛ぶ。後は少し降りるだけで敗けが決まる。足が地面につく、その瞬間…セルの目の前に何かが立ちふさがった。 

 

「なに!?」

 

「きぃい!」

 

セルは蹴られ元の場所に跳ね飛ばされる。そして上から再度蹴られ地面に墜落。

 

ドゴン!!

 

舞台に穴があいた。

 

この間一秒もなくプロヒーローさえ殆んど視認はできていない。観衆からすれば突然セルが消えて舞台に爆発が起きたという認識だ。

 

『な、なんだ何がおきた!?まさかの予想外の展開!おいおいどういうことだ。一瞬で神像が攻撃された。しかも神像を攻撃したのアイツらなのか!?』

 

「おー神像さんやっぱり予想通り場外に逃げようとしましたか……待機してて貰ってよかったです」

 

神像は穴から這い出て自分を蹴った相手を睨んだ。

 

「どういうつもりだJr.達」

 

其処には気まずそうな顔をしたJr.達が浮いていた。しかもその体には発目が開発したと思わしき装備品。

 

「おや!お子様たちが参戦したようですね。私のベイビーを装備してくれてるなんて大変嬉しいです!」

 

「…!?」

 

明らかにJr.達が発目と結託していた。

どうやらセルのリタイヤが読まれていたらしい。

 

『これはどういうことだ!あのチビっこ軍団がどう見ても親の敵側になっている!』

 

『………騎馬戦の事を考えると、菓子で買収されたか?』

 

『やらかしてるなサポート科!てか!これはルール的にありなのか?』

 

セルは無しだろうとミッドナイトに言っている。

 

『……ミッドナイトがセーフの合図を出してる』

 

『おいおいセーフなのかよ!まぁ!その方が面白そうだし俺的にもオッケイだけどな!』

 

『……神像が不吉な事を言ったんだが』

 

『超スペックのお子様達が敵になるとか超面白い展開!これはわからない!これでーー」

 

プレゼントマイクは本当に何気ない締め括りの言葉を発する。

 

『"勝敗がわからなくなった"!』

 

その台詞は相手が弱者の発目だけの時なら問題はなかった。しかし実力のあるJr.達が相手として居たことで災いの言葉と化した。強敵を相手に実力による敗けの可能性を他者から言われる。それは普段は人の意識の中に眠らせたセル(怪物)の心の一部に残る戦闘民族の本能を刺激してしまった。

 

「…勝敗がわからなくなったか」

 

確認するように同じ言葉を出すと自分でも不思議に思うほど沸き上がる怒り闘争心。セルの体からバチっという音と雷の様な光が走った。

 

「つまり"この程度"の状況で……私が負けるかもしれないと?」

 

その場の全員が何か不味い事が起きようとしてると脳でなく遺伝子に感じる。本人すら自分の心の沸き立ちに不味いと感じていた。

 

「ははは」

 

バチ、バチという音が雷の光を出しながら鳴っている。さらに地面が揺れていた。  

 

「Jr.達……流石に八百万嬢に続いて発目嬢に懐柔されるとは酷いな……しかも私を二回も蹴った。これは親として少しは躾をすべきだとも、思うが、今すぐ謝るなら許そうとも思う……どうする?」

 

「「「……」」」

 

Jr.たちは謝る事を拒絶した。Jr.達は自分達を用済みとなると再度吸収しようとしたセルに対して怒っていた。だから抗議として発目につき敵に回った。Jr.たちはこの試合でセルに勝ち再吸収を撤回させるつもりでいた。自分の安全の為の抗議に妥協が出来るわけがない。

 

「……そうか…」

 

セルとは宇宙の帝王や戦闘民族の遺伝子を刻まれた生き物、その遺伝子には勝利や戦闘を望む本能がある。しかし相手が弱すぎ戦闘にすら成らない状態だと本能は燻り、これまでは眠っている状態だった。

 

しかしそれが明確な格下とはいえ強敵といえるJr.達が敵対したらどうなる。セルの本能はむしろ悦んだ。

 

次の瞬間、空気が物理的に重くなる。地面の揺れは既に地震クラス、大気までもが震えている。空の雲が帯電し雷光が轟いている。とても大きな力の発現に観客もプロヒーロー達も息を殺す。審判として間近にいるミッドナイトなどは腰を抜かしていた。

 

「そうか」

 

セルの体から雷が放たれ地面が焼かれる。

 

「それは仕方ないな……ハァァァアアア!!!」

 

セルの体から黄金のオーラが吹き上げた。

 

「「「「きぇえええ」」」」  

 

Jr.達の身体からも光オーラが吹き上げた。

 

『どう言うことだ。親子揃ってバーニングしてる!?』

 

Jr.達に油断はなかったと言っていい。しかしJr.が気付くと目の前にオーラを吹き上げたセルがいた。Jr.は目を見開いた。

 

「これは蹴られたお返しだ」

 

「きィい!?」

 

Jr.が身を守るように発目の発明品を盾に隠れるが、セルに盾の上を殴られた。ズドンと大砲を撃ったような衝撃音が成ったと思えば、盾の残害を撒き散らし飛んだJr.は地面に当たると地面を削りながら進み舞台の壁を砕き埋まった。

 

「さて次だ」

 

「ぎいぃ!」

 

その台詞の直後に別のJr.に横蹴りが突き刺さっていた。腕の発明品は粉々になり胴体がまっぷたつになると思わせるほどの痛みを感じたと思った瞬間には、上にある看板に激突し突き抜けて空に。

 

「き、きぇあ!!!」

 

飛び上がったセルJr.がセルの顔面を殴る。余りの衝撃波にミッドナイトと発目は吹き飛ばされた。

 

「……き、きぃ」

 

セルは笑ったままの表情で殴ったセルJrを見ている。全力で殴ったセルJrは震えていた。

 

「中々いいパンチだ。では、此方からのお返しだ」

 

「!!!?」

 

セルJr.の腹部に拳が突き刺さりロケットの様に再び上空に飛んでいく。残ったJr.達が逃げ出した。それを追おうとセルは動こうとしたが、其処で吹き飛んだ発目やミッドナイトの姿が視界に入り固まる。これが全てプロヒーローさえ知覚できない刹那の間に起きた。

 

『え、どうなって、ミッドナイトと発目ガールが場外まで吹き飛んでて、看板と壁が崩壊してる!?……えええ、どうするんだこれ』

 

『…………』

 

そんな困惑した声が観客からも上がるなかな、ズドンと殴られ上空に打ち上げられたJr.が落ちてきた。まるで犬神家のように地面に突き刺さっていた。

 

痛いほどの沈黙

 

セルの黄金のオーラがまるでいきり立った尻尾が下に落ちる様に消えていく。

 

セルは周りの惨状を見る。

自分一人に突き刺さる周りの目線……

 

ふと目にはいる

 

偶然にも倒れている担任にぶつかったようなJr.。さらに偶然か担任から没収されたエロスライムが漏れてダレ得な……

 

 

 

 

セルは逃走した。

 

 

 

 

体育祭、第三競技、第一回戦。

 

発目明vs神像セル

 

発目明、場外、

神像セル、場外(?)。 

 

 

第一回戦勝者無し!

 

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