体育祭の後、サポート科なのにヒーロー科の授業に参加させられたりしてから数日。サポート科で浮くかと思えば大体の生徒が普通に接してきてくれた。頭のネジの緩んだサポート科と違って常識的なクラスに感動した。唯一チンピラが敵視してきて面倒臭い。体育祭で1位になったのに話題で私に完全に負けてたからってそう敵視するなよと思う。……テレビに連日放送されてるんだが私の肖像権とかどうなってるんだろう。やり過ぎた罰だろうか。
ヒーロー科に一緒に来た発目嬢?ヒーロー科と仲良くしようと頑張っている。実験動物的な意味で
私か?私は普通に仲良くなれて満足だ。
ヒーロー科の彼等の個性を見ていると面白……もとい彼等の為に良いアイテムを造ろうと意欲がドンドンと沸いてくる。そう思えるとなると、今回のサポート科のヒーロー科への授業参加は大いに意味があるな。授業に参加させられて体験させられるのには困るが。
そんなこんなヒーロー科に馴染んでいると、ヒーロー科のインターンの日が来た……普通に職場体験と言えばいいのにな。
インターンは体育祭での結果をみてプロヒーローが呼ぶ生徒を選ぶそうだ。プロヒーローは有能な人材に先に繋がりができる。上手くすれば手下にする事ができる。所謂先物買いだな。
で、あくまでインターンはヒーロー科の職場体験、しかし私はサポート科としてヒーローの仕事に密着してどういったサポートアイテムが必要か現場で直接観察すると言う名目で参加する事になった。
インターン、先生から何も持っていく物は無いと念を押された。何度も念を押された。発目嬢辺りのとばっちりか……それかあれか、あのスライムの事を根に持ってるのか。あれは没収したのをそのまま持っていた先生が悪いと思うんだが。
スライム……男の服を溶かしたショックで自滅を選んだスライム。なんて無念な死だろうか。金魚の墓みたいなモノだが墓を作ったんだがどうか成仏してほしい。
これから電車に乗ってインターンの場所まで。
「緑谷くん、インターン中よろしく」
「う、うん、よろしく神像くん」
体育祭でチームを組んだ彼のインターンを見学する事になった。
別に彼自身は嫌いなタイプではないんだが『気』の多さが異様なのがな。相変わらず私と同じ様に複数の『気』を感じる。私は遺伝子的にそう言うものなんだが、彼は……何かに取り憑かれてないか?
幽霊とか勘弁してほしい。
さて、つくまで何か話すか。緑谷くんは見掛け通りのオタク気質だな。ヒーロー関係の雑談をしたらカミツキ亀並みに食いついてきた。私もヒーロー関係は興味があったから話が弾んだ。話が合って本当に疑惑のある『気』の事さえ無ければ文句ないんだがな……。
そろそろ電車が目的の駅につく。
「それで此れから行くのはグラントリノというプロヒーローの事務所だったか」
「うん、そうだよ」
「グラントリノか……聞いたことがないのだが、最近出た新人か、それかアングラー系のプロヒーローだろうか?」
アングラ系、人気商売なのに名を売らないヒーロー。ストイックなタイプと名前を売ると不味い場合にアングラ系のヒーローになるらしい。個性に克服出来ない弱点があるヒーローが特に。たしか私の事を散々に言ってくれた体育祭で放送席にいた消ゴム、イレイザーが弱点のあるアングラ系タイプだ。
「新人でもアングラー系でもないよ。活動をだいぶ休止していた人らしいんだ」
「休止していた?怪我でもしてたのか」
「怪我をしたとかじゃなくて……年齢的に引退みたいな状態だったらしいんだ」
んむ?引退するような年齢の相手なのか。
現役でないすると職場体験的にどうなんだ。緑谷くんの体験先は外れなのか。
「あ、けど!その人スゴい人だからね!……オールマイトの師匠らしいから」
最後は小声で言われたが……確かにそれはスゴいな。現在のナンバーワンの師匠、緑谷くん的に外れのインターン先かと思えば大当たりか?
電車の外に出た。
『ねぇ!あれって!体育祭で活躍してた!』『サポート科詐欺の子だ!』『あ、あの握手してください!』『なぁ!ヒーローになりなよ!』
人が集まって邪魔だ。
一部暴言にならないか?
「……神像くんスゴい人気だね」
「たんに目立つ姿だから注目されてるだけだろう」
頭の突起とか特徴的過ぎるのが悪い。
体育祭が終わってからずっと視線に晒されていて大変だ。こんな注目を集めていたらいかがわしいモノを買いに行くのも無理で最悪だ。……私より上の順位で体育祭に出ていた緑谷くんが気づかれてないのが気まずい。
「………………あのさ、神像くんって、ヒーローに成りたいって思わないの」
ヒーローに成らないのか聞かれてるからの質問か。
「無いな」
他のヒーローなら服を変えればヒーローなのを隠せるが、私は特徴的な姿的に隠すの無理だ。つまり私がヒーローに成るという事はこんな監視されてる様な生活がずっと続くということだろう。こんな生活が続くと知ってヒーローに成りたいと思うほどドMじゃない!
「無いな」
そう言い切った神像くんの顔は酷く嫌そうに見えた。ヒーローが嫌いなんだろうか?いや違う。ついさっきもヒーローの話を楽しそうに話していたんだ。嫌いならああいう話し方に成らないはず。
なのに噂だと彼はヒーロー科への転科を断ったと聞いた。たぶん事実の噂だと思う。
神像くんはどうして、アレだけの力があるのにヒーロー科になるのを避けたんだ。ヒーローが嫌いじゃ無いのに……かっちゃんが、いやボクたちヒーロー科の殆どが嫉妬するぐらいの能力があるのに。
それからボク達はグラントリノの道場で、オールマイトの師匠のグラントリノにあった。グラントリノはなんというか予想外の人だった……サイズ的な事もあるけど、初対面でケチャップで倒れてるフリとかされたんだよ。
ボクが驚いて動揺してると横で神像くんが倒れてるフリだって教えてくれた。安心したけど観察眼でも劣ってるのかと地味に落ち込んだ。
それからボクは軽くグラントリノに今の強さを測られた。流石はオールマイトの師匠、引退する様な年齢なのに動きが敏捷すぎる!…そしてボクは個性、オールマイトから受け継いだ個性をまるで使えてない事に気付かされた。……同時に使いこなすためのヒントも貰ったから希望への道筋もできた。
今のボクだと力を1つに集中させると壊れる……なら
神像くんは、個性の事とか色々と隠さないといけないから、ボクの特訓中はグラントリノから訓練道具と装備品の調達を頼まれて雄英に戻った。
グラントリノとコソコソと悪巧みしてる感じで何かスゴい不安を感じた。
ボコボコにされて休憩時間、その時にグラントリノは神像くんを呼んだのは自分だと教えてくれた。体育祭で見た神像くんの事を見極める為だと。
それで神像くんを直接見た結果
「あの神像の小僧、自分の力を使うのを恐れているな」
グラントリノがそう言った。オールマイトの師匠の話を間違いだと言いたくないけど……体育祭での事を思い出すとそうは思えなかった。
「納得してないって顔だな。体育祭の映像、最初の競技でアイツが神像が光景を撃った時の映像を見て気づいた事がある……あの光線を撃った後のアイツの顔だ」
顔?
「光線を撃った後のアイツは、"ちょっと"やり過ぎたかと言う顔をしていた。"ちょっと"だぞ?……小僧、ちょっとって思うときは全力を出した後だと思うか?」
怯えた様な様子のグラントリノにボクの背筋はゾクリとし、気付きたくない何かに触れた様な気がした。
「それにアイツの最後の、チビ共と戦った時だ……スロー再生して辛うじてプロヒーローの俺でも影が見えるレベルの戦闘で意味不明だったが。戦闘が終わった後にアイツが場外に逃げるまでの映像に一瞬映ってたんだよ……笑ってアイツがな。自分の分身か子供をぶちのめした後にだぞ?」
ボクは黙って聞いていた。
「アレを見たときに光線を見たときより肝が冷えたぜ。………雄英にはオールマイトに後継者のお前もいたからな。それでちょうどインターンもあったからサポート科だが試しにアイツも呼んだら、アイツは本当に来たわけだ……来たなら俺の感じた不安が間違ってないか見極めるしかねぇ」
不安…………不安ってどういう事だろう。もしかして神像くんはヴィランになると思われてるんだろうか。
「グラントリノ、神像くんはヴィランになんてなったりしませんんん。イタタ!!」
ぐぅぅ痛い!声を出しただけでも物凄く痛い!
「まったく。アイツの弟子だな。お前がアイツを信じたとしても不安を感じたのは俺だけじゃねぇ。例えばこれから来るアイツだ。まさかアイツから直接来るとかいう連絡が来るとは思わなかったよ。時間的に厳しいとか言ってたが小僧の事も含めて絶対に来るだろうな。小僧、覚悟しろよ…………お前が大変なのは此れからだからな」
ボコボコにされて立てもしない状態で言われた。ボクは誰か来るか知らないけど、これ以上キツくなる?ボクは無事に帰れるんだろうか?
なにか緑谷くんが大変な事に成ってる気がしたが……勘違いだろう。男のピンチに感付くとかそんな事はあり得ない。気のせいだな。
それより早く持っていかないとな。
まさか訓練道具と装備品を頼まれるとは…………全く最初から聞いていたら最初から持ってこれたのに、持っていくなと言われたがインターン先に頼まれたからにはOKの筈だな。二代目のスライム。是非とも緑谷くんかグラントリノに女性ヴィランに使ってもらい一代目の無念を張らして貰いたい。
なんだグラントリノの所の前に誰かいる。
サラリーマンか?
サラリーマンとすれば『気』が大きい。
堅気では無いという感じのサラリーマン
何処か落ち着きがない。
グラントリノの家の前。グラントリノはプロヒーローだが最近まで引退していた老人……。落ち着きがない。
ふむ……老人を狙う訪問販売詐欺師か?
それと、後ろに居る顔が何かオールマイトと違う意味で画風が変なヒーローはなんだ。