「サー・ナイトアイ……プロヒーローをしている」
「ボクはミリオン!雄英3年のヒーロー科生徒、君達の先輩さ!」
「「「…………」」」
不機嫌を全面に出したサラリーマン
笑顔全開のムキムキ青年。
何だろうかこの両極端な二人は。
「み、サー・ナイトアイって……オールマイトの……」
緑谷くんはどうしたんだ?サー・ナイトアイを見て震えてるな。プロヒーロー、悪質な老人を狙った訪問販売詐欺師でないのか。サー・ナイトアイ……聞いたことは有る。確かとんでもない個性を持ったプロヒーロー。それと青年の方も思い出した。毎年体育祭で最悪な視聴者サービスをしてた露出生徒……なんで出禁になってなかった?
「ワシはグラントリノ、引退間近の老いぼれだがプロヒーローだ……ほれ挨拶を返せ。同じ様にな」
「え、はい!緑谷出久、雄英一年のヒーロー科で……ひ、ヒーロー名はデクです!」
「サポート科一年、神像セルだ。どうぞよろしく」
サラリーマン、いやサーナイトアイは何でさっきからジロジロと緑谷くんと私を見てくるんだ。グラントリノに会いに来たから私達は邪魔だと言いたいのか?……私が目を向けると視線を逸らすのもなんだ?
「よく来たな二人とも」
元から訪問予定があったのか。
「……ええ、ヒーロー殺しステインを捕まえる為に、新大久保に向かう途中によらせてもらいました」
ステイン……最近世間を騒がせているヒーロー殺しだったか。新大久保に出てるのか?
それほど此処から離れてない所に殺人犯が居るのかもしれないのか……
「そう言う建前で来たのか」
建前?
「………グラントリノ」
「おお、すまんすまん、老いぼれだから口が滑りやすいんだ」
隠し事か?何か大人の事情みたいな事が有るんだろうか。此処はスルーすべきか。
「少し話が………」
「話ね……その前にせっかく来たんだ。この二人の指導を軽くしてくれんか?」
「……」
「ん?」
「え」
「引退仕掛けの俺より、現役バリバリなお前さんからの指導なら良い経験になるだろうしよ頼めんか」
現役の指導か……緑谷くんにとっては良いことだろうが、二人と言うことはサポート科の私も指導があるのか?
「………………すいません。時間があまり有りませんので」
「多くの時間はとれんか?なら手早く模擬戦でもしてその結果を見てアドバイスはどうだ?模擬戦はルミリオンにしてもらってな」
「…………ルミリオンに」
「勿論オレはOKですよ!元から後輩の指導は先輩の役目ですしね!」
「ほれ、ルミリオン本人は良いと言ってるぞ」
「…………………わかりました」
それから行われた模擬戦の結果は……まぁ惨敗だ。
ミリオン、物体を透過して攻撃時しか実体のないヒルデガーンみたいな能力。
透過って酷いな。見えてる幽霊みたいな状態になるとか。着てる服も透過する……だから毎年体育祭で服が透過して全裸を見せてたのか。女子生徒と是非とも個性を交換してもらいたい。
露出狂の先輩から緑谷くんは攻撃を当てられずにボコボコにされた……私もボコボコと殴られて終わった。捕まえようしても一方的に攻撃を受けて時間切れで負けた。少し悔しかった。
模擬戦後に緑谷くんへのアドバイスは今はとにかく地力を上げること。私は、サポート科なので道具を作る事を薦められた。……私へのアドバイスは模擬戦とか関係ないような。
「それでは……失礼します」
そのあとはグラントリノと離れた所で話してから去っていった。是非ともステインを捕まえるの頑張ってもらいたいが…………サーナイトアイの顔色が悪かったが大丈夫だろうか。
グラントリノの道場を去る。
体育祭で見たオールマイトの決めた理解できない後継者と、そして悪魔に良く似た未来予知が上手く作用しない存在。私もそうだが、ミリオにもあの二人を見てほしくてきたが……まさかミリオが模擬戦をすることになるとは
グラントリノに先に話をしておくべきだった。
「……どうだったミリオあの二人は」
ミリオにたずねた。
「うーん緑谷くんの方はアレですね!模擬戦の前は体育祭で見る限り一発が怖いだけって感じでしたが……直接戦った後は、厄介といいますか……何か切っ掛けが有れば一気に進化してきそうだなって感じがしました!」
ミリオは評価しているようだ。私も其れなりに評価しても良いと思った事は認めよう……だが、ミリオの対抗馬として不足過ぎる。
緑谷出久、元は無個性。
対してミリオの持つ個性は物体を透過する能力。
一見強い個性だがその透過する個性のコントロールは困難。今では雄英のビッグ3の筆頭と扱われているが、コントロールの困難さからミリオは長く落ちこぼれ扱いされていた程だ。
しかしミリオは挫折せず笑顔で真っ直ぐに前に進み続け、私が手を貸したとは言え、コントロールを身につけて落ちこぼれからトップにまで成ると言う希望を魅せた。
卑屈に成らず笑顔で諦めない。私は、ミリオならオールマイトに並ぶヒーローに成れると見込んだ。ミリオならオールマイトを助けられると。
なのに……なんでですかオールマイト。
この目で見てミリオと比べたからこそ余計に失望を感じた。
「…………もう片方は」
私は口に出しかけた事を内にとどめて続きを促した。オールマイトの後継者は気になるが今の本命は此方だ。ミリオは僅かに笑顔を歪めた。
「神像くんで…すか……………………ええ!………オレもまだまだだって思い知らされましたね!」
努めて明るい口調でいようとしてるが……辛いんだろう。
ミリオは今のままでも並みのプロヒーローを歯牙にかけないほどの強さを持っている。
だが、ミリオの個性は透過、防御ではこれ以上ないと思える個性だが、攻撃は自前の身体能力に頼るしかない。だからミリオは鍛えに鍛えた……………しかし幾ら鍛えても攻撃が通じないヴィランも出てくる。
あの悪魔に似た奴がそうだ。
ミリオが全力で殴っていた事は打撃音からもわかる。だが、ミリオがどんなに殴っても、何処を殴っても……あの悪魔にダメージを受けた様子はなかった。
そして悪魔からの反撃もミリオの心を折るモノだった。………悪意でなくむしろ良心を感じるモノだからミリオにとっては質が悪かった。
手加減をしていた。ミリオも手加減してくる事は予想できるだろう。あの悪魔が本気で戦えばどうなるかは体育祭の映像を見るだけでわかるからな。
だが。そのミリオ相手にした手加減が……まるで小さなヤンチャ者の子供相手に傷付けない様に苦労する大人のようなモノ。あの悪魔の困った様な顔から嫌でも伝わってきた。
……攻撃を一方的にしているミリオが苦しんでいた。
あまりに酷い光景のまま時間切れで終わり、判定としては模擬戦にはミリオが勝ったことになる。勝ったと思えないだろうな。
ミリオなら悪魔への不満よりそんな気遣いをされるほど弱い自分を責めているはず。
私は……ミリオには悪いが安心しかしていない。ミリオが負けるのはわかっていた。問題はミリオが無事に済むかどうかだけだった。
喜びもある。
今の段階ならまだあの悪魔に、過剰な攻撃をするのを避ける良心が有ることが確認出来た。
ミリオと模擬戦をすると言われて心臓が止まるかと思ったが結果的によかった
未だに私の心臓は五月蝿くなり。
全身は冷や汗に濡れていた。
私は数ヵ月前に悪夢を見た。
リアリティーの有りすぎる現実と思える夢。
夢でも私はプロヒーローをしていた。プロヒーローである事の他にも何もかも同じ……そう思っていた。あの神像と似た面影のある悪魔が世界中で暴れている事を知る前は。
その悪魔は世界の人々をむさぼり食いトップヒーローを好んで食べていた。その世界でもオールマイトはトップヒーロー、日本に悪魔が来たことを知ったその世界の私はオールマイトを守るために活動し……悪魔に食われた。
その世界の私が終った後には悪夢を見ることはなくなった。ただの最悪な悪夢だと思っていた。
今年の雄英の体育祭を見るまでは……。
オールマイトの後継者、それを見るために体育祭を見て……体育祭で神像を見たときには恐怖が身体を支配した。
夢で見たあの悪魔、神像にはあの悪魔の面影が有りすぎた。体育祭で見せた力を見ると尚更悪魔にしかみえなかった……。
そして私は伝で神像の事を調べ過去の写真も入手した…………そこには悪夢の悪魔がいた見間違えようがない。神像は悪夢に居た悪魔だった。
私の見た悪夢はなんなのか。
あの悪夢もあり得た未来、何故かそう思えた。
神像が別世界で世界の多くの人々や私すらも食った悪魔としか思えなくなっていた。
ミリオへの対応を見る限り今の悪魔には良心があると思えた。あると信じるとしても…………悪魔が悪夢の悪魔になる可能性は無くなっているとは思えない。
悪魔が目覚めない様にこのまま争いから一線を退いたサポート科で居て貰いたい。なのに世間ではヒーローに成れという声が大きすぎる。何が切っ掛けで悪夢の悪魔になったかわからないのにだ。……何をするにも雄英と連携を取る必要がある。どう説明するか……それにオールマイトの見出だした後継者があの悪魔と共にいた事をどう考えるか……
「サー、どうしたんですか?」
「あぁすまないミリオ」
「気を付けたください。もう新大久保でサーの予知したステインの出現場所ですから」
そうだ……今は先の事よりステインの事に全力を傾けるべきか。
私の予知が正しければ、数日以内にあの悪魔とステインは遭遇する……刺激されて悪魔を起こすわけにいかない。ステインをそれまでに捕まえなければ。
なんとしてでも……