久し振りに日本に戻ってきた私はのんびりマッタりと、観光地巡りや山奥の秘湯巡り等をやっている。
ヒーローは特に襲っては来ない。ついでに町から人が居なくなっている。どうやら避難に全力を出してるようだ。最近だとどんな国に行っても避難をされるが日本も同じか。日本ではあまり人の吸収をする気はないのにご苦労様だ。テレビ局にでも行って大丈夫だと言おうか?
「ふぅいい湯だ」
防水テレビには避難に混乱してる様子が映っている。私は申し訳ないと思う秘湯にユッタリ入浴しながら。
「ふはーたしかに気持ちいいですー」
日本での友人のヒミコ嬢
秘湯巡りをしてるというと着いてくるようになった。秘湯だから男女別なんてないと言うのに特に気にしなかった。男と平然と混浴とは常識の無い娘だと思わないか?せめてタオルを巻けと思う。湯が濁っててもピンク色のモノが見えているぞ。まさか男と思われてないのか?アナ○さんボイスだぞ。
「あーそう言えばセルさん、わたし、ヴィラン連合という所に勧誘されちゃいました」
「ヴィラン連合、聞いたことがある。ニュースでやっていたな。たしか…雄英という高校を襲ったグループがヴィラン連合だったか?」
私のこと一色だったニュースを塗り替えたヴィラン達で覚えている。
「はいそれです」
「ふむ、ヒミコ嬢はヴィラン連合に興味あるのか?あぁそう言えば君の好きなステインがニュースで、ヴィラン連合に関わっている見たいな事を言っていたな」
まぁしかしマスコミのそう言うのは宛にならないが、外国に居たときは私も変な組織の一員によくされたモノだ。まぁその組織も今では全部私の一部になりもう存在しないが。
「そうなんです!ステ様が関わってるならヴィラン連合に入ろーかなーって思ったんです。あーステ様に会いたい。ステ様を殺したいです!」ザバっ!
「力よく宣言するのはいいが座ろうか。丸見えになってるぞ」
「……」チャポン
静かに湯船に戻った。少しは恥ずかしいとは思うんだな。湯船に口をつけて私をジトッとした目で見てきた。見せたのソチラなのに
それにしてもヴィラン連合か。あれだけニュースを賑わせたなら強い大物のヴィランが居るのだろうな。食欲減退中でも少し食欲はそそられるが……友人の楽しみを壊すのも悪いか。
「それでヴィラン連合に入るのか」
「悩み中です。一旦保留にして貰って参加するなら明後日までにある場所に来るようにって言われました。そうだセルさんもどうです。スカウトの黒霧さんが強いヴィランを集めてるといってたんですけど」
「強いヴィランを集めて何をするんだ?」
「雄英をまた襲撃するって言ってました」
ふむ雄英への襲撃か。ヴィラン連合に入るつもりはないが……暇だし、いや、面白そうな物が見れそうなのを見逃するのも勿体無いか……
「参加はともかく見学はしてみたいな。……できるか聞いてみるか」
「セルさんセルさん、見学がOKなら見学のときに撮影もお願いします」
「あぁいいぞ」
撮影をすれば面白い絵が撮れそうだ。電気街でなるべくいいカメラを手に入れて来ないとな。
撮影で思い出したが、まだ居るな。
此処に来た時から透明な個性なのか姿は見えないが"気"で居るのはわかっている。覗ける位置にずっと誰かいた。
覗きか?
さてどうするか。不届きな奴かもしれないが視線は私にしか向いてない。ヒミコ嬢には視線は向いていない。つまりは、私の入浴シーンを見たいのか。私の入浴シーンをか……海外にいた狂信者でそんなのがよく居たな……
……関わりたくない。
「よく来てくれたねみんな」
「校長この時間に教師全員の呼び出しってどういうことです」
「そこの人って、公安の人間ですよね。いったい何が起きたんです」
教師達は顔色の悪い公安らしい相手を見てから校長に視線を向ける。雄英の校長の根津はネズミであり表情は読みにくい。それでも重い空気を出しているのはわかる。
「それは今から説明するよ。どうやらヴィラン連合は再び雄英を狙うつもりらしいんだ」
ヴィラン連合が再度の襲撃は予想はされていた事だが、襲撃があると確定する情報が有ったという事は重大なことだ。
「情報があったんですか。それは何処からの情報……やはりそちらの公安の人からですか」
「そうだね。彼等からの情報さ」
根津の肯定の言葉に教師達は顔を見合わせた。公安から情報が来るのは少し予想外だと思ったからだ。
「実はね。公安のある監視対象のヴィランから情報を得たそうなんだ」
「監視対象になってるヴィランから?なるほどそのヴィランがヴィラン連合に関わってるのですか」
「関わってると言われると微妙かな。それより正直ね……ヴィラン連合より監視対象にされてるヴィランが問題なんだ」
「ヴィラン連合よりですか」
「おいおいそれはどんな大物のヴィランだ。まさか今日本に来てるあの緑色の人喰いヴィランとかか?」
それは絶対に嫌だというヴィラン、その教師は冗談のつもりだった。しかしそれが……。
目の前の根津の目線が下がり、冗談を言ったつもりの教師、プレゼントマイクの顔がひきつる。
「ま、まさか」
「残念ながらマイク、大正解だよ。通称人喰いの悪魔、自分ではセルと名乗っている史上最悪のヴィランが、ヴィラン連合に関わる可能性があるんだ」
プロヒーローである教師全員が顔を青ざめさせた。
人喰いの悪魔。
世界で尤も有名といっていいヴィランだが初めに確認されたのは15年前のこの日本。
今から15年前の4月の半ば、○×町にて事件が発生、483人もの人が人とは認識できないおぞましい状態で発見されたのだ。中には当時ヒーローチャートで一桁台圏内だったヒーローと思われる"欠片"も確認されていた。
僅かに目撃者は居たが……よほど恐ろしいモノを見たのかどの目撃者も話せる精神状態でなかったが、当時の防犯カメラにその恐ろしい犯行の映像が残っていた。
それは今でも日本で最も恐ろしい映像とされている。子供サイズほどの緑色の生き物がトップランカーのプロヒーローを惨殺、次々と人に尻尾を突き刺し人の中身を吸っている正気を失っても仕方ない映像……テレビで放送は出来るようなモノでは無かったが、その映像はネットでアップされ日本中を震撼させた。
しかし後々の事を考えるとそれは些細でとても小さな事件だろう。それ以降その怪人はセルと名乗り……世界中でその姿を確認されていた。
始めに目撃されてから半年後、日本を出たセルにより半年ほどである国の人口十万を越える都市の大半が食い尽くされた。
当然その半年間その国が無抵抗で居たなんて事はない。国がヒーローを召集しセル討伐は行われようとしたが、乗り出したその国の最強格のヒーロー達は全て倒され、遂にはその国は軍隊を動員しセル討伐に動いたがセルの餌にしかならなかった。
セルはその都市を中心に他の町々を襲いその国の国力は見るまに弱体化。この時に国の弱体化を察知し隣国が領土を掠め取ろうとしたが、その企みは当の弱体化の切っ掛けであるセルによって瓦解した。
セルは襲撃した隣国に移動し同じ様に都市を襲撃。同じく半年かけ同じほどの被害を受け隣国もまた同じほど衰退していった。そしてセルが去った頃にはどちらの国も崩壊。 合計一年でセルにより二つの国が滅ぼされた。
それからセルは様々な国に現れた。
襲来された国は当然セルを何とかしようとしたが、どんなプロヒーローでもどんなに大群の軍隊を派遣しても、セルの栄養源にしかならない。
遂には痺れを切らしセルがある小国を住み家にしたときに、大国によりまだ数万人の住む町ごと核などの大規模破壊兵器でセルを吹き飛ばす暴挙が行われた。
悲惨だった。
万人の住民は町ごと消滅。
何よりセルが"無傷"だった事が悲惨だ。
消滅した町の真ん中で健在なセルの映像には世界の指導者たちが恐怖した。
その後、大規模破壊兵器を撃ちこんだ大国にセルは報復。その国は世界のトップと言って過言でない世界で屈指の大国だったがセル襲撃後は……それは過去の事になった。
セルはヴィラン、ヒーロー善悪問わず無差別に襲う。セルは同じヴィランにさえ危険視され、多少の理性さえあればどんな凶悪なヴィランでもセル討伐にはヒーロー相手にでも協力的だったが、同じ様に餌になるしかなかった。
プロヒーローのトップとヴィランのトップが、一時手をくんだドリームチームが出来た国さえあったそうだが、両陣営のトップがセルの餌になったという結果しか残らなかった。
セルは世界中の様々な特殊な個性でセルは攻撃をされたが、どういうことかセル本体にはどんな個性も効果を及ばす事は不可能だった。
ある研究員の憶測ではセルが有するエネルギーが膨大すぎて小さな個性のエネルギーは欠き消されると言う事だった。例えれば海にスプーンで塩を入れるようなモノだと。どの様な個性も海には影響を与えることはできない。ただの推測だったがこれとほぼ同じ理論が今の定説となっている。つまり個性ではセルはどうにもならないと言う結論が出ていた。
世界はセルに対抗できない事を認めるしかなかった。セルは特一級個性災害と認定され、討伐でなく被害を抑える事が各国の方針となった。
抵抗が無意味と認識されてからセルが去るのをただ耐える国が多くなったが、セルに早々に屈服して犯罪者を中心に人を生け贄としてセルに送る国が現れた。当初は批難の声を浴びたが皮肉にもその国の被害が他の国より極端に被害が少なく、真似をする国が続出した。
これが今の状況だ。
セルが現れてから15年経った今はセルが直接行った被害だと被害は数百、数千万、間接的な被害だとその被害の桁は増えると言われる。今でもその数は増えていた。
世界中で抗えない恐怖とされたセルが最初に現れたのが日本、15年前を最初で最後に日本に現れることがなかった。なのに数週間前に日本にセルが来襲している事が確認され、総理が記者会見をしセル来襲を告げた。
セル来襲に日本全土でパニックが起きたが、今の所の確認された被害はゼロ、しかもヴィランがセルを恐れ活動が抑え気味になり逆に治安が良くなるという奇跡的な状況だった。
日本政府は犯罪者の生け贄を送ることはなかったが、藪をつついて蛇を出すなんて事はしたくなく、多少の被害が出ても放置する方針を決めていたが結果的に最適の方針だったと言えた。
なのにここに来て
「……あの悪魔とヴィラン連合が関わりが在るのか」
想像をしただけでプロヒーローが絶望を顔に浮かべてしまう。そんななかで公安の人間が話を続ける
「其れについて説明をします。先ず知ってもらいたいのがトガヒミコ、未成年の少女で報道はされていませんが殺人事件を何度も起こした凶悪なヴィランです」
「その子がどうしたの」
「このトガヒミコなのですがどういう経緯なのかセルと友好的な関係となっていたのです……各地の秘湯と呼ばれる温泉でセルに同行する姿を確認されているので間違いないでしょう」
「温泉って…それも女の子連れで…」
「たしか世界の色んな国でもセルと仲良くなるヴィランや一般人は居たんだったか」
「日本ではその子がってことね。このタイミングでこの話って事は、その子がヴィラン連合と関わってるの?」
「少し話します。我々公安はセル襲来からその同行を確認してきました。日本各地にセルは目撃されましたが被害はありません。セルに何か目的があると推察され調べると飛来した場所全てが秘湯があるとされてる場所でした。状況からセルが各地の秘湯を回ってると判断しました。そして各地の秘湯に監視員を送っていたのですが、その監視をしていた秘湯の一つにセルとトガヒミコが来ました」
「……」
教師たちはなんとも言えない顔をした。
「秘湯での入浴中にトガヒミコが自身がヴィラン連合に勧誘されたと言っているのが確認されています。そしてヴィラン連合の目的は雄英への再度の襲撃とかたっていました」
「……襲撃については偶然に判ったんだ」
公安は躊躇いがちに次の言葉をいった。
「それと…………トガヒミコがセルにも襲撃に参加しないか誘いをかけ、セルは見学に行くと答えたそうです」
少しの間沈黙が会議部屋を支配した。
「………………へ、へーーー…つまり………今度ヴィラン連合の雄英の襲撃が有れば……国でもどうにもならない災厄のヴィランがヴィラン連合のオマケで見学者として来てくれるのか!嬉しすぎて涙が出てくるな!」
プレゼントマイクの目は嘘って言ってくれと訴えていた。校長は無情だった。
「セルは見学じゃなくて、参加してくる可能性もあるね……」
雄英教員の全員に壮絶な胃痛を与えた。
因みに同時刻ヴィラン連合の死柄木弔や黒霧も胃痛を感じていたらしいが、いったい何があったのかまったくの謎だ。