緑セミのヒーローアカデミア   作:ソウクイ

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外伝さん

 

古びたバーテン。

 

ここが巷を賑わしているヴィラン連合のアジトか。地味だな。悪の組織ならこうもっと洞窟や地下にある秘密基地みたいな感じな所にすべきだろう。……こんど自分で作ってみようかな。

 

ヒミコ嬢の付き添いとしてきた私は椅子に座り此処まで連れてきてくれた黒い霧の彼からオレンジジュースを貰い飲んでいる。最初は酒を用意されかけられたが断った。それは当然だろう。私は未成年なので飲酒なんてするわけがない。

 

ヴィラン連合と有名なわりに人数が少ないな。しかし量を補う程度には質は中々か。

手だらけ、手品師、オカマ、竜人、覆面男、焦げてるの、片目義眼な大男、普通にやばそうな男。ネット公開されている食材図鑑もとい日本版有名ヴィラン一覧に乗っているソコソコな有名所が集まっている。

 

そして顔に手を付けた彼が此処のリーダーなのだよな。手のリーダー。飲んでばかり居るな。そんなに飲んで大丈夫なのか。体が震えているがその年齢でアルコール中毒か?

 

まぁアルコール中毒でも構わないが、メンバーは集まったらしいのになんで話し合いが始まらないんだ。さっきから私をチラチラ見てるが、まさか私に遠慮してなんてことか?有り得ないとも限らないのか。なら一言いっておこうか。

 

「どうかしたのかな私ばかりを見て。私はただの見学者だ。なにもする気はないよ。どうか私の事は気にせず話を初めてくれ」

 

はじまらない。

 

全くあまり遅いとヒミコ嬢以外を吸収して帰る気になるぞ。

 

暫くしてようやく話しを始めた。リーダーの彼は死柄木弔というらしい。本名ともヴィランネームとも読めるな。

 

その死柄木くんの計画は雄英高校で合宿が行われるのでその最終日に襲撃をする予定らしい。二度も襲撃されたという事で雄英の面子を潰す。さらに生徒のヴィラン連合への勧誘含めた誘拐で止めなそうだ。

 

聞いた限りは目的は、まぁともかく作戦は悪くないと思う。

 

ヴィラン連合の雄英の面子を潰すという目的は襲撃した時点で成功する。目的の1つが達成したなら最悪生徒の誘拐は成功しなくてもヴィラン連合側の判定勝ちか?勝ちの条件が低いな。

 

逆に雄英側の勝利条件が厳しい。襲撃時点で面子を潰され世間から叩かれる事になる。例え犠牲が無くてもマスコミは叩く。

ヒーローの辛いところだが、事前に襲撃を止めるか犠牲無しにヴィラン連合を全滅させるぐらいしないと、勝ったと見なされないんじゃないか?。しかし黒い霧の彼が居る限りまず全員を捕まえるのは不可能に近い。つまり雄英は事前に襲撃を防げなければ負け戦確定と中々に質が悪い。

 

 

それにしても合宿が潰されるのは気の毒だな。合宿は楽しいのだろうからな。……本当に楽しそうだな。……私は年齢的に合宿をする側だ。もしマトモに生きてこれたら私も雄英の合宿に参加してたかもな。

 

ふむ、参加……合宿への参加か。

 

……ヒミコ嬢を見て素晴らしい作戦を思い付いた。

 

ただの思い付きだが考えれば考えるほど良い考えとしか思えない。実行すれば合宿を楽しめ見学も最前線でできるので一石二鳥だ。

 

しかし無断でやるのはダメだな。

私は今回は見学者と自分で決めているのだから。

 

彼等のリーダーに確認をとってみると好きにしてくれと快く了承してもらえた。 

了承してくれたあと彼は私に体を触らせてくれと頼んできた。なんだ彼は私のファンだったのか。死柄木くんが緊張した様子なのはファンだったからか。ふふ別にファンでも驚くことでもない。世界各地に私のファンだという人がけっこういたからな。

 

ファンは下僕に成りたいというのはいいが……なぜか食べてくれとか言うのもいて困る。私は食べてくれとか言うのは例外に普通のファンを大事にするよ。

 

だからファンの死柄木くんには特別サービスに私は体を触らせてあげた。そして……触った後にごめんなさいと謝ってきたのはなんなんだろうな。

 

 

 

 

 

例年行われる職場体験後の雄英ヒーロー科の合宿。合宿は例年通り行われることになってはいたが今年の合宿をやるには紆余曲折があった。

 

ヴィラン連合の再度の襲撃を警戒していた雄英では、雄英敷地から離れた場所での合宿は危険だと言う意見で出ていた。一度は合宿の情報を漏れないよう策を講じるという事で一度は問題ないとされたが、ヴィラン連合の再度の襲撃情報と災厄のヴィランの関わり、そして先日の雄英生徒と死柄木との接触、危険度が高まり合宿を行うかについて再度検討することになる。危険は避けたい。しかし合宿をした後のレベルアップは破格だという実績がある。生徒たちが強くなる事は生徒たちの安全にも繋がる。合宿を止め危険を避けても弱ければ別の危険に対処できなくなるかもしれない。どちらも一長一短であり合宿を止めるか止めないかで意見は対立したが、合宿に外から信頼のあるプロヒーローを増員する事で合宿は行われる事になった。

 

これには雄英はヴィラン連合の狙いが生徒でなく、平和の象徴であるオールマイトだと思っていた事も大きい。狙われていると思われるヒーロー科教師のオールマイトだが、本来ならオールマイトも1年の合宿についていく事になるが、オールマイトが着いていくのは危険と待機という事になった。

 

オールマイトの待機する場所だが、災厄と言われる人食いの悪魔、セルの動く可能性が高まってからは今では使われていない演習場に建てられた家がオールマイトの待機場所となっていた。  

 

 

 

「とんでもない化け物だな」

 

骸骨のようなトゥルーモードの状態のオールマイトは一心不乱に資料をみていた。それは自分の伝で集めて貰った各国でのセルの情報だ。

その情報を見てオールマイトが思わず身震いしてしまう。オールマイトの知る此までのヴィランと比べる事すらできない。まさに規格外の化け物。それこそ、個性を奪い百年以上は生きている怪物を知るオールマイトから見てもだ。

 

セル相手には軍隊は意味をなさず各国の最高位のヒーロー、中にはオールマイトより総合的には強いヒーローも居ただろう。そのヒーロー達すらセルに無惨に敗れ喰われていた。

 

万全のオールマイトに匹敵、いや凌駕したかもしれないヒーローが勝てなかった相手に、今の弱体化しているオールマイトに勝ち目があると誰が思える。

 

「せめて私のこの怪我さえなければ……なんてことも言えないな。……この怪物を相手には誤差だろう」

 

平和を支柱であり続けた日本の誇る英雄をして僅かにでも勝ち目が有ると思うことすら許されない怪物。オールマイトを狙うヴィラン連合に関わった今、オールマイトを何時狙うかわからない。

 

 

其処から考えれば、助けが来ず巻き添えが居ないと言える人気の少ない場にオールマイトが居る理由は、セル相手には勝ち目がないと、オールマイトを見捨てた様にも思えるが、それは違う。

 

少なくとも雄英の教師陣は校長含めて全員がオールマイトを見捨てようとなんてしていない。ヒーローとして命を懸けて平和の象徴を守ろうとした。

したのだが、それをオールマイト本人が拒否した。オールマイトはただ一人でセルを待ち受ける事にした。 

  

最初はオールマイトが自分一人が死ぬ気だと全員が反対したが、オールマイトが一人で待ち受ける狙いを聞き雄英の教師陣は渋々だが了承した。

 

オールマイトの狙い。オールマイトは集めた情報をみて自分の狙いが間違いがないことを確認した。

 

これまでセルに狙われて生き残った人はそれなりに存在した。プロヒーローも居るが無力な一般人、それこそ無個性の人間であっても助かっている事から、助かった理由が力によらない事がわかる。助かった殆んど全員が共通した事を行っていた。

 

セルから生き残る方法、それはある意味では困難ではあるが、ある意味ではとても簡単な極々単純な方法。

 

対話だ。

 

情報にはセルが対話をした相手を気に入ったなど、食欲が失せたなどと言い見逃す事例が何度もあった事が書かれていた。  

 

これこそオールマイトの狙いだ。

 

ヒーローとして死んでもヴィランに屈する様な事はしたくなかっただろう。しかしオールマイトとしてやり遂げなければいけない事がある。それが終わるまではセルに殺され死ぬわけにはいかなかった。

 

そう、オールマイトは先程までは思っていた……

 

「……」

 

オールマイトは資料をあさり間違いでないか何度も確認する。間違いでなくそれに例外もないことも確認した。間違いがない。例外もない。そしてオールマイトは絞り出すかの様に声を出した。

 

「…………セルはナンバーワンヒーローを殺害すれば、必ずその同じ国一番のヴィランも殺害している」

 

 

その後オールマイトは資料を見ることもなく手で顔を隠し無言で天井を見続ける。オールマイトは手で目を隠し表情は見えないが、唯一見える口許は苦悩してる様にも笑っている様にも見えた。

 

 

 

 

 

 

「よしゃ!合宿に出発だぁ!」

 

今日は合宿当日、担任含めプロヒーロー三人と1ーA組を乗せたバスは移動する。世間的に有名な彼等1ーA組の生徒だが、今は普通の学生のようにバス内で会話をしたりしりとりをしたりと其なりに楽しんでいた。

 

「ついたぞ。降りろ」

 

山道を上っていたバスが止まり担任の声で1年A組がバスを降りると、バスの止まったのが何もない崖の上だった事に驚かされた。

 

そこで山岳救助が得意なプロヒーローチーム、プッシーキャッツのメンバー達と合流。合宿中の訓練の協力をしてくれるプロヒーローチーム登場。

煌めく眼やらキュートやら、プッシーキャッツは、見てる方が恥ずかしくなる年季の入った自己紹介をしてくれた。

 

「たしかキャリアは12年になる」

 

とあるオタク生徒がポロッと言いそうになった台詞を、プッシーキャッツ、スティンガーの手による物理で止められた。

 

「心は18!!」

 

心は18(肉体的には+12)

心は18(+12)の格好は猫耳にミニスカ。プロヒーローを目指す少女たちに塩辛い女性プロヒーローの現実を見せ付けたのも訓練の一環だろうか。

 

「あんたらの合宿に使う宿泊施設は彼処に見えるあれ」

 

プッシーキャッツ、マンダレイが指差す建物は物凄く遠くに見える。間にあるのは崖と深い森。それをみて1ーA生徒は危機感を感じた。

 

「え、彼処が宿泊する所ならなんでこんな所に?」

 

「や、やべーよ。なんかやべーよ!」

 

「バスに戻ろう!」

 

逃げようとしても遅かった。

 

プッシーキャッツの一人、ピクシーボブが個性で大地を動かし1ーA生徒を崖下に落としてからようやく訓練開始だ。端から見ると殺人事件にしか見えないが問題ない。いきなり落とされ誰かがキレ掛け大惨事になりかけたが問題ある。

 

全員が無事に訓練の開始。崖の上からプッシーキャッツの声、森を抜け三時間で宿泊施設まで到着しろ間に合わなかったら昼食抜きという無体な宣言。

 

生徒たちは文句を良いながらも宿泊施設目指し森に入り、ピクシーボブの個性の土の魔獣に間断なく襲われる。いくら倒しても沸いてくる魔獣に襲われながら山の中を身1つで移動、恐らく下手なレンジャーの訓練よりもキツいだろう。

これで合宿スタートというのに戦慄する生徒たち、雄英はバカじゃないかと心底思う約二名。

 

それから数時間後、宿泊施設に到着したころにはボロボロになっている1ーA生徒、九時頃にに出発していまは2時、タイムは三時間を余裕で越えていた。

 

しかし実際には元からオーバーする予定でありむしろ優秀なタイムだったらしく。ピクシーボブが今のうちに唾を付けとこうと男子に本気で唾をかけた。ふざけてるように見えて顔がガチだ。婚期に焦ってるらしいとの同僚の証言。年下を無様に狙う三十路越え女性。恋ばなが好きな少女は思わず涙ぐんでしまった。

 

それはともかく宿泊施設に部外者らしい幼児にしか見えない少年がいた。ピクシーボブの関係者のようだ。

 

ピクシーボブから目付きのわるい洸汰という少年が紹介される。少年に挨拶をしようとしたオタク、もとい緑谷、緑谷はただ挨拶しようとしただけだ。それなのに少年は無言で緑谷の股間に蹴りを入れる暴挙にでた。緑谷にとって全くの予想外の攻撃の蹴りは禁に直撃し泡を吹く。そこは外部に出た内蔵、子供の蹴りでも致命傷だ。うわぁと顔をしかめる男子一同、興奮したように顔を赤らめる女子一名。

 

辛うじて緑谷の緑谷は無事だった。

 

そのあとにはタイムオーバーだったが昼食はありインスタントの味噌汁に握り飯が振る舞われた。簡素な食事だが彼等の疲れた体には格別だったが、それは仮初めの優しさだった。

 

それからは元々夕食の時間まで土の魔獣との戦いをやらされる予定だったらしく。彼等は再び魔獣との戦いをやらされることになる。内心で鬼悪魔と思われてるだろう。

 

 

(ほう……)

 

1ーA担任の相澤は顔には出さないが戦闘を見て生徒たちが、予想以上に強くなってるなと感心した。

 

(職場体験のお陰だろうな。特に三人の成長には目を見張る。中でも緑谷、あいつ初めは個性を出したら骨が折れていたのに今では制御して個性を使っている。後の二人は緑谷と逆に個性でなく肉体的に強くなっているな。……肉体重視に鍛えられたのだろうか。格段に動きがよくなっている。ただ肉体重視にし過ぎたのか代わりに個性の使い方が悪くなってるのが残念だな)

 

全員が空が暗くなるまで土の魔獣と戦わされた。戦闘終わりクタクタになった生徒たちに用意された晩御飯は極上。生徒たちはテンションが上がり全員が楽しげだ。夕食後は露天風呂、湯船にゆったりとつかり全員が今日一日の疲れを癒した。と、男子は疲れを癒していたのに塀越しに聞こえてくる全裸だろう女子の恋愛トーク、これが思春期男子に謎の精神的な負担を与える。数人を残し男子一同は逃げるように湯船から去った。

風呂を上がると会話もソコソコに疲れきっていた彼等は早々に就寝、

 

合宿一日目は何事もなく終わった。

 

 

少なくとも彼等はそう思っていた。

 

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