緑セミのヒーローアカデミア   作:ソウクイ

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外伝ご

 

薄暗いバーで一人ゲームをしてる青年がいた。

ゲーム画面に表示された時刻を見て歪に笑った。

 

「ソロソロ始まりの時間か」

 

「アイツら雑魚のヴィランは倒せた様だけど……今回のは厳選して集めたボス格ばかりだ。ボスに疲れた体で奇襲を受けたらどうなるかなぁ」

 

「あぁ楽しみだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………………アイツに全部持ってかれるとかないよな?」

 

 

 

 

合宿の最終日前日の夜。

 

プロヒーローから課せられた苦境ばかりな雄英の合宿訓練も明日が最終日、何日も散々にしごかれて生徒達の疲労もピーク。最後の夕御飯の時間も明らかに最初より静かだ。

 

しかし食事の後はただ純粋に楽しい思いで作りの肝試し。現金なことに疲労を忘れたように元気になる生徒達!だったが一番肝試しを楽しみにして元気になった生徒の上鳴電気やピンク肌の少女芦戸三奈等、テストの成績の悪かった生徒は肝試し参加はできず赤点の補習を受けることに。

 

楽しい肝試し……に参加できず、補習をさせる担任二人と応援のプロヒーロー二人に引き連れられた補習組はプレハブ前まで来ていた。

 

他のクラスメイトは肝試し中なのに自分達はこれから補習なのだと全員の顔は暗い。

 

「補習いやぁ。肝試ししたいよぉ」

 

往生際が悪く駄々をこね涙ぐむ芦戸。

そんな芦戸を誰も相手をしなかった。

一人を除いて

 

「いやいや。どのみち僕達はこの肝試しに参加できないからね?」

 

個性は尻尾だけで見掛け地味だが格闘戦では地味に強い。地味で地味な少年の尾白が肌色からある意味真逆に派手な芦戸に話しかけていた。

 

しかしそれは可笑しな光景だ。

 

補習の芦戸はともなく尾白は肝試しの参加者として出発した筈なのだから。

 

「参加でないってお前は違うじゃねーか。というか尾白お前なんでいるんだよ。俺たちと違って補習無くて肝試しに参加できるお前がよー」

 

妬むような声で肝試しに参加できなかった上鳴が絡むように尾白に話している。

 

「ま、まさか芦戸に会いに!最近芦戸とイヤに仲が良いけど付き合ってるとか無いよな!?」

 

それはもう尾白がこの合宿中に何度も聞かれてウンザリしてる質問だった。

 

「それは違うって何度も………」

 

尾白は否定しようとして言葉を止めた。

 

「ふぅ、もう良いか。いい加減何度も否定するのも面倒だったしちょうどいいや。そっちもいい?」

 

「え!やっぱり!付き合ってんの」

 

そんな上鳴の声を無視し尾白は芦戸を見ている

 

「むー残念だなー」

 

「は?何いってんの?」

 

「本当に残念だけどもう…………始まりの時間だ」

 

最後の言葉。

 

腹に響くような野太い声。

 

それは明らかに尾白の声じゃなかった。

 

「え、尾白、なに変な声をだしてるんだ」

 

「上鳴!!ソイツから距離をとれ!!」

 

上鳴はなにも感じなかったが偶々声が聞こえたイレイザーヘッド、相澤は即座に反応した。

上鳴は訳が判らないが教師の怒声に反射的に距離をとった。

 

「イレイザーどうした!」

 

相澤の叫びに、組担任のブラッドキングに応援のプロヒーロー二人が即座に駆け付ける。それを尾白に見える誰かは感心した顔をで見ていた。

 

「反応が早い。流石は雄英のヒーローか」

 

「……おいおい生徒に化けてやがったのか」

 

「それか操られてるかだ」

 

その言葉を聞けば尾白が別人か何者かに操られてのだと気付かざる得ない。尾白を相澤とブラッドキング、応援のプロヒーロー二人が囲んだ。

 

「いや洗脳系なら大体は俺の個性で消せるだろう。個性を使ってるがなんの変化もない」

 

「つまり化けてるってことか」

 

個性で別人に成り済ましてるとすれば先ず非戦闘系の個性、バレた状態で実力では上位に位置するプロヒーロー四人に囲まれた。戦闘能力のあるヴィランでも絶対絶命という状況下、しかし尾白の表情に変化がない。それがひどく不気味に見えた。

 

 

「お前は誰だ。ヴィラン連合の奴か。尾白をどうした!」

 

ヴィラン連合と言う言葉に更に空気は緊迫した。

 

「私はヴィラン連合じゃないよ。それと尾白くんは無事だ」

 

その言葉を四人とも信じてない表情で受け止めた。尾白は仕方ないとばかりに肩をすくめた。

 

「……ならお前はなんだ。なぜ尾白の姿を使って此処にいる」

 

「生徒の姿を使うな。本当の姿を見せろ!」

 

それに尾白は笑い次の言葉をいった。

 

「本当の姿にならないほうが君達のためだと思うんだがな」

 

「……なに?」

 

それはヴィランの適当な言葉の筈だ。

なのにとても意識に引っ掛かった。

 

「見せてほしいのか?」

 

「「…………」」

 

相手が正体を見せるというなら考える余地もない事だ。なのにプロヒーローが四人とも言葉につまったように沈黙した。少し離れた場所でプロの邪魔をしてはダメだと黙っている生徒は、教師とプロの可笑しな反応に戸惑っていた。

 

 

沈黙のあと

 

 

「…………ああ」

 

頷いてしまった。

 

 

 

 

「見せろというなら仕方ない。少し危ないから気を付けろ」

 

「うわ!なんだ!」

 

瞬間に起きた尾白を中心とした空の雲まで散らす猛烈な突風。相澤は個性による攻撃だと猛烈な風の中で目を開き個性を発動するが風は止まらない。

 

「…な…なんだこの風は…!」

 

ドンドンと増していく気配の圧力にプロですら足を後退させていく。流れる冷や汗、高鳴る鼓動、生き物としての本能がこの場の全員に逃げろと叫んでいた。

 

そしてミリミリと言う不気味な音とともに尾白の体が膨張する。服は千切れるように破れ皮膚は黒い斑点の入った硬質な緑のモノになり顔は化物としか言えないモノとなる。尾白のとは明らかに違う緑の注射器の様な尻尾が波打ち大木を折った。

 

 

姿を見せろと言ったことを後悔した。

 

その姿は全員が良く知っていた。

 

最悪に悪い意味で。

  

 

脳が相手を理解したとき生徒だけでなくプロヒーローさえ声で心で悲鳴を上げた。

 

 

「ふぅやはり本当の姿が一番スッキリする」

 

 

「…う、うそだろ」

 

 

大小あれプロも教師も生徒も全員が震えていた。

 

 

「その反応からしてご存知なのが大半らしいが、改めて自己紹介をしようか。どうもヒーローの皆さん、私はセルという」

 

簡単な自己紹介だがその名前は核弾頭よりも重い。

 

人喰いの悪魔セル、世界で最も有名と言っても過言でない災厄のヴィランの名前。この悪魔は国の名高いヒーローごと軍隊すら殲滅し国を滅ぼした実績がある。世界から敵(ヴィラン)と認識され多数の国々が協力して討伐に乗り出したが未だに健在でいた。

 

例えオールマイトでも戦闘になれば終わりだと確信できてしまう化け物を前に、全員が肉食動物と遭遇した草食動物のように硬直していた。

 

「…………尾白は無事なのか」

 

そんな中で相澤は担任としての意地で声を出す事ができた。無事か聞いているが、最強最悪と呼ばれるヴィランに姿を借りられた生徒がどうなるか。相澤達の顔色は生存を絶望視していることを示していた。

 

しかし聞かれたセルは笑い声でいった。

苦笑だろうか。

 

「ついさっき無事だと言っただろう。気絶させて監禁したが他にはなにもしてない。彼には後で合宿参加の機会を奪ってしまって申し訳ないと伝えておいてくれ」

 

見下したような慇懃な言葉に聞こえる。しかし嘘をついてるとは思えない。強さの差からいって相手に嘘をつく必要もない。完全には信用はできないが生徒の生存の可能性に安堵し余裕が少しでき気付いた。

 

合宿初日の夜に話したことをだ。セルは対話をした相手を殺した記録は殆どない。恐怖は無くならないが確実に死ぬという予感は無くなった。

 

「……伝えろと言ったが尾白はどこにいる」

 

「この紙の場所に監禁してある。後で迎えにいくといい」 

 

セルは相澤に紙を投げ渡した。

受け取った紙に書かれた住所部分だけを見て相澤はセルに視点を戻す。

 

「お前は何をしにここに来た。尾白に化けて何が目的だ」 

 

冷静に考える事ができれば殺害や破壊系統の目的とは思うこともない。何故なら雄英は日本国内では屈指のヒーロー学校だが、目の前の化物なら潜入なんてしなくても破壊などの目的なら真正面から攻めるだけで終わるからだ。セルの先程から面白そうな様子にただの愉快犯という可能性が頭に浮かんだ。

 

「別に私には狙いはないよ?私はただの見学者だ。この合宿で私から君達に危害を加える気はない。だから尾白くんも気絶で済ませた。君達が私に攻撃でもしてこないなら君達に何もしない事を誓ってもいい」

 

その返答に生徒が半信半疑ながら安堵してしまったがプロヒーローは違う。

 

見学者。

 

つまりこの場で見学するような何かが起こるという事だ。

 

…遠くから騒音が聞こえた。

 

「始まったようだな。では私は見学に向かわせて貰うよ。サヨウナラ」

 

そう言うとセルは消えるように暗い森の中に入っていた。聞きたいことはあったはずだが全員がセルが消えるまで無言で見送った。

セルが完全に消えてから数秒後、遠くから聞こえた大きな音にまるで意識が戻った様に慌て出した。

 

「ブラド!アンタは二人と生徒をプレハブの中に避難させてくれ!俺は向こうの様子を見てくる!」

 

「……わかった気をつけろよ!」

 

ブラドキングは迷ったように言葉につまったが相澤にそう答えた。

 

「ソチラもな。上鳴、これを預かっておいてくれ。尾白が監禁された場所らしい」

 

「え、先生!」

 

相澤は紙を押し付けるように上鳴に渡すと騒音が聞こえた方角に走りだした。

 

相澤の姿が見えなくなった後に上鳴はなんとなしに紙を見た。

 

『監禁した場所は○○町の○番地○○○。

食料と水は二人で二週間分ぐらいは置いていたが早めに出してやるといい。二週間経っても君達が出せない場合は私が出しておくから安心してくれ』

 

上鳴はその紙の内容に有ることを思いだし顔を青ざめさせた。

 

「あ、芦戸、芦戸がいない!?」

 

「なに!」  

 

芦戸は補習組として此処にいた筈、それが姿を消した。ブラドキングは芦戸に何かあったのかと考えた。

 

「いやいや!違うんです!」

 

上鳴はブラドキングの誤解を察した。

芦戸が危険という考えは同じだが認識は加害者と被害者のような真逆の意味で違う。

 

上鳴は焦っていた。

この合宿から不自然にあの尾白と仲の良くなっていた芦戸が一番可能性が高いからだ。

 

「違うとはなにがだ」

 

「こ、これ見てください!」

 

上鳴はブラドキングに紙を見せた。

 

『監禁した場所は○○町の○番地○○○。

食料と水は二人で二週間分ぐらいは置いていたが早めに出してやるといい。 二週間経っても君達が出せない場合は私が出しておくから安心してくれ』

 

「これは」

 

ブラドキングは上鳴の焦りの理由を察した。

渡された紙に書かれたこれを見ればその可能性が自然と思い付く。

 

監禁されているのは二人。

 

 

姿を借りられていたのは尾白だけじゃないと。

 




(初期容姿の)セル  

再生能力。  
サイヤ人特性 
吸収能力
吸収した相手の個性を知っていれば使用可能。 
戦闘力が下の相手の特殊個性は大体効かない。
 
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