早朝の人通りのない路地裏で全力で刀を振るう男に素手で立ち向かう少年。真正面から振り下ろされる刃を両手で挟み込む真剣白刃取りで防ぎ、刃を挟んだ両手を傾けて相手の体勢を崩すと、しなる鞭の様な上段廻し蹴りを男の首へと叩き込もうとするが、刀を手放して瞬時にナイフに持ち換えていた男が蹴りの軌道上にナイフを構えていたので蹴りを止める。両手に挟み込んでいた刀を手放して自由になった両手で男のナイフ攻撃を捌いていく。少年はナイフを振るう男の手首を掴み取り、捻り上げてナイフを手放させてから投げると、投げられながら男が棘の生えた靴で突き出す様な蹴りを繰り出してきたので、蹴りを潜り抜けて躱し中段の廻し蹴りを放つとそれは男の腹部に直撃。尋常ではない威力の少年が放った蹴りは確実に男にダメージを与えていた。蹴りを受けて吹き飛びながらも体勢を立て直し着地した男は新たな得物として折りたたみ式のナイフを取り出して構える。一息で間合いを詰めた男のナイフによる突きが少年の急所を狙い連続で放たれた。半身になり突きを回避していく少年は男に接近し拳で体当たりするかの様な一撃を繰り出して、男の脇腹を撃ち抜く。放たれた拳打の威力は並ではなく、吹っ飛んだ男は壁に叩きつけられる。それでも怯まない男は両手に折りたたみ式のナイフを持ち、少年に襲いかかった。渾身の力で振るわれる刃を避けながら、男へと小刻みに拳を叩き込んでいく少年。放たれた拳の連撃が男を痛め付けていこうが、男は止まらない。縦横無尽に刃を振るう男に、全てを躱しきった少年の飛び膝蹴りが叩き込まれて、ようやく決着の一撃となった。失神して地面に倒れ込んでいた男が目覚めて、自分に手を差し伸べている少年の手を取り立ち上がる。
「腕に衰えはないようだなグリーン」
「レッドさんも本気で斬りにきてましたからいい訓練になりましたよ」
1つ間違えれば大怪我では済まない過激な手合わせを終えた2人は和やかに会話を始めた。地に落ちた刀やナイフを拾い上げて鞘に納めながら男は口を開く。
「ドクターの隠れ家が判明する時は近い」
「絞り込むのにもう少し時間がかかると情報提供者は言っていましたが、そろそろですか」
「いつでも出られるように用意はしておけ」
「わかりました」
「全ては」
「より良き世界の為に、ですね」
言葉を交わして路地裏で別れた男と少年。少年は顔に巻いていた包帯を外すと笑みを浮かべた。
「体育祭前の軽い運動にはなったかな」
1
雄英体育祭が開催され、18禁ヒーローのミッドナイトに選手宣誓を任される緑谷出久。台に立ち口を開いた緑谷は宣誓の言葉を言い終えると「僕には個性がありません。無個性というやつです。しかしそれでも入試の成績で1位を取りました。個性があるからヒーローなのかと言えば、それは違うと僕は思います。ヒーローとは自分以外の誰かの為に戦える人で、助けを求められたらそれに瞬時に応えられるような人。余計なお節介だと言われても綺麗事だと言われても、それを実践するのがヒーローだと僕は思います。長々と語りましたが、僕はヒーローになることが夢でした。無個性でもヒーローになることができると証明する、その為にも結果を出そうと思っています。勝負ですよ皆さん。僕は負けません。」笑顔で宣戦布告をした緑谷に「上等だ!」「負けねぇぞ!」「クソデクがぁぁぁぁ!」などと声が上がる。第1種目の障害物競争が開始された直後に轟の個性による氷結が行われて、足止めされた者達がいる中で1年A組は氷結を全員回避していた。直ぐ様先頭の轟を追い越した緑谷は第1関門のロボ・インフェルノをロボを潜り抜けて躱す。続けて第2関門のザ・フォールという名の綱渡りを綱を渡らずに見事な跳躍力で跳び越えて進んでいく。最終関門の地雷原を地雷が埋まっていない場所を瞬時に判断して走り抜けて、圧倒的な速さで1位でスタジアムにまで戻ってきた緑谷出久。2位が轟、3位が凄い顔した爆豪となった。第2種目は騎馬戦となり障害物競争の順位に応じたポイントが配布されることになる。1位だった緑谷出久は1000万ポイントとなって周囲の視線が緑谷に集中したが、緑谷は笑顔で視線を受け止めた。そんな緑谷に近付く人影が1人。
2
そろそろ始まる騎馬戦で緑谷が組んだメンバーは麗日さんと発目さんに常闇くんだった。発目さんが開発したサポートアイテムを装着した緑谷と麗日さん。開始された騎馬戦で狙われまくる緑谷チーム。緑谷が装着したサポートアイテムのジェットパックで空を飛び、空中へ逃げる緑谷チームに伸ばされた耳郎さんのイヤホンジャックを常闇くんのダークシャドウが弾く。サポートアイテムのブーツを装着した麗日さんから安全に着地して、サポートアイテムのことをベイビーと言う発目さんがベイビーはどうですかと言ってくるので凄いよベイビーと緑谷が感想を言うと発目さんは嬉しそうだった。何故か面白くなさそうな顔をしている麗日さんに緑谷が、峰田くんの頭のモギモギが設置されてるから踏まないように気をつけてと言うと、麗日さんは慌てて回避する。障子くんが1人で騎馬となり峰田と蛙吹さんの2人を腕で覆っている守りの堅い騎馬が突っ込んできてジェットパックで再び逃げる緑谷チーム。そんな緑谷チームに爆破で空を飛び近寄っていた爆豪が調子乗ってんじゃねぇぞクソデクがぁ!と言いながら襲いかかってきたので緑谷が拳で爆豪を撃墜すると地面に墜落する前に瀬呂くんのセロハンテープが爆豪をキャッチしていた。キャッチされた爆豪はB組の物間にハチマキを奪われた上で挑発されて簡単に激怒して一時的にターゲットを物間に変更したようだ。そして遂に緑谷チームの前に轟チームが現れる。放たれた轟チームの上鳴くんの無差別放電によりジェットパックがイカれた緑谷。轟チームを襲おうとしていた他のチームが放電で動きを止められている間に轟の個性で足を凍らせられていた。完全に動きを止められた他のチームからハチマキを奪い取った轟チームは緑谷チームに猛追。常闇くんのダークシャドウで牽制をかけるが八百万さんの創造した装甲で防がれる。破れていた筈の装甲が破れない程度には、先程の上鳴くんの電光でダークシャドウが弱まっていると常闇くんは緑谷に報告した。相手の轟チームにバレてないなら牽制にはなるからこのままいけると緑谷は判断。常に距離をおいて左側に移動する緑谷チームに苦戦する轟チーム。残り1分弱となった騎馬戦の時間、飯田くんが切り札を切るようだった。トルクオーバー!レシプロバーストと言って超高速で接近してくる飯田くんを先頭にした騎馬。緑谷はその超高速に対応して伸ばされた轟の手を防ぎきった。1000万ポイントを守りきった緑谷出久。
完全に機動力が低下した轟チームは、それでも緑谷チームを狙うが時間切れとなる。物間チームから得点を全て奪い取った爆豪チームも近づいてきていたが時間切れで爆豪が地面に倒れ込んでいた。1位が緑谷チームで2位が轟チーム3位が爆豪チーム4位が心操チームとなっている。1時間ほど昼休憩を挟んでから午後の部が始まるようだ。そんな休憩の最中、緑谷は轟に呼び出されていた。クラスメート程度にしか意識はしていなかったが、体育祭で俺は無個性のお前に負け続けてると言い出した轟は自分のことを語り始めた。自身の個性をより強化して継がせる為だけに配偶者を選び結婚を強いる倫理観の欠落した前時代的発想が個性婚。自分はその個性婚で生まれたと轟は言い、自分をオールマイト以上のヒーローにすることで自身の欲求を満たそうとする父親を屑と言い放ち、そんな屑の道具にはならねぇと語る轟。記憶の中の母は常に泣いていて、おかしくなってしまった母は「お前の左側が醜い」と煮え湯を浴びせたと、自身の顔の火傷痕の原因を緑谷に教えた轟は、ざっと話したが自分が緑谷につっかかるのは見返す為だと言う。クソ親父の個性なんて使わず1番になることで奴を完全に否定すると言いきった轟。右の力だけでお前の上を行くと言って立ち去ろうとする轟に緑谷が口を開く「僕は無個性に生んでごめんねって母親に泣かれたりもしたけど君と違って家族仲は良好で喧嘩もしたことないから仲の悪い家族がいることは知ってはいたけど、そこまで家族関係が拗れている家も珍しいっちゃ珍しいね。君のお父さんにとって何が1番大打撃かと言うと、君がヴィランになることだと思うけど、そういう発想がなくてヒーローとして1番を目指すということになったのには何か理由があるんじゃないかな。何で君はヒーローになりたいのかな轟くん。それを考えてみることも必要だと思うよ。後はそうだね、多分君のお母さんは精神的に追い詰められて病院に入院してると思うから、会いに行ってあげたらどうかな。人間なんていつ死ぬか解らないんだし、生きてる内に会いに行った方が良いと思うよ僕はね。それでまあ思ってることを全部お母さんに話してみるといいよ。多分入院してだいぶ時間が経ってるからお母さんも落ち着いてるだろうし、ちゃんと話ができる状態になってると思うから大丈夫。とりあえず僕から言えることはそれくらいかな。ああ、それと僕も全力で勝ちに行くからよろしくね轟くん」
そう言って緑谷は笑みを浮かべた。轟は少し黙った後、考えてみると言って立ち去る。轟が立ち去った後、緑谷は「爆豪くん、盗み聞きは良くないよ」とだけ言って昼を食べに行く。隠れて話を聞いていた爆豪が気付いてたんかデクと言って出てきた。
3
最終種目のトーナメントが始まり緑谷の相手は心操となる。尾白から忠告を受けていた緑谷は心操が何を言おうと無視して心操を場外にあっさりと投げ飛ばす。第1試合は終了となり緑谷の勝利。そこで初めて口を開いた緑谷は心操に「洗脳は相手を傷つけないで捕縛できるヒーロー向きの個性だけどヒーロー目指すなら身体をもっと鍛えないと駄目だよ。一芸だけじゃヒーローは務まらないからね」と言っておく。心操は無個性で最終種目までに残った緑谷にそう言われて何か実感するものがあったようだ。続いて始まる試合の数々。勝ち抜いて上がってきた面々が出揃い。2回戦が始まる。緑谷の相手は轟となり個性による氷塊が迫りくる中で、己の拳足のみで氷塊を砕いて突き進む緑谷のアッパーが轟の顎に叩き込まれ、宙に浮く轟の腹部に追撃の中段前蹴りが直撃して場外に近付く轟は個性を発動させて氷で壁を作り場外に吹き飛ぶことを防いだ。しかし緑谷の追撃は止まらず、連続で放たれた緑谷の攻撃に耐えきれず氷の壁が砕けて轟は場外に押しやられた。そこで決着となり緑谷は3回戦進出となる。更に試合は進みベスト4が決まった。緑谷の次の相手は飯田くんとなり開幕直後にレシプロバーストで勝負を決めにきた飯田くんの動きに対応する緑谷。飯田くんの高速の蹴り技をことごとく躱し、反撃の拳を叩き込んでいく緑谷出久。レシプロバーストの制限時間が過ぎたところで飯田くんを場外に投げ飛ばした緑谷。それで決着となって緑谷は決勝進出となる。最後の決勝戦の相手は常闇くんを破った爆豪となった。全力でてめえを捩じ伏せると言い出す爆豪に緑谷はできもしないことを言わない方が良いよと言う。始まった決勝戦、爆破で加速して突っ込んできた爆豪の放つ右手の爆破を躱しざまに合わせた緑谷の右拳は、正確に爆豪の顎の先端を捕らえ脳を頭骨内壁に激突させ、あたかもピンボールゲームの如く頭骨内での振動激突を繰り返し生じさせ、典型的な脳震盪の症状をつくり出した。さらには既に意識を分断された爆豪の下顎へダメ押しの左アッパー。崩れ落ちる体勢を利用した左背足による廻し蹴りは爆豪を更なる遠い世界へと連れ去り、全てを終わらせた。その間実に2秒。
決着が決まった決勝戦。続いて表彰式が始まりオールマイトによるメダル授与が行われる。3位の飯田くん常闇くんときて2位の爆豪は珍しく大人しい。よほど秒殺がショックだったようだ。オールマイトにおめでとう緑谷少年と1位のメダルを授与された緑谷出久。ありがとうございますと言いながら授与されたメダルをじっと眺める緑谷。体育祭に優勝することができて嬉しいという気持ちがある緑谷は無個性のヒーローを目指す第一歩を踏み出せたと感じている。最後にオールマイトが大きな声でお疲れさまでしたと言う、ずれたところを見せつけるということもあったが、雄英体育祭はこうして終わりを迎えた。