「くそっ・・・・・」
太陽が背中を焼き付ける。
「どうした?大口を叩くわりにそこまで強くないね」
目の前の男はそう嗤う。
少年は乱れた息を必死に整えながら
「アホ抜かせ、お前だって相当疲れてるように見えるぞ?」
と言って刀を強く握り、構える。
強がってはいるが結構限界に近い。
加えて目の前にいる男は、一つ足りとも呼吸を乱してはいない。
「(こんなとき、あの呼吸が使えれば・・・・・)」
目の前には一般の男性の形をした異形の鬼が立っている。
鬼は太陽に弱い。
そして今も太陽が鬱陶しいほど地面に差し込んでくるが、室内となれば話は別。
この鬼は地面から土竜のように下から突然現れた。
そして民家を我が領域と言わんばかりに、一歩も動かず牽制している。
鬼も太陽に当たらなければどうってことは無いので、普通にピンピンしている。
「マジで、早く死んでくれねぇかな・・・・・」
「そんな悲しいこと言うなよ~、俺はもう少し楽しみたいんだけどな」
鬼は不適な笑みを浮かべながらも、俺を観察しているようだった。
「クソッ」
少年は相手の鬼に向かって斬りかかった。
「煙の呼吸 壱ノ型 散!!」
まるで煙に巻いたように相手を撹乱させる技。
特殊な歩法と構えでそう見せる。
「だからなー、そんな子供だまし効かないって~」
だがこの鬼には通用しない。
きっと踏んできた場数が違うんだ。
と突然視界に鬼の手が映った。
「!!ッ」
咄嗟に身体を回転させて避けるが、頬から血が伝い、下へと垂れていく。
「マジでめんどくせぇな!!ッ」
「そう言うなよ。ほら…」
ー血鬼術 土うねりー
床がまるで水のようにグネングネンと波立てる。
俺は真上にジャンプして回避したが、その瞬間、俺の目に構えながら笑う鬼が映った。
鬼の放った土の槍が、少年の横腹を貫く。
「!!ッ」
「あれ?もうすぐチェックメイトかな?」
鬼が無邪気に嗤う。
「ぐ・・・・・そッ!!」
俺はもう一度剣を構え、鬼を睨み付ける。
が、その目線は鬼を視界に捉えるのもやっとだった。
「まあ、これで負けたとしても別に恥じゃないぞ?」
鬼は髪に隠れた右目を俺に見せる。
その瞳には『下壱』と書かれていた。
「ホラ、下弦の壱相手じゃあ倒せないのも無理はない」
「だ、黙りやがれ。俺は倒すんだよ。俺をこんな目に遭わせたアイツを、ソレに従っているお前も!」
「良いなあ、その眼。
……ほじくり出したいぐらいだ」
鬼は下から上へ、まるで引っ掻くかのように手を振り上げた。
それと同時にもう一度鬼に斬りかかる。
「煙の呼吸、弐ノ型 斬!」
煙のように撒いて四方八方から斬りかかる技。
「無理だよ君には……」
ー血鬼術
突然床から土で出来た龍が四体も飛び出してくる。
その四体の龍は家の屋根を突き破った。
「なッ!!」
俺は咄嗟に距離をとった。
そんな少年の行動そっちのけで、鬼は何かしら考え事をしている素振りをした。
「ん~、これで死んでしまうのは少し、惜しいな」
「??!?(何を言ってやがる・・・・?)」
その瞬間、出てきたはずの土の龍が床に戻っていった。
「止めた!坊主、名は何と言う?」
「・・・・・・
「そうか、俺は
「・・・・・は?、待ちやがれ!」
理解ができなかった。
正直みとめたくはないが、端から見てもこちらの方が明らかに劣勢だ。
しかもこの鬼はまだ本気を出していないようにも見える。
勢いよく息を吹けば吹き飛ぶ埃を前に、この鬼は引き返すと言うのだ。
「じゃあな、次会うときは柱くらいにはなってろよ?」
そう言って床を叩くと鬼は、床の中へとどんどん埋まっていった。
「!??」
そして鬼はそのまま姿を消す。
「くっそがぁぁぁぁっ!!」
響玄は叫びながらも膝から力なく倒れていった。