あの一つ目の妖怪、見上げ入道(思い出した)の起こした騒ぎから数日が経った。
そんな中、現在火黒は重大な危機に直面していた。
「腹…減ったな…」
ここ数日は水だけでしのいでいたが、それも限界に近づいていた。
「何か盗むってのはなあ」
元が一般人のためか、盗むなどの犯罪行為をすることはしたくない。
「どうしようかねえ…ん?」
悩みながら歩いていると妙なものを見つけた。
「柱?どうも怪しいなあ?」
工事中の施設の真ん中に一から一二と書かれた石柱が立っており、誰が見ても明らかに不自然であった。
「この声……中に子供が入っているのか?」
微かに聞こえる助けを呼ぶ声が聞こえ、火黒はどうすべきか考える。
「今出しても、別の人間が狙われるしどうしよっかな~」
今子供を助け出しても、こんなことした奴はおそらくすぐに別の子供を石柱に入れるはずだ。
「こういうのは敵の目的が完遂した後に助け出すの一番かな」
そうと決まればやることは決まった。
「しばらくの間待つことにするか」
それから施設の近くで待つこと夜になり、眠りこけていた俺は濃密な妖気に目を覚ました。
「へえーまさか城を建てるとはね」
先程まであった施設の姿はなく、そこには城が建っていた。
「ま、とりあえず入ってみるか」
火黒は塀を飛び越えると突然風の刃が向かって来た。
「おっと」
風の刃を避けて見ると、風の刃を飛ばしてきた変わった口の妖怪がいた。
「てめえ何者だ!?」
「俺?俺は火黒。よろしく」
「火黒?聞いたことねえ名前だな。何しにきやがった?」
目の前の妖怪と話しながらも、火黒は一体どんな妖怪だったのか思い出す。
「(あ~かまいたちだっけ)ちょっとここの柱に用があるだけさ」
「何!となると敵か!」
敵とわかるとかまいたちは再び風の刃を飛ばしてきた。
「よっと、危ない危ない」
風の刃を避けると刀を一本出してかまいたちに一瞬で近づいて両断した。
「やっぱり火黒の力って凄いな…」
先程のように一瞬で接近できる行動力に、見上げ入道やかまいたちを簡単に斬ることができる力。
どれをとっても凄すぎるものである。
「さ~て、ちゃちゃっと行きますか」
石柱を探しに行こうとすると、後ろから何か飛んできて咄嗟に避けた。
「お~まだいたんだ」
そこには顔だけのでかい妖怪と着物を着て髪が蛇の女の妖怪に、先程斬ったかまいたちがいた。
しかし、復活したと思われるかまいたちは未だに両断されたままの状態だった。
「(あ、そっか!火黒の刀で斬られたら妖怪でも再生することは難しいんだっけ?)」
「何故同じ妖怪である貴様が我らの邪魔をする!」
顔だけの妖怪たんたん坊に聞かれ、火黒は意識を彼らに戻す。
「何故って?ただの気まぐれ」
火黒ならそう言いそうだなと思い、にっと笑いながら言うとたんたん坊達はその言葉に怒りをあらわにする。
「気まぐれ…だと!貴様の気まぐれで我らの悲願を邪魔されてたまるものか!!」
たんたん坊は口から何かを飛ばし、着物の女の妖怪二口女は髪の蛇で、かまいたちは両断された状態でもどうにか風の刃を飛ばして攻撃してきた。
「おっわ!ばっちいな~」
口から飛ばしてきた粘体と蛇と風の刃を避けると、両手から刀を出す。
「あまりちんたらしてると面倒なのが来るからさ。…ちょっと本気でいくよ」
そう言うやいなや三体の視界から消える。
「何処に消えた!?」
「ここだよ」
一瞬で背後に回った火黒は二本の刀でたんたん坊と二口女を斬る。
「さて、それじゃゆっくりと探させてもらうよ」
復活するとしても再生が困難な状態では敵ではない為、火黒は石柱を探すことにした。
「う~ん。とはいえどこから探すか…」
城を隈なく探すにしても時間が掛かるため、どう探そうかと考えて下を見るとピーンと閃いた。
「試してみようかっと!」
刀を一本出すと妖力を込めて地面に突き刺す。
すると地面が崩れ、下は空洞になっており中には十三本の石柱があった。
「おーおー。こうも簡単に見つかるとは幸先いいねえ~」
そして、開けた穴から降りて真ん中の一三と書かれた柱を根元から斬る。
すると中から一人の少女が出てきて落ちてきた。
咄嗟に刀を戻して落ちてきた少女を受け止める。
少女を受け止めたはいいものの、どうすべきか考えていると少女が気が付いたようだ。
「貴方、は…誰…?」
どう答えるべきか悩んでいると、火黒が開けた穴から誰かが降りてきた。
確認すると降りてきたのは鬼太郎だった。
また鬼太郎に会えたことに内心驚きながらも、どうにか平静を保つ。
「お~遅かったね」
「お前が…火黒だな?」
「そうだよ。初めましてかな、ゲゲゲの鬼太郎」
「その子を返してもらおう」
その子とは今抱きかかえている少女の事だろう。
「嫌だと…言ったら」
にっと笑いながら冗談を言うと、鬼太郎はすぐさま行動する。
「髪の毛針!」
鬼太郎お得意の髪の毛針が飛んできて、火黒は少女を傷つけないように避ける。
「くっ!リモコン下駄!」
今度は下駄を飛ばしてきて、避けようとしてもリモコン操作で追尾してくるので、少女を抱えていない手から刀を出して斬らないように峰で打ち返す。
「くそっ!霊毛ちゃんちゃんこ!」
打ち返された下駄を履きなおし、今度はちゃんちゃんこを腕に纏って殴りつけてきた。
拳を先程と同じように峰で受け止め、鬼太郎を弾き返す。
「うわっ!」
「ちゃんちゃんこを腕に纏わせて攻撃力と防御力を上げたのはいいけど、まだまだだね~」
刀に罅を入れたことは凄いが、折ることまではいかなかった。
「それとさ…君、何か勘違いしてない?」
「勘違い?」
「そっ。別に嫌だと言ったらって言っただけだよ」
返さないとは言っていない為、返す意思はあるということだ。
先程の戦いで気絶してしまった少女を鬼太郎に近づいて渡す。
「お前は…一体?」
火黒の行動に鬼太郎は困惑するばかりである。
「あ、それとさ!」
「…今度は何だ?」
我に返った鬼太郎は警戒しながらも聞く。
「その子が大切なのはわかるけどさ~。攻撃するにしてもその子を傷つけるよなことしちゃ駄目だと思うんだよね」
そう言って火黒は姿を消した。
残された鬼太郎は火黒の言葉に打ちのめされた。
髪の毛針やちゃんちゃんこでの攻撃は一歩間違えれば、少女を傷つけてしまいかねないものだったからだ。
鬼太郎は少女を助け、自分そんな言葉をかけた火黒という妖怪がわからなくなった。