電波女、青春男   作:すなどけー

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 あの日から、俺とエリオの関係はパタリと途切れた。電源を切ったテレビが砂嵐の画面すら映さなくなったように。

 

 あちらからこちらに絡んでくることはないし、俺からもエリオに話しかけることはない。まあ話かけたところで以前と同じようにもふもふと電波信号を垂れ流すだけだろうが。

 

 同じ家に住んでいるのに、関係がないとは妙なものである。

 

 女々さんはスマキンをいないものとして扱うし、俺も次第にその扱いに慣れていった。

 

 ちょっとした胸のもやもやを感じながらの生活が続いたが、時の流れとは偉大なもので、いつの間にか普段通りの生活が送れるようになっていた。

 

 布団を巻いたあいつは、ずっとそのままで。俺も、特にこれといって変わることもなく。

 

 青春ポイントとしてはリュウシさんや前川さんが居れば十分すぎた。後は女々さんも積極的に、ほんと何でそんな登場回数多いのってレベルで絡んでくるが、そこは割愛。

 

 そう言えば女々さんは、最初に会った時より少しずつしわが増えているような気がする。やっぱり自分の娘が布団を巻いて更に部屋にこもっていることに思うところがあるんだろう。

 

 だがまあ俺には関係ない。君子危うきに近寄らず、青春男、電波女に近寄らずだ。

 

 胸にまたもやっとした何かが浮かんだが、すぐに消えた。

 

「おや、考えごとかい。転校生」

 

 俺が窓の外を眺めて暇そうにしているのを見つけた前川さんが話しかけてきた。

 

 座っている状態で立った状態の前川さんを見上げると、中々の圧迫感を感じる。

 

「ん。いや、ただぼーっとしてただけだよ」

 

「そうかい。……ところで転校生は夏休みに用事があるかい」

 

 にわかに香る青春ポイントの香りを敏感に察知しながら、少し頭に予定があったか考えをめぐらせてから答える。

 

「今のところは何もないかな」

 

 今のところは、と付け加えてしまうあたりに自分の小さなプライドが見え隠れているなと自分で自分に苦笑する。見栄隠れとも言う。

 

 前川さんはそれを見透かしたような不敵な態度でふふっと笑って切り出してきた。

 

「それなら、野球をしないかい」

 

 

 

 

 ――こうして。俺の毎日は進んでいく。

 

 エリオと関わることもなく、平然と、緩慢に。

 

 夏休みは前川さんに誘われて野球をした。

 

 そしてリュウシさんとお祭りに行った。

 

 青春ポイントは順調にに貯まり、穏やかな日々が続く。

 

 これ以上ないくらい満たされているはずなのに、ちょっとした物足りなさを感じながら。そのうっすらと感じている何かの正体を掴むこともなく、時間は容赦なく過ぎ去って。

 

 

 その時が来た。

 

 来てしまったともいう。

 

 目を逸らしていた全てが、最悪に近い形で逸らせないほど近く、現実として表れる。

 

 もう少しで文化祭が来ようとしている休日。

 

 女々さんから電話があり、それは告げられた。

 

「―――エリオが!」

 

 声色にいつものふざけた態度は一切なく、それが事態の異常さを如実に表していた。

 

 どうせいつものようにろくでもない用事だと思っていた俺は面食らい、次の一言を聞いても上手く頭が回らなかった。

 

 

 

「―――飛び降りちゃったの!! マンションの、屋上から!!」

 

 

 

 どこか現実感がなく。

 

 喉がカラカラと乾いて、眩暈がする。フラフラと並行感を無くす視界。背中を走る冷や汗。

 

「……え?」

 

 え? なんだ? 今なんと言った。頭の中に何度も言葉を反芻するが、理解することができない。

 

 左手に持っていた読みかけの本がバサっと落ちる。

 

 目を逸らして全ての、総決算が始まろうとしていた。

 

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