艦物語 ― 君も知らない物語 ―   作:きさらぎむつみ

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第十二話 てんりゅうブレード(参)

      005

 

 で、気付いた時にはここだった。

 ここ、というのは、僕にも何処だかわからない、薄暗く人けのない、何だか打ち捨てられた古い倉庫の中のような場所である。

 立ち上がろうとして、僕は自分の身体が置かれた状況に気が付く。

 手足には太い鎖が雁字搦めに絡みついていて、僕の身体を縛り付けていた。鎖は床板の上に垂れ下がり、その先端には大きくとても重量のありそうな錨が繋がっていた。

 自由の利かない身体では胸ポケットの懐中時計や携帯電話を取り出すこともままならない。まあ、それでも時間についての予想はつかなくもない――窓の外は薄暗いながらも、かすかに赤い光が差し込んでいて、だからきっと今は夕方なのだろうということくらいの想像はついたのだ。

 もっとも、その光が差しこむ窓も嵌ったガラスがあまりに埃をまとっているためにか細い灯りでしかないのだが。

 まるで――春の時の猿島のようだなあ。

 呑気にも、僕はそんなことを考えた。

 場所は違えど、あのときいた猿島のあばら家と酷く似通っている場所だった。あのときと違うのは、僕の身体が縛り付けられていること、くらいか。

 ありていにいって、僕は拉致監禁されてしまったようだった。どうにも脈絡のない展開で非常に申し訳ない限りなのだが、事実の認識はそういう結論に達するのだ。

 さて、どうしたものか。

 僕はずきずきとした疼痛を後頭部と腹部に感じながら(どうやら拉致される際に、その部位を殴られたらしい。腹部の方は空腹によるものもあるかもしれなかった)、場違いなくらいのんびりと考える。意外とこういうとき、人間は焦らないものなのだ。そもそも焦ったってどうにもならない。

 それよりも、僕はひどく自分に呆れかえっていたのだ。

 また――トラブルに巻き込まれてしまったのか、と。

 いや、それは正しくはないかもしれない。

 人は自ら産んだトラブルにはまずその多くに気付かないものだし、そもそもトラブルなんてものは呼び寄せなくても向こうからやってくるものなのだ。

 …………。

 春のことを思い出す。あのトラブルには自ら首を突っ込んだようなものだった。

 …………。

 夏のことを思い出す。春のトラブルがなければ、僕には係わりのなかった事態かも知れなかった。

 …………。

 ――おそらくは、今回も何かのトリガーを僕が知らぬうちに引いてしまったことが原因なのかもしれないのだ。

 もちろん、あまりに唐突に、まるで関係のないトラブルに巻き込まれてしまったということも無きにしも非ず、ではあるのだけれど。

 

「さあて、どうしたものか」

 

 そんな呟きが思わず漏れた、そんな時である。

 

「……ん」

 

 あたかも僕の声をそのタイミングとして設定していたかのように、倉庫の一角、人ひとり分が通れる扉が開き光が漏れてくる――その輝きはやはり赤くて、きっと夕陽なのだろう。そして、扉が閉じられて赤い光が途切れると、今度は白く細い光が一直線に、僕の方へと向けられた。

 眩しくて、一瞬、目がくらむ――しかしそれにも、すぐに慣れた。

 その目で、僕は見る。

 そこには。

 僕のよく見慣れた人物――艦娘の姿があった。

 

「あら。気が付いたのですね、司令」

 

 と。

 不知火。

 不知火は――いつも通りのクールな口調でにこりともせずに、無表情のままにそう言って、手に持った探照灯の光を僕へと向けた。

 

「良かったです――このまま死んでしまうんじゃないかと心配したのですよ」

 

「…………」

 

 言葉が出て来ない。

 言いたいことは山ほどあるが、その内ただの一つも、言葉としての形を成さない。僕が苦笑いにも似た表情を浮かべているのにもまるで取り合う風もなく、不知火はつかつかと僕の方へと歩み寄ってきた。

 その足取りにはまったく迷いがない。

 自分の行動に何一つ疑問を持っていない者の態度だった。

 

「だいじょうぶですか? 後頭部、痛みませんか?」

 

 探照灯を脇に置き、そんな風に訊いてくる不知火――まあ、その心遣い自体は、とても嬉しいものなのだが。

 だがしかし。

 

「不知火」

 

 僕は言った。

 

「鎖を解け」

 

「嫌ですよ」

 

 即答した。

 もう完璧に思考時間ゼロで。

 つーか……。

 怒鳴る前に、僕は酸素を補給するために、あえて一拍の呼吸を置いた。

 そして怒鳴る。

 

「やっぱお前が犯人かよ!」

 

「なるほどなかなか鋭い指摘ですね。ただし証拠があれば、の話ですけれど」

 

 推理小説の解決編にありがちな台詞を吐く不知火。もうその台詞が出た時点で犯人決定だった。

 

「監禁の方法に暁型駆逐艦の錨を使ってる時点で直感したよ! そして艦娘の装備を使って人のことを監禁しようとする思考を持った艦娘を、僕はお前以外に知らない!」

 

「さすが司令、実に面白いことを言うのですね。ちょっとメモを取らせてください。秋雲が着任した時、彼女の自費出版物の参考になるかもしれないですから」

 

「同人誌の原稿のネタになるかどうかなんてどうでもいいんだよ! さっさとこの鎖を解きやがれ!」

 

「嫌ですよ」

 

 同じ台詞を繰り返す不知火。

 探照灯のライトアップもあって、いつもの無表情の迫力は一層増していた。

 超怖い。

 不知火はその無表情のまま、もう一度「嫌ですよ」と繰り返した。

 

「そして無理ですね。その鎖はめちゃくちゃに溶接してありますから」

 

「マジで!?」

 

「そして解毒剤も捨てました」

 

「僕、毒まで盛られてるんですか!?」

 

 そら恐ろしい話だった。

 不知火は、ここでわずかに口角を上げて笑みらしきものを見せながら僕を見下ろし、

 

「解毒剤は嘘です」

 

「……まあ、解毒剤が嘘なのは良しとするべきか……」

 

「ええ。ご安心を。捨ててませんから」

 

「毒盛ったのはホントなのかよ!」

 

「毒も嘘です。ただし――司令があまり聞き分けのないようだと、本当になるかもしれませんね」

 

「…………」

 

 こえー。

 マジでこえー。

 

「蝶にように舞い、花のように刺します」

 

「それは育てられ方だ!」

 

 よほどのお嬢様だったのだろうか、不知火は。

 

「間違えたわ。零式艦上機のように舞い、九七式艦攻のように刺すのでした」

 

「お前は空母じゃねえだろ!」

 

「さすがは司令、不知火との勉強の成果でしょうか。よかったですね、不知火の落ち度を指摘できるまでになるとは。生涯誇って良いですよ」

 

「なんだその斬新な褒め方!」

 

「正しくは、酸素魚雷で刺すのです」

 

「酸素魚雷は――強いよな……」

 

 僕はごくりと唾を飲み込んで、改めて目の前の艦娘――不知火を見る。

 

「……なんでいきなり自分の指揮官を監禁してんだよ、お前は――」

 

「安心してください」

 

 不知火は言った。

 僕の話とは見事に噛み合っていない受け答えである。

 

「安心してください。司令は不知火が守りますから」

 

「…………」

 

 怖いよー。

 恐怖だよー。

 ホラーだよー。

 

「しかし、不知火、後頭部を一撃で殴って気絶させるなんて、随分と器用な真似をしたな。確か、人を気絶させるって案外難しいことなはずだぞ」

 

「別に一撃とは言ってないですよ」

 

「あ、そうなの?」

 

「なかなか気絶させられなかったので二順目砲撃で足りずに、夜戦カットインを繰り出しました」

 

「死んでておかしくねえ!」

 

 腹部の痛みはそれでかぁ!?

 よく生きていたなあ、僕。

 もちろん、夜戦云々は不知火ジョークだとしても。

 

「まあ、拉致監禁に至る経緯は何となくわかったけれど――どうして拉致監禁なのかという理由は、まだ説明されてないよな」

 

「え? 何のことでしょうか?」

 

「何をどう誤魔化したいんだよ!」

 

 というか……。

 ここまで思い出せれば、大体のところは想像がつくものである。

 

「哀木って男」

 

 僕は言う。

 普段からほとんど存在しない、不知火の表情の変化を慎重にうかがいながら。

 

「お前の知り合いなのか」

 

「そんなことより司令、喉は渇いていませんか。カレーはどうでしょう? 確か司令は金剛型戦艦二番艦の艦娘()が作ったカレーが好物なんでしたよね」

 

「だからせめてもう少し誤魔化すための努力くらいしろよ! チョイスがよりによって比叡カレーかよ!」

 

 あとカレーは飲み物じゃないからな!

 一つの台詞で突っ込みどころを三つも作るな!

 

「司令なら誤魔化されてくれると思ったのですが」

 

「お前、僕のことをどこまで馬鹿だと思ってるんだ」

 

「ガレー船をカレー運搬船だと勘違いしてそうです」

 

「馬鹿にするにもほどがある!」

 

「もっとも、現在の問題はシレーの性格なんですけれどね」

 

 不知火は言った。

 表情は変わらない。

 

「訊かないでくれるとありがたいのですけれど」

 

「……そうするべきなら、そうするけれど。でもそうじゃないだろ。お前がここまでしなきゃならないんだから」

 

 僕を守るため。僕を守りたくて――不知火は、僕を拉致監禁しているのだから。

 

「そうでしょうか? 不知火は、相手が司令なら、拉致監禁くらい理由がなくとも口実さえあれば、平気で実行しそうではありませんか」

 

「…………」

 

 うん。

 僕も言いながらそう思った、が――それを言っていたら話が進まないのだ。

 

哀木軽舟(あいき けいしゅう)

 

 不知火は。

 余所見をして、言った。

 

「その男の名前ですよ。哀木なんてそうある名前でもないですし、それに不吉だというなら間違いないですね――あれほど不吉という言葉が似合う男を、不知火は他に知りません」

 

「…………」

 

「まさかこの横須賀にやってきているなんて。意外と言うよりはやはりというか――実際、考慮しておくべきでした」

 

「……どういう奴なんだ? お前がそこまで言う人間も珍しい」

 

「哀木は――提督です」

 

 やはり、あの恰好は――黒ずくめでも海軍の服装には違いなかったのだから、そうだったのか」

 

「けれど哀木は――“黒い”提督です」

 

 僕は思い出す。喪服のような軍装をした、あの不吉な男を。

 しかしそれは、あの恰好のことをさして、というわけではないのだろう。

 

「哀木は、確かに、提督としては一流です。数多くの海域を深海棲艦の支配から解放し、大本営も認める戦果を挙げています。でも――“黒い”のです。女学校時代から、噂に聞いていました。『艦娘の扱いが余所とは違う司令部がある』と」

 

 不知火はいつも通りに、いつも通り以上に平然と、感情を表さずに話し続ける。

 それが何を意味するかといえば――そう。

 とても無感情では話せないような。

 普段の調子で話すのが嫌になるようなことを――これから、話そうとしているのかもしれなかった。

 

「艦娘をまるで使い捨ての、簡単に補充の利く兵器として扱う提督のことは、女学校でも噂されていたのです。事実、先に女学校を卒業し艦娘として着任した姉が、“解体”されて退役し実家に戻ってきた、という子もいたのです――けれど、そんなのは些細なことなのですよ」

 

「……じゃあ、些細じゃないことはなんだよ」

 

「哀木の“黒さ”は本物です」

 

 不知火は断定した。

 

「戦果も、ええ、本物です。哀木は、確かに、優秀な提督なのです。けれど、不知火は――司令には、あの男と関わって欲しくないのです。それだけなのですよ」

 

「…………」

 

「不知火はもう二度と――大事なものを手放さない。なくしたくない。ですから」

 

 不知火は、言葉を区切って。

 誓うように――そう言った。

 

「ですから、司令は――私が守ります」

 

 自分自身と約束するように。

 そう言った。

 僕は、言葉を返せない。

 別に納得したわけじゃない。

 言っていることを理解できたわけでもない。

 論法が二、三段、飛ばされている気がする。

 いや、飛ばされているのは情報だろう。

 だけど。

 分かったことがある。

 不知火はつい先日、大事なものを手放している。

 それは、不知火が勘違いして、間違って背負った、とても重い、痛いもの。

 それほどまでに間違ったことを、後悔したばかりのはずの不知火が、それでも手放したくないものを持っているのだ。

 きっとそれは、間違って背負っていないものなのだろう。正しく背負っているものなのだろう。

 だから本当に、不知火は掛け値なく――

 今、僕のために行動しているのだろう。

 それだけは間違いなく真実だ。

 

「少なくとも哀木の目的がわかるまで――何をしにこの横須賀鎮守府に来たのかがわかるまで、司令はここで大人しくしていてください。いえ、たとえ哀木に目的なんてものがなかったとしても、あの男が横須賀を離れるまで、司令にはここにいて欲しいですね」

 

「……もしも哀木がこの横須賀に着任したんだとしたら?」

 

「そのときは……司令は一生ここで過ごす」

 

 不知火は一瞬逡巡したあと、とんでもないことを言い出した。

 

「おい、不知火……」

 

「それか」

 

 そして続ける。

 非常に平坦な口調で。

 

「哀木を沈めましょう」

 

「……いや」

 

 沈めるとか。

 そういう言葉を、深海棲艦以外を相手に平気で使うな。

 

「そうですね……、では、哀木をズドンとしましょうか」

 

「ズドンって!」

 

 それ、もう、絶対砲撃の音じゃねえか!

 

「大体、哀木って男はどんな――」

 

 いよいよ物騒なことを言いだした不知火に、僕は拘束された姿勢のままで、もう少し詳しい説明を求めようとした――その時。

 その時だった。

 携帯電話の着信音が響いたのだ。

 僕の軍装の内ポケットの中から。

 この音はメールの着信だった。

 

「……見ていいか?」

 

 僕の言葉に、不知火は少し間を置いてから、頷きはしなかったものの、僕の軍装へと手を伸ばした。そして内ポケットの中身をまさぐる。

 取り出された携帯電話が開かれて、着信したばかりのメールを開いた画面をそのまま示される。

 画面の下半分に表示されていたのはメールの文面の出だし部分だったが――しかし、スクロールなどするまでもなく、画面の大部分を占める差出人と件名の表示を見るだけで、僕にとっては十分だった。

『from:妹』

『subject:助けて!』

 ぶちん(・・・)、と。

 その瞬間――鎖。

 僕の手足を拘束する鎖が――切れた。

 あっさりと――それから、僕は立ち上がる。

 

「……司令」

 

 不知火は、まるでありえないものを見たという様子でその目を見開いていた。

 それはそうだろう。

 人間が、艦娘の艤装に使われるような鎖を引きちぎれるわけがないのだ。

 本来なら。

 本当なら。

 しかし、これはさすがというか、不知火のメンタルはよほどのものだったようで、取り乱したりはしなかった。

 ただ。

 立ち上がった僕を。

 強く――睨み据えて、立ちはだかっている。

 

「どこへ行く気ですか」

 

「野暮用だ。遊びはここまでだ。悪いけど僕は執務室に戻る」

 

「戻れると思いますか?」

 

「戻るさ。僕の居る場所だ」

 

 そして。

 僕は提督だ。

 

「言っておくけれど――不知火は相手が司令だからといって怯むような臆病者でもなければ、相手が好きな人だからといって怯むような優しさもありませんよ」

 

「知っている。だから僕は――不知火が好きなんだ」

 

「……え、ええ――」

 

 不知火は一瞬、怯んだ――後にその意味を理解したからか、その頬がわずかに緩んだ。

 僕は、そういえばちゃんと返事をしていなかったのを思い出し、我ながらずいぶんとどさくさに紛れた返事の仕方になってしまったことを悔やんだのだが、それについてはいつかもう一度やり直しを行なおうと心に誓った。

 

「……そんな言葉で不知火を説得できるとでも?」

 

「説得する必要はないな。僕は提督で、司令で、不知火は指揮下の艦娘だ」

 

「命令ということですか。けれど不知火のことを、あまり理解ある艦娘だとは思わないで欲しいですね」

 

「でも不知火。だったらお前、僕のどこに惚れたんだ?」

 

 僕は不知火に向かって、言う。

 真っ直ぐに睨み返して。

 

「ここで動かない僕を、お前は好きだと誇れるのか」

 

「……………………やば。超格好いい」

 

 ぼそっと。

 小声で呟く不知火。

 いや、急にキャラ崩れないで。

 こっちが照れる。

 

「私が戦艦だったら恋してるわ……」

 

「戦艦でなくても恋しろよ!」

 

「してるのですが」

 

「う。む」

 

 互いに、えもいわれぬ気まずいむず痒さを味わい黙り込んでしまったが、するとそこで、今度はメールではなく通話用の着信音が、不知火の手に握られたままだった僕の携帯電話から鳴り響いた。

 

「もしもし。今取り込み中です」

 

 着信音がうるさかったのか、勝手に電話に出て、目線はこちらから外さないまま、電話の向こうに対して無感情にそう言い放つ不知火。

 当然、そのまま電話を切るのかと思いきや――

 そこで不知火の動きが固まった。

 いや、無表情で固まったのだが。

 何だか――動揺しているようにも見えた。

 しかし、拘束されているはずの僕が立ち上がった際にも取り乱すことのなかった不知火が――動揺?

 

「い……いえ」

 

 発せられる声にも力がない。

 そもそも電話相手は誰なんだろう? 相手から何かを言われたのだろうか?

 

「そんなつもりは――ありません。それは誤解です。そんなことは一言も言っていないではありませんか。ええ。はい――その通りです。あなたが正しいです。ちょっと待って、そんなことはしないでください。わかりました。全部あなたの言う通りにしますから……それでいいのでしょう」

 

 そして電話を切る不知火。

 諦観するように目を閉じて――携帯電話を僕に向けて、まるで八つ当たりでもするかのように投げつけてきた。

 わけがわからない思いで僕は不知火を窺ったが、不知火はそんな視線さえ煩わしそうに、

 

「帰りましょう、司令」

 

 と言った。

 本当にわけがわからない……が、少なくとも――不知火がその身体を避けて、扉への道を開けてくれたことは確かだった。

 

「……いいのか? 本当に?」

 

「いいです……そ、その、司令、なんていうか、あれなのですけれど」

 

 と。

 不知火は、いかにも渋々というか……嫌々というか、とにかくまるで意に添わぬという感じで、常にフラットに、平坦で抑揚のない口調で話す不知火にはあり得ないほどにつっかえながら、

 

「ご……ごめ、ごめんな……さいっ」

 

 そう言った。

 どうやら電話の相手から、僕に対しての謝罪を強要されたらしい――

 …………。

 

「あの……不知火。ちなみに、今の電話の相手って、誰だったの?」

 

 僕からの質問に、不知火は短く答えた。

 

「大淀さん」

 

 

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