刀滅の刃   作:ヤッサイモッサイ

3 / 6
祖母×祖父=自分を刀だと思い込んでる系天然ポンコツ女子

嘘です。無口なキャラ書けないだけです


言葉足らずで忍、心無くして刃、一つを失い刀

炎があった。

 

音があり、岩があり、水があり。

 

蟲がいて、蛇がいて、恋がいて、霞がいて。

 

 

そして───

 

 

刃があった。

 

 

これらは柱だ。

惡鬼滅殺の文字を背負いし、当代最強を名乗りし戦士たちである。

 

「───柱?」

 

そうだ、と坊やを抑える隠が応える。

 

「鬼殺隊の階級の最上級、格で言えば甲すら足元にも及ばない、謂わば鬼殺の完成系───それが10人の柱だ」

 

まぁ、完全実力主義なだけあり、性格に難がある人も多い.......というよりまともな人の方が少ないですけどね。一番まともなのが不死川さんという時点で他の人がどれだけ性格が破綻しているか分かってもらえることでしょう。

 

そんなところまであえて説明する必要も無いですがね。

 

「さて、状況は理解できましたか、竈門炭治郎くん?キミは今、疑いをかけられています。鬼を匿うという重罪の、です」

「事実は正確に述べるべきだぜ、蟲柱.......コイツは疑いじゃねぇ、確信だ。よって今から話し合うのは、コイツを如何に派手に処刑するかって話だろうがよ」

「うむ!話し合うまでもない、即刻斬首だ!」

 

話を理解していないのはどちらなんでしょうねぇ。話はそう簡単ではないから、裁判という形で連行してきたというのに。

 

「おいおい、話し合うべきはそれよりも、そっちの女についてだろゥ?」

 

.......蛇柱・伊黒小芭内。また話をこじらせる様な事を。

 

「おや、いらっしゃったんですか伊黒さん」

「今日は柱合会議だろぅ、柱として、何もおかしなことは無いと思うけどね。それよりも、だ。聞けば四季崎の奴もそこの小僧と同じく、鬼を庇ったらしいじゃないか」

 

1人を除き、この場には全ての柱が既にいる。

今喋っているこの男とて柱。選り好のんで木の上から、人を見下ろすようにネチネチと喋る変人で、左右で色の異なる瞳、口元に巻かれた包帯、首元に巻かれた白蛇が特徴。

残念な事に、会議を混沌とさせる趣味だ。

 

今までの発言から、坊やの処刑推進派は炎柱・煉獄杏寿郎と音柱・宇髄天元、蛇柱、加えるのであれば岩柱もそうだろう。悲鳴嶼さんはそういう性格だと把握している。

 

逆に表立って反対している存在は居ない。驚いた事に、刃柱の四季崎さんは無言を貫いている。

他の人は.......中立といったところだろうか?

どうでもいい、御館様の命を待つべき、そもそも口下手でよく分からない、理由は多々あれど元々口数の少ない人達だ。考えてもしょうがない。

 

「何とか言ったらどうだ四季崎」

「否定する、お前は自身の刀に意見があると思うのか?刀が斬るものを選り好みするとでも?」

「またそれか。では何故貴様は鬼を庇った。まさか庇ってないなどと抜かすつもりは無いだろゥ?」

 

お互い何時もの調子、これで話が進むわけもないんですが.......困りましたねぇ。

 

「私は担い手が思った通りに振るわれた、振る舞ったのみ。私が庇ったと思うのであれば、それはつまり私の持ち主が庇ったのだということだ」

「ム、四季崎はそれが御館様のご意向であると?」

「ご随意に、私は意見を持たぬゆえ」

 

.......でもまぁ、確かに。

そう考えたのは私だけではないらしく、四季崎の言葉に恋柱・甘露寺蜜璃が続く。

 

「あのぅ、私は四季崎の言うこと一理あると思います。御館様がこのことを把握していなかったとも思えませんし、討伐ではなくわざわざ連行だなんてなにか意味があるとしか」

「くだらない、あのお方は鬼殺隊を率いる方だぞ。それが鬼を庇う?それこそ意味がわからない、意味が無い。刀だかなんだか知らないが、垂れ流す妄言くらいには気を使えよ四季崎」

 

四季崎さんをフォローするわけではありませんが、処罰に踏み切れないのはそれがあるから、というのは確かなんですよね。

 

「というわけで、話もどうやら平行線ですし、ここいらで一度坊やの話を聞いてみるというのはどうでしょう」

 

戦場からそのまま連行したため密かに噎せる坊やに、鎮痛剤入りの水を与えながらそう主張する。

そんな私の様子を見て、四季崎さんが眉をひそめていた事に、気づくことも無く。

 

「ゆっくりでいいので話してみてください。坊やがなぜ鬼を連れて、鬼殺隊に入ったのか」

 

発言の機会を与えられたからか、或いは柱の話が膠着したからか、少し落ち着いた様子の少年はボロボロでありながら、しっかりと前を見て話し始めた。

 

2年前家族が鬼に襲われた事、自分と妹だけが生き残った事、そして妹が鬼になっていたこと。

 

 

ありふれた話だ、このご時世、珍しい事でもない。鬼殺隊の中を漁れば、そんな経験をした人間はそれこそ掃いて捨てるほどに居るだろう。

 

しかし、何かが違う。凡そその手の話の結末には血が付き物だ。拭っても拭っても消えない血の痕が、臭いが残された人間を徐々に狂わせる。

 

死人の重さが、悲劇の辛さが、生者の首を抑え続け、前を向くことを許さない。

 

だが彼は、前を向いて生きていた。悲しかっただろう、辛かっただろう───

 

 

 

そこでふと、我に返った。

 

 

私は何故、そんな事を考えたのかと。

私がそれを聞いたのは裁判の為のはずだ───本当にそれだけだっただろうか?

そのはずだ、であれば、そのような思考は必要ない。

 

「───妹は、禰豆子は人を襲わない」

 

その言葉の熱が、また少し私を夢幻に誘おうとする。

どう考えてもおかしな言葉だ。納得できるはずもない。現に多くの人間は懐疑的を通り越して、はなから信じちゃいない。

 

しかし、その言葉は、その光景(りそう)には覚えがある。

 

「妹が鬼になったのは二年前、そこから禰豆子は誰一人襲っちゃいない。1度だって人を食べてなんかいないんです」

 

そう、言い切った彼の瞳に誰かの瞳を見た。

 

 

───何かを、思い出せそうな気がする。

 

彼を見ていると、失ったはずの.......どこかで諦めていた何かを、取り戻せる様な.......そんな予感がする。

 

 

「───話がグルグル回ってんぜボウズ。妹は人を襲わない、食べてない.......言うだけなら誰にだってできる。誰もがそんなに奇跡を信じていたかっただろうよ」

 

 

 

───えぇ、ですが、夢現は終わりです。

 

私は柱としてここにいる。立ち位置を忘れては、ならないのだから。

 

「必要なのは証拠、人を襲わない、食わないっていう確かな証明だろうよ、違うか?」

 

宇髄さんの物言いは、勝手に聞こえるだろうか?

いいや、そんなことは無い。それがこの世の常識なのだ、現実なのである。

 

理想を掲げるのは勝手だ。だがそれに他人を巻き込むのであれば、理想は実現可能であると、証明する必要がある。

 

「して、具体的に証明とはなんだ。何をさせれば納得がいく?」

 

ここに来て、漸く水柱・冨岡義勇が口を挟む。

相も変わらず口下手なのだろう、恐らくは言外に、誰が判断すれば全員が納得できるのかと問うている。

 

それは、無理を承知でだ。

 

誰もが信じていない、仮に誰かが信じたとしても、それは伝播仕様のない、あやふやな信用である。信頼とは異なるものだ。

 

それ程までに、この世界は終わる寸前なのだ。この世にたった1人の鬼が生まれたその瞬間から。

 

 

 

「───何を揃いも揃って甘っちょろいことを宣っていやがる?」

 

粗暴な声が、裁判の場をより混沌へと突き落とす。

ある意味、一番まともで、それ故にこの場には一番いて欲しくなかった人物。

 

「不死川さん、勝手な行動は慎んでください」

 

風柱・不死川実弥、風に煽られたように逆立つ白髪、凶相に染められた表情と、全身を無数に走る傷.......理性的であるが故に、この世の無情を最も良く反映したその男は、片手を刀にかけ、もう片方の手は───今も件の鬼が入った箱を、掲げていた。

 

「な、何を.......?」

 

坊やの声が再び焦燥に染まり行く。状況も理解出来ていないであろうに、直感で不味い方向に転がりゆく事態を察したか。

 

「人を襲わねぇ鬼がいるとか、何とか」

 

必死に宥めようとする隠を余所に、不死川さんは刀を抜いた。鮮やかな緑色、波を描く波紋は平時であれば見惚れそうな程に美しい。

 

然し今は───嵐の前の静けさだ。

 

「───んな鬼が居るか、アホがッ!」

 

逆手に抜かれた刃が箱を通り、反対側より再び現れる。

誰が止めるまもなく、刃が箱へと突き立てられた。

 

箱から静かに染み出す鮮血が刃を滴る事で、誰もが中の状況を幻視する。

 

「禰豆子ォッ!?」

 

坊やが───飛び出した。

 

真っ直ぐに、妹の元へと駈けていく。

 

「ハッ、バカも極まるとこうなるのか。お前が親の仇の如く睨む俺は人間だ、お前が本来守るべき存在だ.......そして、お前が守ろうとしてやがる()()

 

彼は刃を引き抜き、滴る血を斬り飛ばすと、再び箱を掲げるように持ち上げた。

 

「───コレが、コレこそが敵だ。本当に殺すべき、鬼だ」

「関係あるか、禰豆子を傷つけるのであれば、たとえそれが柱であろうとも───許さない」

 

それでも、駆ける足は止まらない。

不死川さんも、舌打ち交じりに刀を構える。

このまま行けば、間違いなく坊やは殺されるだろう。相手は柱、しかも万全の柱だ。対して坊やは丸腰で、腕も縛られている。鎮痛剤のお陰で痛みこそ抑えられているが、本来ならば入院確定の怪我をしている身だ。

勝ちの目はない、挙句ここは裁判の場、温情がかけられることも無いだろう。

 

 

───それでも、私はいいのだろうか?

 

坊やにあの時かけた言葉が、今度は自身の身を抉る。

 

悩んだ────躊躇った。

その刹那が、私から行動するという選択を奪った。

もう、間に合わない。

 

坊やが斬り捨てられる───

 

「いい加減にしろ、もうすぐ御館様がいらっしゃるぞッ!」

 

───寸前、不死川さんの剣筋が、ほんの少し“空いた”

理性的であるが故に、状況をよく理解していたが故に、止まってしまった。

 

言ってしまえば奇跡に近い。不死川実弥には状況を理解するだけの余裕があり、竈門炭治郎にはそれをする余裕がなかった───故に止まらなかった。

 

「禰豆子を───」

 

気がついた時にはもう遅い、慌てて迎撃するべく刀を振るうが───明らかに精細さを欠いている、単純な一撃だ。

 

「離せ───ッ!!」

 

坊やはそれを跳んで躱すと、そのままの勢いで頭を振りかぶり───相手の脳天目掛けて叩き込んだ。

 

「柱に、一撃叩き込んだ.......?入隊して間もない新人隊士が?」

 

甘露寺さんの吹き出す声に、現実に返る。

 

「冨岡の声に、不死川が気を取られた.......とはいえ、これは.......」

 

結局、一方的にダメージを受けた不死川さんは箱を手放し、坊やは妹を後ろ手に庇うように匿うに至った。

 

.......冨岡さんが坊やを庇った?

そういえば、四季崎さんに足止めをされた時の坊やの呼吸、アレは───

 

「───悪い鬼と、善良な鬼の区別もつかないのか」

 

水の、呼吸音.......?

 

「守るべきものがなにかもわからず、何が柱だッ!!」

 

 

 

 

 

 

───この少年は、なんなのだ?

 

本当に、タダの.......ただの少年なのか?

 

ブレる、柱が、ブレていく。

揺るがないはずだった、伝播しないはずだった。然し、今この瞬間、柱に何かが入り込んできた。

私だけじゃない、この場の全てに、坊やが入り込んできた。

 

「「───御館様の、御成です」」

 

 

 

それも、産屋敷の子の声と共に、忘却の彼方へと消えたが。

騒然としていた場は既に跡形もなく、一人状況を理解出来ていない坊やを除いて、全ての柱が跪く。

 

 

「よく来たね、私の可愛い───子供たちよ」

 

 

───産屋敷耀哉様、

 

───御館様が、いらっしゃった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

漸く来た。我が持ち主ながら、何を考えているのやら。

態々義勇が向かう予定であった蜘蛛山へ私を刺し向け、あまつさえ「好きに行動して欲しい」とは。

“何が君が何を見て何を考えたか、それが知りたいんだ”.......などと、刀に求める機能では無いだろうに。

挙句に何だ、この茶番は───

 

「炭治郎と禰豆子の事は、私が容認していた。そして───みんなにも認めてもらいたいと思っている」

 

等と、今まさに実弥の手で地面に叩きつけられた炭治郎からすれば意味がわからなかろうに。

何よりも、鬼殺隊の頭がそんなことを抜かしたとなれば───より強く反発するに決まってる。

 

「まぁとはいえ、皆も早々認められることではないだろう───九種」

 

───そら、来た。盲目故か何なのか、この持ち主は私の目をヤケに頼りたがる。この、四季崎の瞳をだ。

 

「君は、認めてくれるかい?」

不認(みとめず)、繰り返す様に、私は意見を持たぬ故に」

「では、聞き方を変えようか───君は私の命で彼らを見た、守った。つまりは見守った.......そうだね?」

「えぇ、その様に」

 

産屋敷耀哉と私の関係は単純明快、契約による持ち主と刀の関係だ。

そういう意味でいえば私が柱なんてものをやってるのはちゃんちゃらおかしいのだが.......まぁ、如何せん耀哉自体が病弱すぎて動けない。1人で好き勝手に動くのならば、確かにその称号はあった方がいいだろう。

 

「ではまずは、彼女の行動についてだ。これは僕の命じたこと.......彼女に関しては少し特殊な出自でね、契約関係と言ってもいい。僕が頼んだ事は違わないし、頼んでいない事はしない」

「だから、咎は自分にあると?いいえ、それは違います。そうであるとしても、柱であるのであれば間違いを正すべきであった。それをしなかった四季崎本人の怠惰だ」

 

実弥は持ち主の前ではこの様に畏まる。知性や理性の欠片もなさそうな見た目をしておきながら.......だ。

 

「ふむ、難しいとは思う。しかし理解して欲しい。根本的に彼女は人とは異なるのだということを」

「自身を日輪刀などと宣うその奇行をですか?確かに四季崎は特殊でしょう。日輪刀も無しに鬼を滅ぼす、しかしそれはあくまでも個性の範疇。私や胡蝶同様に、特別扱いされるものでは───」

「個性であるが故に、それを潰さないようにしているんだ」

 

.......まぁ、今まで問題になることが無かっただけで、未だに病気扱いされているのだから理解されることは無いだろうが。

 

「.......わかりました、そこまで仰られるのであれば四季崎に関しては納得しましょう。しかし、鬼を容認する!これに関しては話は別です」

「だろうね。どうやらその様子では元水柱・現水柱連名での嘆願書も、意味が無さそうだ」

「───現、水柱ァ?」

 

実弥の殺人的な視線が義勇を射貫く。

 

「どういうことだ、冨岡義勇.......貴様は鬼を庇うのか?」

「.......何かあれば、腹を切る」

「貴様の腹になんの価値があるっ!?」

「ウム、不死川の言う通り。何かある事が既に問題だ!死んだ人は帰っては来ない!」

 

.......段々と、騒々しくなって来た。

 

「さて、ところで九種。ここでもうひとつ頼みたいことがある」

「なんなりと」

「彼ら鬼殺隊の柱達に、2人の存在を認めさせて欲しいんだ」

 

.....................。

 

 

...................................。

 

 

 

 

........................................................。

 

「斬れ、という事でしょうか?」

「これは君のお祖母様からも許可を取ってあることだよ」

 

なんということだ。まさか()()から肯定を引き出したのか?七重否定ならば明日は晴れ、五重否定で雨、三重否定で嵐、肯定なんてされた日には祖父が決戦装束を来て徹夜で家を守る姿勢に入るあの祖母から?

 

「君は自分を刀だと言うけれどね、君のお祖父様はその辺もう少しいい加減だったと聞いているよ。何せ持ち主が居ないにも関わらず勝手に動き出したというのだから」

「.......不聞(きかず)。あれほどの刀は他にありませんよ」

 

言葉が足りず認められること無く、心が無く忍びには罵られ、一つを失いされど刃は研ぎ澄まされ───やがて完了したのがあの刀だ。

 

「命令とあらば、刀は振るわれるのみ───」

 

あの祖父母によって打たれた我が身、肉体は祖父が、頭は祖母が───舌戦においても全てを斬る程度訳もなし。

 

 

 

「尽くを斬ってみせましょう」

 




連続投稿の道が閉ざされれば、車続投稿。二と申に分けて、更にそれをエと田に直せば.......もう分かりますね。そうです、つまりはエタる
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。