二度目の転生はありふれた職業な世界   作:ライダーGX

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第7話 最悪の結末

檜山の軽率な行動でベヒモスと呼ばれる巨大な魔物と、無数の魔物『トラウムソルジャー』が溢れて出てくる階層に来てしまった新一達。

 

皆が混乱する中、新一はメルドが放った言葉を聞いて少しばかり唖然としていた。

 

 

【ベヒモス】

 

 

ハイリヒ王国の図書館で一度調べた事がある、オルクス大迷宮の中でとてもない強さを持ち、最強と言われる冒険者達を苦しませ、全く歯が立たなかった魔物。

その魔物が今もの前に居て、新一は少しばかり手に汗がにじみ出てくる。

 

「(…ベヒモス。もしあれが本当のベヒモスだったりしたら、今の俺達じゃまず無理だ!)」

 

新一がそう思っている中で、ベヒモスが凄まじい咆哮を上げた。

 

「グルァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!」

 

「ッ!!マズい!!」

 

ベヒモスの雄叫びにメルドは正気を取り戻し、すぐに騎士団に指示を出す。

 

「アラン!生徒たちを率いてトラウムソルジャーを突破するんだ!カイル!イヴァン!ベイル!全力で障壁を張れ!ここでヤツを食い止めるぞ!絶対に後ろに通すな!!

光輝!お前達は早く階段へ向かえ!急げ!」

 

「待って下さいメルドさん!俺達もやります! あの恐竜みたいなヤツが一番ヤバイでしょう! 俺達もここで一緒に!」

 

光輝のその言葉にメルドは怒鳴りながら言う。

 

「馬鹿野郎!あれが本当にベヒモスなら、今のお前達では無理だ! 奴は65階層の魔物。かつて、“最強”と言わしめた冒険者をして歯が立たなかった化け物だぞ!

早く行け!!私はお前達をここで死なせるわけにはいかないんだ!」

 

メルドの鬼気迫る表情に一瞬怯むも、「見捨ててなど行けない!」と踏み止まる光輝。

 

するとベヒモスが咆哮を上げながら突進してきた。それにメルドたちは全力の多重障壁を張る。

 

「「「全ての敵意と悪意を拒絶する、神の子らに絶対の守りを、ここは聖域なりて、神敵を通さず――“聖絶”!!」」」

 

メルド達の多重障壁がベヒモスの突進を防ぐ。

突進の衝突の瞬間、凄まじい衝撃波が発生し、ベヒモスの足元が粉砕される。石造りの橋が大きく揺れた。

 

その様子を新一は体制を保ちながら見て、進次郎たちが新一の元に駆け寄る。

 

「新一!こっちは大変だ! 皆パニックになってる!」

 

「あの怪物だけじゃなく、骸骨の戦士たちがこっちに迫ってる!どうするんだ!」

 

進次郎達の様子に新一は辺りを一度見渡し、そして言う。

 

「進次郎、お前は皆を率いてすぐに上の階層へと避難させて欲しい、ここでお前のリーダーの能力が発揮される番だ! 軍平は皆の前に出て、あの魔物達を蹴散らしながら退路を切り開け!

きよしと千春は後方でサポート!」

 

「分かったぜ!」

 

「でも新一は?」

 

「俺はあのバカを連れ戻す」

 

新一は今だにメルド達の元に居る光輝の方を見ながら言い、それに進次郎達は頷きながら言う。

 

「OK!俺達が上手くやっておくぜ!!」

 

「新一君も気をつけてね!」

 

そう言って進次郎達はその場から離れていき、皆の元に向かった。

 

「さて…ん?!」

 

光輝たちの元に向かおうとする新一の目にある者が映る。

それは一人の女子生徒『園部 優香』が後ろから突き飛ばされ転倒してしまう様子だった。呻きながら顔を上げると、眼前で一体のトラウムソルジャーが剣を振りかぶっていた。

 

「あ──」

 

園部はその一言と同時にトラウムソルジャーは彼女の頭部目掛けて剣が振り下ろされた。

 

死ぬ…っと園部がそう感じた次の瞬間、トラウムソルジャーの胴体…否、身体中は無数に斬りさかれて、トラウムソルジャーは倒される。

 

「え…?」

 

園部はその様子に唖然としながら斬った人物を見る。

 

トラウムソルジャーを斬ったのは新一は、『一閃』でトラウムソルジャーを瞬く間に切り裂いたのだ。

ロングソードをしまい、新一は園部に向けて手を差し出し、それに園部は呆然としながらそれを取り、立ち上がって新一は園部に言う。

 

「大丈夫か園部? いいか?進次郎の話を聞いて動くんだ。そして自分たちの能力を信じて進むんだ。皆チート並の能力を持ってる。どうってことはない!」

 

「うん!ありがとう。天道君!」

 

園部は元気に返事をして駆け出した。

 

新一はそれを見送った後、再び光輝たちの方を見る。

光輝はまだその場にいてメルドを説得している様子を見て、イラつきが出てくる。

 

「たくぅ…、ちょっとはいい加減にしろよ、天之河」

 

そう言って新一は光輝たちの元へと向かうのであった。

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

一方、ベヒモスは依然、光輝達とメルド達が張っている障壁に向かって突進を繰り返していた。

 

メルド達の張る障壁に衝突する度に壮絶な衝撃波が周囲に撒き散られるが、障壁が徐々に亀裂が入ってきて、突破されるのは時間の問題だった。

 

「クソッ!もう持たん!! 光輝!早く撤退しろ!お前達も早く行け!」

 

「嫌です!メルドさん達を置いていくわけには行きません!! 絶対…皆で生き残るんです!」

 

「(くっ!こんな時にワガママを…!)」

 

光輝のワガママにメルドは苦虫を噛み潰したような表情になる。

ベテランのメルドならこの状況をよく理解し、すぐに撤収を始めるのだが、光輝のみはどうやら自分なら何とか出来るとそう思っているらしい。

 

だがそれは自分の力を過剰評価しているに過ぎない。戦闘素人の光輝達に自信を持たせようと、褒めて伸ばす方針が裏目に出たようだ。

 

「光輝! 団長さんの言う通りにして撤退しましょう!」

 

雫は状況がわかっているようで光輝を諌めようと腕を掴む。

 

「へっ、光輝の無茶は今に始まったことじゃねぇだろ? 付き合うぜ、光輝!」

 

「龍太郎…、ありがとな」

 

撤収を意義を見せる中、龍太郎の言葉に更にやる気を見せる光輝。それに雫は舌打ちする。

 

「状況に酔ってんじゃないわよ! この馬鹿ども!」

 

「雫ちゃん…」

 

苛立つ雫に心配そうな香織。

すると目の前に石が突如持ち上がっていき、ベヒモスの目の前に立ちふさがり足止めしている、それにメルドだけじゃなく光輝達もそれに驚きを隠せない。

 

光輝達が後ろを見ると、新一が錬成で石を操っていた。

 

「たくぅ…、やっぱ俺は錬成より戦闘の方が楽でいいぜ」

 

「天道!?」

 

「「天道君!!」」

 

光輝達は新一が来たことに驚きながら見ていて、新一は光輝達の下による。

 

「天之河、お前らも早く撤収しろ、ここはメルド団長に任せろ」

 

「いきなり何を言い出すんだ?それより、なんでこんな所にいるんだ!ここは君がいていい場所じゃない! ここは俺達に任せて──」

 

 

ドゴッ!!!!

 

 

「ゴホッ!!!」

 

新一の猛烈なボディブローに光輝は思わずひざまついてお腹を抑え、それに香織と雫は驚き、龍太郎は怒りを露にする。

 

「おい!!!何をするんだ!!」

 

 

ガシッ!!!

 

 

「グッ!!!」

 

新一は龍太郎の首を掴み、握り締めながらも龍太郎は苦しい表情をする。

そのまま新一は光輝の方を見て、冷たい言葉を放つ。

 

「ちょっとは自分の力を自覚しろ、その事をはお前でも分かるだろう。それに今のお前ではあの魔物に立ち向かうなど不可能だ。それともメルド団長が側にいないと怖いのか?」

 

「…ッ!?」

 

その言葉に光輝は心に鋭い矢が突き刺さる、まさかそんな言葉が吹き込んでくるとは思ってもいなかった為、光輝は歯を噛み締めながら立ち上がる。

 

「…ああ、分かったよ。龍太郎!雫!やれるか!?」

 

「ゲホッ!ゲホッ! …ああ!勿論だ!」

 

「やるだけよ!」

 

そう言って雫と龍太郎は皆の所に向かっていき、新一はメルドの方を向く。

 

「メルド団長。こっちは大丈夫です。それとあいつの足止めは俺が錬成でなんとかします」

 

「大丈夫なのか? 副天職では力がそんなに発揮するとは思えんが…」

 

「何とかしてみますよ、それよりも…あのバカをしっかりと頼みますよ?」

 

迷いのない決然とした目線に。メルドは「くっ」と笑みを浮かべる。

 

「まさか、お前さんに命を預けることになるとはな。時々お前が勇敢に思える時がある、…必ず助けてやる。だから…頼んだぞ!」

 

「了解…!」

 

「天道君!!」

 

っと香織が心配する表情を見せ、それに新一は笑みを浮かばせながら言う。

 

「大丈夫だ白崎、俺は死なない…」

 

「天道君…」

 

「よし!行くぞ!!!」

 

メルドは香織を抱いて連れて行き、去っていく様子を新一はジッと見つめた後、ベヒモスの方を見る。

 

「やれやれ…、出来ればお前とガチでやりたかったが。生憎ここでやりやったら心配する奴らが居るんでね、悪いがここでさいならさせてもらう!」

 

っと新一は錬成を最大限に発揮させて、ベヒモスに最大級の石の硬さを与える。

そして新一はそれを見届けた後に撤収を始める。

 

メルドがそれを見て、皆に言う。

 

「よし!やるぞ! いいか!お前達!!」

 

「「「はい!!」」」

 

「やれ!!!!」

 

メルドの指示で魔力支援組は火炎の魔法を放ち、それにより新一はより後退しやすくなる。

そしてベヒモスを新一の錬成を強引に打ち壊し、そして怒りを咆哮を上げるベヒモス。

 

皆の魔法がベヒモスに直撃し、足止め程度にはなるものの、気休め程度しかならない。

だがその間に新一は素早く皆のもとに向かう。

 

「天道君!頑張って!」

 

「新一!!早く来い!!」

 

香織と進次郎達が新一を励ましながら送ってる中…。

 

 

 

 

 

「フッ」

 

 

 

 

 

1人の男が笑みを浮かばせるのを、誰も知る由はない。

 

新一が撤収する中で、皆の魔法が飛び交うのが見える、っがその時、一つの魔法が新一の下にやって来て、それに新一は思わず目の瞳を大きく開かせる。

 

そして魔法が新一に直撃し、それに大きく飛び跳ねる。

 

「ぐあああああ!!!」

 

新一は後ろに大きく転び、ベヒモスは新一がやってきた事に雄叫びをあげる。っがその時、足場が崩れて、橋は崩落して新一はベヒモスと共に橋から落ちてしまう。

 

「天道くぅぅぅうぅぅぅぅぅぅぅん!!!」

 

「「「「新一いいいいいいいいいいいいいいいいい/君!!!」」」」

 

香織と進次郎達は叫びながら手を伸ばし、新一はベヒモスと共に暗い奈落の底へと落ちてしまうのであった。

 

 

 




とうとう新一が奈落…、真の大迷宮へと行きます。

ここから新一の真の力も発揮する時期ですよ…。

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