転生して電子生命体になったのでヴァーチャル配信者になります 作:田舎犬派
さて、なぜ私がわちるさんにお祝いされていたのかというとつい先日、ついに私が配信を行っているVちゅーぶのチャンネル登録者数が1000人を突破し、ほぼ同時にメイクフォロワーも1000人を超え、四桁に突入したのです。
メイクで拡散された動画が私のものであると早々に判明したようで、チャンネル登録者数もメイクフォロワーも爆発的に増え、今なお増加傾向にあります。
そのせいで当初の100人記念だとか、500人記念だとか小刻みにお祝いしていく予定が吹き飛んでしまいました。嬉しいことなんですけどね。
皆さん登録者とフォロワーが大台に乗ったことをお祝いする言葉をつぶやいていただき、なんと最近では私の絵を描いてくださる方まで現れるようになり、大変感謝しております。
その気持ちに応えるため、今回は感謝の長時間配信を行うことにしました。
まあ、長時間といっても私はまだ配信者としてチャンネルを開設して日が浅いですし、チャンネル登録者もVちゅーぶの規定数に到達していないので出来ても4時間が限界なのですが。
「という訳で今回はその4時間を利用していろいろ創っているところを見せていきたいと考えております~」
『わんこ式モデリング助かる』『長時間配信助かる』『こうやって見てるだけで4時間じゃ足りなさそう』『これまた絶景だな』『わんころちゃん浮いとる』
現在私は先日制作した山の頂上、その空の上にいます。ちょっと物理演算をいじくってふわふわ浮かんでいられるようにしております。
とはいえ自由に動けるわけでなくそこに浮いているだけです。
ふわふわと体だけでなく、服もふよふよとまるでお空を泳いでいるようです。
『見え……見え…』『見えた白だ!』『そうだね空はまだ編集してないから真っ白だね(焼却)』『通報しました』『なんでやっ!お前らも一瞬そう思っただろ!?』『開き直るんじゃねえよ』『口に出した時点でアウトなんだよなぁ』
「……ちょっとカメラの位置調整しますね~」
最近視聴者の皆さん遠慮が無くなってきたように思えますね~
それだけ安心してみてくださっているという事なんでしょうか?そういうことにしておきましょう。
「え~、コメントしていただいたように今日はまずこのな~んにもない空を創っていきますよ~」
そう言って懐から大きめのキャンバスを取り出し展開させます。同じように3Dモデル制作にも用いた"見出し刷毛"を手元に展開し、準備完了です。
「空の色って面白いと思いませんか~?朝や夕方は綺麗なオレンジ色になりますよね~しかもその色もただの単色じゃなくって黄色や朱色、橙色なんかのグラデーションが鮮やかに空一面に広がるじゃないですか~、さらに時間が経つとどんどん色が濃くなっていって紫や暗い青色が現れてくるんですよね~」
キャンバスにまず青系の色を落とし、単調にならないよういくつかの色を重ね塗りしていきます。
「このキャンバスに塗っているのがとりあえずの空の色のサンプルになります~他にも天気や時間、季節などで変化した空のバージョンもいくつか作成して、それらをワンセットにしたデータを利用して空の色を表現するつもりです~」
『おおっ!』『いいじゃん』『画像データを時間で合うものに変更していくかんじ?』
「んーとそうですね~もうちょっと複雑なのを考えてます~いま青く塗っているキャンバスも見た目は画像データっぽいですけど実際は色彩データで構成された情報集合体になります~この青系統の色彩データで構成された情報群のようにいくつもの色の情報群を創ってそれらを場合によってその都度展開させて行くんです~」
先ほどの青のキャンバスのデータを保存格納した後、新規作成したキャンバスに新たな空を描いていく。
「例えば~お昼の時間なら青の空の情報を80パーセント開放して~赤の空の情報は20パーセントに抑えたり~逆に夕方は青を20パーセントに、赤を80パーセント開放って感じですね~」
『なるほどわからん』『わかった(わかってない)』『いくつもの色のパラメータを用意して時間でパラメータを動かすって感じかな?』
「はい、そんな感じです~上手く説明できずにすみません~今回はその色のパラメータ、わんこーろの言った色の情報群を創っていきますよ~」
『わーい』『実質お絵かき配信』『見てるだけで満足』『水、青、赤、橙、とかそんぐらいの色を用意しとけばとりあえずいい感じか』
「最低でも基本的な色データ群は創っておきたいですね~予定としては500ほど~」
『ファ!?』『今日はお絵かき配信で終了だな……』
「もちろん最終的には、ですよ~今日の配信ではあと2、3枚描いてデータを挿入したら次に行きます~」
みなさんあからさまにほっとしたようなコメントが流れていきますね、そこまで無駄に4時間を使うつもりはありませんよ!
さあ、最後の一枚が完成したのでちゃっちゃと太陽の光源色データに挿入して次に行きますよ!
青い空、澄み渡る空気。それらを実感できる森の中。
そう、空から下りてきまして、現在私がいるのは山の麓になります。
「先ほど更新した空のデータが反映されたようですね~色の情報群が不足しているので見た目は薄い水色一色のようにみえますね~」
『しゃーない』『これからに期待』『配信するたびに空に目がいきそう』
「ですね~、地道に更新していくので注目していただきたいところです~、では次の作業にうつりますよ~次はこの山の植林作業に移ります~」
おもむろに懐から【檜さんver7.10】を取り出し、まだつるつるな山肌に植えていきます。もちろん違和感が出ないように今まで作った木の3Dモデルも混ぜながら間隔を考え、まんべんなく設置していきます。
出来ればこの配信中に山全体を木で覆いたいのですが……。
「……これは面倒ですね~写し火提燈でここら一帯コピーして貼り付けちゃいましょうか~」
『おい』『本性現したね』『ゆるふわ≒自堕落』『ばれなきゃへーきへーき』
「私はずっと木を植えるだけの配信でもいいんですけど~今日は記念配信という特別な日なので、ある程度形が出来たらすぐに次に移りますよ~」
ぽんぽんと手早く植えていき、いい感じになったら植えた範囲を指定して写し火提燈でコピーします。
コピー元の部分と若干重ねるようにして貼り付け、それを何度も繰り返して規則性のない森を創っていきます。前回の違和感ありありな森と違って数種類の樹木と数十種類の形状の組み合わせのおかげでほとんど違和感はないようです。
ですが。
「うひゅ!位置間違って森の上に森が~……あうっ今度は地面に埋まった!?」
『珍しい鳴き声助かる』『バグってんねぇ』『あせらないで』『これは切り抜き確定』
「だ、大丈夫です~これくらい簡単に修正できますから~」
さすがに3Dモデル一つと比べて一定の範囲をまとめてコピーするのは簡単ではありませんね……。ですが、やっているとだんだんと慣れてきたので最後の方はスムーズに作業を終えることが出来ました。
「はいはいは~いそれじゃあある程度植え終えたので上に行きますよ~」
『りょ』『植えだけに上……?』『←は?』『わんころちゃんはちょっと天然入ってるから』
最後のコメント~ちゃんと見えてますからね~?
「じゃあ浮きますよ~画面酔いに注意してください~、……はい上空に到着です~おお!思っていたよりらしくなったんじゃないですか~!」
目の前に広がるのは青々しい樹木に覆われた大きな山。山としてはそれほど大きくはないけれど、私が作ったものの中で一番大きくて高い3Dモデルとなりました。
山も単純な三角でなく、ところどころに不規則な膨らみや傾斜を設けてまるで自然の山のように工夫してみました。
『おおー!』『これはすごい』『力作じゃん!映像データで見たのと同じじゃん』『いや映像なんかと比べ物にならんよ、実際に木に覆われた山の3Dモデルとかわんこーろぐらいしか創れんだろ』『容量や技量の問題以前に資料をサルベージできんからな』
「へへ~これも応援してくださっている皆さんのおかげですよ~」
お世辞でもなんでもなく、視聴者のみなさんが見ていてくれるというのはモチベーションを保つ上でとても重要なんだと感じましたね。一つ一つに反応をもらえるというのは大変嬉しいものです。
『ん?あれ?なんか光の加減おかしくね?』『明るさ調整ミスった?』『いやいや前回配信見てたらわかるが、太陽だろ』『だね、時間実装したん?』
「あ、そういえば説明してませんでしたね~コメントにもありました通り今回の配信前にこの世界に時間を実装しました~先ほどはお空のてっぺんぐらいにあったんですが、今は少し太陽が傾いて影の形が変わってみえるのが分かりますか~?」
山の山頂からまっすぐ降り注いでいた太陽光は少し斜めからとなり、その影響で山に植えられた木々の影も長くなっております。それが山の立体感をより強調することになり、よりリアルっぽく見えます。
「皆さんの世界でも同じくらいの傾き方をしていると思いますよ~?もしよければ確認してみてくださいね~」
『と、言われてもねぇ』『おい地上住みの視聴者はいないのか!?』『俺の家は窓なんてついてないが』『地上住みとかどんなエリートだよ』『さすがにそれは言い過ぎだろ、確か地上居住制限区域は居住区域の20%程度のはずだぞ』『強制はな、推奨地区なら八割いくぞ』
「あらら、皆さんどうやら太陽を見たことのない方もいるようですね~ではではどうぞ心行くまでごらんください~。これからもっといろんな姿の太陽をご覧に入れますからね~」
ゆっくりとゆっくりと太陽は山のむこうへと落ちていこうとする。その光景だけでも視聴者のいくらかの方は驚き感動していらっしゃるようです。
「……なんて言ってこのまま配信終了っぽい感じになってますがまだまだ続きますので次の作業にいきますよ~っと、その前に」
再び懐よりとあるデータを取り出し、展開します。それは先ほどのキャンバスと同等の、少し横長に作られたキャンバスです。
そこに見出し刷毛で黒く文字を書いていきます。
「実はですね~この場所はモデルにした場所がありまして~今ではもう失われた場所なんですけど~その場所とわんこーろの名前をもじって~」
書き切った文字をカメラの前に映し出します。
「この山の名前を