転生して電子生命体になったのでヴァーチャル配信者になります   作:田舎犬派

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#143 冬の装い

 

「んふふ~どうですか狐稲利さん~? きつくないです~?」

 

「うんー! あったか~ほわほわする~!」

 

「それならよかったです~狐稲利さん専用の冬服ですからね~移住者さんにめいっぱい自慢してあげましょう~」

 

「うんっ! おかーさもね!」

 

「はい~狐稲利さんと一緒に新しい冬の新衣装お披露目配信と行きましょう~」

 

 皆さまおはよーございます。わんこーろでございます。犬守村は現在本格的に冷たい風が流れていく冬の季節となってきました。

 村の動物たちは冬ごもりをはじめ、その姿はあまり見えなくなり、植物たちも葉を落とし少し寂しい風景が広がっています。

 

 家の外はじんじんと沁みるような冷たい空気を感じ、吐く息は白くなって空気に溶けていきます。

 

 そんな冬の始まりを感じる現在、私と狐稲利さんはいつも通り朝食を移住者さんと一緒に頂いた後、そのまま配信を続けています。

 

「ほらほら~みてください移住者さん~狐稲利さんの新衣装ですよ~! かわいいでしょ~?」

 

 今日は休日というのもありまして朝から配信を行っているわけですが、さすがにもう朝の寒さがかなりのものとなってきましたので、このタイミングで唐突に冬服のお披露目を行っていくことにしました。

 

 ちょっと席を外します、と移住者さんに言ってしれっと帰ってきた時には既に冬服というサプライズな感じで狐稲利さんと一緒に登場する予定だったのですが、嬉しさが有り余った狐稲利さんが配信画面まで走り出してしまったのでそのままちょっとぐだぐだな発表になってしまいましたが……まあ、いっか。

 

 配信画面に映される狐稲利さんはこれまでの和服よりも少しおとなしめの色合いとしました。濃い茶色と緑色の和装は夏や秋のものより生地を厚くして防寒対策を施してあります。同じように羽織もしっかりとしたものを用意して、暖かさを確保。

 

 狐稲利さんの前髪は雪の結晶を模した髪飾りでまとめてあり、今まではメカクレ状態であまり配信では見られなかったその素顔が、今ではしっかりと確認できます。

 秋ごろからちらちらとその素顔を配信で見せて慣れるように練習していた狐稲利さんが、ついにこの冬の新衣装発表と共に常時その素顔を移住者さんに見せてくれることになりました。

 

 ……とはいえ、視線は移住者さんから私へと、私から近くで丸くなっているよーりさんへと移り変わり、しきりに前髪を指先でいじったりしているのでまだ恥ずかしそうです。

 

 昔は配信中に服を脱ごうとしていたのを考えると成長しましたね狐稲利さん。

 

『おお! 可愛い、それに美人さんだ』『冬用狐稲利ちゃん美しい~』『なんだか一気に大人っぽくなった』『髪飾りがお母さんとお揃いなのエモい』『わんころちゃんも可愛いのう』『わんころちゃんもしっかりした和服だ!』『さすがに浴衣じゃ寒いか』『わんころちゃんにはもふもふな尻尾があるけどそれだけじゃあなぁ』『あれ?そういえば尻尾ってどこから出てんの?』『尻尾穴が有るか無いかの二択だな』

 

「残念ながら尻尾穴仕様です~そうじゃないと嬉しい時とかぱたぱた尻尾を振っちゃって見えちゃうんですよね~」

 

「みえるー?」

 

『な、なにが……』『そりゃあ……なあ?』『和服の裾部分を持ちあげちゃうからお尻が……』『あ、そういう?』『じゃあ俺は尻尾穴無しがいい!』『今穴ありだっつっただろうが!!』『おはようございます今日の村八分を発表します』『やべ、村八分ニキだ』『散れ散れ!』『嬉しいとぱたぱたしちゃうわんころちゃん可愛い……』

 

「あはは~移住者さんは今日も元気ですねぇ~。ほらほら皆さんの仰ったとおり、わんこーろも新衣装にしていますよ~冬なので雪モチーフも良いかと思ったのですが~やっぱり温かい見た目の方が良いですよね~」

 

 私も秋まで利用していた服装から冬の装いで配信画面の前におります。狐稲利さんと同じく厚めの生地を用いた和服となっており、夏、秋と利用していた浴衣はしばらくの間、箪笥の中。この度ついに温かい装いとなりました。また、私の衣装にも羽織を追加したので、これで外に出てもある程度寒さを凌げそうです。

 

 今までは動きやすく改良した浴衣のようなもの、を着ていたわけですが、寒い風が入り込まないようしっかりしたつくりの和服は、なんだか雰囲気的にも少し大人びたものがあります。色も落ち着いた深緑と紫を基調としたもので、狐稲利さんと同じくなかなか落ち着いた雰囲気に纏まっているのではないかと自負しております。

 

 と、言っても移住者の皆さんは相変わらず可愛いというコメントが多いですね……。むう、狐稲利さんの時は美人だとか、大人びたというコメントもあったのに……。

 

「おかーさ。おかーさはこれからだから」

 

「!? 狐稲利さん私の思考を読んで……?」

 

『草』『いやいやw』『表情でまるわかりなんだよなぁ』『狐稲利ちゃんと自分を見比べて不満そうにしてたらなw』『狐稲利ちゃんの言う通りだよ!わんころちゃんはこれからだよ!今は幼女だけど!』『幼女草』『まあ大人扱いされてないことに不満を感じるのは子供らしいかなw』

 

「も~う! わんこーろは何も言ってないです~! てきとーな感じで心を察しないでください~~!」

 

 

 その後も配信は私と狐稲利さんの衣装お披露目をメインに進行していきました。移住者さんがしきりに手を振って! とか、くるくる回って! とリクエストされるので、狐稲利さんと一緒に無理の無い範囲で応えていって、その後はいつも通りゆったりとしながら雑談タイムです。

 

『しかし二人ともあったかそうでよかった』『最近犬守村はめっきり寒くなってきたみたいだね』『山の植物ももう葉を落としてるみたいだ』『木々がちょっとさみしいかな』

 

「そ~なんですよね~犬守村は既に冬に突入しておりまして~今回の冬服お披露目もこの冬を乗り切るための対策の一つなわけですよ~」

 

「おかーさといっしょにねー、冬ごもりするって、相談したのー」

 

『ほうほう』『現実と違って犬守村はもっと寒くなりそうだしね』『こっちは気温の上昇で雪なんてまず降らないからなー』『恐らく移住者でリアルの雪見たことあるヤツはいないだろうな』『狐稲利ちゃんと同じくらい雪を待ち遠しく思っている移住者がここに』『同じく』『私もー』

 

 ふむ……移住者さんの雪のイメージは空から降る綺麗な景色、というのが大半のようですね……ですがその考えは甘い! この犬守村ではあまあまなのですよ!

 

「皆さん、雪を舐めてはいけませんよ~? 恐らく犬守村の立地だと一日でわんこーろの背の高さくらいは余裕で積もります。あと水分を含んでいるのでかなり重くなります~。つまり、雪掻きしないとやばい、です~」

 

『え?』『マジで? 雪ってあのふわふわしたあれだろ?』『そんななるのか……』『教育映像で見たけど、雪崩とかが発生するとマジでヤバそうだな』『うわ、それは不味いな……』『それに冬は植物がほぼ育たんから、食料危機の可能性も……』

 

「そうそう~そうなのですよ~。雪が屋根に積もり過ぎると押しつぶされちゃったりしますし~食料も採集は難しいでしょうね~。でも、それらの問題は今のところ何とかなりそうです~保存食も作りますし~雪の問題はありますが、冬は家の中でゆったり~と過ごせるかと~~……、へぷちっ」

 

「おかーさー? くしゃみー?」

 

『助かる』『くしゃみ助かる』『ガチ幼女くしゃみで草』『村八分民は自重して?』『もはや八分にされた奴等だけで村ができる規模だよw』『草。てか、やっぱ寒いのか?』『部屋が寒いとじっとしてるだけで体が冷えるからなぁ』『二人とも大丈夫?』

 

 ゆったりと過ごしたい、のはやまやまであるのですが……。

 

 ううむ……やはり少し部屋の空気が寒いんですよね~移住者さんとの雑談はいつもの配信部屋で行っているわけですが、やはり衣装を温かなものにしただけではちょっと厳しいかな? と思うわけですよ。寒いからって部屋の中で着込むのも面倒ですしね。

 

「……やっぱり、これだけじゃ寒いです~……。というわけで~配信部屋に~こたつを設置していきますよ~」

 

 今日の配信は冬服のお披露目と雑談だけの予定だったのですが、やっぱりこたつ出しましょ! 別にこたつ出しながら雑談しても問題ないでしょう? さて、そうと決めたらさっそく行動開始です!

 

『唐突ぅ!』『え、今から?』『寒さに耐えきれずこたつ出すわんころちゃんかわいい!』『可愛いのは肌寒くて無意識に尻尾に手がいってたとこだなw』『炬燵!』『古の暖房器具じゃん』『しらんな……』『名前は聞いたことあるんだけどな……』『炬燵ってどんなの?』

 

「ん~とですね~炬燵というのは、暖房器具の一種なのですが~……まあ、実際に見て頂けると良いかもしれませんね~それじゃさっそく出していきますよ~」

 

 そう言って私は配信部屋の向こうにある部屋へと移動します。この部屋の押し入れは夏のFSさん帰省イベントなどで使ったお客様用の布団などが保管されているのですが、そこにあらかじめ制作したこたつの3Dモデルが保管されています。

 

「では~押し入れからこたつ出しますよ~。え~と、何処にしまったんだっけな~~~うおっとぉ!?」

 

 え? ……押し入れの戸を開けた瞬間に中から何かよくわからないものが雪崩のごとく私に倒れ込んできたんですけど? 

 これは灯篭……? テクスチャが張ってないので真っ白ですけど……。こっちは紅葉の枝葉? これも色が塗りかけですね……。他にも時計やこけし、達磨や提灯? 全部作りかけで押し入れに突っ込んでありますね……。

 

「おかーさ」

 

「は、はい~どうしましたか狐稲利さん~?」

 

「これ、おかーさと私が作ったのだよー? 失敗作だけど、捨てるのもったいないーって、おかーさがー」

 

「……あぁ~~」

 

 そういえば……ここ最近イベントやらなんやらで忙しかったので興味本位で創っていた3Dモデルをまとめて放り込んでいたんでした……。お披露目する前のものや、形に納得できないけど、壊すのももったいないと色々押し入れに詰め込んでいたような……。

 

 

『思い……だした!』『配信の裏で作ってたやつ?』『わんころちゃん忘れていたなw』『押し入れに突っ込むだけの行為を整理したとは言わないのよわんころちゃん?』

 

「わかってますぅ~~……ええと、ええと~こたつはもっと奥の方~~?」

 

 うん? なんだか予想以上によくわからないものが多いですね……あれ? これもしかして押し入れの広さ弄って拡張しちゃってます? あれ?

 

「ねーねーおかーさー、この衣装やたさまと、くー子に見せてきていーいー?」

 

「ん~? ええ良いですよ~……こっちはまだ時間がかかりそうなので~……」

 

 どうやら狐稲利さんは新しい衣装を自慢したくてしょうがない様子。移住者さんには散々自慢したので次はやた様とくー子に自慢しに行きたいようですね。

 

 あ、くー子というのはこの犬守山の北方、北守山地に存在している札置神社の中枢である九尾の狐さんの事です。ここから札置神社まではちょっと距離がありますが、札置神社は犬守村各地の神社や中枢の置かれている領域と繋がっているので、移動自体はそれほど時間はかからないのです。ワープポイントというやつですね。

 

「くー子さんにもよろしくお伝えくださいね~……それと、あまりはしゃいじゃダメですよ~? せっかくの新衣装なのにいつもみたいに泥だらけにして帰って来たら――」

 

「いってきまーす!」

 

「ちょっと狐稲利さん!? まだ話してる途中なんですが~!?」

 

『草』『脱兎のごとくってこういうのを言うんだろうなw』『相変わらず狐稲利ちゃんは元気だなぁ』『見た目大人びても中身は完全に幼女だな』『見た目幼女のわんころちゃんママは気苦労が絶えないのです』『どろんこになって帰ってくるに一票』『せっかくの新衣装でそれやられたらわんころちゃん泣いちゃう!』

 

「泣きませんよ~! それに狐稲利さんだってこんな寒い日に泥だらけで遊ぶなんて……」

 

 ……あれ? 狐稲利さんさっき、くー子さんとやたさまのところに行くって言ってませんでしたか? あれ? やたさまのところってつまりやたの滝……? 

 

「ええぇ~~……この寒い日に水遊びは……し、しないです、よね~?」

 

『あーあ』『フラグ建築おめでとうございます』『いやまさかそんなこと……』『さすがに子どもは風の子、でもそれはないでしょ~』『こちら犬守村撮影班。わんころちゃん、洗濯の準備とお風呂の準備とこたつの準備をお願いします』『草』『犬守写真機プレイヤーが地域の目になっとる……』『案の定じゃん!』

 

「うぐぐぐ……こたつを出すだけだったはずなのに~~……」

 

 とにかく風邪をひかせるわけにはいきません! 早くお湯を沸かさないと~~!

 

『あーあーあーあんなに汚しちゃって~』『しっかし元気だなぁ』『シャッターチャンスではあるんだけどねw』『わんころちゃん、安心してくれ川には入っていない』『入っていない(泥だらけになっていないとは言っていない)』

 

 これいつ炬燵出せるんですか~~~!?

 

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