転生して電子生命体になったのでヴァーチャル配信者になります 作:田舎犬派
狐稲利さんが衣装の自慢をしに出かけてしばらくしたころ、犬守写真機をもつ移住者さんからのご連絡で狐稲利さんのやんちゃが確定。すぐさま行動を開始したため思ったより時間もかからず元の配信部屋に帰ってくることが出来ました。
既に湯船にはお湯を張り、タオルもセット完了。これで狐稲利さんがどれだけドロドロになって帰ってきても問題ありません。
その後私はこたつの捜索に戻り、押し入れをくまなく探してようやくこたつのものと思われる一式を取り出すことに成功しました。なぜかコメント欄で歓声が上がる中、不足している部品が無いかをチェックしながら移住者さんと雑談に興じます。
「実はですね~この配信が終わった後にわちるさんたちが来られるんですよ~あの有名配信者グループの、FSの皆さんですよ~」
『あ、やっぱり?』『なこちゃんがメイクで炬燵買う~って呟いてたね』『なるほどそっちのフラグだったか』『コラボ?』『配信は無し~?』
あれ? なんだか固定用のネジが無いような……ああ、はめ込み式にしてたんでした~。ええっと、これをこっちに取り付けるんでした、よね~?
ん? コラボの配信ですか? ……あ~、やればよかったですね、コラボ配信。
「こたつは前々から探していたらしいのですが~犬守村へこたつの心地良さを体験したい~と連絡を頂いたのはつい先日でしたので~コラボの準備などしていないんですよね~移住者さんは後日FSさんよりこたつ購入のご一報をおまちくださ~い」
現在逃亡中の狐稲利さんの様子は、犬守村撮影班という名の犬守写真機プレイヤーの移住者さんたちによると犬守山周辺でいつものように遊びまわっているようです。やた様やくー子だけでなく、仲のいい動物たちに見せたいのでしょう。冬が近づき冬眠に入ろうとしている動物もいますが、冬でも活動するようなキツネなどの動物と一緒に行動しているご様子。
犬守村の動物たちは賢いので狐稲利さんが危ないところにいったり、迷わないようにサポートしてくれているのでしょう。
そんな狐稲利さんが遊び疲れて帰ってくるまでにこたつの用意をしておきます。既にお風呂と着替えの準備は完了したので、あとはこたつだけです。
「部品は全部ありそうですね~。さてさて~配信画面の前に並べましたのは~押し入れに突っ込んでいた諸々をどかしてなんとか救出したこたつ一式になります~」
『おお~』『机と、布団?』『こたつの原型がわからんからどうなるのかわくわくする』『これは……電気こたつですね』『電気? 犬守村に電気あるの?』『何言ってんだ、ネット空間なんだから電気なんて当然……あれ?』『これは触れてはならない矛盾……』『犬守村の闇……』
「ちょっと~勝手に闇とか言わないでください~わんこーろはこの原風景な感じが好きなんです~」
犬守村の日本の原風景マシマシ~な光景は私の趣味なところがありますので、それを変えるつもりはありません。電気の概念を実装すると、この風景に電柱が割り込んで来たりしますので。
もちろん電柱のある風景というのも日本らしいノスタルジックな感情をかき乱す風景だと思いますが、今回は電柱共々電気の概念は実装見送りということで……。
「電気はなくとも不思議ぱわーでこたつはあったかくなるのです~。いいですね? ね? ね~?」
『お、おお……』『圧かけないでもろて……』『札置神社の拡張された領域とか、時が止まってる岩戸とかあるから今更感』『たしかに』『何の問題も無いですはい!』
……よし、移住者さんも納得していただけたようですし! こたつ組み立てていきますよ~。
「組み立てながら少し雑談しましょうか~。このこたつはですね~いつも配信をしている配信部屋の真ん中に置くつもりなんですよ~部屋のほとんどがこたつに占領される事になりますが~わんこーろとしては広い部屋にポツンとあるよりも狭い部屋いっぱいにこたつがある方がなんだか安心できるので~」
何と言いましょうか、あの部屋全体が温かさに包まれているような、狭いところにいると安心する小動物のような、そんな温かさと安心感が合わさった至福の空間と言うものを再現したいのです。
「あと~先ほども少し話題になりましたが~炬燵の種類は電気こたつを基本にして~発熱部分は排除~こたつとして機能する際は自動的に内部が温まる仕様とします~」
あまり非現実的な仕様を増やすと昔の風景を見たいと思っている移住者さんに違和感を抱かせる事になるかもしれませんが、ここは利便性を採ります。
こたつには置き炬燵や掘り炬燵などの種類がありますが、電気こたつと同じように火事の危険性があります。冬の乾燥した空気に火を熱源とするこたつはやはり快適であるとともに注意しなければならない器具でもあるのです。
なので、今回はその心配が無いように電気こたつの形をした、ノー電気こたつの形にしました。置き炬燵や掘り炬燵にしなかったのは……。
「狐稲利さんがこたつの中で寝られないーって言うんですよ~」
『草』『使い方を熟知しておるw』『寝ちゃダメでしょw風邪ひくぞ?』『こたつから頭だけを出す狐稲利ちゃんが目に浮かぶようだw』
狐稲利さんが真剣な顔でそんな事を言った時には私も少し渋い顔をしてしまいました……。でも、なんだかんだ言って私もそういう事をしそうなので……あまり強くは注意出来なかったんですよね~……こたつの中って、すごく眠たくなりますから。
おっと、そのことを移住者さんに突っ込まれる前に話題を変えますよ~~!
「さて~机の部分は組み立て終わりましたね~。机の脚の部分と~、この天板との間に~このこたつ布団を挟み込んで~これで炬燵の完成です~」
『ほお、思ったよりシンプルなつくり』『現実ならここでヒーター部の電源を繋げる感じね』『見た目机付きの布団って感じだな』『ホントに部屋にギリ入る大きさじゃんw』『部屋の八割こたつで草』『こたつに占領された配信部屋』『でかすぎて草』『これ絶対寝落ちするじゃんw』
「それではこたつの暖房設定をオンにして~……とうっ!」
スライディングするように体を低くして、そのままこたつの中に突入!
せっかくの犬守村初のこたつなんですから、存分に味わいますよ~~あ、これ私もちょっとテンション上がってるかも~~~。
『うおおい!!?』『わんころちゃん足からこたつに滑り込んだ!?』『幼女みたいなことするじゃん』『ちょっとわくわくしちゃったかなw』『あれ?wわんころちゃんこたつから出てこないんだけど!?』『おーいわんころちゃーん』
「んふぅ……あ~い……これは思った以上に快適ですねぇ~んふぅ~」
ああ、これこれ、この布団の温かさと体をじんわりと温めるようなぬくもり……入った瞬間に眠気が襲ってくる即効性……こたつはやはりこうでなくっちゃ……。
こたつの中の狭い空間で私の尻尾がふりふり……ああ、眠たくて徐々に動きが緩慢に……。
「ただいまー……おかーさー……? ……あ、ああーー!! こたつー! おかーさずるいー!」
『狐稲利ちゃん帰ってきた!』『早かったな、さすがに外は寒かったかw』『おずおず、って感じで部屋に入ってきて草』『怒られると思ってんだろなw』『でもこたつを見たとたん目を輝かせてんのは草ですわ』
おやおや、我が家の問題児が帰ってきたようですね~。仕方ありません、だら~っとするのは後にして、今はこのおてんば娘をお風呂に連行するのが先です。
「はいは~い。こたつはまだですよ~狐稲利さんはこれからお風呂に直行~はいはい脱いで脱いで~」
「お、おかーさ!? まだ配信中だよー!?」
私の言葉になぜか自身の両腕で自身の体を抱く狐稲利さん。一体誰からそんなポーズ教えてもらったんですか。移住者さんですか? わちるさんですか?
「誰が全部脱げと言いましたか~!? ほら、濡れている羽織ですよ、はいはいお風呂へ~」
とにかく冷たく湿っている羽織を取り上げ、こたつを名残惜しそうに見つめる狐稲利さんを引きずってお風呂場まで連れていきます。
ちょ、こら、抵抗しないでください! お風呂嫌いな大型犬ですかあなたは!
「ああーこたつーー」
「後ですあと~~あ、すみません移住者さん~これからこのおてんば娘をお風呂に入れないといけないので~ここで配信は終わらせて頂きます~こたつの使い心地のご報告はまたの配信かメイクで行いますね~」
『おつー』『いってらー』『お疲れ様でしたー』『しかしこうやって近くて見ると意外と利便性高そうだな、こたつ』『机として機能するってのがいいな、こたつってこんななんだ』『ちょっと通販できるか調べてみるかー』『良いこたつマーケティングだった』『そしてすべての通販サイトから炬燵が消滅したのだった……』