転生して電子生命体になったのでヴァーチャル配信者になります 作:田舎犬派
「とてつもなく冷たいんですけど~!?」
『いきなりだなオイ』『配信開始したと思ったらわんころちゃんの絶叫から始まった件』『わんころちゃんただいま~~』『今日もせっせと雪掻きおつかれ~』『開幕雪まみれで草』『がんばれ!家の中で狐稲利ちゃんが応援してるぞ!』『応援というか……こたつで寝てね?』『夢の中で応援してるんだなぁ』『草』
「うう~ん重い~」
皆さまおはようございます。今日も元気に雪掻きをしている電子生命体のわんこーろでございますよ~。ほぼずっと降雪状態な犬守村でありますが雪の勢いが落ち着いたタイミングで頻繁に雪掻きを行っておりまして、そのおかげか家が雪の重みで倒壊するような事態にはなっておりません。
早い時期にしっかりとFSの皆さんが雪掻きをしてくださったおかげで雪掻きをするにも入り込めない積雪、という場所は少なく、こまめに雪掻きをすれば問題なさそうです。とはいえ雪は積もればかなりの量になりますし、時間が経てば湿って重くなります。やはり早めの雪掻きが大事ですね。
「ふい~こんな感じですかね~。それじゃあ移住者の皆さんも一緒に朝ごはん食べましょ~」
もう慣れたもので数十分程度で大体の行動範囲内は雪掻きが終わりました。毎日しているのでそれほど積もっているわけでは無いのですが、それでもほぼ一日中降り続けるうえになかなか解けないので一日でもサボると次の日が大変なことになります。なのでこうやって朝起きたらすぐにやるように習慣づけておくのがいいんですよね。
それに朝一番で体を動かすとその後の朝ごはんがよりいっそう美味しく頂けます。目も覚めますし一石二鳥です。
『はーい!』『雪掻きかんりょ~』『あさごはん!』『家に入るときはちゃんと雪払ってね』『手はしっかりと洗うんだよ。冷たくても雑に洗っちゃダメだよ』『うがいもするんだよ』『濡れた上着はしっかり乾かすんだよ』
「は~い分かりました~」
『素直でよろしい』『移住者が本格的に保護者になってんのよw』『しっかりこっちの話を聞いてくれるわんころちゃんかわいい』『まさに幼女ってかんじだよなぁ』
『ちょっとお父さんって呼んでみ?』
「呼んだら犬守村全土を雪掻きしてくれるかんじです~?」
それくらいしてもらわないとさすがに呼んであげるわけにはいかないですね~。んふふ~、やろうと思えばこのコメントの投稿アカウントからいろいろと特定することもできますから、将来NDSを手に入れられた際には犬守村へ雪掻き要員としてご招待~なんてことも?
『ごめんなさい』『草』『謝るの早くて草』『何諦めてんだよ!』『そうだぞここで頑張ればパパ呼びニキになれるんだぞ!』『どうして諦めるんだそこで!』『もっと頑張ってみろって!』『ごめんなさい無理です出来心だったんです……!』
あら、どうやら辞退されたご様子。……なぜあの方はこんなに怖がっているのでしょう?
「んふふ~残念ですね~」
『わんころちゃん笑みが黒いよ……!』『こわい……』『底知れない恐怖を感じる』
「も~何言ってるんですか。ささ、朝ごはんにしますよ~。狐稲利さんも起きてくださ~い」
手を洗ってうがいをして、ささっと竈に火を入れたらこたつで寝ている狐稲利さんへと声をかけます。寝ぼけ
「んにゃ……ごはんー?」
「はい~ごはんですよ~」
「ん……手伝うー……」
おや、どうやら手伝ってくれるようです。いつもならそのままごはんができるまで待っているのですが、今日はお手伝いしたい日なのかな?
「雪掻きー手伝えなかった、からー……」
「んふふ~なるほど~」
そういえば狐稲利さん、ちょっとバツが悪そうな顔をしていますね~。なるほどなるほど、本当は雪掻きも手伝いたかったのにこたつでうとうとしている間に私が終わらせてしまったのがなんだか居心地悪く思ったというところでしょうか。
『お母さんの様子をうかがう娘じゃん』『手伝いたい事を親にやられて申し訳なくなるの草』『怒られやしないかとドキドキしてんのかこれw』『狐稲利ちゃんいい子ww』
「むー……そんなんじゃないー……と思うー……」
「んふふ~それじゃあ狐稲利さんはお味噌汁お願いしますね~」
「はーい!」
さて、それじゃあ今日も頑張っていきましょうか。
ちゃぶ台に並んだ鮭の塩焼きと葱のお味噌汁、そして真っ白なほかほか白ご飯。ちょっと行儀が悪いですが、食べながら移住者さんとお話をして今後の予定を話して行こうかと思っています。隣で狐稲利さんもお漬物を載せた白ご飯をぱくぱく口の中へと放り込んでいきます。朝から食欲ありますね……。
とはいえ私も朝から体を動かしているのでおかわりするくらいにはいっぱい食べているのですけどね。
「さてさて~移住者の皆さまはここ最近どうです~?」
『雑なフリやめてもろて』『特に変わった事は無いっす!』『一期生の配信を追いかけているので常に寝不足です』『仕事はちょっと忙しいかな、年末だし』
「ふむ~なるほど~。確かに葦原町の様子は毎日配信されていますね~クリスマスが終わっても勢いは衰えず~って感じですよね~」
葦原町で行われたクリスマスパーティーですが、やはり大規模なイベントとはなりませんでした。元々が突発的なイベントで、運営による指揮も無かったので小規模なイベントがぽつぽつ行われるだけになったのが主な要因ではあるのですが、それでも葦原町という存在を周知させるには十分だったようです。
この世界でメジャーなSNSであるメイクではトレンドに葦原町とクリスマスというワードが急上昇したり、それまでクリスマスというものを知らなかった視聴者が配信を見て勢いでクリスマスパーティーを敢行したりと、意外にも大きな話題になりました。
その結果葦原町、もといV+R=Wプロジェクトは予想外のスタートダッシュを決め、一般の視聴者はもちろん、配信者界隈でも何やらソワソワとした雰囲気が漂っているように感じられます。
現在のヴァーチャル配信者界隈はこれまで主流だった企業の宣伝だけの為に存在する配信者から、娯楽を主目的とした配信者へと変わってきております。企業がこぞって配信者へのガイドラインを制定したり、個人配信者の急増もそんな流れを汲んだ結果なのでしょう。
そしてそんな新人配信者が注目することと言えば、数多くの有名配信者が参加する大規模プロジェクトV+R=Wであることは容易に想像できる訳です。つまり、配信者界隈に漂う雰囲気の原因は二期生の選考についてでしょう。
「そういえば二期生の選考をぼちぼち始めると室長さんが言ってたかな~……」
『そうなの!?』『マジか!?』『早いなぁ……つい先日一期生が来たばっかなのに』『とはいえタイムスケジュールじゃあ年末年始に二期生投入って話だったよな?』『多少遅れる可能性もあるって寝子ちゃんは言ってたけど、特に大きな問題は起こってないしほぼ予定通りに進んでるかな』『どれくらい葦原町の拡大ができるかねぇ』
「おかーさーおかわりー」
「はいはい、ちょっとまってくださいね~。二期生については私も選考に参加してるんですよ~良さそうな配信者さんばかりで迷ってしまいます~」
移住者さんの仰る通り年末から年始にかけて二期生の選考から投入までを行う予定となっています。
最初の予定としては二期生投入は年内という話だったのですが、クリスマスイベントなどの例から今後も想定しない突発的なイベントが発生する可能性を考慮して、多少投入時期を遅らせることになりました。想定しないイベントが増えれば比例して未発見のバグや不具合の発生も増加するであろうという考えからです。
この修正されたスケジュールも一期生投入後の各種不具合の状態によって予定が狂う可能性もあったのですが、致命的なバグは特に無く、NDSの稼働状況も良好。一期生全員の健康状態も問題なしとなり、二期生の投入は修正された予定通りに行われることになりそうです。
私が関わっているのは二期生有力候補の身辺調査……などではなく、ただ単純に面白そうな配信者はいないか、という聞き取りをされた程度でした。配信者といえどもプライベートはありますからね、無暗に詮索するようなことはしません。知らないことは人間の持つ美徳の一つです。
『来年の初配信は葦原町からになるかも、ってわくわくしてる配信者もいるだろうな』『V+R=Wに参加するだけで有名配信者の仲間入りだからねー』『一説には一期生に選ばれただけでチャンネル登録者が数十万追加されたとかなんとか』『今まで配信者に関心の無かった層も取り込んでるしそらそうよ』『俺たちも年末はヒマしないでよさそうだわw』
「ふ~む、年末~……」
現実世界にも、葦原町にも、もちろん犬守村にも等しくやってくる今年最後のイベント、年末。この世界でも年末年始という考え方はもちろん存在しております。主に仕事関係で用いられていた言葉だったのですが、最近では年末年始の長期休暇なども夏の長期休暇と同じく復活してきており、若い方々の中ではいつもより特別な意味を持つ期間であると受け止められています。
ですが、休みがあるという以外はかつて存在していた文化的な催し物はほぼ全滅状態です。FSさんや移住者の皆さんがおせち料理を知らなかったように、それ以外の年末年始、お正月などもほぼ忘れられている状態のようなのです。
ですがそれはあまりにももったいない! あの年末の忙しくもどこかお正月を心待ちにしているワクワク感、いつもとは違う食事や習慣は特別な思い出となって大人になっても忘れることは無いでしょう。そして自身の子どもにもそんな特別な思い出を作ってあげたいという想いが、その文化を自然と次世代へと継承させていくわけです。
うむむ……そう考えると、今後の年末年始の文化復興を勢い付かせるには私がどれだけ配信でそれらを魅力的に映せるかにかかっているような気が……。
いやいや、私一人だけでそんな大きな流れを作り出すなんておこがましいです。私は私で、好きなように年末を楽しむ事にしましょう。
「もうそろそろ本格的に犬守村でも年神様を迎える準備を始めた方がいいでしょうね~」
「おかーさ、としがみさまってだれー?」
『何かの神様?』『漢字にすると年神様かな?』『時間を操る神!!カッコいい!!』『ええ……』『お、なんか元気な奴が現れたな』『なるほどこれが例のちゅうにびょう? というやつか』『判定早くて草』『黒歴史という奴だろ?知ってる知ってる』
あ~……ついにそのあたりの用語もサルベージされてしまったのですね~……。インターネットらしくなってきましたね~。
「年神様というのはまあ……残念ながら時間を自由に操るわけではないんですよ~」
元々は穂の実りや穀物を司る農耕の神様で、年始にそれらの豊穣が祈られるようになり、それが新しい年を連れてくる年神様となったと言われています。年末の大掃除やお正月飾りの準備というのは、その年神様を迎えるための準備の事を表しているわけです。
『その神様が来ないと新しい年が来ない……?』『来るけどいい年にならねえぞ(圧 って感じ』『神様が圧かけるの草』『なるほど……なんだか神さまって人間みたいだな』『日本の神様はそんなもんよ』『つまり新年までに大掃除とかしとかないと、ってわけだな』
「そ~いうことです~。とりあえず中途半端なこの家の掃除を終わらせて~犬守神社のすす払いをします~」
……まあでも、今日くらいはのんびりしておきましょうかね~。明日からは大掃除で忙しくなるでしょうし。
……って、前に庭を掃除した時もこんな事を言って先延ばしにした記憶が……。まあ、いっか。
「狐稲利さんも手伝ってくださいね~」
「うんー! おかわり!」
「はいはい。……どれくらいで終わらせられるかな~?」
『一か所一か所掃除していくならかなり時間かかりそう……』『任せられそうな場所は任せりゃいいよ。札置はくー子が、とか』『それでも人手がなぁ』『九炉輪菜わちる:はい!はいはいはい!!』『うわびっくりした!?』『わちるんもよう見とる』『てか毎回見とる』『※この配信は九炉輪菜わちるに監視されています』
「あ~わちるさんおはよーございます~。なんです~? 手伝ってくれるんですか~?」
『九炉輪菜わちる:もちろんです! わんこーろさんの為ならなんでもしますよ!』
『ん?』『ん?』『今なんでもって』『じゃあ犬守村全土の雪かきしてもらおう』『ひい!?』『←雪掻き辞退ニキのトラウマがwww』『わちるんなら本気でそう思ってそうなんだよなぁ』『わちるんコラボの時よりコメントの時の方が荒ぶってんの草』『顔合わせるより気楽だからな』『つまりこれが本当のわちるん……』『本当というか本性というか……』
「んふふ~それじゃあ手伝ってもらいましょうかね~」
まあすす払い自体は私が配信外ですればいいですし、わちるさんには予定通りおせちの手伝いをしてもらうかな。
「おかーさーなこそのこれーやろー?」
「ん? ああ、クリスマスプレゼントでもらったボードゲームですね~分かりました~その前に机の上を片付けましょう~」
「はーい! あ、わちるもするー?」
『九炉輪菜わちる:すぐ行きます』
『コメント返信がはえーのよw』『そんな簡単にNDS使っちゃって~』『室長に怒られろ』『判断が早い』『爆速で準備するわちるんが見える見える』『コメントがシンプルなのがマジっぽくて草』『もはや犬守村の住人じゃんよ』
その後合流したわちるさんと三人でボードゲームをしたり、年末の予定を視聴者さんと考えたりしていたらまたもや雪が降り始めてしまいました。別に雪が降ろうとわちるさんが帰るのに支障は無いのですが、既に時間はお昼辺りまで進み、わちるさんがお昼ご飯を食べに行ったことで配信も終わることとなりました。
明日からは徐々にではありますが犬守村全体の大掃除を進めていくことになります。わちるさんにはお手伝いのお礼としてまた何か美味しいものでもご用意しておきましょうかね~。