転生して電子生命体になったのでヴァーチャル配信者になります 作:田舎犬派
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みなさんこんにちは~。
気が付くと真っ白な空間にいて何が何だかわかんない名無しだよー。
名無しってのもほんとはあったと思うんだよね、名前。でも思い出せないんだよねー。
名前があったのは覚えてるんだけどねー、それ以外はさっぱりなんだよねー。
真っ白な空間に一人ってホントまずいよね、何がまずいってまず目がちかちかする。
あとすっごく暇。なんもなくて真っ白だからね、ホントに暇。ダメになりそうなほど暇だけど、ダメになっても暇なことにかわりないから、うんとにかく暇。
暇すぎて今の状況がどういうものか考えてたんだけど、これってもしかしてうわさに聞く異世界転生ってやつでは?
それにしちゃ全く物語は始まんないよ。真っ白空間だからこれから神様的存在が出てきて「メンゴ殺しちゃった(ハート)チート&異世界GO、OK?」とか言ってこないですし。
時間なんてわかんないけど大分この真っ白空間に居る気がするよ?
それすっ飛ばしてここが異世界ですーなら物語始まんないどころの話じゃないよ?真っ白だよ?
物語の内容なんも書かれてないよ?白紙だよ?表紙詐欺すぎるよ?
そんなことを体感数日ずっと考えてたんだけどやっぱり真っ白なだけでなーんにも起こんないだよね。
「……地面さんはいる……あったかい」
小さな女の子みたいな声が出たよ。でも数日前からそうだからもう慣れちゃった。
なんだか安心する声で、ほわほわーってな感じの声なんだよねー、だから一人なのにいっぱいしゃべっちゃうんだよね。
「真っ白だけど地面さん……遠くを見ると真っ白で地面さんよくわかんない……」
うん、自分でも何を言っているのかよくわかんないよ。でも数日(体感)真っ白な空間に閉じ込められたら誰だっておかしくなるだろうし、まだいいほうだとおもうよ。声もかわいいし。
「……あ、すてーたすおーぷん」
まだやってなかったことをやってみるよ。まだ異世界転生の可能性を捨てたわけじゃないからね!
これで何か出れば一発逆転だよ!
「……すきるおーぷん」
「……ふぁいあー」
うーんだめですね、おーぷんすることもなければ目の前に炎が現れることもありません。
まさに八方ふさがり。くそげーです。
現実のくそげーならば攻略サイトを検索してさっさとエンディングを見た後、売っぱらってやるのですがこのくそげーは無理そうです。
「……ぐーぐる」
何と!どうやら私の口はこのくそげーを売り払うことを諦めていないようです。
くそげーの攻略サイトを絶対検索するという意気込みを感じます!
「……へっ!?」
突然私の目の前に現れる半透明の窓。青く縁取られたそれは紛れもなくパソコンのブラウザ、そこに映し出されているのは真っ白な背景にカラフルな6文字のアルファベットと検索欄。
「えっ嘘!?ホントに!?」
私は焦りながらもその窓に手を触れようとします。検索欄に指先が触れると私の手元にこれまた半透明なキーボードが出現。ご都合的ですね、ですがそれがいい。
そこからは何とも早いものでした。この空間が何なのかをなんとかして調べようとして、結局わからないと結論付けてからは今は何時なのか?ここ以外の世界は存在するのか、そして私は何者なのか?
そんなことを1年と13日と5時間13分29秒もの間調べ続けました。
そしてそれらの疑問の一応の答えを私は得ました。
この世界は私のいた現代よりも少し先の未来のようです。暦にすると2250年で、いろいろなことがネットを介してできるようになっているようです。例えば面倒なお役所関係の書類や、選挙などはパソコンの前でワンクリックするだけで完了するようです。
あと、自然環境なんかもかなり悪くなっているようですね。私の知っている小説に登場するディストピア一歩手前、もしくは最悪を脱却した直後って感じです。
それでもライトノベルなどに出てくるネット内へダイブできるほどの技術はまだないようです。
そんな中途半端に近未来未満な世界のようですが私という存在はまるでコンピューター内に存在しているかのように目の前に窓を出現させ、ネットに接続しています。
そこから考えるに私はどうやら人間ではないようです。
ネット内の空き領域と言う名の真っ白い空間に意思を持って生まれた、AIも真っ青な電子生命体、それが私なのです。