転生して電子生命体になったのでヴァーチャル配信者になります 作:田舎犬派
竹林の中はザワザワと風に葉が擦れる音が聞こえるだけで異様に静かだった。時折遠くから鳥の鳴き声が聞こえる事もあるが、それ以外に動物の気配は感じられない。だが、それは動物が全く存在しないという意味ではない。
「基本的に野生動物というのは臆病な性格なのです~。子育ての時期などで不用意に子供に近づけば攻撃される事もありますけど~基本的に人の気配を感じたら逃げてっちゃいます~」
「うんー……けものの山はみんな付いてくるのにここはぜんぜんダメー」
「んふふ~それはけものの山が特別なのですね~」
『けものの山の動物、野生じゃなかった説』『毎日狐稲利ちゃんが遊びに行ってるから実質同族と思われてんじゃね?w』『対して北守のほうはマジの野生ってかんじか』『肉食動物とかも実装してるから注意した方がいいかもだね』『熊とか狼とかな~』『今回はわんころちゃんと狐稲利ちゃんが目を光らせてるから大丈夫だけどね』『一応犬守写真機プレイヤーもいるからクマが来たら教えてくれるしな』『移住者すげぇ』
「あの、わんこーろさん。タケノコ、全然見当たらないのですが……」
クワを持って竹林を捜索している寝子は目当てのタケノコが全く見当たらない事に若干焦りながらもわんこーろへと疑問を投げかける。竹林の中は薄暗く、クマザサなどの背の低い植物が地面を覆っている場合もあり見つけにくくなっているが、おそらくそういった理由以前に寝子が注目している場所が悪いのだろう。タケノコはただ地面を見つめているだけでは見つける事はできない代物だ。
「タケノコはですね~地面から出てるものはもう食べごろを過ぎちゃってるんですよ~。なので~地面から顔を出す前のをみつけるんですよ~」
タケノコの成長は他の植物と比べてもかなり早く、食べごろは数日程度と言われている。それ以上経過すると竹となり食すことが出来なくなる。地面から顔を出しているものは既に収穫時期を過ぎている場合が多く、若く柔らかいタケノコを採るならば地面から顔を出す前を狙うしかない。
「地面の中ですか……見分ける方法はあるのですか?」
「ちょっとこんもりーってしてるのー。たけのこが土からわわー! って出てくるあいずなのー」
『狐稲利ちゃん両手使ってタケノコ表現してるのかわいい!』『これがタケノコにょっき……』『あれタケノコなのかw』『頭の上で両手を重ねて伸ばしている姿。どこか満足げな表情……かわいい~』『ところでたけのこにょっきってなに?』
「おお! さっそく盛り上がった土発見! よーし! こうなりゃいっぱい採ってタケノコ尽くしの昼ご飯にしてやるよぅ!!」
「力任せにすんじゃねーぞナート」
「タケノコは周りの土を掘ってから根元を切るように採ると綺麗に収穫できますよ」
「売り物にするわけでは無いので傷つけても大丈夫ですからね~」
「んふー掘ったあとの穴はちゃんと埋めてねー?」
『ナートお前めんどくさがらずにちゃんとタケノコの周り掘れ!』『途中で折れたらもったいないぞ?』『みんなも続々と見つけてるな』『意外とあるもんだな』『姐さんクワ振り下ろした時の音ぱねぇ……』『風切りのヒュゴって音が聞こえてきて怖い……』『石まで粉々にして……』『わんころちゃん「クワの刃が悪くなるのでやめてくださ~い」』『草』『寝子ちゃんよたよたしてて危なっかしいw』『狐稲利ちゃんが支えてくれてるから何とかなってるな』『初めてにしては上手いんじゃね?』『上手いと言えばやっぱわちるんだよなw』『明らかにクワを振るうスピードが段違いなのよ』『それなのにタケノコを一切傷つけずに掘り抜くの草』『もうプロじゃんw』
その後わんこーろと狐稲利がサポートしながらFSは数本のタケノコを掘り起こした。多少傷が付いてしまったものもあったが、可食部までは到達していなかったためそれらはすべてわんこーろとわちるの二人が調理することになり、他のメンバーでコラボ配信のメインである花見を行う場所の選定へと出かけて行ったのだった。
犬守村はわんこーろによって豊かな四季がこれでもかと再現されている。夏には青い空に深緑の木々が広がり、黄色いヒマワリが顔を出す。照り付ける日光によって影とそうでない場所が明確に別れ、すべての色が濃密なままくっきりと浮かび上がってくる。
秋は鮮やかに紅葉した森の風景が広がり、空は高く雲は何処までも続いている。どこか寂し気な秋風を伴いながらも豊富な食べ物が食卓を彩る。
冬は山も海も人の住まう場所さえも真っ白に塗り替わり、生命の動きさえも緩慢になる。だが、それ故に灯された火の暖かさをより強く感じ、その尊さを再認識する。
そんな厳しい冬を超えた先に春という季節は存在する。生命が暖かさを謳歌し、動物たちが活発に動き出す。そんな春の風景の中でも代表的ともいえる存在こそが、桜と呼ばれる植物だ。
春のほんのわずかな期間しか花を咲かせることなく、散るのも早い桜という植物はその性質故に過ぎ行く春の儚さの象徴ともされる花だ。
現代の若者はほとんどが整備された地下居住区に住み、地上に出たことの無い者が大半だ。桜はおろか植物さえ直に見た事が無いという人間も珍しくはない。そんな環境だからこそ葦原町で春告祭が行われた時、その盛り上がり様はかなりのものだった。
桜という植物の特別感を映像データ等から知り得ていたとしても実物を見ることも無かった配信者たちは葦原町で初めてその感覚を知り、散りゆく花弁の姿や香りを興奮した様子で配信画面の向こうへと伝えていくのだ。
塔の街という地上で暮らしていたFSとてその感覚に大きな違いは無い。桜という存在に特別な思いを抱き、だからこそ彼女らは犬守村各地へわざわざ花見の場所を見つけるために行動しているのだ。
現在FSは北上山地の東、札置神社近くを散策していた。札置神社に設置された犬守神社分社より札置神社へワープした一行はそのまま桜色に色付いている場所を目指して歩き回っている。先導する狐稲利のおかげで危険な肉食動物に遭遇する事も無く、比較的簡単に目的の場所まで来ることができた。
「ひえ~……此処ってこんなに高低差あったっけ?」
「すっげえ谷になってんな……なんでこんな地形になってんだ?」
「此処はわんこーろさん命名、タカチ峡です。元々は緩やかな川だったのですが、流れ込んだ溶岩を川だった部分のみ取り除いたらこんな感じの谷底に川が流れる地形になったようです」
『ああ、そういえば配信で紹介してたっけ』『ここ、実際に存在する地形らしいぞ?』『マジ?こんな地形が!?』『今はどうなってるか分からんけどな』
花見候補地として最初にやってきたのは札置神社にほど近い場所にあるタカチ峡と呼ばれる場所だ。流れ出た溶岩が冷え固まり形成された渓谷の岩肌はまるで六角柱が組み合わされたかのように特徴的で、それ故にまっすぐ深い谷間が形成されている。
FSのメンバーが居るのはそんなタカチ峡の渓谷に渡された橋の上だ。屋根橋であるその橋は谷の間に掛けられているため通り抜ける風がいつも吹き続けている。時折風に乗って季節のなにかしらが橋の上にたどり着く事もあり、狐稲利のお気に入りの場所の一つだ。
「んんー……桜、みえないねー」
「見晴らしは良いんだけどね。あ、桜……一応は見れる、かな?」
渓谷から吹く春風に撒かれてなこその手のひらに桜の花びらが着地する。谷の上にある橋からは遠くまで続くタカチ峡のうねった川の流れを伺うことができる。元々が山間にある川であったため、タカチ峡も山を緩やかに下っていくように存在しており、それ故に山の頂上付近に造られた屋根橋からの光景はなかなかのものだった。
『この桜の花びらどこから来たんだ?』『見渡す限り緑ばっかで桜の木は見えないなあ』『確かこの辺りはモミジが植わってたはずだから、桜は少ないのかも』『ピクニックにはよさそうな場所だけどね』
「この辺りじゃ花見にゃ合わなさそうだな」
「んー……次行こっかー?」
「そうですね。次は何処に行きましょう?」
「んふー。いじゅうしゃー」
『はい』『そうですね火遊治などはいかがでしょう』『火遊治に桜あったっけ?』『神社の境内にちらほら』『桜が見れる温泉がありますね』『温泉に入るわけじゃないからな~』『わたつみはどう?』『塩桜神社か。確か境内に桜が植えられてたな』『ちょい遠くね?』『札置のワープがありゃ一瞬でいける』『塩桜神社は今日はちょい面倒かも』『面倒?』『ヒント:昨日雨降った』『あっ……』『海になってるか~……』『そもそも塩桜神社は周りが平原か海で遮る物が無いから風強いぞ?』『ゆっくりするのはムズイか。そうでなくても桜が強風で散っちゃってるかも』
「と、視聴者の皆さまはおっしゃらていますが……どうします?」
「意外と良い場所がないよぅ。こうやって見て回るだけなら最高なんだけどぉ」
「基本的に自然環境を再現しているわけですからね。お花見会場のような場所は限られています」
「お花見会場か~……あ! それじゃあ札置神社の境内は? 確か桜の木もあったよね?」
「広すぎじゃね?」
「私たちだけじゃ寂しいかもねー」
その後も狐稲利と共にFSは犬守村各地を散策し、桜がめいいっぱい見れるような場所を探し歩いていくのだが、どうにも絶好と言える場所が見つからない。犬守写真機のプレイヤーからのコメントで穴場らしき場所も訪れてみたが、桜の木が数本あるだけで迫力に欠けたり、野生の肉食動物の縄張りになっていたりと落ち着ける場所とは言い難い候補ばかりだった。
「んー……もいっこだけーよさげなばしょあるよー」
「本当ですか狐稲利さん!」
「でもー……あんまり珍しーばしょじゃないかもー」
「? とにかくいい場所ってんなら見て見たらいいんじゃねーの?」
「そうですよ、一度案内していただいて良いですか? 狐稲利さん」
「わかったー! それじゃ行くよー!」
札置に祀られた犬守神社の分社から犬守山へとFSが帰った後も、北守山地はいつも通りの春風が吹き抜ける。火遊治の火山地帯以外は深い森に覆われている北守の地は風が山々を昇り、滑り落ちるように吹き下ろしてくる。植物たちの緑が一斉に風を受ける光景はまるで山々がゆっくりと呼吸をしているかのような一体的な動きを見せてくれる。そんな雄大な春の風に乗って遠くまで旅するのは、なにも桜の花びらだけではない。
タンポポの綿毛のように風を利用して種を遠くまで運ばせる植物たちは厳しい冬を耐え抜き芽吹きの季節となれば、勢いのままその種を撒き、遠く遠くまで運ばせるのだ。他にも春の陽気を感じ取り、冬眠から目覚めた動物たちの体毛に付着し、別の場所まで運ばせる手段をとる植物もいる。
北守山地のタンポポたちの子孫が、はるか遠いわたつみ平原まで到達する事だってありえない話ではない。あるいは、動物たちにくっついて本来風も届かないような奥地へと運ばれる事もあるだろう。
もしくは、それよりももっと遠い、遥か彼方へと届けられ芽を出す可能性もあるかもしれない。
タヌキのよーりやキツネのナナ、ヨイヤミのヨルがそうしたように、わんこーろも知らぬところで犬守村と葦原町や、他の管理空間がリンクで繋がっているかもしれない。そんなリンクを経由して種子が別の空間へと入り込んだり、よーりが犬守村の植物の種子をくっつけて葦原町へとやってくる事もあるかもしれない。
さすがに何もない真っ白な空間や犬守村のように植物の生長できるような環境が整備されていない空間では繁殖することなど出来ず、空間をしばらく漂った後、空間のアンチウイルスやクリーナーアプリに引っ掛かり削除されるだろう。
だが、犬守村と非常に似た環境である葦原町ならば、そのような偶然によって犬守村の植物がたどり着く可能性はある。
春の芽吹きに境界は無く、植物は今日もあちらこちらで花を咲かせ、春を謳歌するだろう。
「室長、今のところ問題はなさそうですよ。みんな問題なく配信出来ていますし、不思議なほどいつも通りです」
「そうか……視聴者からある程度危うい反応はあるかと思ったのだが……」
「私たちが思っていた以上に視聴者の皆さんあの子たちを大切に思ってくれてたんですね」
「……そうだな」
灯と室長は塔の街の推進室拠点で恐らく現在のFSの形態としての最後のコラボになるであろう配信を見守っていた。このコラボ配信を最後に外部とのコラボはおろか、FS全員で行うであろうコラボ配信は休止明けまで公式は予定していない、と告知している。
公式アカウントに詳細な説明文を掲載、SNSで細かく状況の説明を行うと約束し、各所属配信者の配信内でそれらの詳細を求めることが無いように、また、求めないようにと記載したそれの効果が如何ほど有るか分からないため、想定外の問題やアクシデントが発生する可能性があるのではと二人は予期していた。
だが、休止前最後のコラボ配信は二人の杞憂をよそにいつも通り……いや、いつも以上の盛り上がりの中順調に進行していた。
FSのメンバーは皆いつも通りに振舞おうとはしていない。たとえどれだけ何もないかのように、いつも通りの配信をしようとしても視聴者は皆このコラボを最後にFSの配信がほぼ途切れることを知っている。何事もないように振舞う配信者の姿と、実際には何事もある現実とのギャップに視聴者が配信を見ることに複雑なもやもやとした気持ちを抱く事になるかもしれない。
"もう最後なのに、なんでこんな楽しそうにできるんだよ……"という複雑な気持ち。
だから、FSのメンバーは今回の配信にあたって"休止"や"配信停止"といった、視聴者にとってネガティブなワードをあえて避けることなく口にしていた。
「休止前にやりたいことやんぞ!」とか「最後かもしれないだろ!?」とか「いやだぁ!? 休止前にセンシティブな理由でBANさたくないよぅ!?」とか、とにかく彼女たちもこれが最後のコラボである事を自覚して、画面の向こうにいる視聴者へ最後のコラボを成功させたい、だから協力してほしいと訴えたのだ。
その想いを受け取った視聴者たちによって荒れることなく、過度な杞憂を書き込む者もおらず、最後のコラボ配信は穏やかに進行していった。
「しっかり事前の説明をしておいたおかげですね」
「これがグループ内の問題ならばこうはならなかっただろうな。今回は塔の街の問題が原因にある。視聴者もそれを知ってある程度納得してくれているのだろう」
あまりにもいつも通りな配信状況に、コメントが荒れ始めたら対処しようと見守っていた灯と室長も拍子抜けだ。だが悪いことではない、そのまま彼女らの配信を見ながら室長は別の作業へと手を移し、灯はいつものように室長へコーヒーを煎れてやる。
「あ、それって蛇谷さんから借りた本ですか? 何処までお読みに?」
「ん……ああ、それがまだほとんど読んでいなくてな。コレでは読み終わる前にアイツに返さなければならんかもしれん」
「あ~、実物だとそうなっちゃいますよね。私の場合、電子書籍と比べて本はこう、どっしりと構えて時間があるときに読み進めたいですし」
「私も同じだよ……。ふむ、少し席を外すよ灯。あの子たちの事頼む」
「あ、はい分かりました。任せてください」
配信をながら見して本を開ける室長は数ページめくったあたりでその指を止めた。しばらくのあいだ驚きに口を小さく開け、何処か納得した表情で本を閉じて席から立ち上がる。室長は自室へ戻ると灯に言い、灯は首を傾げながらも了承した。
「室長も大変ですねえ」
室長があのように一人になる時は決まって裏で"何か"をしている時だ。それを長年一緒にいた灯は何となく理解していた。その内容がいったい何なのかまでは見当もつかないが、自身が知るべき事ではないから室長も秘密にしているのだと分かっているから灯も聞くつもりはない。
ただ、また室長が一人で何かを背負い込もうとしているのではないかと心配してしまうのだ。
「大切にしてもらえるのは嬉しいんだけど、私だって室長の心配くらいしたいんですよ……?」
「これがアイツが知っているすべてという訳か……」
自室に戻った室長は本のページに挟まれていた薄いチップ型のメモリーを指先に載せ、先日蛇谷の元へ訪れた時の事を思い出していた。蛇谷は塔の管理者とつい最近まで接触しており、人類にとって有益な情報を隠し持っていると復興省に思われている。あくまで穏便に蛇谷から情報を引き出したい復興省の思惑により蛇谷の生活はそのすべてが監視され、会う人間も復興省が許可した人物に限られていた。先日室長が蛇谷と面会出来たのは、室長との会話によって蛇谷が隠し持っている情報が漏れ出るのでは無いかと期待されたからだろう。
だが、蛇谷はただ監視されているだけの生活に甘んじているほど簡単な男では無い。蛇谷は確かに管理者よりあらゆる情報を得ていた。NDSをはじめとした先進的な技術だけでなく、世間話でもするかのように塔に関係する企業、機関についての情報も手に入れていた。
蛇谷はそれらの情報をカメラと盗聴器から隠れながらも密かに部屋のあちこちに隠していた。一日に数回行われる抜き打ちの身体検査から逃れる為に隠す場所は部屋のどこかに限定した。蛇谷が強かで油断ならない人物であるから重要な情報は肌身離さず懐に隠しているのだろう、という復興省の考えの裏をかく程度には蛇谷は強かで油断ならない人物だ。
「中身は……こちらの要望通り、ヴィータについてか」
蛇谷より渡されたメモリーの中には
「知り得ない情報といえば……CLについて、くらいか……」
主塔の最上層部に存在する
蛇谷よりもたらされたCLについてのデータにはそれらの実験室群の見取り図も含まれていた。部屋で行われていた実験内容までは不明だが、セントラルラインのある程度の形を知ることのできる貴重な情報だ。
これらの情報がメモリーに記載されていたのは、このCLという実験施設群の建造計画を実行したのが、当のヴィータだったからだ。
「ヴィータが塔内部の施設建造にまで口を出せる組織だったことには驚きだが……蛇谷から得られたコイツではヴィータが実質主塔を支配していたという事くらいしか分からんな……仕方ないか」
おそらくこのメモリーは蛇谷が管理者と会話をし、そこで知り得た情報をメモしたものなのだろう。情報に虫食いがあったり間違っている場合も考慮するべきだろう。あるいは、管理者が蛇谷に偽の情報を伝えていた、という可能性も考えられる。どちらにしろ蛇谷より得られたデータはそれほど有用とは思えない既知の情報ばかりだった。
新しい有益な情報はヴィータが塔建造計画において重要な位置に居たという事と、仮定だったヴィータと管理者の繋がりが確定した程度だろう。
室長は携帯端末に差し込んだメモリーを抜き取ると、それを人差し指と親指でつまみ、力任せに二つ折りにして破壊した。その後、室長は何もなかったかのように灯の元へ戻り、FSの子らの配信へと視線を戻すのだった。