転生して電子生命体になったのでヴァーチャル配信者になります   作:田舎犬派

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ストーリー進行の関係で本編に入れられなかったイベントを後日談に組み込んでCパートとして更新します。
一日一話、全14話で投稿していく予定です



電子生命体のCパート
#256 七夕の準備


 

 汚染された空は徐々に人の呼吸できる空間へと澄んでいき、触れるだけで肌が焼ける海は青い姿を取り戻しはじめ、踏みしめる大地には緑が徐々に現れ、それを見た人々は歓喜のままに地上へと足を踏み出す。

 

 袋小路に迷い込んでいた人類の未来は、とある配信者によって希望ある道へと導かれた。

 

 そんな世界的に重大な出来事が起こってから既に一か月が経とうかとしていた。塔の街で起こった事件と、それによってもたらされた希望は全世界を駆け巡り、暗く沈んでいた世界そのものを奮い立たせるほどの衝撃を持って受け入れられた。

 

 それは世界的な経済の活性化にも繋がり、発生源から周囲へと伝搬していった。今回の出来事と深い関わりのある仮想現実関係の技術を扱う企業等は思わぬ特需に嬉しい悲鳴を上げ、地上の汚染を除去するマイクロマシン製造企業は大元である粒子科学技研が先陣を切る形で地上の完全除染を掲げ、政府は除染後に必要となる建築関係等の企業への支援を開始。

 

 建築関係の企業は地上での建築事業の試験段階として地下都市にモデルハウスを建設すると発表した。将来的に地上に建設されるだろう建物を作れると、携わった作業者はどこか楽し気であった。

 

 

 そんな作業者の一人である青年は仕事の休憩時間に先輩が何やら端末をじっと見つめたまま微動だにしないのを見つけて声をかけた。

 

「あれ? 先輩何してるんですか?」

 

「ん、ああ……ちょっとな。……お前、この子知ってるか?」

 

 後輩想いではあるが無口であまり会話をしない先輩が不意にそんな事を言い出したのに青年は少し驚きつつも、差し出された端末を覗き込んだ。

 

「……あ」

 

 先輩作業者が青年に向けた端末には楽し気に歌を歌いながらゲーム実況を行うヴァーチャル配信者の姿があった。昨今では珍しくもない、NDS(ネットダイブシステム)を利用して仮想空間へダイブするタイプの配信だ。

 

 珍しくないとはいえNDSの一般販売はまだ行われておらず、現在NDSを利用出来るのはV+R=W運営によっていくつもの条件をクリアし選ばれた配信者に限られているわけだが、それでも見る分には珍しくはない光景だ。彼ら彼女らはほぼ毎日のように配信を行っており、青年を含めたこの国の視聴者にとってNDSによる配信は日常的という認識になりつつあった。

 

「この子、ミャンじゃないですか」

 

「! 知ってるのか!」

 

「え、ええ。確か今度歌番組に出るって……」

 

「そうなんだよ……! この子の歌声、ほんと良いよな……!」

 

 声を荒げるわけでもなく、静かに興奮しているらしい先輩は同志を見つけたとばかりに目を輝かせて青年にじりじりと詰め寄った。

 

 数年前までヴァーチャル配信者と言えば一時の流行に過ぎず、一つのジャンルとして定着するとは考えられていなかった。なぜならヴァーチャル配信者という存在が出始めた当初の、それらの役割といったら企業の宣伝を行うだけという面白味もなにも無いものだったからだ。

 

 潮目が変わったのは政府の立ち上げたFS(フロント・サルベージ)というヴァーチャル配信者グループの活動が始まってから。今では界隈以外の人間さえも一度は聞いたことがあるだろう知名度をもつ彼女たちFSはそれまでの配信者の存在を企業による宣伝媒体から娯楽を提供する新たな存在として復興させた。

 

 過去に存在していた効率化社会と呼ばれるものにより娯楽のことごとくが失われていた世界にとって彼女たちの配信は物珍しさから話題になり、追随するように娯楽を主目的としたヴァーチャル配信者が現れはじめた。それらの流れは当時政府が推し進めたいと考えていた伝統、文化、風習の復興の助けとなった。最終的にFS運営は国との関係性を解消したものの配信者活動は継続され、今日(こんにち)に至るまでヴァーチャル配信者界隈のトップをひた走っている。

 

 そんなFSより始まった娯楽を目的とした配信者たちの中でもFSに次ぐ勢いのあるグループこそが、青年の先輩が推しだと熱く語っているミャンの所属するイナクプロジェクトだ。

 

「この特徴的な声が最高に可愛いんだよな……! 歌だけじゃなくてさ」

 

「わかります。基本クールなんで滅多に声を荒げないんですけど、驚いた声とかめっちゃ可愛いんすよね」

 

「だよな!」

 

 青年の先輩は推しの推しポイントを嬉々として語りながら画面のミャンを見つめ続けている。その隣でミャンに巻き込まれる形でイナクも何故か転げまわっているのだが、どうやら先輩にはミャンしか目に入っていないようだ。

 

「まあ、イナクもかわいいが……どちらかというと愛玩動物的な可愛さだよな」

 

「あー……ですね」

 

 いや、目に入っていないというよりもそもそもの認識が異なっていたか、と青年が納得していると不意に先輩がこちらを向いた。

 

「ところで、お前は誰か好きな配信者いないのか?」

 

「僕ですか? 僕は……」

 

 先輩の瞳は何処か期待に輝いているように見えた。あの重大事件が起こった後、世間ではヴァーチャル配信者の存在があらゆる媒体をもって紹介された。それはネットのサブカルチャーから距離を置いていた人々にも届くほど。おそらくはそちら側の人間だっただろう青年の先輩さえも夢中にしてしまうほどに。

 

 だからこそ青年は自身の推しを誇らしく思う。この世界を、今の人類を、文化を、未来を、それらを救ってくれた。何より配信者として活動し続けてくれている彼女に。

 

 

「僕は、やっぱりわんこーろですね」

 

 

 

 

 

 

 青年はその日の仕事が終わった途端上司への挨拶もほどほどに帰り支度を済ませながら自身の端末を取り出し、とある配信を視聴し始めた。

 

「よかった、間に合った……! いつもより開始時間遅かったから仕事に被っちゃうんだよなあ」

 

 目当ての配信がちょうど始まるところだった事に青年は安堵し、その画面に視線を合わせ、コメントを書き込んでいく。一番最初に書き込む言葉は既に決まっている。

 これまで何度も何度も青年が書き込み、多くの視聴者が書き込んだそのコメントは、青年を配信の向こうの世界へと誘う言葉。 

 

『ただいま!』

 

 今日もネットの片隅で彼女の配信が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みなさ~ん、おかえりなさ~い。今日も犬守村にようこそ~、という事でして~さっそくチョキチョキやってくよ~」

 

 犬守村は今日もとても気持ちのいい青空が広がっております。春は終わりを迎え、もうすぐ夏の暑さがこの村へやってくる頃でしょう。犬守村にとっては二年目の夏、ではありますがその前にやらなきゃいけないことがあるんですよねぇ。

 

『ひえ』『え、こわ』『わんころちゃん鋏振り回さないで!?』『しかもそれ裁ち取り鋏じゃねーか!』『狐稲利ちゃーんドコー!?お母さんが乱心だよー!!』

 

「む~、なに酷いこと言ってるんです~? ……ほい~」

 

 まったく、こっちに帰ってきてから移住者さんもなにやら私に遠慮しなくなってるような気がしますね。距離が近いというのは、まあ私としては問題無いのですがあまり酷いと~こうですよ~。

 

『うわああ!?』『画面にハサミ向けないで!?』『移住者に〇ねと!?』『ごめんなさい私が悪かったですころさないで』『たすけて』

 

「冗談で~す。んふふ~皆さん反応いいですね~。……って、怖がりすぎでは~? そもそも画面の向こうに居る皆さんをどうこう出来るわけ無いじゃないですか~」

 

『電子生命体がなんか言ってる』『わんころちゃんならあり得そうなんだよなぁ……』『少なくとも俺の目の前にある端末を爆発させるくらいは出来そう』『そらもう一瞬よ。なんせわんころちゃんなんだから』

 

「んふふ~さすがに爆発させるのはむりですよ~」

 

 移住者さんは何をおっしゃっているのやら。端末のソフトウェアを起動できないくらいにぼっこぼこにすることはできますけど、爆発なんてさすがにむりですって。

 

『含みのある笑い怖い……』『ぜったいもっとえげつない手段想像してるぞ』『今や塔の管理者様だもんな~』『それでも配信してくれて助かる!』

 

「ん~塔の管理は今のところ(仮)ってかんじなんですよね~他に全体管理出来るシステムが無いので~って理由でして~」

  

 そうそう、実はあの事件の後私は塔の管理者(仮)になったのです。解放された塔の上層部分はシステム的にも物理的にも下層部分と繋がり、人類は塔のすべてのシステムを制御下に置いたと言っていい状態であります。

 

 ですけど、それらのシステム全てを完全な形で制御するにはまだまだ問題が多いと聞いています。そもそも塔の制御が難しいからこそ、塔の上層を支配しようとしていた元ヴィータの方々は過去の私とも言える初代わんこーろに塔の管理を任せたのですから。

 

 とはいえ当時よりも科学技術の発展している今ならばそれほど長引く問題では無いでしょう。既存の制御システムを組み合わせて、あとは人海戦術で何とかなるはずです。どこかのいち組織が塔を完全管理するよりも全世界が一緒に管理した方が安定的で安全でしょうから。

 

 塔の管理に関しては私と世界各国のお偉い方々の間で話し合いが長時間行われました。私の娘であるニコによる暴走が閉鎖の原因でもあるので、おなじ電子生命体である私が管理者となるのは問題なのでは? と言ったのですが、私を管理者へと推薦した各国の偉い方々に説得され、結局期間限定での管理者となってしまいました。

 

「管理者とはいえ忙しいわけではないですしね~。ごらんの通り、配信しながらのんびり~しております~」

 

『草』『地球の超重要施設を管理してるとは思えんなw』『わんころちゃんが管理者になったおかげで珍しいもの見れてるからこっちとしては感謝』『塔のデブリ監視用屋外カメラの映像とか映してくれるのありがたい』『めっちゃ貴重よなリアルタイムの宇宙の映像とか』『ほんとに犬守村の夜空みたいな景色が現実に存在するんだと感動したな~』

 

「まあこれでも管理者ですからね~皆さんに公開できそうなものはちょくちょく配信で紹介しようかと思います~」

 

 既に塔の内部や塔の外側に設置されているカメラの映像などは配信などで紹介済みです。もちろんこれらは関係各国にも事前に許可を頂いてから公開しています。時には塔の中で作業中の国や企業の職員さんたちが写り込む事もありますが、軽く手を振ったりして好意的に受け止めて下さっております。

 

 これは今まで内部の情報が殆ど露出していなかった塔に関して人々へと周知させる意味もあります。謎に満ちていた塔の封鎖が解かれて一番最初に報じられたニュースは、ニコの暴走やヴィータといったマイナスな情報。故に人々の中で塔がマイナスなイメージで定着してしまっていたのです。それを払拭するために内部を公開したりして透明化を図ろうというのが思惑としてあります。

 

 ですがこれらの考えはどこかの国や企業に指示されたものではなく、私自らが考え、実行しているものです。今後塔は粒子科学技研さんや復興省のようないくつもの企業、いくつもの国が共同で運営する施設になる予定です。場合によっては一般人に開放するテーマパーク的な立ち位置も予定しているのだとか。そのため良いイメージであって欲しい、というのが私の願いなのです。

 

「さて、それでは当初の目的通り、この鋏でチョキチョキしていきますよ~。まずは北守山地へごー!」

 

『いったい何が始まるんです……?』『鋏ちょきちょき可愛い……いややっぱ怖いわ』『ちょっと嬉しそうにしっぽが動いているの草。可愛すぎか』『結局何をしに行くのです?』

 

「ん~? それはもちろん夏が始まる前にできなかった行事をするんですよ~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 というわけでささっと移動しまして、現在私は犬守村の北にある北守山地へとやってきております。この山地には東に札置神社、西に火遊治の火山が存在しており犬守村全体の数割の面積を有する広大な山地となっております。

 

 まあ現実の世界でもこの国は山に囲まれた土地なので風景的にそこまで違和感は無いと思います。ですが犬守村と同じような立地を探そうとするとかなり大変でしょう。なんせ犬守村は私の想像する、理想の古き良き田舎風景を再現しているわけですので。

 

 私の好きな要素をめいいっぱい詰め込んだのが、この犬守村なのです。

 

「さてさて~それじゃあこの辺りでいいですね~」

 

『いきなり画面飛んだと思ったら……森の中?』『竹林ですね』『あ、ここ竹林なのか』『年末に門松の材料取りに来た時と全然風景違うからわかんなかった』『すっかり雪も溶けて全く別の場所に見えるよな』

 

「今日も門松の時とおなじく~竹を取りに来ました~。ん~、小ぶりの竹がよさそうですね~。でも枝はいっぱいあった方がよさげ~短冊もいっぱい吊るせますし~」

 

『たんざく?』『あ、この時期で竹って』『あ!そういえばやってなかったっけ』『そっか教育映像で見た事あるけど犬守村だとまだだったんだ』『もしかして……七夕!』

 

「んふふ~そのとおりで~す! というわけで~今日は七夕行事の為の準備配信なのでした~」

 

 移住者の皆さんも書き込んでおられますが、実は犬守村では七夕というものをやっていないのです。私が配信を始めたのは春頃で、犬守村を創ってそこに季節を実装した頃には既に七夕の季節を過ぎてしまっていましたから。

 

 とはいえそこまで規模の大きなイベントにするつもりはありません。静かで風流なのもこの国の行事らしくていいでしょう。

 

「誰かとコラボとか~そういったものもしないつもりですので~我々移住者のみ。身内でこそこそやっていくイベントになりそうです~」

 

『身内だけ……?』『わんころちゃん今の自分のチャンネル登録者数分かってる?』『身内(ネット利用者の過半数)』『身内(配信者界隈全体)』『(全世界に名が知れ渡ってる配信者の)身内』

 

「あ~あ~きこえないです~。もはや配信するだけで配信サイトが重くなるんだけどって、配信サイト運営様にご連絡が来て一緒にサイトの最適化工事をしてたなんてまったく知りません~」

 

『草』『今どきサイトが重くなるとかよっぽどよね』『わんころちゃんがエンジニアみたいになってる……』『ちゃんとリニューアルした配信サイトの下の方に管理者、運営陣のメイクアカウントと一緒にわんころちゃんのアカウントもクレジット表記されてたの草』『世界最大級の動画配信サイトの運営の一人になってて草』『あらぬ方向むいて口笛吹いてるわんころちゃんのとぼけ顔かわいい~』『全然口笛吹けてないけどね』『動揺から耳がピコピコしておられる』『不安を隠すように手元に手繰り寄せた尻尾イジイジしてるのかわいい~w』

 

「も、もう~! この話は終わりっ! おわりです~! ほら、話を変えないと皆さんもこの竹と同じようにじょっきん! ってしますよ~!」

 

『ひいいい!?』『やっぱり冗談じゃなかったじゃないか!』『わんころちゃん狂気しまって?』『定期的に漏れる狂気草なのよ』『話題変えよう!七夕しよ!』『全然知らないんだけど、七夕ってそもそも何?』

 

「お~! ほらみなさん! 七夕が何かを聞きたがっておられる移住者さんがおられますよ~! 仕方ないですね~ここはわんこーろが七夕とは何かをご説明させていただきましょ~!」

 

『露骨に話題を変えに行ってて草』『むしろもとに戻ったのでは?』『まあ七夕ってふんわりとしか知らないのは事実だけれども』『あれだよね?竹に願い事書いた短冊飾るやつ』

 

「そうですそうです~。今ならサルベージされた教育関係の資料を見ればある程度どのようなものかは理解していただけるとは思いますが、簡単に言うと織姫と彦星のお話ですね~」

 

 七夕の起源は諸説あります。有力なのは共和国側で昔行われていた風習がこの国に伝わり、独特の文化へと変化していったというもの。だいたいは七月七日に行われるのが一般的だったようですが、地域によっては時期がズレていたり旧暦を参照したりと少々ブレが見られます。

 

 とはいえそのすべてに対応できるわけではないので犬守村の七夕はおそらく一般的と思われる形を参考にしていこうと思います。

 

「北守で採ってきた大量の竹は犬守山の入り口から犬守神社の境内の中までずら~っと並べまして~短冊は~……そうですね~」

 

『短冊は~?』『ワクワク』『そりゃ、願い事を書くわけなので~』『うんうん!』『これだけいっぱいの竹に飾るならきっといっぱいの短冊が必要になるんだろうなー』『つまり~短冊は~?』

 

 う……移住者の皆さん、もう私が言いたい事をなんとなく察している様子ですね……。

 

 今回の七夕イベント、私がやろうとしているのは移住者さんからお願い事や日々お世話になっている人へ向けた感謝の言葉などを募り、それを短冊の形にして竹の葉に飾っていく、というものでした。

 

 募集した言葉を自動的に短冊へと書き込み、笹へ括り付ける作業は札置神社の絵馬と同じシステムを用いればそれほど難しくはありません。絵馬と同じシステムを流用して短冊の大きさや色、絵柄なども変更出来るようにすれば面白いかと思い、絵馬と同じように投げ銭の額によって変化するようにもしてあります。

 

 もちろん一般的なコメントも短冊の採用範囲なので投げ銭しないと短冊にしてもらえない訳では無いのですが……。

 

 うう~……私が最後に行った投げ銭を有効化した配信はいつだったでしょうか? 移住者さんの中には私がなかなか投げ銭が出来る配信を行わないからと何やら投げ銭貯金やら推し活貯金やらというワードを用いてかなりの額を貯め込んでいる、とメイクで呟いている方がかなりおられる様子。

 

 そんな移住者さんの中には塔の街へ一泊二日観光できそうな額やら、高級な乗り物が購入できる額やら、新たにヴァーチャル配信者になるために必要な機材一式が揃えられそうな額やらと、とにかくかなりの額が集まっているらしいのです。

 

 それを見て私は思いました。これはヤバイのでは~? と。

 

 そもそも私が投げ銭を含めた収益化を始めたのは移住者さんの要望でもあったからです。金を払わせてくれ! なんて意味の分からない切実な声にびくびくしながら収益化申請をしたのを覚えています。怖かったです。

 

 しかし私は飲食も睡眠も必要ない、何なら寿命さえ無い電子生命体なのです。娯楽として何かが欲しいと思えば自分で作れますし、お金が必要な場面というのはかなり限られています。使う場面といったら有料公開されているアプリやゲームをダウンロードする時くらいでそこまでの出費ではありません。

 大抵のものは自分で作れるのでアプリやゲーム購入も作者様への応援のつもりで購入しているところがあります。

 

 つまるところ、私はお金に関しては貰う必要が無く、貰っても使い道が無いのです。

 

 それらの事情をしっかりと移住者さんに言って聞かせているのですが、メイクでつぶやかれる貯金の金額は依然増え続ける一方。それは今現在においても変わることがありません。

 

 そう、例の騒動によって私が本物の電子生命体である事が周知され、ヴァーチャル配信者としての設定ではなくマジでお金は要らない存在なのだと理解された現在においても、変わらずに移住者さんの貯金額は増加傾向にあるのです。

 

「え~……と、短冊のほうは~投げ銭によっていろいろな種類をご用意しています~……」

 

『しゃあ!!』『よ く や っ た』『さすがわんころちゃん!話が分かるぅ!!』『さてと(貯金した紙幣を数える音)』『マジかっ!!ついにワイの全財産を使い果たす時が来たんやな!』

 

「ぜ、全財産はやめてくださいね~!? というか投げ銭しなくても普通のコメントからも短冊にしますから~!」

 

『それじゃあ短冊全種コンプ目指すか』『竹一本ワイの短冊でいっぱいにしてもええか?』『真っ赤な短冊が並びそうっスね~w』

 

「はなし聞いてます~!?」

 

 だ、ダメですねコレ……! とはいえ今更投げ銭の上限設定しますと言っても聞いてもらえない可能性が高いです……!

 

『放置してた垢のパスワード思い出さないとな~』

 

 ……上限設定しても複数アカウントから投げてくる可能性さえあるからどうしようもなさそうなんですけど!?

 

 あーもう! 知りません! どうせ大量に投げ銭されるならそれの移住者さんへの還元方法を考えた方が有意義ですよ!

 

「移住者さんいいですか!? お金はご自身の為に使ってくださいね~!? わんこーろのことは二の次でお願いしますよ~!?」

 

『もちろん!自分の為に使うよ!』『自分の為……つまり生きがいの為に使えって事だな!』『了解!わんころちゃんの言いたいことは全部伝わったぜ!』

 

「ぜったい伝わってないと思うのですけど~!?」

 

 

 

 

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