転生して電子生命体になったのでヴァーチャル配信者になります   作:田舎犬派

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#261 葦原町と犬守村コラボイベント

 

 現実世界と仮想世界の両方で行われるヴァーチャル配信者たちの祭典、V/L=F(ヴァーチャル・リンク・フェス)は秋ごろに開催されるのが通例だった。元々はV/L=Fの原型となった"サブカルチャーの祭典"と呼ばれるイベントは夏と冬に開催されていたらしいのだが、それも今や百年以上も前の話。

 

 わんこーろが配信を始める以前、復興省はこれらのイベントを復活させようと考えていた。ところが効率化社会によって娯楽関係はことごとく破棄され、最も注目度の高かったそれらの大型イベントは真っ先に潰された。故にサルベージするべき情報としてはかなり古く、どのような形態で行われていたのかさえ特定できなかった。

 

 なので代わりとして塔の街を舞台としたV/L=Fという祭典が新しく生み出された。

 

 だが、わんこーろが登場し、あらゆる過去の娯楽が急速に復興し始めた昨今、V/L=Fだけでは多くの者は満足できなくなっていた。ただ画面の向こうで……あるいは現地で配信者たちが頑張っている姿を見ているだけでは自身の欲求を抑え込めなくなっていたのだ。

 

 多くの絵描きが、多くの小説書きが、多くのモデラーが……多くの創作を趣味とする者が、自身の作品や表現を発信する場を欲した結果、忘れ去られた過去の祭典に似た、けれどもV/L=Fとは異なる新たなイベントが生まれる事になった。

 

 それはV/L=Fと同等の熱量を持ちながらもその特性上、あまり(おおやけ)にされることもなく創作者たちの中に浸透していった。アマプロ問わずあらゆる創作者が自身の創作物を引っ提げて参加するそのイベントの名前は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

「部長……これ、絶対に間に合いませんよ?」

 

 葦原学校の実習棟、その中でもそれなりの大きさを誇る実習室のひとつが部活の活動拠点として利用されていた。部屋いっぱいに机と椅子が並べられ、壁に備え付けられた本棚には専門書らしき本が隙間なくみっちりと収納されている。

 

 机の上には何やら写真や人形のようなものが置かれ、インク瓶が放置されペンが転がっている。そして何よりも目を引くのは……机に突っ伏す人。並べた椅子をベッド代わりにして仮眠を取る人。床に転がり白目を剥く人。

 

 人、人、人……、それはまさに修羅場。あらゆる屍がその姿をさらし、NDSの許容限界ギリギリの精神状態で生きているだけのゾンビ。生と死が混在する修羅場と化していた。

 

 修羅場を生み出している部屋の名前は"現代漫画復興支援部"。この国に数千数万と存在していたあらゆるジャンルの漫画をサルベージし、さらに新たな作品を作り出す事でジャンルそのものの復興を目指す部活動だ。

 

「口よりも先に手を動かすのじゃ! 絶対に当日までに描き切るのじゃぁ……」

 

「やっぱりページ数を40Pにするのは無謀だったんですって! 私たちマジの漫画なんて描いたこと無いんですよ!?」

 

 屍の山に呑まれようとしている中、必死にペンを走らせるのは現代漫画復興支援部の部長であるイナクだった。指先をインクで汚し、血走った目で目の前の原稿にガリガリとペンを走らせる。隣で机に顔を伏せながら弱々しくイナクへ抗議する部員はイナクの計画性ないページ増量に大変お怒りのようだ。

 

「誰でも初めてはあるものじゃ……」

 

「ちょっといい感じの雰囲気出さないでもらえます? そもそもイナク部長がページ数を増やすとか言ったからこんな事になってんですよ?」

 

「うっ……だって……いけるとおもったんじゃもん……」

 

「計画性が無さ過ぎですよ……。過去の偉大な絵描きたちはみんなイベントまでに余裕持って脱稿してたはずですよ……!」

 

「それでも……それでも今回は記念すべき第200回目のコミケ……これを逃す手はないのじゃ!」

 

「はぁ……それじゃあ、戸締りお願いしますね」

 

「なあ!? か、帰るのか!?」

 

「当たり前じゃないですか。私の本はもう完成したんですから。ほら、五時のチャイム鳴ってますよ。生徒会には私から連絡しておきますから帰る時はちゃんと部室の鍵返却しておいてくださいね」

 

「は、薄情者ぉ!!」

 

「はいはい、横たわる屍たち(ほかの部員)はそのまま放置しておいて大丈夫ですから。どうせNDSの機能で勝手に浮上(ログアウト)するんですし、前みたいに起こそうとしなくてもいいですからね~」

 

「そんな心配しとらんわっ! 起こすならいよいよヤバくなって人手が欲しくなった時くらいじゃ!」

 

「あはは、部長鬼~」

 

 自身の原稿が終わり、達成感から机に伏していた部員は今日最後の授業が終わった事を知らせるチャイムを聞いた途端、道具を片づけて部室から出ていこうとする。幾つもの"横たわる屍たち"をぴょんと飛び越え、机と乱雑におかれた資料の間をする抜けていく。

 

 後ろから聞こえるイナクの悲鳴も受け流し、結局その部員は涙目で手を伸ばすイナクへ応えるように手を振って笑いながら部室を出て行ってしまった。後に残るのはNDSによる浮上を待つ屍と、イナクと、真っ白なページがまだ半分以上残っている原稿のみ。

 

「くぅ……これしきのことでぇ……」

 

 イナクはいつも通り好きな事をして、いつも通りメンバーと楽しく葦原町で開拓を進める中で、絵を描く事に興味を抱くようになっていった。一番最初はわんこーろが配信で空の風景を描いたり絵馬に描く絵を配信で披露した際に、その美しさに見惚れてからだった。最初は道具も技術も知らずに描きはじめ、最近では絵の上手い配信者たちと協力して部活動を立ち上げるほどにまで成長していた。

 

 例の事件を経てイナクは今まで以上に積極的に他の配信者や視聴者と交流する事を重要視するようになり、部活の立ち上げはそのような心境の変化によるものだった。

「……うぅ、さみしぃ……のじゃ」

 

 しばらく一人で原稿に向かい合っていたイナクだったが、しんと静まり返った部室と窓から見える夕暮れはいやに寂しさを助長させる。イナクは躊躇いながらもNDSの機能を呼び出し、表示された"配信開始"のボタンを押した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 塔の街で行われるヴァーチャル配信者たちの祭典、V/L=F。あらゆる場所から多くの観光客がやってくる最大規模のお祭りは塔の街の中心にある副塔で毎年開催されている。

 

 三日もの期間行われるこのお祭りには塔の街で最も大きなイベント施設である副塔の"西ホール"と"東ホール"が用いられ、この二つで様々な催し物が開催される。それに加えて協賛の企業が最新の技術を披露する展示会場や参加配信者のグッズ販売を行う"新館一階"などもV/L=Fのイベントとして紹介されているが、実はV/L=Fとまったく同じタイミングでまったく異なる最大級のイベントが副塔で毎年行われている。

 

 それこそが、世界中に存在する創作者たちのためのイベント、通称コミケと呼ばれる大型イベントだ。

 

 "コミケ"については過去の情報のほとんどが失われており、わずかにコミケという名称が古いネットの底でサルベージできただけに留まっている。どのようなイベントで、どのような組織が運営していたのか、そのほとんどが謎とされているイベントである。

 

 あまりにも謎が多すぎて、これほどの巨大なイベントを実行するのだから何処かしらの組織が運営していたのだろうという憶測が飛び出すほどだった。

 

 効率化社会の始まりと共に真っ先に開催が中止されたイベントであるためネットに投棄された情報は新しいもので百年前。頼みの綱のわんこーろでさえ「私は参加したことがありませんでしたからね~」とよくわからない事をつぶやくだけで詳細な情報は持ち得ていなかった。

 

 それでも今日(こんにち)まで数多くの人々が伝えてきたそれらのイベントの情報は完璧と行かないまでも現在に再現させられるほどには集まっていた。コミケという創作者の集まる場が無くなったとしても過去の創作者は創るという行為を止めなかったのだ。

 

 創作者が残した絵や文字、音楽や立体物。あらゆる創作物がかつてのイベントの巨大さを浮き彫りにさせた。そうして現在にもかつてと同じように作家が生まれ……そしてかつてと同じように修羅場で死にかけていた。

 

『だからって初めての同人誌で40Pは無謀だったのでは?』『現実で頒布するから印刷所の期限も守らんといかんぞ?』『確かイナクも修学旅行に行くんだよな? これ間に合うの?』『てか、V/L=Fのイベントとして修学旅行があるんだよな? 完全にタイミング被ってね?』『V/L=Fと全く同じ日程でコミケが開催されるからそうなるな……』『完全に無理じゃん!?』

 

 修羅場配信と銘打って始まったイナクの配信には既に十数万以上の視聴者が集まっていた。FSほどでは無いが例の事件の中で引き起った葦原町防衛戦におけるイナクの活躍は多くの視聴者が目の当たりにし、イナクプロジェクトの名前と共に名が知れ渡っていた。

 

 防衛戦の時のような凛とした表情のイナクではなく、ペンと紙に頭垂れるシナシナイナクの姿を見せているが、それが意外とギャップがあって人気なんだとか。

 

「修学旅行は初日から二日目の夜までじゃし、コミケは三日目からの参加じゃから大丈夫なのじゃ~。原稿は……修学旅行中に書くのじゃあ……」

 

『やめて?』『前日まで脱稿出来ない予定なのは草』『印刷所激おこ案件ですよ』『さすがに冗談ですよね……?』『ワイ印刷所勤務、当日までご相談OKです』『マジかよ神か?』『さすが娯楽復興に力を入れてるだけあるな~』『とはいえ原稿を犬守村で書くマ?』『さすがに同業者の二次創作を本人の隣で書くのはレベル高いっすよ』『てかよく許可降りたな、ナートさんとほうりちゃんの姉妹百合もの』

 

 流れたコメントをちらりと一瞥し、イナクは指先の動きを止めた。

 

「……許可?」

 

『おい』『あー……この話やめよっか』『さすがにこれ以上追及すると各方面に迷惑がかかりそうだ』『怒られるのはイナクだけだし……まあいっか』

 

「うそ! うそじゃあ! ちゃんとほうりにもナート殿にも許可は取っておる! ……本に登場させていいか? と聞いてちゃんとOKもらっておるもん!」

 

『内容を伏せてか……』『これ単純に黙っているよりもタチ悪いのでは?』『しっかり怒られておけよ』

 

「も、問題ないのじゃ……コミケに参加するサークルの数は数百以上……! その中でこの薄い本を見つけ出せる確率はかなり低い……! そもそもV/L=Fの司会で忙しいFSのメンバーがわざわざコミケ会場まで来るはずないのじゃ!」

 

『なんかフラグ立ててる』『葦原町で執筆作業してる時点でモロバレ定期』『原稿を配信に映してなくても運営は関係なく見えるよね?』『少なくとも管理者に近しい生徒会にはバレてる定期』『ついでに葦原町の防衛機能を管理してるわんころちゃんにもバレてるだろうなぁ』『例年通りならFSも三日目は暇してたような……』『というか許可取ったなら本人たちが気になって会場まで見に来る可能性高くね?』

 

「そ、そんなわけがないじゃろう……た、たぶん大丈夫じゃよな?」

 

『うーんこの』『粒子科学技研は所属配信者にネットリテラシーの授業を受けさせるべき』『そもそもよく企業勢なのに同人誌執筆なんて許可してもらったなw』

 

「うう……なんじゃなんじゃ、お主らだって一度は妄想した事あるじゃろう……? わちこーろ(わちる×わんこーろ)は頂点、真〇(真夜×〇一)は純愛、ほうナー(ほうり×ナート)は沼。それがお主らの総意だったはずじゃろう……」

 

『偏見に満ちてて草』『イナクの中で俺らは一体何なの?妄想の化身なの?』『ドン引きするとともに同意したい俺がいる……』『イナクはなんもわかってねぇな……頂点はこいわん(狐稲利×わんこーろ)だろが!!!!』

 

「ふふん、こいわんのう? 確かにそれもいいのじゃが、やはり恋愛関係というよりも親と子の関係の方がイメージが強いのじゃ。それならばわちこーろのストレートで王道、それでいて様々なシチュエーションが生み出せる伸びしろは天井知らずで……いやまつのじゃ。確かに親子関係から恋愛へと感情が揺れ動いていくのも趣があって──」

 

「いなくー! こんにちはー!!」

 

「うひゃあああ!? こ、狐稲利どのおおお!?!?」

 

『草』『狐稲利ちゃんきたー!』『ニコちゃんもいるじゃん!』『姉妹揃って相変わらず仲がいいねえ』『怪しい雰囲気を感じ取ったな』『突然背後から現れるじゃん』『わちこーろは許さないという気迫を感じる……!』『むしろ狐稲利ちゃんはわちこーろ肯定派では?』『そうかな……そうかも……』『お前ら本人の前でやめろw』

 

 一人で配信をしながら執筆作業をしていたイナクは突然現れた狐稲利の姿に驚き飛び上がりながらも手元は冷静だった。即座に執筆中の原稿を非表示にし、狐稲利の目に触れないようにする。

 

 その動作に首をかしげる狐稲利だが、後に続くニコが挨拶したことで特に追及することもなく、狐稲利はイナクといくらかの世間話を交わし、落ち着いたところでイナクが二人の来訪の理由を尋ねる。

 

「そ、それで……どうしたのじゃ狐稲利殿とニコ殿」

 

「うんーえとねー絵の描き方を教えてほしいー」

 

「絵、じゃと……?」

 

「お母さまの、……似顔絵をかくの」

 

「ほう……? どうしてまた突然」

 

「今度の七夕の日はねーおかーさの誕生日なのー」

 

「なんと!?」

 

『まじで!?』『知らんかった……』『そういやわんころちゃんの配信でも聞いたことなかったな』『ほうほう!プレゼントで似顔絵か!』

 

 狐稲利とニコは気絶したわちるを何とか正気に戻し、FSメンバーも加わっての誕生日プレゼントを何にするかと緊急の会議を開催した。あまりにも唐突であったことからFSの面々は手の込んだプレゼントは間に合わないと判断し、プレゼントの値段や希少性など考慮せず真正面から勝負するべき、とアドバイスした。

 

 イナクに願った似顔絵というのもそんなアドバイスから二人が考えたプレゼントのひとつだった。

 

「なるほどのう! それならこちらから協力させてほしいくらいなのじゃ!ささ、開いている机にどうぞなのじゃ!」

 

『おい屍を雑にどかしてやるなよw』『屍もさっきまで元気に原稿してただろうが!』『もっと屍を労わってあげて……?』『視聴者みんな部員を屍呼びしてて草』『てかイナク原稿は?』

 

「……それよりもわんこーろ殿の誕生日じゃ! わしも誕生日イラストを一緒に描くぞっ!」

 

『あーあ』『こりゃ確実に間に合いませんわ』『漫画の息抜きに絵を描く配信者だと?』『むしろ修学旅行先で誕生日イラストを即興で書いた方がサプライズっぽくて良くないー?』

 

「わしはそんな筆早くないもん……!」

 

『草』『なぜ得意げ?』『もう二人にもコミケの原稿手伝ってもらうしかないじゃん』『やめろ、二人を沼に沈めてはいけない……!』

 

 なお、犬守村の札置神社の地下には膨大な書籍データが回収、保存されており、その中には同人誌なども多数所蔵されているので以外にも狐稲利とニコは同人誌と呼ばれる物に関する知識も多少はあったりするが、それを知る者は少ない。

 

 

 

 

 

 その後イナクは視聴者と共に狐稲利とニコの二人に似顔絵の描き方を教えていった。といってもイナクが趣味で描いているのは漫画が主である為、教えられる事と言えば人物を書く時に気を付けるべきポイントくらいだったのだがそれでも二人はイナクに精一杯の感謝を伝え何度か試しに描いてはイナクに修正案を教えて貰うのを繰り返していた。

 

「ふむ、まあこんな感じじゃの。よく描けておる。教えた通り似顔絵ならば相手の顔をよく見て特徴を捉えるのが一番じゃろう」

 

「うんわかったー! ありがといなくー!」

 

「うむうむ、お主らの描いた絵ならわんこーろ殿も喜んでくれるじゃろう。頑張るのじゃぞ?」

 

「うんー!」

 

「ありがとう、ございました」

 

 無邪気に喜ぶ狐稲利と、自身が試し描きした絵を大切そうに抱えるニコはイナクへと頭を下げて互いに視線を合わせて微笑んだ。狐稲利もニコも真剣に絵を描いていたが、意外にもニコは描くことそのものが楽しくなったようで、最後のほうではわんこーろだけでなく狐稲利の似顔絵まで描いてプレゼントしたりしており、それに狐稲利本人が感動のあまりニコを抱きしめてぐるぐる回ったりした一幕があった。

 

「にしてものぅ……お主らなら……。いや、まあよいか」

 

 まだまだ初心者ながらも上手く描いてある似顔絵を互いに見せ合う狐稲利とニコを見て、イナクは口から出そうになった疑問をそっと飲み込んだ。

 

 狐稲利とニコ。二人はわんこーろが生み出した電子生命体であり、仮想世界でならどのような事も実現できるとんでもない存在だ。彼女らが本気になれば、その手をインクで汚すこともなく一瞬で写真のような精巧で完璧な絵を出力する事が出来るだろう。

 

 だが、彼女たちはその方法を選ばなかった。電子生命体としてでなく、あくまでわんこーろという母親の娘として自身の心をもって生み出した作品をプレゼントしたい。そんな気持ちが二人の絵には籠っていた。

 

 あらゆる科学技術が進歩し絵を描く事さえ人が行わずともよくなった現代において、絵を評価する判断基準は"上手いかどうか"に集約されつつある。それは決して悪い事ではない。これまで一部の才能のある人しか成れなかった創作者という存在に、あらゆる人々が成れる可能性があるのだから。創作者しか出来なかった"理想を現実で表現する"方法を万人が享受出来るようになったのだから。

 

 それでも狐稲利とニコは自分の手と心で描く事を選んだ。紙に描く一本一本の線にこだわりを持ち、たった一点を描き加えるかを悩む。それは実際にペンを走らせて自分だけの理想を積み上げていく工程が好きだからこそ出来る事だ。狐稲利はわんこーろが絵馬を描く姿を見て、ニコはイナクに教えてもらうことでそういった描く工程の楽しさを実感することができた。

 

 つまりは楽しいから描く。それだけの話だ。二人にとって絵が上手いかどうかなど関係無いのだ。

 

 二人はまだ絵を描き始めてほんの数時間。わんこーろにプレゼントする似顔絵も、おそらくは相応の出来栄えになってしまうだろう。だが、それでも二人が描いた絵はわんこーろにとってかけがえのない宝物になってくれるはずだ。

 

 

「あの、……イナクさん」

 

「ん? どうしたのじゃニコ殿」

 

「前に"けいじばん"で見たの……わんニコ(わんこーろ×ニコ)って、なに……?」

 

「……お主らあああああああああ!!!!」

 

『俺らのせい!?』『違う誤解だイナクどの!』『あーあ、俺知らね』『俺寝るわ。しっかり説明しとけよイナク』『あ、ちょっと用事思い出したんで退席するね。おつ^^』

 

 

 

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