転生して電子生命体になったのでヴァーチャル配信者になります 作:田舎犬派
現在の犬守村の開拓具合ですが、夏の大型コラボが終わってからは実装済み環境の更新に注力していたのでそれほど大きく動いてはいません。
ほぼ変わりなく、開拓ができている範囲の西に犬守山があり、東にはけものの山、南一帯はわたつみ平原、という具合になっております。
それぞれ開拓した土地は幾度ものアップデートを繰り返し、現実に追いつかんばかりの進化を遂げています。
ですが、それに対して開拓地の北はほぼ手つかずの状態になっております。
何を作ろうかな~と考えるだけ考えて、実際に手を付けていない状態がずっと続いているのですよ。
「という訳で~とりあえず山をいくつかぽんぽんと生やしてみたんですけど~何かご要望あります~?」
『いきなりだなオイ』『山を生やすというパワーワード』『国つくりの神わんこーろ』『てか開拓した面積広すぎね?』『かなり高い場所から見下ろしてるはずなのに犬守山周辺が見えん……』
お盆の休みが終わり、移住者の皆さんの生活はいつもの状態に戻っております。それに合わせるように私の配信スケジュールも平日は雑談と家の中でできるちょっとした作業、休日はお昼前から犬守村開拓配信という状態に戻しました。
今日はそんな休みが終わり、いち段落した後の休日。
久しぶりの開拓配信で、実装した山地の上空でふよふよ浮かびながらその周辺環境を移住者の皆さまに見て頂いているところです。
「ん~とですね~開拓して山地にした面積は大体今まで開拓したエリアを合わせた範囲の二倍くらい? かなぁ~。皆さんのリクエストにお応えするのと~わんこーろも創りたいものがあるので~広ければ広いほどいいかな~って」
『加減をしらんようだなぁこのわんころは』『人間の尺度ではもう図れないんじゃよ』『一面森がひろがってるな、ところどころ岩肌が見えるが』『ふむ、見た感じある特定の植物が多いかな?』『ブナの原生林だ』『ブナ?』
「ブナは樹木の名前ですよ~環研ニキさんの言う通り~この山地一帯はブナの原生林が広がっております~」
『いつの間にか環研ニキ認知されてて草』『てかマジで環研の関係者なのか?』『おうよ!地下の植生プラントで働いておりまーす』『オイィ!?』『機密ぅ!!』『アウトー!』『わんころちゃんと関係無いところでチャンネルを炎上させようとするな』『ま、まあ本物かは確認できないわけだし……』『これは特定しない方がいいな…』『暴こうとしなければニキはただの自称環研所属の植物オタクなだけだから…』『フタを開けるまでは事実は確定しないし…』『シュレディンガーの環研ニキ』
「環研ニキさんはやはり博識ですね~」
結局私は知識をサルベージして蓄えているだけですので、実際に専門家の方の経験に基づくコメントは非常に助かるものです。
私がかつて存在していた環境情報を丸ごと犬守村に実装したとして、私にはその実装した植物たちの植生環境を詳しく説明することは出来ません。
もちろんその情報を別途、取得すれば私だって詳しく説明することは出来ますが、やはり実体験からくる説得力のある言葉には負けてしまいます。
「わんこーろも環研ニキさんみたいに勉強頑張らないとですね~環研ニキさんはわんこーろの目標で~先生ですね~」
『先生!?』『電子生命体に目標にされるとは』『嫉妬で気が狂いそうなんですが!?』『環研ニキ…夜道には気を付けろよ』『それは大丈夫。もう二週間は家に帰ってないから!』『え?』『あっ』『マ?』『環研って植物の育成とか保護しているだけじゃねーの?なんでそんな忙しいんだ?』『ヒント1:わんころちゃんが植物データサルベージ』『ヒント2:わんころちゃん環研にデータ提供』『ヒント3:そのデータ解析するのは……』『あっ』『あーあ』『つまりわんころちゃんが……』
「ふえ!? わ、わんこーろのせいですか~!?」
ま、まさか私が!? た、確かに提供したサルベージデータはほとんど自然環境などの犬守村を形成する上で必要であった情報ばかりですけど……。
あ……なるほど~移住者さんがコメントしていたように本来環境保護研究所はそれほど忙しい場所ではなかったんですね……。
必要最低限の人員しかおらず、そこに私の提供したデータの解析という仕事が山ほどやってきて……。
「え、え~と……と、特定されないように私が全力で環研ニキさんを守ってあげるので~……お仕事頑張って!」
『草』『多忙になった原因であるわんころちゃんから頑張ってと言われた環研ニキの明日はどっちだ!?』『はいっ!頑張ります!!!!』『←それでいいのか環研ニキ』『環研ニキィ……』『環研ニキ、チョロい』『わんころちゃん仕事寄越す→環研ニキ疲労する→わんころちゃん励ます→環研ニキ復活→わんころちゃん仕事寄越す→以下ループ』『わんころちゃんに社畜調教される環研ニキ草』
「も、もう~! そんなんじゃないですよ~!」
確かに環研へと情報提供したのは私ですけど……さっきのは本心から頑張ってほしいという気持ちをですね……。
「と、とにかく今後は少し考えて情報の方は提供させていただくのでそれでご勘弁を~……さ、さて、それでは話を戻しましてですね~この一帯の山地はとあるモデルを基に制作しまして~ブナの原生林もその過程で実装したものなんですね~ですけど、あくまで下地となる場所という訳で、まったく同じ環境を創るのでは面白くありませんので~何か移住者の皆さまのご要望をお聞きしたかったのです~」
実際の山地をそのまま実装してしまうと特に見どころのない山々が続くだけの光景しか見ることができません。
移住者の方のほとんどはその光景さえ新鮮で珍しく、いつまでも見ていられると言って下さるのですが、その言葉に甘えてはいけません。
視聴者である移住者の皆さまが良いと言っているからといって配信者である私がじゃあいっか、なんて思考停止するようでは配信者失格です!
今まではある程度私が実装するものを決めて、その範囲で移住者の皆様にアンケートをとったりして実装内容を決めていたのですが、どうせなら移住者さんが求めているものをそのまま実装してみたいと思ったのです。
もちろん先の言葉通り、移住者さんにまかせっきりにするつもりはありません。移住者さんの要望を叶えつつ、私が創ろうとしているものも配信で紹介していくつもりです。
『山地かぁ、じゃあ湖!』『海があるじゃん』『水辺はそんなにいらなくね?』『俺は知ってるんだ。湖実装の暁にはわんころちゃんが水着姿になってくれるって!』『えええええ!?』『マジ!?』『ホントなのか!?』『該当アーカイブ確認したけどわんころちゃんそんな事一言も言ってなかったぞ…』『移住者が、水着になるの!?って盛り上がってただけなの草』『これは悪質なフェイクニュースですわ』
「湖ですか~懐かしいですね~確かやたの滝とどっちかを実装するというアンケートで選ばれなかったんですよね。 ふむ~もう寒くなるので水着はちょっと……ですけど湖については実装予定のリストに入れておきましょう~」
『お?おお!?』『わんころちゃんがノリ気だ!珍しい!』『要望って言っちゃった手前スッパリ拒否できなかった説』『つまり今ならどんな無理難題も快諾してくれる……?』『なるほど、わんころちゃん!尻尾の付け根見せて!!!!』『はい村八分』
「あはは~……」
なんだか私を置いて移住者さん達で盛り上がっていますね……まあ、湖以外の要望もちらほら書き込まれているので片っ端からメモっておきましょうかね~。
「んふふ~えーと、これと、あれとー、いいですねーこれも実装してみましょー」
さて、移住者の皆さんのアイデアを基に、北方の開拓を始めていきましょう。もちろん配信後もメイクにて実装希望をお聞きすることも忘れないようにしないとですね。