ビタミン怪異譚   作:外道男

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気が向いたので続きました。

ハーメルンの文字機能って面白いね。


kick rock baby 1

 人はいつ死ぬのだろう。

ゴーヤがそれを意識し始めたのは、思い返せば6歳ごろまで遡るだろうか。

 

緑畑市は、5人に1人が強い霊感を持つ、と言われる程に“見える"人間が多い土地だ。

何故なのか、理由は分からない。その手の話に詳しそうな友人ブドウに聞くと、彼は得意顔で自身の体験談を交えて長々と話し始めた。

 

 要約すると「人が地域や土地柄を形成するように、土地もまた、そこに住まう人に影響を与えるものだよ」こんな内容だっただろうか。

答えになっていないとブドウに言ったが「深入りは禁物」そう言うと、それ以上語る事はなかった。

 

 

 

ゴーヤもまた"見える側"であり、物心つく頃には幽霊の存在を認知した。

 

 初めて見た幽霊は、年老いた老爺であった。ベンチに座って穏やかに微笑むその老爺が幽霊だと気付いたのは偶々だった。

子供が蹴って飛ばしたサッカーボールの先に老爺が居た。思わず、あっ、と声が出た。ボールは老人の頭をすり抜けてベンチにぶつかったのだ。

 

 後で知った話では、そのベンチには近所では有名な子供好きなお爺さんがいつも座っていたそうだ。

 

死後、幽霊となっても子供を見守る老爺は、一体いつ成仏するのだろう。幽霊に意志があるのなら、人の死とはなんなのか。幼いながらにゴーヤは思ったものだ。

 

 そうした人の死への意識が明確になったのは、地元の山中で幼馴染と遊んでいた時の事だ。

 

その時初めて、ゴーヤは悪霊に出会(でくわ)した。

 

 迷子になった幼馴染を探す道中の事、悪寒を感じて振り返ると、木の影から2人の男女が姿を見せた。すぐに幽霊だと判断した。

本来なら、幽霊と人間は中々見分けが難しい物なのだが、彼らは一目瞭然だった。

 

まるで轢かれた蛙のように、下半身だけが潰れてぐしゃぐしゃになっていたのだ。

立っていたのも束の間、地面に倒れ伏した男女の霊は、腕の力だけでクロールをするように、ゴーヤの下へ這ってきた。爬虫類を思わせる動きだった。

 

アンタなんて…アンタなんてェ!」

クソガキがァァ……」

 

 

這いずりながらも血走った目でゴーヤに呪詛を吐くその顔は、怒りにも悲しみにも見える表情だった。ただ理解出来たのは、彼らが自身を害するだろうという事。

 

身が竦むような殺意を幼いながらに感じ取ったゴーヤは、迷子の幼馴染を急いで見つけると逃げるように山を降りたのだった。

 

 悪霊となり、人を害する存在へと成り果てた彼らの終わりは、どこにあるのか。肉体の死が終わりでないのなら、人の死とはいつなのか。答えは今も出ていない。

 ただその時から、後悔する生き方だけは選ぶまいと、ゴーヤは心に決めた。

 

 

 

 

 

 

 

「…ーい、おーいゴーヤー!聞いてるー?無視禁止!」

 

視界の端で茶髪の癖毛が動いている。

 

昔を思い出しながらぼんやり通学路を歩くゴーヤを、隣を歩く幼馴染タマオが覚醒させた。

ゴーヤの反応が鈍いのに焦れた彼女は、人差し指でぐいぐいと頬を突いた。

 

「…ん。キイテルキイテル」

 

「本当かなぁ?じゃあさっきまで話してた内容分かるよね」

 

タマオはニッコリと笑みを向けてくる。ゴーヤは考える振りをして適当な話題を選んだ。

 

「……あー。センジュが朝弱い理由だったか?」

 

「ブーッ!全然聞いてないじゃん!もう!これはバツとしてジュース奢ってもらうしかないね!」

 

頬を膨らませたかと思えば、にしし、と笑顔を見せる。コミカルに表情を変える様は、タマオの双子の兄と瓜二つだ。

 

「すまん、で、なんだったか」

「そうそうそれでさー、クラスのアスパラに聞いた話なんだけどね?」

 

アスパラとはタマオの友人で噂好きのクラスメイト、明日原薫子の事だ。クラス一の情報通を自称する丸眼鏡の女子が、タマオにしたり顔で話す様が容易に想像出来た。

 

「頭がニャンコで体が人間の変なのが居るんだって!」

「頭が猫」

 

猫と聞いてゴーヤの脳裏には、友人のニラが飼っているブチネコの姿が投影された。首が埋まって見えるほどふくよかなブチネコは、よく寺の門前で丸まっている姿が確認できる。

 

「そうそう、頭がニャンコ。なんて言うのかな、人面猫?」

「それだと逆じゃないか?」

「あ、そっか。じゃあ…猫面人…なんかゴロ悪いね」

「そうだな」

 

「じゃあニャーマンなんてのはどうだ?」

「うわっ」

 

突然背後から聞こえた声にタマオの肩が跳ねた。

振り返るとタマオと同じ茶髪の癖毛がふわりと揺れていた。

タマオの双子の兄、センジュだ。

 

「驚かさないでよセン兄」

「にしし、兄ちゃんを起こさずに家を出たタマに仕返しだ」

「フライパン耳元で叩いても起きなかったでしょうがっ」

 

なんだかんだと言ってはいるがセンジュと言う男はイタズラがしたいだけだ。

「思い付いたら即実行」の幼馴染にはゴーヤも昔から苦労させられた。

 

「それはそうと面白い事考えたから明日土曜日集合な!」

「うえっ、嫌な予感」

 

センジュの提案にタマオは苦虫を噛み潰したような顔をした。

またぞろ思い付きの行動に付き合わされるようだ。

 

「さっきのアスパラの話もそうだけどよ。ここ最近は怪談話が流行ってるみたいでよう」

「あっ、もう言わないで、聞きたくない聞きたくないー!」

 

タマオが耳を塞いで喚いた。

ゴーヤも幼馴染が何を言おうとしているか大体予想出来たので歩幅を大きくしたが、センジュは関係ないとばかりにタマオとゴーヤの肩を抱き込んだ。

 

「いっしょに探して見ようぜ!レッツ、怪談ウォッチング!」

 

ゴーヤの目前でタマオが顔をしわくちゃに歪めていくのが見えた。きっとタマオから見た自分も、同じ顔をしているのだろう。




いろいろ文字機能試そうとしてます

人物説明

ゴーヤ/本郷 弥一郎 
県立緑畑高校の学生。口下手。
霊感が強いが自分から関わろうとは思っていない。

タマオ/根岸 玉緒 
県立緑畑高校の学生。
快活で人懐こいムードメイカー。
双子の兄センジュにはいつも振り回されている。

センジュ/根岸 千住 
県立緑畑高校の学生。タマオの双子の兄。
イタズラ好きの残念イケメン。
思い付きで行動するトラブルメイカー。


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