ビタミン怪異譚   作:外道男

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時の流れが残酷に思えるから、記憶や繋がりと言うものを大事にするんです

それはきっと霊魂となった後であっても


kick rock baby 4

「ぎゃぁっ!出たぁ!」

 

 睨まれてパニックに陥ったタマオはバタバタとゴーヤの背後に身を隠し、絶対に幽霊を直視するものか、と堅く目を閉じた。

 

「タマオ」

 

少しの沈黙を置いて、タマオが落ち着いてきた頃合いで声が掛けられた。ゴーヤの声だ。

目は開けずにゴーヤのシャツを握る。

 

「ゆ、幽霊、まだいる?」

「幽霊とは、御挨拶だな」

 

問いかけに対する返事は、幼馴染の物では無かった。

ゴーヤより数段低い声は人気の無いマンションの陰に薄く反響する。

 

その声に聞き覚えがあったタマオはそろりと目蓋を上げた。

そこには丸刈りの巨漢が腕組みをしていた。

 

「あーっ!ニラじゃん!」

 

彼の名は、西島羅漢。渾名はニラ。

タマオ達のクラスメイトであり、お寺の子供。

強面な見た目通りの硬派な性格であり、特に本人が何かした訳では無いが、何故か学校の裏番のような扱いをされている。

 

そして、ニラもまた見える人(・・・・)だ。

時折、幽霊絡みの相談事を受けているのを知っている。

 

考えてみると、この場には霊感が有る人間が3人も居るのか。その事実に目眩がした。

 

「おー!ニラー!何だ結局お前も来たのかよー!」

「おや、来てたのかニラ」

 

後方からセンジュが叫んで走り込んできた。

続いてきたブドウも珍しい物を見るように眉を上げている。

 

「セン兄、ニラも呼んでたの?」

「ブドウと同じでインストラクター頼んだんだけど断られちゃってよー。用事があるとか言ってやっぱり怪談ウォッチングしたくなったんだろー?」

「そこまで暇ではない」

「ひ、ひでー事言うな……!」

「「「「事実だろ」」」」

 

味方が居ねえ!とセンジュは項垂れた。

 

 

 

 

「それでさ、ニラ」

 

立ち上がり、服に付いた砂粒を落としつつタマオが話を切り出す。

さっきから気になってたんだけど、と前置きをして、

 

「その大きな人形…人形?なに?」

 

ニラの背には、大人とさして変わらないサイズの人形が負ぶさっていた。

人形、なのだろうか。タマオの知っている人形とは雰囲気が違うような気がした。

昔、カンフー映画で見た覚えがある。確か、木人形だったか。

 

「見ての通り、何の変哲もない人形だ」

「いやいやいや」

 

この熊の如き、むくつけき巨漢が背負っていて何の変哲もないは無理があるだろう。

 

それに、もっと分かりやすい異常な点が有った。

 

頭が無い(・・・・)人形とかさあ、変じゃん」

「いや、有るぞ(・・・)?」

 

返事は意外な所から返ってきた。

隣にいるゴーヤからだ。

 

「え?」

「ん?」

 

2人して首を傾げるように目を合わせる。

幼馴染の青年はタマオと木人形を交互に見て、そして、

 

「……っ!?」

「え?」

 

唐突にゴーヤの顔が青褪めた。

状況が飲み込めていないタマオも木人形と幼馴染を互いに見るが、やはり何も無い。

 

「ねえゴーヤ、今、人形に頭が有るって…」

無いぞ(・・・)

「え?いや、さっき有るって」

「無いぞ」

 

ゴーヤは急に発言を翻した。

何故ゴーヤがこんな態度を取るのか分からないタマオは、もう一度木人形に視線を移そうとするが、顔を両手で押さえられて阻止された。

 

「何も無いぞ」

「ちょちょちょ!?分かったから!顔近いってば!距離ガバ禁止!」

 

慌ててゴーヤを突き飛ばすがよろけもしない。

くそぅ、こんなに立派になりやがって、と謎の感想を呟くしかなかった。

 

 

「そのヒト、寺まで持って帰るのかい?」

「ああ、その為に一時の身体も用意したからな」

「それで木人形か…。どこで買ったんだい?」

「適当な材料を見繕って後は手作りだ」

「ニラって意外と器用だよね」

 

見える男達(ブドウとニラ)はこっちを無視して話し込んでいる。

その輪の中にセンジュが突撃した。

 

「なー!ニラはさっきまでマンション裏に居たんだよな!だったらよ、見たんじゃねえのか、幽霊!」

 

ぐぐいと、センジュに詰め寄られた坊主頭の巨漢は、その鋭い眼で、センジュ・タマオ・ゴーヤ・ブドウの順に一瞥すると、小さく息を吐いた。

 

「ふむ…」

「居たんだろ、な!」

「いや、噂がどうあれ。もう居ないぞ(・・・・・・)

「ここもハズレかよー!!」

「んふふ、あっちには(・・・・・)居ないだろうね」

 

ニコニコと笑うブドウに一層鋭い視線を送ってニラは歩き出した。

 

「俺は忙しい。帰るぞ」

「あ、おーい!待てよー!てかその人形なんなんだー!?」

「何の変哲もない人形だぞ」

「ウソつけー!」

 

のしのしと歩いてきた巨漢に、タマオ達はさっと道を空けた。

 

私のカラダ、見ませんでしたか

 

 

ニラとすれ違った瞬間、誰かに呼ばれた気がした。

 

「……?ゴーヤ、なんか言った?」

「何も無いぞ」

「さっきからそれしか言わないなー!ロボット禁止!」

 

あははと笑いながら、ふと思った。

 

自分とゴーヤの意見が食い違う、と言う事がどう言う事か。それ即ち、ゴーヤとは見えているものが違った、という事で。

タマオは自身の直感がそれ以上の推理を拒んだので考えるのを止め、ゴーヤの手を引いてセンジュの後を追った。

 

いつも通り口を真一文字に結んだ幼馴染は寡黙で、しかし優しい目でタマオを見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 





ニラパパ「なあ、羅漢よ」

ニラ「何か?親父殿」

ニラパパ「休みの朝早くに珍しく外に出たかと思ったら妙なのを拾ってきたなあ」

ニラ「うむ、親父殿の力を借りようと思ってな」

ニラパパ「まあ、そりゃ仕事の内だしヤブサカでもないが」

ニラ「では宜しく頼む。…む?頭はどこに?」

ニラパパ「さっきからワラビが転がしてるぞ」

猫「なおん」

頭「私のカラダ…見ませんでしたか」コロコロ






ワラビ/ニラの飼い猫
ふくよかなブチネコ
今日はボールで運動した
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