仮面ライダービルド×Fate/NEW WORLD   作:おみく

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第14話「忠節のブロークンナイト」

 深夜の山中を、ふたつの影が駆け抜ける。

 白の装束を翻して跳ぶランサーと、黒の影を身に纏った槍騎士シャドウランサーが、路面を穿ち、樹木の幹を蹴り砕きながら、常人が認識できる速度を遥かに越えた超高速で闇夜を駆け抜け激しい相克を繰り返す。鋼と鋼がぶつかり合うたび、破壊的な魔力の本流が突風となって木々をざわつかせる。ほんの一瞬の激突で、両者互いに十を越える剣戟の嵐をぶつけ合っていた。

 

「オオッ!」

 

 短い雄たけびとともに、シャドウランサーが再び跳んだ。助走の必要はない。ただ一度地を蹴れば、それだけで最大加速に達する。シャドウといえど、歴戦の英霊としての実力に間違いはないことの証左だった。

 

「――ッ!」

 

 両者、空中で相克する。突き出された赤の長槍を、ランサーは六又の鉾で絡め取り受け流し、続く黄の短槍による刺突をも、禡祭剣で叩き落とす。ランサーはそのまま、禡祭剣を捨てた。瞬時に手の内に刀を精製すると、がら空きになったシャドウランサーの胸を狙って突き出した。だが、ランサーの一撃はシャドウランサーには命中しない。

 

「ぐぅ――ッ」

 

 刀の刺突よりも先に、シャドウランサーは爪先を跳ね上げ、下方からランサーの胃のあたりを蹴り上げていた。その反動で自身の体を落下させることで、シャドウランサーはランサーの攻撃を回避したのだ。

 

「少しはやるようですね」

 

 普通は今の一瞬で終わっている。樹木の枝に体重など感じさせぬほどに軽やかに着地したランサーは、目を剥いてシャドウランサーを見下ろすと、上弦の月のようににい、と口元を歪めた。

 落下したシャドウランサーは、ひとたび地面に手をつくと、獣のように這いつくばり、吠えた。セイバー戦で姿を見せたバーサーカーの少女以上に、狂戦士という印象がしっくりとくる。

 地面を叩いて跳び上がったシャドウランサーは、宙で身を翻すと、弾丸のように加速し上空にいるランサーへと槍を突き出した。ランサーは笑みを絶やさぬまま、鉾を構えて樹木から飛び降りた。

 

「はああッ!」

「ルオオォッ!」

 

 再度、槍と槍が激しく交錯する。互いに致命傷を与えるには至らない。けれども、手数の多さでは、本能のみで戦っていると思しきシャドウよりも、八華のランサーの方が上回っていた。

 互いに槍を弾き合い、間合いを取る。

 一瞬のにらみ合いののち、互いに跳んだ。

 勝負の瞬間を察したシャドウもまた、裂帛の咆哮をあげて突き込む。両者の間合いが詰まるのは、ほんの一瞬だった。互いの槍が激突するかに見えたその刹那、シャドウの槍は誰もいない空を切った。肉薄したその刹那、ランサーは腰を低くかがめて身を翻し、瞬時にシャドウランサーの背後を取ったのだ。

 

「貰ったッ!」

 

 獰猛な肉食獣よろしく爛々とその双眸を輝かせて、ランサーは鉾を振るう。シャドウが纏う軽装の武者鎧は、動きやすさを重視したためか、胴体に鎧は身に着けていない。ランサーの一撃が極まれば致命傷だ。獲った、という確信があった。

 

「ウオォォッ!」

 

 シャドウランサーは振り向きざまに赤の長槍を突き出すが、構うことはない。苦し紛れの長槍は、肩の鎧で受ければいい。ランサーはそのまま踏み込み、鉾を振り抜いた。ランサーの穂先は狙った通りにシャドウの胴体を抉り、肉を断ち、骨に達した。そこでランサーの動きがとまった。

 今しがた捨て置けばよいと判断した赤の長槍が、ランサーの肩に装着された鎧を突き抜けて、その穂先が肩の肉に突き刺さっている。鎧は、砕かれたわけではない。敵の槍が鎧など最初から()()()()()()()すり抜けて、その穂先をランサーの肩を貫通しているのだ。

 

「なッ」

 

 敵の反撃が見抜けなかったわけではない。状況判断に間違いはなかった。槍そのものに付与された特殊能力を勘定に入れなかったことによる失態だ。

 脇腹に一撃を叩き込まれたシャドウもがくりと態勢を崩したが、これでは相打ちだ。ケイネスに合わせる顔がない。

 このままでは終われない。

 肩に突き刺さった槍を引き抜こうとするシャドウの動きに合わせて、ランサーは体を捻った。吐息とともに、力を込めるタイミングをぴったりとシャドウに合わせる。

 

「――アァッ!?」

 

 最前までと比べ、ずいぶんと間の抜けた声を上げながら、シャドウはその身を宙へと舞い上げていた。ひとりでに回された。ランサーの肩から槍を引き抜こうとした力を、そのまま返されたのだ。

 

「覚悟ッ!」

 

 頭から地へと落下しようとするシャドウの胴体目掛けて、再び鉾を突き出す。まともに決まれば直撃コースだ。けれども、その一撃はシャドウが咄嗟に構えた黄槍に防がれる。それでも構うものかと、ランサーは力を込め、鉾を押し切った。

 

「でやぁァアアッ!!」

「――ッ!」

 

 槍による防御の上から力押しで弾き飛ばされたシャドウは、地面にしたたかに体を打ち付け、弾けたバネのように跳ね、ごろごろと転がっていった。

 

「はぁ……はァ――ッ」

 

 荒い吐息を零しながら、ランサーは左肩に突き刺さった槍を引き抜いた。血飛沫が飛び散り、ランサーの白装束が赤く染まる。左腕の肩から先の感覚が、痛みと熱で掻き消える。

 ランサーは珍しく表情を歪めた。尤も、歪んでいるのは目元だけだ。口元には引き攣った笑みがたたえられている。

 怪我自体は大したことはない。霊基に及ぶ損傷がない以上、魔力さえ充填されればこの程度の外傷はそう時間をかけずに回復できる。それよりも、こんな醜態を晒してしまったこと自体がランサーにとっては屈辱だった。

 

「ぐ、ゥゥ……ッ」

 

 一方で、手負いのシャドウもまた、脇腹から夥しい量の血液を流しながら立ち上がる。損傷を受けた箇所が、まるでモザイクでもかけられたように実態がぼやけていた。戦兎から話に聞いてはいたが、ランサーはそこで相手がまっとうな英霊でないことを再認識した。

 

「ランサー!」

 

 背後から、ケイネスの声がかかる。周囲に水銀を流動させながら戦場に脚を踏み入れたランサーの主は、ランサーが負わされた傷を見るや、あからさまに表情を歪めた。

 

「貴様ッ……なんなのだその醜態は!? サーヴァントの影ごときに遅れを取るなどと……なにが日の本最強の戦国武将か! 越後の軍神が聞いて呆れるわ!」

「いやあ、どうも敵の宝具にしてやられたようです、あはははは」

 

 ランサーは苦笑した。生前味わったことのない辛酸を嘗めさせられたのだ。悔しくないといえば嘘になる。だが、事実は事実として受け入れる他ない。

 

「あ……ァ」

 

 シャドウはケイネスを凝視したまま、掠れた声で嗚咽を漏らした。見開かれた瞳から、血涙が堰を切ったようにどっと溢れ出る。様子がおかしい。ランサーはすぐに右手で鉾を構え直し、ケイネスを庇うように前に出た。

 

「ケイネス殿は後ろへ。まだ決着はついていません」

「ええい、そのようなことは貴様ごときに言われずともわかっておるわ!」

 

 油断なく水銀を流動させながら数歩後退するケイネスの罵声を聞き流し、ランサーは微笑んだ。優しい笑みは一瞬だ。すぐにシャドウランサーに向き直ったランサーは、その一挙手一投足に注視する。

 

「聖杯、戦争……マスター……サー、ヴァント……――ケイ、ネス殿」

 

 シャドウランサーは、血涙の滲んだ真紅の目で、ランサーとケイネスとを凝視している。最前までのシャドウランサーは、ただ目に映るものすべてに襲いかかる猛獣だった。けれども、今は違う。明確な理性を感じる。ランサーの主の名を呼んだことがその証左だ。

 

「嗚呼……俺は、いったい……なにをやって――」

 

 シャドウランサーは、片手で自らの顔を覆い、嘆いた。

 サーヴァントにかけられた狂化は、死期が近づくと解除される場合があると聞く。よもや、ランサーから受けた痛烈な一撃が切っ掛けで狂化が解除されたのか、或いはケイネスを視界に捉えたことで狂化から解放されたのか、確かなことはわからない。わからないが、敵として立ちはだかるならば、倒す以外に道はない。

ひとまずランサーは鉾の穂先を下げて、声をかけてみることにした。

 

「そこの黒いランサー。そなた、もしかして今なら会話が成立する感じです?」

 

 顔を覆う指の隙間から、シャドウランサーの血眼が覗く。見開かれた瞳には、明確な憎悪の炎が感じられた。

 シャドウランサーは顔からやおら手を離し、慟哭にも似た声を絞り出した。

 

「俺は……俺は、貴様らサーヴァントが……聖杯戦争に加担するすべてが憎いッ! 冥利に憑かれ、騎士の誇りを貶めた亡者どもよ。貴様らは、貴様らだけは……断じて許すわけにはいかんのだ!」

 

 苦痛に悶えるように、吐き出すようにシャドウランサーは怨嗟を叫んだ。その語に、ランサーは心当たりがない。誰に向けてよいかわからない怒りと憎しみを眼前の敵へ向けて発散しているように見受けられる。

 人理に刻まれた英雄豪傑が斯様な影にまで成り下がり、ただ怨嗟を撒き散らす化け物と成り果ててしまったという事実は、あまりにも忍びない。早いうちに引導を渡してやるのがせめてもの慈悲ではないかと思われた。

 

「ケイネス、ランサー!」

 

 バイクの走行音を伴って、後方から聞き慣れた声がかかる。ビルドを乗せたマシンビルダーはケイネスらの隣で停車した。後ろにはキャスターも乗っている。

 ビルドはバイクから降りるや、血塗れのランサーの左腕を見て、次に視線をシャドウランサーへと送った。

 

「この状況、もしかしなくても結構ピンチ?」

「いえ全然。私はまだまだ余裕ですよ、戦兎」

 

 ランサーは左腕の傷などなんでもないようににこやかに笑ってみせた。強がりでもなんでもなく、ランサーは心の底からそう思っていた。

 

「キャスターよ、あの敵は君らの語る……」

「ええ、シャドウランサーです。しかし、よもやあのランサーがケイネス卿を襲撃してこようとは」

 

 キャスターは苦虫を噛み潰したような表情で目線を伏せた。ビルドがキャスターの言葉を引き継ぐ。

 

「ああ、タイミング最悪だな。やることやったらとっとと撤退しねえと、いい加減遠坂に気づかれちまうぞ。というより、もう気付かれてると考えた方がいいかもな」

「いや、私が言いたいのはそういうことではないのだが……まあ、それも間違ってはいないな。今回の作戦は遠坂に気取られる前に、一撃離脱でことを済ますことに意味があるのだから」

「それでしたらご心配なく。あの黒いランサーを速攻で仕留めることなど造作もないことです。というか、戦兎こそどうして此処に? そなたの持ち場はこっちではないでしょうに、暇潰しでもしにきたんです?」

「あーもうそんな痛々しい怪我しながら強がってんじゃないよ。ずいぶん派手に戦ってっから、心配して様子見に来てあげたんでしょうが」

 

 ランサーは一瞬きょとんと目を丸くしたが、すぐに磊落に笑い飛ばした。

 

「あははははははっ! でしたら、やっぱり余計な心配というやつですね。だって私、負けませんから」

「……あっそ。ま、その様子じゃ俺の助けなんて必要なさそうだな」

「当然です。そなた、私を誰だと思ってるんですか」

「知らねえよ。まだ真名明かしてないでしょうが」

「おや、そういえばそうでしたね。なら、まあ見ててください。私がいかに強いか、ここらで証明してみせましょう」

 

 ランサーはくすりと笑みを浮かべると、右手に握った赤の長槍に視線を落とした。シャドウランサーから奪い取った槍だ。もう一度ケイネスに視線を送り、一際にこやかに微笑むと、ランサーは赤槍をシャドウランサーへと放り投げた。

 

「な――」

 

 足元に転がった赤槍を見て、瞠目したのはシャドウランサーだ。けれども、シャドウランサーが言葉を発するよりも先に、ケイネスが激昂し、怒鳴り散らす。

 

「なッ、なにをやっているのだこのたわけがッ! せっかく奪った宝具を敵に返してやるなどと、痛みのあまり気でも狂ったかランサー!?」

「いいえ? 私は至って正気ですよ」

「ならばなぜッ!」

「だって、このままではあんまりではありませんか。ケイネス殿に私が口だけの武将だと思われることも……左肩の借りを返さずにこの戦を終えることも。私はそのどちらも、我慢ならない」

 

 大気がじわりと熱を帯びる。うちから湧き上がる闘志がランサーの身を横溢し、熱気となって漏れ出しているのだ。自由の効く右腕に再度鉾を握りしめると、ランサーはそれをぶんと振り回し、眼前のシャドウランサーへと突き付けた。

 

「そなたには全力で戦って貰わねば困るのです。その二槍を振るい、技工の限りを尽くして私に挑みなさい。私は――その上でそなたをボッコボコにして差し上げましょう!」

 

 シャドウランサーは衝撃に打たれたように顔を上げた。

 

「お前はッ……この俺と、真っ向からの勝負に臨もうというのか」

「そうでもしなきゃ死んでも死にきれないでしょう。なにやらそなた、英霊として譲れぬ矜持もお持ちのようですし?」

 

 ランサーは屈託のない笑みで笑いかける。

 マスターもなく、その存在そのものが茫洋とした状態の今のシャドウランサーなど、もはやそこらの悪霊と大差はない。決戦を挑んだところで、シャドウランサーの霊基はそう長くは保たないだろう。だが、だからこそこのまま終わらせるわけにはいかない。残る命を燃やし尽くしてでも、持てる武芸のすべてを尽くして挑んで貰わねば、ランサーの気がすまない。

 

「俺を……俺を、ひとりの英霊と認め……戦いを挑もうと、お前は、そういうのか」

 

 シャドウランサーは、呆然と立ち尽くしたまま天を仰いだ。

 ランサーにしてみれば今の軽い一言にそこまで大仰な意図はないのだが、それで事がスムーズに進むのなら、それはそれで不具合はない。ランサーは不敵な微笑みをたたえたまま頷いた。

 

「ええ、そういうことです。よもや断るなんて無粋な真似はしませんよね?」

 

 目を細め、眉根を寄せ、シャドウランサーは決然と頷いた。次に目を開いたときには、とめどなく溢れ出ていた血涙はぴたりと止まっていた。

 赤槍を拾い上げ、もう一度ランサーに向き直る。その双眸は、最前までの憎しみの赤に彩られた血眼ではなくなっていた。凄烈な戦場をあまたくぐり抜けて来た歴戦の戦士の瞳が、そこにはあった。

 

「なにを勝手に話を進めているのだこのたわけが……! 貴様はまともな状況判断もできんのか!? どう考えても今持てる全戦力で蹂躙し、急ぎ撤退するのが最善策であろうが……!」

 

 後方からケイネスの誹りが聞こえるが、もはやランサーとしても引き下がることなどできるわけもない。既に臨戦態勢に入っているランサーに変わって、戦兎がケイネスの肩を叩いた。

 

「やめとけ、ケイネス。こうなっちまったらもう、なにを言っても無駄だ」

「なにが無駄なものかッ! 今はこんなことで時間を取られている場合ではなかろうに!」

「そんなことはランサーだって分かってる。だから、あいつは()()()敵を仕留めるって言ったんだろ」

「ぬ、ゥ……」

 

 ケイネスは黙り込んだ。戦兎が伝えんとする言葉は伝わったが、納得はしていない様子だった。

 

「俺が言うのもなんだが……お前のランサー、かなり強ェぞ。やりあった俺が言うんだから間違いない。ちっとは自分のサーヴァントを信じてみなさいよ」

「くっ……、ええい、五分だ! 五分だけ待ってやる! それまでに敵を仕留められねば、桐生戦兎、貴様にも戦線に加わって貰う! よいな!?」

「はいはい。それでいいよな、ランサー!」

「ええ、ええ! ケイネス殿の差配に感謝を!」

 

 ランサーは即答した。むしろ、長過ぎるとすら感じたほどだ。片腕が使えないとはいえ、手負いの敵を仕留めるのに五分も要すると思われているのであれば、その認識から改めさせる必要がある。なおのこと闘志を滾らせて、ランサーは笑う。

 

「フ、話は決まったな」

 

 キャスターが一歩を踏み出した。地面に、青白く輝く奇門遁甲の陣が張り巡らされる。前方にいるランサーを、シャドウランサーをも飲み込み、奇門遁甲はこの戦場を中心として瞬く間に範囲を広げてゆく。

 

「この勝負、騎士の誇りを懸けた真剣勝負とお見受けする!」

 

 キャスターは羽扇を再度振るい、決然と宣言した。

 

「であればこそ、古来より伝わる()()に無粋なる横槍は不要ッ! よって、立会はこのキャスター――諸葛孔明が公正なる立場で務めさせていただく。各々方(おのおのがた)、よもや異論はあるまいな?」

 

「ええい、まったくもって異論だらけだが、こうなってしまっては是非もあるまい。此度の決闘は許してやる……――ただし、絶対に敗北は許さぬ! わかっておろうなランサー!」

「あははははははっ! 誰に向かって言ってるんです、ケイネス殿。そなたは、己が引き当てたサーヴァントがいかに有能であるかをまるで分かっていない!」

 

 ランサーは磊落に笑った。

 左肩の傷は今も癒えぬままだ。本来ならば魔力供給を担っているソラウから魔力を吸い上げ、とっくに回復して然るべき傷を、しかしランサーはそのままで勝負に挑もうというのだ。腕一本を封じられたところで、ランサーには自分が負けるなどという発想は微塵もなかった。

 対するシャドウランサーもまた、脇腹を深々と抉られた傷口を癒やす術を持たない。未だ真新しい鮮血をどくどくと垂れ流し、地面に赤黒い水溜りを作ってはいるものの、既に傷口を覆うモザイクピクセルは消え失せていた。けれども、その口元には、ランサーと同じように笑みを浮かべている。

 ここにいる黒騎士は、もはや最前までの悪霊ではなくなっていた。

 

「すべてを失い、なにもかもを呪い……ただ怨念を吠えるだけの悪霊と成り果てた俺が……よもやもう一度、騎士として誉れある戦いに挑めようとはな」

 

 脇腹の傷などないように、シャドウランサーは二槍をぶんと振り回し、構え直した。

 ランサーによって与えられた傷によって大きく生命力を奪われているシャドウランサーだが、それでも闘志は十分だった。シャドウランサーの周囲の大気が歪む。残る僅かな魔力を、己の存在のすべてを燃やし尽くして、シャドウランサーは最期の決闘に挑もうというのだ。その熱が蒸気となって揺らめいている。

 相手にとって不足はない。ランサーはとびきりの笑顔を咲かせ、叫んだ。

 

「風花雪月、月下に舞い散る白銀の花。八華のランサー――ここに推参ッ!」

 

「フィオナ騎士団が一番槍、()()()()()()()()()()()――推して参るッ!」

 

 名乗るが早いか、互いに跳んだ。

 ランサーの槍とディルムッドの槍が激突する。凄絶な二槍から繰り出される攻撃を、ランサーはしかし一歩も引くことなく、たった一本の刀で打ち返し、弾き返す。まるで体重など感じさせないように地を蹴り、宙を舞い、ディルムッドを翻弄する。

 僅か一秒もあれば、その刹那の間に常人の目には既に何度相克したかもわからないほどの剣戟が繰り返される。互いの間に最早言葉は不要だった。夜空に血の華と魔力の閃光を迸らせて、幾度となく打ち合う。

 

「あいつら笑いながら戦ってるぞ……引くわー」

 

 ビルドの仮面の下で、戦兎が心底からのぼやきを零す。眼前で人間離れした激闘を繰り広げるふたりの剣戟は、ビルドの通常形態が到達可能な最高速度をゆうに越えている。それほどの相克を繰り返しながら、ふたりは笑っているのだ。マスターであるケイネスに至っては呆れ果てて言葉もないという様子だった。

 戦兎の目を一際引いたのは、ランサーの立ち回りだ。ただ速く、鋭いというだけでなく、今のランサーはなにやら闇夜を明るく照らす後光をも背負っているように見える。おそらく気のせいではない。ランサーは今、本当の意味で()()()()()()戦っている。その神々しさすら覚える光の加護が、ランサーを守っているかのようだった。

 戦況は、誰が見てもディルムッドの不利だった。ランサーの動きが、あまりにも速すぎるのだ。ビルドとして、あんな化け物と戦っていたと思うと背筋が寒くなる思いだった。

 

「けど、シャドウランサーのやつ……なんか、楽しそうだな」

「――これが、私にできるせめてもの償いだ」

 

 せめて邪魔者が入らないようにと奇門遁甲を巡らせるキャスターのささやかな独り言を、戦兎は聞き逃さなかった。

 

「なあキャスター、あいつやっぱり」

「ああ。あれは本来の聖杯戦争で、ケイネス卿が召喚していたサーヴァントだ」

 

 過ぎ去った過去の亡霊、シャドウサーヴァント。今の聖杯戦争に関与していないシャドウランサーになにを償ったところで意味などあるまいに。

 

「……お前ってそういうとこ、ちょっと面倒くさいタイプだよな」

「そう言ってくれるな。実利はないが、意味のあることなんだ……私の中ではね」

「ま、実利がないってことを分かった上で、それでも意味があるとお前が感じてるのなら、俺はなにも言うことはねえよ」

 

 キャスターの語を否定をする気にはなれなかった。キャスターが抱えている事情を戦兎は詳しく知らないし、いちサーヴァントでしかないディルムッド・オディナを相手に、果たしてキャスターが罪悪感を覚える必要があるのかもわからない。けれども、自分の中で蟠っているものを少しでも精算できるのなら、悪い話ではないと思えた。

 キャスターは、しばしの黙考ののち、決然とケイネスに向き直った。

 

「ケイネス卿。この戦いが終われば、あなたに話したいことがあります」

「……それは、あのシャドウランサーに関する話か」

「ええ。その説明も、後で必ず」

 

 どこか遠いところでも見るように、キャスターは目を細めた。

 ケイネスは後ろ手を組んだまま、なにかを悟ったように目線を伏せた。

 

「あのシャドウランサーはな……私の名前を呼んだのだ。私にはきゃつの記憶など微塵もないというのに」

「その理由についても、お話致します。我々は……まだ重大な秘密を、あなたに打ち明けてはいない」

「そうか。その秘密とやらが我らの同盟の破綻を招かぬことを、精々祈っておくとしよう」

「ええ……私も、同感です」

 

 それがキャスターの選んだ答えならば、戦兎はなにも口出しをしようとは思わなかった。自分の中でなにかに決着をつけて、その判断に至ったのならば。

 

 決闘の趨勢は、徐々にランサーに傾いていた。

 互いに速度、技量ともに類まれなるセンスを持っていることは間違いようもない。片や左腕を実質的に封じられ、片や脇腹を抉られ十全なる体捌きを封じられた身。両者の間に、そこまで決定的な差は存在しない。

 ディルムッドが繰り出す二槍の嵐を、ランサーはたった一本の刀を目にも留まらぬ速度で振るい受け流す。槍も刀も、傍目にはただ閃光が散っているようにしか見えはしないだろう。けれども、他ならぬランサーには、その槍の軌道がすべて視えていた。

 

「ウォオオッ!!」

「ハァアアッ!!」

 

 凄絶な剣戟のさなか、槍を弾き返したランサーの刀が、瞬時に幅の広い禡祭剣に持ち替えられる。槍を受け流した刹那の間にディルムッドの間合いに飛び込んだランサーが、渾身の力で禡祭剣を振り下ろす。刃はディルムッドの赤槍にしたたかに叩きつけられた。

 赤槍が地面に突き刺さり、ほんの一瞬動きを封じられたディルムッドの腹部に、ランサーの蹴りが突き刺さる。

 

「が……はッ」

 

 人間の脚力を遥かに越えた蹴りで吹っ飛ばされたディルムッドは、大木に背を打ち付け、肺の中の空気を一気に吐き出した。

 ランサーは空中で一回転すると、既に武器を薙刀へと持ち替え、振り上げて飛び掛かっていた。瞬時に敵の間合いに飛び込んだランサーは、薙刀を力いっぱい振り下ろした。

 

「まだだ、まだ――ッ!」

 

 大木が真っ二つに裂ける。けれども、その刃がディルムッドの頭頂部を断つ前に、ディルムッドは神速たる速度で黄槍を突き出した。薙刀を捨てたランサーは、間合いの内側から右腕で槍を払いのけ、ディルムッドの刺突を受け流す。

 互いに互いの武器を受け流し合い、既に持てる技量のすべてを出し尽くしたかに見えたその時、決着はついた。

 

「――私の勝ち、ですね」

 

 ディルムッドの槍を振り払ったランサーは、既に新たな刀を精製してた。その手に握りしめられた刀の切っ先が、ディルムッドの喉元に突き付けられている。

 敗北を悟ったディルムッドは脱力した。両腕に握りしめた二槍の切っ先が、地に落ちる。最前まで大気を焦がしていた戦意の熱が、すっと引いていく。

 

「見事だ、八華のランサーよ。よもや片腕一本で俺をここまで追い詰めようとは恐れ入る……ああ、お前にならば、ケイネス殿を任せられそうだ」

「……そなた」

 

 ディルムッドの手元の二槍が、大気に溶けるように消えていく。

 二槍だけではない。ディルムッドの霊基そのものが急速に減衰していくのが、ランサーには間近で感じられた。既に致命傷に近い傷を負いながら、それでも知名度補正と神仏の加護を味方につけたランサーを相手に、ここまで立ち回ったのだ。己の存在を保つための魔力など、とうに枯渇していてもなんらおかしくはない。

 ランサーは立ち上がり、大木を背に崩れ落ちたディルムッドに視線を向ける。ランサーもディルムッドも、既に全身が血と泥で汚れきっていた。

 既に消滅を始めたディルムッドに、ランサーは問うた。

 

「なぜです。なぜ、自分が消えゆくその刹那にまで、そなたはケイネス殿を想うのです」

「それが、せめてもの矜持というものだ。なにも成せず、一度は騎士の誇りすら見失った俺だが……せめて最期くらいは騎士として」

 

 気づけば、地面に張り巡らされた奇門遁甲の輝きは消失していた。ランサーの周囲に、ケイネスとキャスター、ビルドが集まっている。ディルムッドは集まったそれぞれの顔を見遣った。

 

「そうか。ケイネス殿はもう、ひとりではないのだな」

「ディルムッド・オディナ。貴様はいったい――」

「ケイネス殿。我が主よ。最期に……最期にこのディルムッドに、騎士として誉れある戦いを許してくださったこと、感謝の言葉もありませぬ。どうか……主とともに最後まで戦い抜くことのできぬ我が身の不徳を、ご容赦願いたい」

「な、なにを言って……」

 

 当惑し、返答に窮するケイネスだったが、その次の言葉を待つよりも速く、銃声が鳴り響いた。

 その場は誰が反応するよりも先に、ディルムッドが弾かれたように跳び上がった。ケイネスを突き飛ばしたディルムッドの胴体を、一発の弾丸が突き抜ける。

 

「ゴ、ハッ」

 

 胸元に風穴を開けられたディルムッドの口から、多量の血液が溢れ出る。遠方からの狙撃だ。魔力を使い果たし、神秘の加護も得られないシャドウサーヴァントには、近代兵器の一撃ですらも致命傷足り得るのだ。

 

「ディルムッド!」

 

 片膝をつき、血を吐き散らすディルムッドに駆け寄ろうとしたケイネスの肩を押し留めるようにビルドが掴んだ。刹那、真紅の影が風となって吹き抜ける。

 ディルムッドの頭部が、月下の空に舞い上がった。崩折れた首の切断面から夥しい量の血液が吹き出すが、それもすぐにピクセルのモザイクに覆われ、ほつれ、ディルムッドの形自体がバラバラに崩れ去ってゆく。

 

「……アーチャーッ!!」

 

 既に全員の背後へと回り込んでいた下手人へと誰先に振り返ると、ランサーはその敵の名を叫んだ。

 白と黒の双剣を握りしめ、戦場に乱入してきた赤い弓兵を、その場の全員が認識した。突然の銃撃に全員が気を取られたその刹那のうちに、アーチャーはディルムッドの首を跳ね飛ばしたのだ。

 

「ふん。虎の子の起源弾も、マスターに当たらんのでは意味がないな」

 

 ビルドは原型を留めていないディルムッドの亡骸に一瞥し、アーチャーに向き直った。

 

「アーチャー……いや、アインツベルン。お前ら、またケイネスを狙って……!」

「これは聖杯戦争だ。必要最小限の徒労で勝利を掴みに行くのは当然だろう」

「どこまでも卑劣な真似をッ……そなたらには、正々堂々と戦おうという考えはないのですか!」

 

 ランサーの怒気を孕んだ誹りを受けて、アーチャーはなお冷ややかに笑う。アーチャーの視線の先には、最前までディルムッドだったデータの残骸があった。

 

「生憎と、そこの黒騎士のような殊勝な誇りなどは持ち合わせていない性分でね……だがまあ、本来の目的は果たせた。今回はこれで上々としよう」

 

 アーチャーの褐色の肌には、生々しい傷が数多刻み付けられていた。けれども、ディルムッドの消滅と同時に、その傷の数々は淡い魔力の輝きとともに消失してゆく。同様に、ランサーに与えられた黄槍の傷も塞がっていった。

 どうやら今回の主目的はシャドウランサーの討伐にあったと見える。おそらく、どこかでディルムッドと戦闘を交え、消えない傷の呪いを負わされていたのだろう。

 

「アーチャー……!」

 

 くるりと踵を返したアーチャーに、ビルドはフルボトルバスターの銃口を向ける。ランサーも既に臨戦態勢に入り、鉾を握り締めている。左肩の傷もまた、既に治癒をはじめていた。

 

「お前、俺たちがこのまま逃がすと思ってるのか……!」

「随分と威勢がいいな、キャスターのマスター。だが、今の君たちに私と戦っている余裕などあるのか?」

「――ッ!」

 

 ちらりと一瞥をくれたアーチャーの瞳に、戦意は感じられない。ただ冷ややかな視線だけが向けられている。勢いを削がれたビルドの肩に、キャスターが手を置いた。

 

「ここまでだ、マスター。これ以上ここで時間を浪費するのは得策ではない……寧ろ、我々はこの場に留まり過ぎた」

「……だそうだ。私としても無駄な戦闘は本意ではないのでね。そちらも精々、セイバーが出てくる前に撤退することをお勧めするよ」

 

 アーチャーは既に、ビルドらを見てすらいなかった。後ろを振り返ることなく、嘲りにも似た声音でそれだけを呟くと、一足飛びに森林の闇の中へと姿を消した。誰も、追いかけようとはしなかった。ケイネスとランサーのふたりは、憤懣やるかたないといった様子でアーチャーの消えていった西の方角を睨めつけていた。

 

 

 

 誰もいなくなった円蔵山の戦場跡地に、赤と白のオッドアイが淡い輝きを伴って茫洋と浮かぶ。仮面の内側から呼吸を蒸気として吐き出しながら、白い装甲の仮面ライダーは残骸データと成り果てたシャドウランサーに視線を送る。

 もはや英霊としての存在データは完全に破壊され、この場に散らばったバグピクセルの残骸はまさしくただのデータの成れの果てでしかない。

 白のライダー、ゲンムは紫色のパッド――バグヴァイザーを取り出すと、宙に弧を描くように振るった。シャドウランサーの残骸データは、バグヴァイザーから放出された光に触れると、粒子へと変換され、吸収されてゆく。そう時間をかけずに、シャドウランサーだったもののデータはバグヴァイザーの内部へと収まった。

 

「これでシャドウランサーのデータも蒐集完了か。いやはや、まったくいい仕事してくれるねえ、あいつらは」

 

 背後から投げ掛けられた声に振り返ると、真紅の装甲を身に纏ったブラッドスタークが、戦いの余波で倒れた木の幹に座り込んでいた。エメラルドグリーンのバイザーが妖しい輝きを放っている。

 

「……アーチャーをけしかけたのはお前か、スターク」

「まあな。アインツベルンってのはこれでよく働いてくれるんだ。ま、欲を言えばランサー陣営も纏めて始末してくれりゃあ万々歳だったんだが、贅沢は言わないでおこう」

 

 スタークはさも愉快そうにくつくつと笑った。

 アインツベルンといえば、表向きには遠坂に助力している体を取っているルーラーから見れば敵勢力だ。そのアインツベルンに許可もなく勝手に協力を要請するなど、黎斗からしてみれば慮外の出来事だった。

 たっぷりと深く重たい吐息を零したゲンムは、そのオッドアイでスタークのバイザーを睨めつける。

 

「忠告しておくぞ、スターク。貴様がなにを企んでいるのかは知らんが、勝手な真似は慎め。あまり好き勝手に行動していると……寿命を縮めることになるぞ」

「ハッ、寿命……! 寿命ときたか! 仮にも一度は消滅させられた地球外生命体の俺に命を説くとは、傑作だねえ!」

 

 スタークはさも愉快とばかりに膝を叩いて笑う。

 ゆっくりとした足取りで歩を進めたゲンムは、スタークの襟元の装甲を掴み上げ、顔を引き寄せた。ゾンビのオッドアイと、深緑のバイザーがぶつかる寸前で止まる。

 

「お前がこうも好き勝手に立ち回れるのは、私のスポンサーとして、聖堂教会の権威を味方につけているからだ。その権威を手放したくなければ、少しは身の振り方を考えろと言っている……!」

 

 襟元を掴むゲンムの手に、スタークの手が重ねられる。スタークは立ち上がると、深く息を吐き出しながらゲンムの指を装甲から引き離し、無理矢理降ろさせた。

 

「聖堂教会を敵に回すのは、俺にしたって旨くはないからな……その辺りは言われなくてもわかってるよォ」

「……璃正神父は既に石動惣一の動きを不審に思い始めているぞ。これがなにを意味するか、本当にわかっているのか?」

「おおそうか、そいつは困った。それじゃあ仕方ない。俺もちょっとは大人しくするしかねえなあ?」

 

 降参とばかりにスタークは両手を掲げると、ゲンムに背を向ける。肩にライフル形態のトランスチームガンを担ぎ直すと、スタークはふらふらとした足取りで歩き始めた。今夜はこれ以上会話をするつもりはない、という意思表示だろう。

 

「……ふん」

 

 ゲンムは鼻を鳴らし、憮然として立ち尽くした。

 不意にバグヴァイザーの液晶画面に目を向ける。画面の内部には、眠りについたままの少女がいた。華奢な体になめらかな色合いの黒衣をドレスとして纏い、絹糸のような金髪を微かに揺らしている。

 未だ調整中の彼女を完璧なキャラクターとして覚醒させるには、英霊としての存在を証明するためのデータがあと僅かに足りない。けれども、基礎データの構築自体は概ね終わっている。黎斗がその気になれば、起動すること自体はいつでもできる状態にあった。

 黎斗の予定通りにゲームが進行すれば、彼女は()()()()()()()を守るために剣を執る()()()()()()として目覚める予定だ。その事実を、協力者であるスタークは知らない。未だ圧倒的なアドバンテージを握っているのは黎斗の側だ。それを思うと、少しは溜飲が下がる。

 スタークが歩き去って行った方向を眺めながら、黎斗はゲンムの仮面の下で冷ややかに笑った。

 

「まあいい。貴様がなにを考えているかは知らないが、せいぜい今のうちに策を弄しておくがいい……最後に笑うのは、この檀黎斗神なのだから……!」

 

 黎斗の笑みは、次第に高らかな大笑いへと変わっていった。真夜中の山中に、黎斗の喜悦の哄笑が響き渡る。それを聞き咎めるものは、誰もいなかった。




 TIPS
【シャドウランサー】
 その真名はフィオナ騎士団が一番槍、ディルムッド・オディナ。
 聖杯戦争を呪い、怨念を叫びながら果てたディルムッドの意識が、不完全な英霊データとしてシャドウサーヴァント化し、戦場を彷徨っていた。いわば、サーヴァントとしての戦闘能力を有した怨霊・亡霊といった類の化生である。
 しかし、彼の英雄の本来のあり方はまさしく騎士道精神を重んじる忠臣であった。かつて忠誠を誓いながらも最後までともに戦うことの叶わなかったケイネスへの思いは、怨霊となってなお健在だったのである。
 もう見えることはないと思っていたケイネスの存在と、騎士として誇りある戦場でもう一度戦えるという()()が、在りし日の英雄の魂を再び呼び戻したのかもしれない。

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