仮面ライダービルド×Fate/NEW WORLD   作:おみく

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第19話「戦場のリユニオン」

 戦兎が大量の酒瓶が入った紙袋を持ち帰ったとき、おおよそ想像はできていたことだが、ケイネスはやはり激怒した。ランサーの振る舞いに対して、戦兎はもうどうしようもないという諦念が強かったが、ケイネスはそうではない。これから戦闘が始まるというのに、己のサーヴァントが街に出て酒に浸っていたとなれば怒るのも頷ける。

 

「まったく、少し自由を許せばこのザマだ。こんなことならはじめから外出など許すのではなかった!」

「まあまあ、これでも私はただ時間を無為に過ごしたわけではないのです。これでも、私なりに得るものがありまして――」

「貴様はそうであろうな! 人の金で好きな酒を買い漁っていればよいのだから!」

「ああいえ、そういう話ではなく」

 

 ケイネスの剣幕に反して、ランサーはのんびりとした口調で微笑むだけだ。同じようなやりとりが、既に五分近く行われている。流石のケイネスも怒鳴ることに疲れてきたのか、もうこれ以上ランサーになにかを言い含めようとはせず、大きく深呼吸をして、かぶりを振った。

 荷物運びをやらされた戦兎にしても、ケイネスに同情はするものの、一緒になってランサーを叱責する気にはなれなかった。この自由人(ランサー)になにを言ったところで暖簾に腕押しだ。そんなことに時間を割いている暇があれば、フルボトルの調整に時間を使ったほうが遥かにマシだと思われた。

 戦兎の予測の通り、ケイネスの怒りのエネルギーがいったん尽きたタイミングをい見計らったように、キャスターが顔を出した。

 

「さて、そろそろ今後についての話をしたいのですが……よろしいか」

「……ああ、構わん。もう怒鳴るのにも疲れた」

「心中お察しいたします」

 

 キャスターは小さく頭を下げると、戦兎に向き直った。戦兎は示し合わせたように空間にホログラムウインドウを展開し、そこに冬木市の地図を表示させる。街のふもとに位置する円蔵山の中腹に、赤いマーカーが打たれていた。

 

「日中のうちに仕込みは済ませておきました。あとは、冬木を流れる龍脈の心臓部たるこの柳洞寺にて、その流れを書き換え、奪い取る。それだけで、遠坂が誇る絶対的なアドバンテージは脆くも崩れ去るだろう。口にすれば単純な作戦だが、それだけに失敗は許されない」

 

 戦兎とランサーが頷くのを見て、キャスターは説明を続ける。

 

「前衛はランサーに任せる。マスターには、今回の作戦の肝となる術式が組み上がるまで、私の護衛に全力を費やして貰う。ケイネス殿、並びにソラウ殿は、決してこの工房から出ないように」

「ふむ。マスターである私が工房で穴熊を決め込むという戦略そのものに異論はない。それは遠坂やアインツベルンもやっていることだ……だが、ただ黙って待っているだけ、というのも些か能が無いように思える」

「そう言うと思ってたよ」

 

 待ってましたとばかりに戦兎はラボに向かって歩き出した。その背を全員が追従する。複数のパソコンやモニターが乱雑に置かれた大きなテーブルに、小型のカメラとプロペラが取り付けられた小さなドローンが、合計で五台置かれていた。

 

「なんだこれは」

 

 見慣れない機械を見せられたケイネスが、怪訝そうに眉を顰める。その反応が愉快で、戦兎は髪を掻きむしりながら相好を崩した。

 

「超小型カメラ搭載型のドローン……つってもわかんねえか。まあ、百聞は一見にしかず。まずはこいつの性能をその目で確かめてくれ」

 

 ポケットから取り出したカメラフルボトルをしゃかしゃかと振って、親機となるドローンのスロットにそれを装填する。同時に、親機となるドローンが空中に飛び立ち、設置されたモニターに映像が映し出される。ドローンのカメラが映し出す映像が、リアルタイムで送信されているのだ。遅れて、子機となる四台のドローンも飛び立ち、残る四台のモニターに親機が撮影しきれない死角を映し出す。合計五台のドローンは、工場の窓から夜空へと飛び立っていった。モニターには冬木市の夜景が映し出されている。

 

「戦況は逐一このモニターに映像として映し出される。ランサーの戦闘を中心に撮影するようにプログラミングしてるから、例えケイネスが戦場にいなくとも、完ッ璧に状況把握ができるはずだ」

「これを、マスターが造ったのか? 我々の時代から見て二十年以上も前の、この時代の技術で?」

 

 キャスターの質問に、戦兎はニヤリと笑みを深めた。

 

「難波重工が使ってたドローン技術を参考にしつつ、てぇええんさい物理学者であるこの俺の、天ッッッ才的な頭脳によって生み出されたAIユニットを親機に搭載。常に戦況を自己判断し、遠隔通信で子機に的確な指示を出し、死角のないリアルタイム映像をこのモニターに映し出す! これがあれば戦場に出なくとも、ケイネスは常にランサーの状況を把握できるってコト。凄いでしょ? 天才でしょー!?」

「いや、しかしだな……こんなものを使わなくとも、使い魔の目を通せば戦況の把握くらいは――」

「そう言うなって。こっちのほうが絶ッ対、便利だから。これなら無駄に魔力を使う必要もねえし、そもそもこのドローンは戦場に近付く必要もない。誰も気付かないような遥か上空から、衛星写真並の精度で撮影してくれる。ほら、なんか凄いような気がしてこない?」

「ううむ、そうは言うが……」

「ふむ。君主(ロード)よ、一流の魔術師たるあなたが、このような胡乱な科学技術に頼ることに抵抗を感じるのはわかります。しかしながら、時計塔の風雲児たるケイネス卿の才能は誰しもが認めるところ。そのケイネス卿を思ってこれを造った我がマスターの顔を立てて、ここはひとつ、利用してみるのも悪い話ではないのでは?」

 

 ケイネスの表情が、変わった。

 

「なるほど……君の言うことは分かった。考えてもみれば、これはルール無用の聖杯戦争。すなわち、生き残りを懸けた熾烈な戦い。アインツベルンの暴挙や、遠坂の圧倒的な優位性を鑑みるに、私も使えるものは使った方がよいのやもしれんな」

「ええ、その通りです。流石は私が認めた偉大なる君主(ロード)、理解が早くて助かります。そんな貴方にこそ、私は勝利を齎したい」

「よさぬかキャスター、見え透いた世辞はもう沢山だ」

 

 キャスターの言葉を片手で制するケイネスだったが、その反面、まんざらでもない様子で頬が緩んでいるのを戦兎は見逃さなかった。このキャスター、つくづくケイネスの扱いが上手い。

 

「そんなことよりも、だ。此度の作戦、我らの勝算は如何ほどのものなのだ。二度目の襲撃ともなれば、さしもの遠坂も用心せずにはいられまい。その点も抜かりはないのであろうな」

「それこそ愚問ですな、君主(ロード)よ。これでも私は人類史に名を刻まれた稀代の軍師。勝算のない戦ならば、はじめから挑みはしない。最大戦果はセイバーの脱落。最低でも、遠坂から龍脈を奪い取り、再起困難な痛手は負って貰う。私はそのために此度の策を練りました。それとも、策士の言葉では信用に値しませんかな?」

「……あいも変わらず大した自信だな。よかろう、そうまで言うならばひとつ乗せられてやる。かの孔明の罠とやら、とっくりと楽しませて貰おうではないか」

 

 キャスターは慇懃に頭を下げた。

 

「では、ケイネス殿は陣地に残り、状況把握に専念。必要があれば、適宜念話にてランサーに指示を送る……という方針でよろしいか」

「構わぬ。ことによっては、此度の戦場で宝具を切る必要もあろう……その見極めは、正確であれば正確であるほどよい。せいぜい、貴様の発明とやらを利用してやろう、桐生戦兎」

 

 涼しい顔で流し目を送るケイネスに、戦兎は笑顔で応える。なんだかんだといって、自分の発明が有効活用されるのは気持ちがよいのだ。

 

「少々お待ちを、ケイネス殿。いま、宝具を切る、とおっしゃいました?」

「うむ、言ったがそれがどうかしたか、ランサー」

「ここで我が真名を明かしてもよいのですか?」

 

 ランサーは口元に笑みを浮かべたまま、きょとんと目を丸くしている。ケイネスは面倒臭そうに体の芯をランサーから背けた。

 

「ふん、貴様は貴様で散々大口を叩いたのだ、せめてただの酒飲みでないことを証明してみせよ。それが叶うならば、宝具の開帳くらいは許してやってもよい」

「流石はケイネス殿! まあ、真名ごとき開帳したところで圧倒的な知名度補正を誇る私に弱点などあるわけでもなし。かくいう私もそろそろ高らかに名乗りを上げて戦いたいと思っていたのです。いやあ、これは腕が鳴るというもの。やる気が湧いてきました!」

 

 まるで親から新しい玩具を買い与えられた子供のように、無邪気な笑みを咲かせるランサーに、ケイネスはこめかみに青筋を立てながら向き直った。

 

「待てランサー、今話したのは()()()()()()()の話だ! 真名の開放が必要かどうかを判断するのはあくまでこの私なのだ、くれぐれも勝手な判断で先走るなよ!?」

「あっはははははははッ! そんなことは言われるまでもありませんとも。そも、私が勝手な判断で先走ったことなんてありましたっけ?」

「き、貴様というやつはよくもまあぬけぬけと……!」

 

 先のシャドウランサー戦を脳裏に思い浮かべて、戦兎は思わず失笑した。

 ケイネスの判断を無視して敵の宝具を返還し、ケイネスの警告を無視して一対一の戦闘を続行、それでも見事勝利をもぎ取って見せたのは、他ならぬランサーだ。

 これから目下最大の強敵である遠坂に決戦を仕掛けるというのに、それを微塵も恐れず笑い飛ばしてのけるランサーの振る舞いを見ていると、難しいことを考えて暗澹とした気持ちを抱えたまま戦場に赴くことが馬鹿馬鹿しく思えてくる。勇気が湧いてくる。

 

「ああもう、最ッ高だな、お前ら! お前らが一緒なら、根拠はないが不思議とやれる気がしてくる」

「ええ、ええ、それでよいのです。戦などというものは、死なんと戦えば生き、生きんと戦えば死するのみ……要するに、考えてもしょうがないということです。ただ持てる力のすべてを懸けて、全力で事に挑むのみ! そうすれば、勝利など後からついてくるものです」

「とんでもない暴論だが、あながち間違いとも言えんところがおそろしいな」

 

 キャスターの苦笑に、ケイネスはあからさまに呆れた表情を浮かべながら、こくこくと首肯で答えた。

 

「ああ、もうなんでもよいからとっとと出陣せんか」

「あっはははははは! それではみなの者、ケイネス殿の号令も出たことですし、いざ出陣ですッ! にゃー!」

 

 奇声とともに拳を振り上げるランサーに、異論を唱えるものはいなかった。

 

   ***

 

 円蔵山は柳洞寺へと続く石造りの参道から大きく外れ、まっとうな人間ならば決して踏み歩くことのない未舗装の獣道を進んだ先に、見晴らしのよい丘があった。山の中腹に建てられた柳洞寺よりも標高としては高い。この位置からならば、生い茂る木々に邪魔されることなく、眼下の柳洞寺を睥睨することができる。丘の大木にもたれ掛かるようにして、ブラッドスタークは眼下で始められた戦闘を眺めていた。

 夜の帳に暗く影を落とされた木々の合間に、灰色に開けた柳洞寺の境内。その空間の中を、無数の人影が飛び交っている。本殿の正面では、キャスターがなにやら地面に陣を描き、直接手で触れ、魔力を流し込んでいる様子だった。

 アサシン軍団はみな一様にキャスターの妨害を目的として殺到するが、ランサーとビルドの奮戦ぶりもなかなかのもので、アサシンはどうにもキャスターに近付けないでいる。

 数を増やすほどに一騎あたりのスペックが落ちるという宝具特性を鑑みれば、アサシンでは歴戦の勇士であるビルドとランサーに太刀打ちができないことも道理といえる。

 

「あァあァ、焦れったいねえ。サーヴァントといえども所詮は烏合の衆か」

 

 平時の軽快な声音とはかけ離れた、低く、老獪さを滲ませた声音で、スタークは嘲るようにぼやいた。もう、石動惣一の声や顔に頼る必要はない。

 

「せっかくマスターがやる気を出したってのに、これじゃあアサシンが浮かばれない。まったく、随分と下手なカードの切り方をしたモンだよ、遠坂の奴ァ」

「カカッ、それだけセイバーの実力を信頼しているということじゃろうて」

 

 背後の闇の中から、不気味な忍び笑いが漏れ聞こえる。

 振り返ると、寸前まで間違いなく誰もいなかったはずの場所に、痩せ枯れた老人の矮躯があった。はじめからそこにいたのであれば、トランスチームシステムのセンサーが感知するはずだ。老人は、なにもない場所から“突然”現れたのだ。

 

「おお、いたのか。相変わらずの神出鬼没っぷりだなァ、臓硯」

「今更背後を取られたくらいでは微塵も驚かぬか。ここはひとまず、おぬしのその胆力を高く評価しておくとしようかのう」

「そいつは光栄だ。だが爺さん、あんたが今日ここに来たのは、そんな世間話をするためじゃあない。もっと違う話があるんだろ? 俺と話したいことが」

「なんじゃ、おぬしこそ、ワシが来ることが最初から分かっておったとでも言いたげな口ぶりではないか」

 

 臓硯は皺に埋もれた唇を歪ませて、数歩前へ進む。スタークの隣に並んだ臓硯は、眼下の柳洞寺で繰り広げられる戦闘の趨勢を眺め、落ち窪んだ眼窩の奥で、人間ならざる瞳を微かに光らせた。

 

「石動惣一、いやさ()()()()()()()()。監督役を殺め、その小倅(こせがれ)を焚き付け、おぬしはいったいなにを企んでおる?」

「ハッ、こいつは参った! 随分と単刀直入に聞いてきやがる! 遠慮がないねえ。あんた、キャンディもすぐ真ん中から噛み砕くタイプだろ?」

 

 スタークはわざとらしく自らのバイザー越しの額をぺしりと叩いて、言葉とは裏腹に、まったく参っていない様子を見せつけるかのように笑ってみせた。

 対する臓硯も、スタークと同様に笑っていた。その思惑を決して表に出すことなく、不自然なまでに好々爺めいた笑みを顔に貼り付けて。

 

「よせよせ、ワシは然様な言葉遊びをしに来たのではない。おぬしとて、今更戯言ひとつでワシを煙に巻けるなどと思ってはおるまい?」

「まあな。だが、そんなこと聞いてどうするんだ? お前は俺の計画を邪魔するつもりこそないが、かといって協力をする気もない……そんなことは見てりゃわかる。するとなると、その質問はただの好奇心ってところだろうが、そいつをただ満たしてやったところで俺にメリットはない。だろ?」

「ふゥむ、これは手厳しいのう。隠居した老人の、他愛もない好奇心に付き合ってやるほどの余裕など持ち合わせてはおらぬか」

「ハッ、よせよ爺さん。俺はそんな安い挑発には乗らない。大体、今日はそういう言葉遊びをしに来たわけじゃねえんだろ?」

 

 臓硯は納得した様子で頷いた。

 

「ククク、やはりこの程度では動じぬか。雁夜めであれば、とうに挑発に乗って吠え散らかしておったところじゃろうて。おぬしの爪の垢でも煎じて飲まてやれば、少しは(さか)しくなろうものを」

「悪いな、俺に爪の垢はない。なにせ地球外生命体なんでねえ」

 

 冗談めかした物言いで鼻を鳴らすと、スタークは臓硯の返事を待たずに体を木の幹に預け直した。

 

「ま、そんなに気になるなら黙って見とけよ。俺の目的なんてモンはそのうち嫌でもわかるさ……もっとも、それまで互いに生きていたら、の話だがな」

「カカ、そうじゃのう。火遊びをするにしても、精々上手く立ち回ることじゃ……()()()、の」

 

 さぞかし楽しそうに、最後の言葉をねちっこく強調して臓硯はにたりと笑った。

 この老いた怪人はいったいスタークの目的をどこまで把握しているのか、それともなにも知らずにかまをかけているのか。もう少し深く立ち入った会話をしてみたい、という好奇心が鎌首をもたげかけたが、すぐに思い留まった。この男は、かつてスタークが籠絡した難波重三郎などとは根本から異なる、本物の()()だ。今まで関わってきた手合と同じ感覚で挑めば、手痛いしっぺ返しを食らうことは火を見るよりも明らかだった。

 

「おぬしには思いもよらぬ玩具(シャドウバーサーカー)を寄越してもらった恩もあるからの……万に一つ、おぬしが窮地に立たされた折には、ワシが匿ってやることも吝かではないのじゃぞ」

「ほおう、こいつは意外な申し出だなァ。いったいどういう風の吹き回しだ?」

「カカッ、そう惚けずともよかろう。それとも、気付かれていないとでも思っておったか? 端からそのつもりであの玩具を寄越しおった癖に」

 

 しわがれた髑髏のような面が、にい、と歪んだ。こんなことはいちいち口に出して言うまでもないがお前の考えなど一から十までお見通しなのだから今更ワシ相手に隠す必要はないのだぞという態度がありありと現れており、よりにもよってそれが当たっているのだから、スタークにしてみれば極めて不快だった。

 

「おぉっと、こいつは恐れ入る。流石に間桐の翁ともなれば、俺みたいな若造の浅知恵はお見通しってかァ?」

「そう大仰な話でもないわ。おぬしからはの……()()()おるのじゃよ」

「匂う?」

「そうさな、言うなれば……隙あらば腐肉に卵を産み付け、それを餌に這い回る生き汚い蛆虫の匂い、とでも言うべきか――ほれ、ワシと()()の匂いじゃ」

「生憎と、俺は()で通ってるんだ。これ以上妙なキャラ付けされンのは御免被りたいねえ!」

 

 言葉を言い終えると同時、スタークは右の肘を軸にぐりんと拳を跳ね上げ、強烈な裏拳を臓硯の顔面目掛けて叩き込んだ。拳頭が臓硯の鼻先にめり込むと同時、老人の矮躯は不定形の泥のように崩れ去り、無数の()となって宙へ舞い上がる。

 空に浮かぶ月をスタークの視界から覆い隠すほどの蟲の大群から、老人の声だけが反響する。

 

「カカ、少しばかり()()()()が過ぎたかの。ワシと五分に話せる若造と(まみ)えるのは久方ぶりでのォ、年甲斐もなく興が乗ってしもうたわい」

「安心しろよ爺さん。五分どころか、そっちの方が数段上手だ。話していてこんなに不快な相手もそうはいない」

 

 口惜しいことだが、今口にしたのは紛れもない事実だ。この世界に来てからというもの、スタークが誰かに本心を打ち明けたのもまた、これが始めてだった。

 頭上の闇の中から、蟲の翅が擦れ合うような耳障りな哄笑が響く。

 

「然様な言葉で惑わされはせんぞ、忍び寄る者(スターク)よ。今のはジジイを喜ばすための世辞として捉えておこう」

「ああ、どこまでも喰えねェジジイだよ、あんたは」

「カカカッ、おぬしがまた新たな玩具を抱えてワシの前に現れるときを、心待ちにしておるぞ」

 

 スタークはもう余計な言葉を返す気にはなれなかった。緩く掲げた手をぞんざいに振り、たった一言、いつも通りの挨拶で蟲の群れを見送る。

 頭上を覆っていた闇が完全に視界から消え去るのを待ってから、スタークはわざとらしく、特大の嘆息を落とした。

 

「はぁあァ、まったく恐れ入るよ。流石は聖杯戦争の裏に潜む元祖黒幕、とでもいったところかァ? ここは尊敬の念を込めて、()()()とでも呼ばせて貰おうかねえ」

 

 誰に届くわけでもない愚痴をひとり零すと、スタークは気持ちを切り替えるため眼下の柳洞寺へと視線を落とす。間桐臓硯に対して抱いた不快感と、今の自分に必要な状況判断とを冷静に分けて思考する。

 桐生戦兎(ジーニアス)に感情を与えられるよりも以前のエボルトであれば、このような精神的作業は必要ではなかった。けれども、それを煩わしいとも思わない。感情に精神が左右されることそのものを愉しいと感じている自分がいる。

 

「ああ、ダメだなこりゃ」

 

 スタークは片手で軽く頭を抱えた。

 戦場で宙を飛び交うアサシンの影が、最前よりも数を減らしている。臓硯との雑談に時間を割き過ぎた。そうすると、いまスタークがなすべきことは、ひとつだ。

 

「よォし、ここはひとつ気持ちを切り替えて、俺も楽しむとするかァ!」

 

 スタークは己を鼓舞するように両手でガッツポーズを作ると、大木に立て掛けていたトランスチームライフルを小脇に抱え、駆け出した。

 少しでも丘を下れば、待ち受けていたのはヒトの侵入を許さぬ獣道だった。生い茂る木々に進路を阻まれ、月光すらも遮られる暗闇の雑木林に、闇夜に忍ぶ蛇(ブラッドスターク)は躊躇もなく飛び込んだ。主の意思に呼応するように現れた巨大なコブラが、木々の合間を音もなくすり抜け猛進する。血湧き肉躍る戦場は、すぐそこだ。

 

   ***

 

 戦場を、無数の黒い影が飛び交っている。その影の間を、黒光りする短刀(ダーク)が行き来する。ひとりのアサシンが短刀を投擲し、それをランサーがかわすと、それを受け取った他のアサシンがすかさず投げ返しているのだ。

 アサシンの数は目算にして十騎といったところだが、戦場を行き交う短刀の数は、その倍に迫っている。

 

「まったく、数だけは多いというのも、なかなか厄介なものですね!」

 

 踊るように身を翻して跳んだランサーの鉾が、短刀のひとつを叩き落とす。すかさず飛び込んできたアサシンの短刀を鉾の切っ先で受け止め、離れるよりも素早くその胴体に刀を深く突き刺した。アサシンの断末魔がやむ間もなく、次のアサシンが迫りくる。けれども、結果は同じだった。いかな短剣飛び交う嵐の中であろうとも、キャスターの宝具で“気配遮断”のスキルを封じられたアサシンなど、ランサーにしてみれば雑兵も同然。何人いようと物の数ではない。

 むしろ、心配なのは戦兎の方だ。ランサーはアサシンとの攻防を続けながら、後方でキャスターの護衛のために剣を振るうビルドへと視線を送った。

 

 一方のビルドは、手にした忍法刀の電子音声を鳴らし、白煙とともにひとりからふたり、三人、四人と分身を繰り返す。右腕に忍法刀、左腕に機関砲(ホークガトリンガー)を手にした紫と黒鉄色のビルド(忍者ガトリングフォーム)は、キャスターへと接近しようとするアサシンを忍法刀で斬り伏せ、付近を飛び交うアサシンへとホークガトリンガーの弾丸を浴びせる。

 戦闘のさなか、分身したビルドのうちのひとりが手にした忍法刀に、その側でアサシンを牽制していたふたりめのビルドがホークガトリンガーを意図してぶつける。ホークガトリンガーのリボルマガジンが、火花を散らしながら回転した。弾丸が瞬時に生成、装填される。四人に増えたビルドは、それを繰り返して断続的に弾丸を装填しながらアサシンとの戦闘を続けていた。

 

「おいキャスター、ちょっと敵の数が多すぎるんじゃないの!?」

「流石に今回ばかりは黙って見過ごすわけにはいかないということだろうな。それだけ遠坂が焦っている証拠だ、勝利は近いぞ、マスター!」

「涼しい顔で……ッ、言ってんじゃないよ!」

 

 ホークガトリンガーの掃射の合間を縫って急接近してきたアサシンのひとりを忍法刀で叩き伏せ、その霊基を確実に一刀両断しながら、戦兎はビルドの仮面の下で苦い声を漏らした。

 

「問題はない。すべては私の思うままだ。マスターこそ、口を動かしている暇があれば手を動かせ。敵はまだ多いぞ」

「言われなくても……わかって、ますよってのォ!」

 

 剣を振るい、機関砲を放ちながら、四人のビルドは戦場へ向き直った。釈然としない気持ちはあるが、今はキャスターと口論をしている場合ではない。

 ビルドの一人が、飛び交う弾丸と短刀の合間を縫って己の間合いを確保すると、薄い水色のフルボトルを振って、ビルドドライバーに装填する。

 

 『SENPUUKI!』

 

 もうひとりのビルドもまた、ひとりめと同様に鋼色のフルボトルをビルドドライバーに装填する。それを阻もうと迫りくるアサシンの短刀を、忍者ガトリングのビルドが忍法刀で打ち合い、阻む。

 

 『ROBOT!』

 

「「ビルドアップッ!」」

 ふたりの戦兎の声が重なった。同時に、四人中ふたりの半身が、瞬時にその形状を変化させる。

 分身状態の維持のため、右半身を形成する忍者ボトルはそのままに、左半身のみを水色へと変化させた『忍者扇風機』と、同様に左半身をロボボトルによって形成された豪腕へと変化させた『忍者ロボット』が戦列に加わった。

 

「ハッ!」

 

 忍者扇風機となったビルドが、右腕に装着された巨大な扇風機ユニット(サイクストリーマー)を翳し、掛け声とともに起動する。ユニット内部のファンが高速回転をはじめ、生じた風は瞬く間に巨大な竜巻となって乱気流を巻き起こす。それだけで、アサシンたちの放り投げた短刀の軌道はめちゃくちゃに逸れ、明後日の方向へと飛んでいった。

 

「ウォオオオッ!」

 

 多くのアサシンが強風に煽られ動きを止めたが、中には吹き荒ぶ突風など意にも介さず突撃を仕掛けてくるアサシンがいた。ほかのアサシンと違い、筋骨隆々とした肉体をローブで隠そうとはしていない。ビルドよりも一回りほど大きな体躯をしたそのアサシンが、不自然に盛り上がった怪腕を振り上げ、真正面から突撃してくる。

 

「お前の相手は俺だ!」

 

 忍者ロボットへと変身を遂げたビルドが、すかさず怪腕のアサシンの眼前に躍り出た。振り抜かれた巨腕と、あらゆるものを破壊し尽くすロボットの左腕(デモリションワン)が正面から激突し、火花を散らす。

 二度目の激突で、ビルドはロボットアームを大きく開き、怪腕のアサシンの腕を上下から挟み込むように掴んだ。いかな怪腕とはいえ、あらゆる物質の粉砕するビルドの巨腕を跳ね返すには至らない。

 ビルドは空いた片手でベルトのレバーを一気に回転させた。

 

「ぐ、お、ぉ」

「ハァアッ!」

 

 電子音に次いで、ビルドのデモリションワンから放出されたエネルギーアームが、怪腕のアサシンの胴体を挟み込み、そのままアサシンの巨体を軽々と頭上へ持ち上げた。周囲のアサシンがビルドを妨害しようと短刀を投げるが、それらはすべて忍者扇風機のビルドによって巻き起こされた旋風に吹き飛ばされる。

 ビルドのボルテックアタックが発動した。巨大なエネルギーアームが、ビルドの頭上で藻掻く怪腕のアサシンを挟み潰し、エーテルで作られたその体を粒子となるまで粉砕する。

 

 

 奮戦するビルドを横目で流し見ながら、ランサーはくすりと笑みを浮かべた。戦兎は、ランサーの期待を裏切らない程度の働きはしてくれている。ここであっさりと敵の侵攻を許すようでは期待はずれも甚だしい。

 ランサーの周囲の地面には、八つの武器が円を描くように突き刺さっていた。鉾に槍、打刀に太刀、鍔のない大刀から禡祭剣まで、様々な様相の武器が召喚されている。その中心で、ランサーは踊るようにアサシンからの襲撃をいなし、反撃をし、状況に応じて武器を持ち替えて戦っていた。ランサーの許可なく武器に触れようとしたアサシンは、武器を持ち上げるよりも先に、ランサーによって八つ裂きにされた。

 幾度となく繰り返されたランサーによる演舞のさなか、ほかとは様相の異なるアサシンが紛れていた。全身を漆黒のローブで覆い隠した、どのアサシンよりも小柄な個体である。

 

「ッ!?」

 

 迅速のアサシンはほかのいかなるアサシンをも上回る俊足でランサーの懐へと飛び込むと、その首を断とうと手にした巨大な曲刀を振るった。ランサーの目をもってしても追い切れぬほどの速度の持ち主であった。

 ほぼ直感でひとつで頭を屈めると、頭上を曲刀が過ぎ去ってゆく。ランサーの白い髪が数本空へと舞い上がった。

 にい、と。ランサーの口元が、三日月のように歪む。

 すかさず武器を取り回しやすい打刀へと持ち替え、迅速のアサシンの急所を突こうと振るうが、既に背後にはいない。ランサーはもはや頭で考えて回避をしようとは思わなかった。ただ直感にのみ身を任せて、薙刀を手に取る。急迫する殺気に対し、ランサーは振り向くことなく脇腹の下から薙刀を通し、背後を突いた。

 

「つ――ッ」

 

 アサシンの吐息が漏れ聞こえた。ランサーの薙刀の切っ先が、アサシンの脇腹を掠めている。迅速のアサシンの動きが、鈍った。ランサーは笑みを深め、目にも留まらぬ速度で跳んだ。急迫する他のアサシンを手にとった大刀で叩き伏せながら、ランサーは武器を鉾へと持ち替え、加速する。脇腹に負傷を負ってなお音のような速度で駆けるアサシンの隣に並ぶと、ランサーは遠慮容赦なく迅速のアサシンの曲刀を叩き落とした。 

 

「狂い咲け、八華繚乱ッ!」

 

 アサシンが跳ぶと同時、ランサーは既に禡祭剣へと武器を持ち替えていた。三度(みたび)ふたりの影が交差するとき、アサシンの胴を切り裂いたのは、ランサーの禡祭剣の方だった。

 迅速のアサシンの敗因はひとつだ。いかにランサーの速度を上回る俊足を武器としたところで、戦闘におけるセンスには天と地ほどの差があった。それを弁えずにランサーの間合いに踏み込んだ時点で、アサシンの運命は決まっていた。

 ランサーは人間の限界を遥かに越えた速度で八つの武器を巧みに持ち替え、それらすべてで迅速のアサシンの体を八つ裂きにした。都合八回分の攻撃が繰り出されたことになるが、そこにランサーは三秒も費やしてはいない。刹那のうちに迅速のアサシンの霊基は座へと還らされることとなった。

 

 敵の数は多いが、数だけでは趨勢を覆すには至らないことを、ビルドとランサーの奮戦が示していた。アサシンでは、キャスターの敷いた陣を崩すには至らない。それをこの場の誰もが理解しつつあった。

 

 『STEAM(スチーム) SHOT(ショット)!』

 

 誰も予想しなかった方角から、電子音が鳴り響く。

 一発の弾丸が、宙を泳ぐコブラのように曲がりくねりながら戦場へ迷い込んだ。弾丸が向かう先にはキャスターがいる。それを判断したランサーが、いち早く鉾を手にして飛び込み、弾丸を叩き落とそうと振るうが、弾丸はランサーの動きを読んだかのように空中で軌道を変えて回避すると、後方のキャスターへ向けて一気に加速する。

 

「外した……ッ、この私が!」

 

 笑顔を絶やさぬまま驚愕するのもつかの間、間髪入れずに正面から迫りくる巨大な敵意にランサーは気付いた。

 森林の奥から、木々を薙ぎ倒して現れたエメラルドグリーンの巨大なコブラが、その巨躯を振るい、ランサー目掛けて尻尾を叩きつけようとしている。

 

「ええい、洒落臭いッ!」

 

 地を蹴り、一気に空高く舞い上がったランサーは、眼下に現れた新手の姿を捉えた。

 巨大なコブラの背に乗っているのは、ビルドと同様に全身を鋼鉄の鎧で覆った赤蛇の男(ブラッドスターク)――聖堂教会の石動惣一(エボルト)に相違ない。そいつが、頭上を仰いで、ランサーに向けて軽く片手を掲げて挨拶の意を示している。

 

「この男……!」

 

 エボルトが敵であると知ってはいるものの、石動惣一が聖堂教会の立場を笠に着ている限り、こちらから手を挙げるわけには行かない。空中で白装束をはためかせ、くるりと身を翻したランサーは、反撃に出ることなく数メートルほど後退するかたちで着地した。周囲のアサシンたちも攻撃の手を止めている。一旦は様子を伺う方針でいるらしい。

 ちらと後方を振り返れば、最前スタークが放った弾丸は、忍者扇風機フォームのビルドが放った突風に呑み込まれて推進力をなくしていた。

 

「ハァッ!」

 

 上方から、元の赤と青となったビルド(ラビットタンクフォーム)が、大剣フルボトルバスターを振り上げ急降下する。刹那、斬り裂かれた弾丸が爆発するが、その爆風も爆炎も、瞬く間に忍者扇風機が起こした突風に吹き消された。

 

「チャオ、戦兎。それにランサーもか……冬木ハイアット以来だなあ」

「エボルト……! お前、今度はなにを企んでる!」

 

 激昂する戦兎とは裏腹に、スタークはふうと大きく吐息をつきながら、悠々と巨大なコブラから飛び降りると、ビルドへと向き直った

 

「なァに、ちょっとした番狂わせってやつだ。お前らのゲームがあまりに一方的だったんでね」

「聖堂教会の人間が、どこか一方の陣営に肩入れすんのは反則のハズだ」

「ハンッ、なにを今更。退場したはずのアサシンがこうもウジャウジャ湧いてる時点で、反則もクソもないだろう。ちょいと言うのが遅いんじゃないか?」

「なんだと……!」

 

 もはや石動惣一としての体面など気にする素振りもみせず、スタークは本来の自分の声で嘲笑う。拳を握りしめわななくビルドに代わって、今度はランサーが口を開いた。

 

「事情を察するに、そなたは聖堂教会に所属する人間でありながら、アサシンに助太刀する目的でここへ現れた……という認識でよいのですね」

「概ね正解だが、ひとつだけ訂正しておこう。俺はもう聖堂教会の人間じゃあない。だからなにをやろうがお前らにとやかく言われる筋合いは、ない」

 

 言うが早いか、スタークは左腕に装着された紫色のパッド(バグヴァイザー)のボタンを押し込み、それを頭上へ向かって掲げた。バグヴァイザーの内部で培養されたバグデータが、砂粒よりも小さな極小の粒子となって空へ噴出される。舞い上がったバグの粒子は、地上に舞い落ちるまでの間に寄り集まり、人のかたちを形成し、人間大の怪人のかたちを形成する。瞬く間に、戦場に無数の戦闘員が解き放たれた。

 

「こいつら……っ、バグスターウイルスか!」

「御名答! 流石に理解が早いなあ、戦兎ォ!」

 

 かつてエグゼイドらと共闘した際に、戦兎はバグスターウイルスの戦闘員と戦った経験があった。人に感染するバグスターウイルスが、人のかたちを持った個体。戦闘員ひとりひとりに意思はなく、倒しても倒しても無数に湧いて出る厄介な存在だ。

 

「さァて、第二ラウンドといこうじゃねェか」

 

 スチームブレードを掌の上で幾度か跳ねさせると、スタークは軽く右手を掲げ、振り下ろした。号令の合図だ。一斉にバグスターの戦闘員が前方へ向かって駆け出す。はじめ、当惑した様子で互いに顔を見合わせていたアサシンも、すぐに状況を受け入れ、その黒衣をなびかせ一斉に宙へ舞い上がる。

 ランサーは振り返り、叫んだ。

 

「戦兎!」

「ああ、分かってる。ここでキャスターの術式を妨害されるわけにはいかねえからな」

 

 ビルドの周囲に無数の八卦炉型の円盤が無数に展開される。キャスターの意思に呼応して、魔力のレーザーを放つ兵装だ。

 

「すまないが、引き続き護衛を頼む。我らの勝利は、この一戦に掛かっているといっても過言ではない」

「問題ない。キャスターは自分の仕事を優先しろ」

 

 フルボトルバスターを構え直し、ビルドはスタークへと向き直った。無数のアサシンとバグスターの戦闘員に加え、スタークが召喚した巨大なコブラが戦場を駆け回り、ランサーとの交戦状態に突入していた。その中で、スタークは誰と戦うわけでもなく、ただ悠然と構えてビルドを凝視している。

 

「――エボルト……いや、スターク」

「またあの頃のように呼んでくれるたァ、ずいぶん気が効くじゃねェか」

「お前はここで、ブラッドスタークとして倒す。二度と()()()にはさせない!」

「ああそうかい……、だったらやってみなァ!」

 

 寸前まで気怠げに脱力していたスタークは、まるで弾かれたようにトランスチームガンを構えた腕を上げて、駆け出した。銃口から高熱硬化弾が連続で放たれる。同様に走り出したビルドは、フルボトルバスターの刀身で急迫する弾丸をすべて叩き落とした。道中で襲い掛かってきたアサシンと戦闘員をも片っ端から斬り伏せて、ビルドは一直線に走る。

 闘志に燃えるふたりが激突するのに、時間はかからなかった。

 

「スタークッ!」

「嬉しいねェ! 俺ァこうしてお前とやり合えるときを、心待ちにしてたよ、戦兎ォ!」

 

 スチームブレードとフルボトルバスターが衝突し、火花を散らして弾き合う。最初に舞い散った火花が消え去るよりも早く、互いに武器を激しくぶつけ合う。幾度目かの衝突の末、崩折れたのはスタークの方だった。

 

「――ッ!?」

 

 ビルドの視界からスタークが消えたときにはすでに、スタークは地べたを転がりながらトランスチームガンを構えていた。無防備な下方からの銃撃に、反応が一瞬遅れた。スタークの連射をすべて胸部装甲で受け、ビルドは数歩後退する。

 なおも続く銃撃をフルボトルバスターで受け止めながら前進し、再度肉薄すると同時、ビルドは思い切りその大剣を振るう。スタークはくるりと身を翻してその一撃を回避すると、蛇のような巧みな身のこなしでビルドの懐へと潜り込んだ。

 

「ダメだダメだ、攻撃が大振り過ぎる! お前の実力はそんなもんじゃねえだろ!」

「うる、せえ……!」

 

 連続で叩き付けてくるスチームブレードによる滅多撃ちをフルボトルバスターで受け止めながら、ビルドは手にしたグリップを折り曲げ、バスターキャノンモードへと変形させる。砲撃形態となっても、砲身に備え付けられたバスターブレードは健在だ。スタークの攻撃をブレード部分で受け止めながら、ビルドはフルボトルを装填した。

 

 『GATLING!』

 

 電子音声に次いで、ガトリングボトルの紋章(クレスト)が刀身に浮かび上がる。

 

 『FULL(フル) BOTTLE(ボトル) BREAK(ブレイク)!!』

 

 両腕で構えたフルボトルバスターの銃口から、秒速にして百発にも迫る超高速の弾丸が射出させる。唸りを上げて急迫する弾丸に、スタークは真正面から対処をしようとはしなかった。地べたを転がり、横方向に大きく退避することでビルドの斉射から逃れる。スタークが通った石畳の地面にはガトリングによって無数の穴が空けられていた。

 

「ハッ、さっきから、ガトリングに頼り過ぎなんだよォ!」

 

 フルボトルブレイクのエネルギーが切れ、ビルドの斉射が終わるころ、スタークは片膝突いてトランスチームガンをライフルモードへと変形させていた。右腕で構えたライフルのバレルを左腕に乗せ、ビルド目掛けて射撃を行う。ビルドはフルボトルバスターでスタークの弾丸を叩き伏せながら、次のボトルを取り出し、耳元で振る。

 

 『ROCKET!』

 

「ビルドアップ!」

 ドライバーにロケットボトルを装填し、レバーを回す。濃いメタリックブルーで形成されたタンクボトルの成分が一気に抜け、代わりに水色のロケットボトルの成分がビルドの半身へ行き渡る。左腕にロケット型のアームを装着した、ロケットラビットフォームへの変身が完了した。

 

「だったらこいつで勝負だッ!」

 

 ビルドの左腕に装着されたロケットアームが、スラスターからジェットの炎を噴射しながら射出された。その軌跡を追うように、再びバスターブレードモードへと変形させた大剣を構えたビルドが駆ける。

 

「なるほど、今度はロケットからの波状攻撃か! 悪くないぞォ!」

 

 はじめ、スタークはガトリングのときと同じ要領で回避をしようとしたが、直線的な軌道でしか射撃を行わなかったガトリングと違って、ロケットは自動的にスタークを追尾する。途中で逃げるのをやめたスタークは、ロケットへと向き直り、左腕に装着されたバグヴァイザーのボタンを押し込んだ。

 

「さァて、鬼が出るか蛇が出るか!」

 

 スタークは、正面からロケットアームに向き合うと、トランスチームガンを乱雑に投げ捨てた。左腕にバグヴァイザーを装着したまま、渾身の左ストレートでロケットアームを殴り返す。バグヴァイザーの銃口と思しき場所を、極めて乱雑な所作でロケットアームへと叩きつける。

 ほんの一瞬の発光ののち、ビルドの目前でロケットアームが消失した。仮面の下で瞠目する戦兎だったが、しかしその程度で止まるわけにはいかない。波状攻撃を仕掛けるため、ロケットアームのすぐ後方にまで飛び込んでいたビルドは、振り上げたフルボトルバスターを、全力でスタークへと振り下ろした。

 

「はぁああああッ!」

「ッ、ォオオ!!」

 

 ロケットアームへの対処で、ほんの一瞬対処が遅れたスタークの胸部装甲を、ビルドのバスターブレードが袈裟懸けに切り裂いた。スタークの胸部装甲が斬撃のかたちに沿ってひしゃげ、血飛沫の代わりに盛大な火花を噴出する。

 大打撃を受けたスタークは、境内の石畳をごろごろと数メートルほど転がってから、起き上がる。その頃には、すでにビルドはドライバーのレバーを回転させていた。

 ドライバーがロケットの成分とラビットの成分を吸い上げ、増幅させる。兎の脚力を宿した左足のスプリングが大きくたわむ。その脚で地を蹴り、ビルドは月下の空へと飛び上がった。

 

 『Vortex Attack(ボルテック アタック)!!』

 

 再構成された左腕のロケットアームのスラスターが、爆発的に火を吹いた。空に浮かぶ月を背に、ビルドはジェットの加速を得て急降下する。

 今からでは、回避の余裕はない。スタークにできることがあるとすれば、ビルドの攻撃によるダメージをいかに軽減させられるか、程度だ。スタークは高らかに笑いながら、両腕を交差させる。そこに、ビルドの左足が突き刺さる。

 

「うぉおおおおおおおおおおおッ!!」

「ふはっ、ふはははははッ! たかだかトライアルごときで、ここまでやるかァ……!!」

 

 スタークの腕に必殺のキックを突き刺したまま、戦兎は裂帛の叫びを上げる。胸の奥底から湧き上がる闘志に応えるように、ロケットアームのスラスターが熱量を上げた。ジェットの爆音を響かせさらに加速する。

 なんとか踏ん張って耐え抜こうとしていたスタークの軸足が、僅かにブレる。そうなるともう、スタークに勝ちの目はない。ロケットラビットフォームの蹴りが、姿勢を崩したスタークの防御を貫いた。

 

「う、ぉぉおおおお――ッ!?」

 

 上体で爆発を起こしながら吹き飛んだスタークが、石畳にしたたかに体を打ち付け、横たわった。スタークは起き上がろうとはしなかった。苦しみに嗚咽を漏らすでもなく、敗北を噛み締め悪罵を吐き散らすでもなく、スタークはただ、空に浮かぶ月を見上げ、愉快そうに笑っていた。

 

 

「でやぁあああああッ!!」

 白装束をはためかせ、ランサーは人知を超えた速度で戦場を舞う。鉾を振り下ろし、横合いから飛び掛かってきたアサシンの体を肩口から脇腹まで真っ二つに引き裂いた。刀を突き出し、背後から迫りくるアサシンの心臓を一突きのうちに穿ち貫いた。禡祭剣を振り抜き、並み居るバグスターの戦闘員を一刀のもとに消滅させた。それでも際限なく、敵はランサー目掛けて攻め寄せてくる。

 それでもランサーはキャスターへ接近しようと近付く敵は手当り次第に鏖殺し、実質的にビルドの援護を失った今も、見事キャスターが敷いた陣を守り続けていた。

 そのランサーの顔を、いやに冷たい汗が伝う。にい、と吊り上がった頬に横髪が張り付いて、不快だった。

 

「くっ、こうも数が多いと……少々鬱陶しい、ですね!」

 

 短刀を構えたアサシンが、弾丸のような速度で飛び込んできた。ランサーは軽くぼやきながらも軽い跳躍で空へ跳び上がると、今しがた間合いに踏み込んできたアサシンが通過するよりも早く、その首筋に刀を突き立てた。

 着地すると同時に、一斉に押し寄せてきたバグスターの戦闘員を、一体につきおよそコンマ一秒程度を費やしながら、確実にひとりずつ首を掻き切ってゆく。これと同様の工房が、もうずっと長いこと続けられている。

 負ける気はしないが、明らかに手数が足りていない。

 

“フ、さしもの戦国最強の武将といえど、この数が相手では苦戦は道理か”

 

 主であるケイネスの声が頭の中に反響する。念話だ。ケイネスはいま、戦兎の発明したドローンのカメラを通して、リアルタイムでランサーの戦闘を見守っているのだ。

 

“この程度の雑兵ごとき、私ひとりで十万人くらいまでなら軽いのですが、防衛戦となると、どうにも”

“ふん、苦しい言い訳だな、ランサー”

 

 言葉だけを捉えれば、冷たく突き放されたようにも受け取れる。けれども、ケイネスの声は、言葉に反してどこか弾んでいるようにランサーには感じられた。

 

“あのー、ケイネス殿。もしかして、なにか楽しんでません?”

“ふむ。まあ、貴様がこの程度の雑兵に遅れを取る()()()()()()であったなら、私としても楽しんでいる余裕などなかっただろうな”

“あははははははっ、それ、褒めてます?”

“たわけ、褒めてはおらぬわ”

 

 ランサーの口元に、最前までとは質の違う笑みが浮かぶ。どのようなかたちであれ、あのケイネスの口から、ランサーの実力を認めている、と取れる言葉が出てきたことが、嬉しかった。

 

“ランサー。これ以上、その程度の雑兵に手間取ることは許さん。宝具の開帳を許す。キャスターに釣られて現れた不埒なる有象無象どもを――速やかに始末しろ”

 

 ふいに、脳裏に響くケイネスの声音から、浮ついた笑いの気配が消えた。戦況に応じて的確な指示を出す正確無比な指導者の声。それが、ランサーに架せられた重たい足枷を外し、いま、サーヴァントとして与えられた能力のすべてをつまびらかにして敵を殲滅せよと、そう言っているのだ。

 ここへきて、ランサーはいまだかつてないほどに、頬を歪ませて笑った。

 

「ええ、ええ、その言葉を待っておりました!」

 

 ようやく重荷を下ろしたような心持ちだった。スタークによって召喚された巨大なコブラが、牙を剥いてランサーの目前へと立ち塞がる。先程から攻撃を仕掛けられてはいたが、アサシンへの対処を優先していたせいで、いなす程度にしか対処できなかった目障りな相手だ。

 ランサーは足を止めた。武具を振るう手を下ろした。巨大なコブラが、アサシンが一斉に攻め寄せる。

 

「この()()()()()を前に、臆することなく攻め込むその度量。天をも恐れぬ不埒者とは、まさしくその方らのことよ」

 

 たった一振りの鉾を携えて、ランサーは不敵に笑う。華奢な体に魔力が充満し、有り余る余波が光り輝く一迅の旋風となって巻き起こる。いつの間にか、空からは白く煌めく雪がしんしんと降り注いでいた。周囲の気温が、ぐんと下がる。

 

「しかし悲しいかな。その方らごときでは、我が前に立つ資格なし! 己の身の程を知るがいい!」

 

 ランサーは、きっと眦を決すると、黄金の輝きを放つ鉾を構え、跳んだ。鉾の切っ先が、上方から攻め込んで来たコブラの顎に突き刺さり、そのままかち上げる。ランサーの神速の一撃は、コブラの下顎から頭蓋までを一気に貫通し、エメラルドで出来た巨躯に亀裂が走る。

 

「我が敷くは、不敗の戦陣ッ!」

 

 空へと舞い上がったランサーを迎えんと、崩壊を始めたコブラの背を、一頭の白馬が駆け上がる。一角獣を思わせる兜と、ランサーと同じ純白の装束を身に纏った、月の色をした毛並みの名馬だった。

 軍神にのみ仕える雄々しき白馬は、白銀のたてがみをなびかせ、沈みゆくコブラの頭を蹴った。その背に、ランサーが乗り跨がる。

 

「駆けよ、放生月毛……! 毘沙門天の加護ぞ在り!」

 

 みなが月下の夜空を見上げた。みながそこに白銀の華を幻視した。

 降りしきる雪とともに、輝くような白装束を風になびかせ、()()の白馬が押し寄せる。八頭すべてに、神威に満ちた眩い後光を背負ったランサーが跨っている。八人すべてが、槍や鉾、刀や薙刀、八人八色の武具を備えている。

 

毘天八相(びてんはっそう)車懸(くるまがか)りの(じん)ッ!!」

 

 宝具の号令に次いで、八人のランサーは一気呵成に戦場へとなだれ込んだ。

 最初の一頭が駆け抜けたとき、その進路上にいた雑兵のことごとくが首を跳ねられ、血なまぐさい砂煙とともに、その霊基を消滅させた。二人目、三人目のランサーが、間髪入れずに駆け抜ける。それ以降は、もはやただの蹂躙だった。

 獰猛で残忍なる八人の()()が、ただ戦場を掃討するためだけに駆ける。アサシンの中には、自棄になって反撃に打って出るものもいた。無駄と理解し、逃げようとするものもいた。八人のランサーによる猛攻は、それらすべてに分け隔てなくもたらされた。

 

 

「うおっ……すっげえ、これがランサーの宝具か」

 スタークとの戦闘のため、ビルドが戦陣から抜けたというのに、ランサーひとりの活躍で戦場を埋め尽くしていた雑兵は瞬く間に姿を消し、ものの数秒で趨勢が塗り替えられた。

 放生月毛を駆るランサーの速度があまりにも速すぎて、戦兎にはそれが、嵐で水かさを増した川の激流のように感じられた。荒れ狂う濁流がすべてを洗い流していくように、見る間に戦場が掃討されていく。

 

「同時に、放生月毛なる愛馬の存在から推測するに……あのランサーの真名は――」

 

 戦兎の感嘆に応えるように、キャスターがつぶやいた。ここが戦場であることを考慮したのだろう、最後までは口にしない。口にしないが、戦兎にもすでに当たりはついている。

 放生月毛という名の名馬を駆り、軍神の名を恣にする戦国武将。そんな人間は、日本史においてひとりしか思い当たらない。

 上杉謙信。上杉輝虎。長尾景虎。呼び名はいくつかあるが、そのいずれもがひとりの人物を指している。生涯において、主だった戦ではほとんど負けを知らずに戦い抜いた越後の軍神。

 

「――っていうか女かよ!?」

「うむ。まあ、ままあることだ」

「えーっ、あるのー……」

 

 キャスターは苦い顔をして目線を逸らした。なにか似た状況に心当たりがあるのかもしれないが、それについて触れない方がよいことはキャスターの顔色を見ればすぐに分かったので、早々に思考の隅に追いやった。

 

 一方で、残るアサシンは、僅か三騎にまで減らされていた。姿を見せていないアサシンがまだいるのかもしれないが、戦場に姿を表したアサシンは、これで最後だ。

 もはや敗北を悟り、逃げようと背を向けたアサシンらへとランサーの鉾が迫る。もはや八人に分裂する必要すらなかった。ランサーもまたもとの一騎に戻り、必殺の鉾に黄金の魔力の輝きを宿し、迫る。

 

 『SCRAP(スクラップ) BREAK(ブレイク)!!』

 

 そのとき、低く、地に響くような電子音が鳴り響いた。

 雪の舞い散る境内の気温が、ぐんと跳ね上がる。燃え上がるような龍の咆哮が、熱量をもって押し寄せる。

 燃え盛る炎の蒼龍が、その身に雷を伴って飛来した。そいつが、巨大な顎門(あぎと)を開き、横合いからランサーの行く手を阻まんと急迫する。戦兎は、その蒼龍に見覚えがあった。

 

「……面白いッ!」

 

 ランサーは殺意に満ちた微笑みを絶やさず、放生月毛の手綱を握り、蒼龍に向かって方向転換した。通常の感性をしていれば、それに立ち向かおうなどとは考えない。それを、ランサーは真っ向から立ち向かうつもりでいるのだ。

 黄金の魔力と旋風をその鉾に宿し、ランサーは蒼龍の顎門(あぎと)にその切っ先を突き立てた。魔力の輝きが、龍の蒼炎を散らす。龍の身が、薄く引き裂かれた紙片のようにほつれ、原型を失ってゆく。ランサーは構わず突き進む。

 やがて、鋭く研ぎ澄まされた極光が、戦兎の視界を覆った。甲高い金属音と、なにかとなにかが強い力で衝突する打撃音とが同時に鳴る。

 

「そなたは……!」

「うぉぉおおらぁああッ!!」

 

 ランサーの鉾と、襲撃者の剣は互いに弾き合い、両者間合いを計り合う。

 境内の入り口まで弾き飛ばされた襲撃者は、全身を白銀のボディスーツで覆い、その上に蒼く燃える炎の龍を身に纏った戦士だった。その姿を、戦兎は知っている。その無鉄砲な叫びを、戦兎は知っている。

 

「な……なっ、おまっ、なにやってんだよこの馬鹿ッ!」

「ああん!? 誰が馬鹿だ、せめて筋肉付け……って、えぇーーーっ!?」

 

 思考が激しく掻き乱される。痛烈な頭痛が戦兎を襲う。

 戦兎は、ビルドの仮面の下でこれでもかというほどに表情を歪ませた。戦場に飛び込んできた仮面ライダークローズチャージもまた、戦兎と同様に声を荒げ、ぴんと立てた指をビルドに向けて固まっていた。

 ランサーは、にこりと口元を緩めたまま、ビルドとクローズを交互に見ている。スタークは、その場に片膝立てて座り込んだまま、両手を広げて肩を竦めるだけだった。

 

「「こんなとこでなにやってんだよ、お前ッ!!」」

 

 戦兎の心底からの叫びは、嫌というほどに慣れ親しんだ()鹿()の絶叫と、まるで示し合わせたようにぴたりと重なって響いた。ともすれば、もう二度と再会することは叶わないかもしれないと思っていた相手との邂逅は、思いもよらぬかたちで成し遂げられた。おそらく、想像しうる限り最悪の状況下で。

 

「ああもう、最ッ悪だ……!」




【Servant Material】

サーヴァントの情報が開示されました。

【CLASS】ランサー
【真名】長尾景虎
【属性】秩序・善
【ステータス】
筋力C 耐久C 敏捷A 魔力D+ 幸運C+ 宝具B

【クラス別スキル】
●対魔力:C
 魔術に対する抵抗力。
 魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。
 
●騎乗:C
 乗り物を乗りこなす能力。騎乗の才能。
 正しい調教、調整がなされたものであれば万全に乗りこなすことができる。
 ランサーの場合は、ともに戦場を駆けた名馬、放生月毛(ほうしょうつきげ)を乗りこなす。

●神性:C
 その体に神霊適性、ないし神性属性があるかどうかの判定。
 ランサーの場合は、毘沙門天の化身と信じられたことに由来する。
 毘沙門天の名のもとに、本来ランサークラスでは持ち込めない武具や愛馬などを強制召喚することができる。

【保有スキル】
●運は天に在り:A
 毘沙門天の加護を信じる謙信は、戦場にて行うあらゆる行動に有利な判定を受けることができる。

●鎧は胸に在り:A
 飛び道具に対する防御スキル。
 強烈な自負心が事象操作に近い現象を起こし、弾の軌道すら歪めるため本人が当たると思わなければ絶対に弾が当たることはない。

●手柄は足に在り:A
 戦においては日本無双と謳われた景虎の戦術的直感能力。
 生涯において七十を超える合戦を経験し、そのほとんどに勝利している景虎であるが、城攻めは若干苦手。

【宝具】
毘天八相車懸(びてんはっそうくるまがか)りの(じん)
ランク:B 種別:対人/対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:1~100人
 生前の長尾景虎が得意とした陣形を対人戦に転化した宝具。
 本来は多人数によって構成された軍勢をいくつかに分け、入れ代わり立ち代わり敵陣に攻めかかる陣形。
 ランサーの場合は、完全武装騎馬形態の景虎が八体に分身し、一斉に敵陣へと襲いかかる。いわば、ひとり車懸りの陣である。

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