仮面ライダービルド×Fate/NEW WORLD   作:おみく

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第21話「キングが斬る!」

「ぐっ……うぅ、戦、兎ォォ……!」

 

 ハザードフォームへの変身を果たし、ダークキバと殴り合う戦兎を遠目に見ながら、万丈は砂利を握り締め、未だ新鮮な傷の痛みに軋みをあげる上体を起こした。

 そこで、はたと気付く。いつのまにか、傍らに雁夜が寄越したバーサーカーが立っていた。

 

「随分手酷くやられたものですね、ライダー。まだ戦えますか?」

「うるせえ……ッ、俺は、こんなところで、へこたれるワケにはいかねェんだよ……!」

「あらあら、うふふ。それほどの傷を負いながら、なおも戦おうという気概、素直に感服いたしますわ。ですが、戦うといっても、いったいどなたと? あなた様は、遠坂時臣の側について、彼を止めるために戦っていたのでしょう?」

 

 口元を扇子で覆い隠したまま、バーサーカーは微笑んだ。

 見上げた万丈の視線と、バーサーカーの視線が向かい合う。口調に反して、バーサーカーの目は笑っていない。一瞬返答に窮した万丈は、目線を逸らし、雑念を振り払うように立ち上がった。

 

「俺がやることは変わんねェ。俺が戦う理由は、戦兎がくれたんだ……あいつは、俺の戦う理由なんだよ。だから……戦兎は、俺が止めなきゃなんねえ」

 

 倒す、という意味ではなく。

 戦兎をハザードの呪縛から解き放つために、万丈は戦わなければならない。

 

「そうでしょうか? 放っておいても、セイバーが止めてくれると思いますが」

「あんなやつに任せておけるか! 戦兎は、俺に仮面ライダーの力をくれた……! 何度も俺を救ってくれた! けどな……あいつは人に手を差し伸べるばかりで、誰にも助けを求めようとしねえ……!」

 

 万丈の声は震えていた。戦兎は、どんなに自分が苦しくても、それを表に出そうとはしなかった。いつだって自分ひとりで背負い込んで、自分ひとりでつらい道を歩もうとする。

 飄々とした態度で笑いながら、その仮面の裏にどれほどの悲しみを隠しているのかを、万丈は知っている。このまま黙って戦兎をやらせるわけにはいかない。あんな男(セイバー)に、これ以上戦兎を任せてはいられない。

 

「せめて、俺があいつを理解(わか)ってやらなきゃ……いったい誰があいつを救うってんだ!」

「それは、つい先程まであの方と戦っていたライダーに言えた言葉でしょうか」

「何度も言わせンな! 俺の()()()()は変わらねえ……! 遠坂さんも、凛も、桜も……戦兎も! 全部、俺が救う! 俺が戦うのはそのためだ! さっきから、その思いはなにひとつ変わってねえッ!」

 

 バーサーカーの口調から、余裕に満ちた笑みがすっと消えた。

 神妙な眼差しで、バーサーカーはじいっと万丈を見つめる。

 

「本当に、不器用なお方。戦う理由……それをくれた殿方を救うために……それだけの理由で、そんなになってまで戦うと」

「それ以上の理由なんか必要ねえ。戦兎がそうしたように、俺も、誰かを守るために……ラブアンドピースのためにこの力を使うッ! それが、仮面ライダークローズだ!」

 

 目線を伏せたバーサーカーは、くすりと、諦めたように笑みを零した。

 

「まったく、あなたという人は……どこまでも、清々しいほどに素直な人。ええ、それを聞けただけで十分です。わたくしも、意地悪が過ぎましたね」

「バーサーカー……お前」

「ライダー。あなたが、己が胸に懐いた()()()()()()()()を貫くために戦うのであれば……わたくしも、彼を救うための戦いに、手を貸して差し上げましょう」

 

 バーサーカーの双眸は、セイバーへと向けられていた。

 隣に並び立った万丈は、拳を掌に打ち付け、セイバーを睨めつける。

 

 そもそも、マスターを傷付けない、というのが時臣と万丈の間に結ばれた条約の前提条件だ。戦兎への過剰な攻撃といい、無防備だった万丈への不意打ちといい、セイバーの行動はいずれも万丈との約束を違えている。もしも約束を違えた場合、万丈が時臣を止める、というのは当初の約定の通りだ。それを思えば、万丈にはなんの負い目もない。

 

「遠坂さんにゃ悪いが、セイバーにはさっきの借りを返させて貰う……!」

 

 万丈の胸の内に、ふたたび闘志の火が灯った。

 炎は心の奥底から、体の表面へと燃え広がる。万丈が生み出した魔力の炎は、胸元に出来た傷を瞬く間に燃やし尽くす。真紅の炎は、そのまま全身を滑るように広がり、セイバーに与えられた傷をも洗い流した。

 通常、マスターからの魔力供給で、サーヴァントは己の身に刻まれた傷を治癒させる。マスターとサーヴァントをひとりで兼任する万丈は、なんの知識もないまま、本能だけでそれをやってのけたのだ。

 

「待ってろよ、戦兎……俺がお前を救う。お前がくれた力で……!」

 

 他の誰でもない、戦兎が見せてくれた、仮面ライダーという夢に憧れたひとりの男として。

 万丈の右腕に、ごうと唸りを上げて真っ赤に燃える炎が灯った。炎はやがて、赤熱する溶岩へとその姿を変えた。

 握り締めた溶岩の塊から、灰褐色に変色した外郭が剥がれ落ちたとき、万丈は己の手の中にナックルダスター型の武装、クローズマグマナックルが握り締められていることを確認した。

 戦える。そういう確信がある。

 

 『BOTTLE BURN!!』

 

 ナックルにドラゴンマグマフルボトルを装填すると、表面の外装が左右に展開し、変身シークエンスへと突入する。万丈はそれを、腹部のドライバーへと勢いよく叩き込んだ。

 

 『CROSS-Z MAGMA!!』

 

 『Are You Ready?』

 

「変ッ身!!」

 レバーをゆっくりと回転させる。

 万丈の背後に、巨大なナックル型の坩堝(るつぼ)が形成された。そこから溢れ出した大量の溶岩(マグマ)が、万丈の体を覆い尽くす。

 けたたましい電子音の演奏のさなか、万丈の体を覆い尽くして余りある大量の溶岩は、巨大な八頭のドラゴンを形作った。日本神話に登場する八岐の大蛇(ヤマタノオロチ)を彷彿とさせるマグマのドラゴンだ。

 赤熱する溶岩の中で、万丈は猛り狂う八首龍の咆哮を聞く。変身は刹那のうちに果たされた。万丈を包み込んでいた溶岩が冷えて固まり、灰褐色の繭と変わる。

 

 『極熱筋肉ッ!!』

 

 『クローズマグマ!!』

 

 『アーチャチャチャチャチャ

  チャチャチャチャアチャーッ!!』

 

 ベルトから鳴り響くド派手な電子音とともに、クローズの全身を覆っていた灰褐色が弾けるように吹き飛んだ。

 全身に八頭のドラゴンを身に纏ったクローズマグマが、装甲を赤熱化させながら雄叫びをあげる。燃え上がる闘志に応えるように、マグマの装甲は熱く煮え立ち、全身のあちこちからごう、と唸りをあげて炎と熱が噴出する。

 クローズマグマの装甲は、すなわちマグマそのものだ。圧倒的な熱量を至近距離で受けながら、しかしバーサーカーは涼し気な顔で微笑んでいた。

 

「うふふ。溶岩地帯といえども、私の前では涼風同然。さあ、ライダー。どうやら考えていることは同じ様子ですし、ともに参りましょうか」

 

「少々お待ちを。ライダー、そしてバーサーカー……清姫、と言いましたか」

 

 ふいに、背後からかけられた声に振り返る。その先にいたのは、バーサーカーの微笑みとはまた趣の異なる、不敵な笑みをたたえて佇立する和装の少女だった。

 

「テメェは……さっきの」

「ええ、さっきのです。なにやら楽しそうな話をされているご様子でしたので、その企て、私にも一枚噛ませていただきたく思いまして」

 

 白馬を駆り、八人に分身して、逃げ惑うアサシンを掃討していた女武将がそこにはいた。

 一瞬とはいえ技をぶつけ合った相手とは思えぬランサーのにこやかな微笑みに、万丈はクローズの仮面の下で表情を顰めた。けれども、最前感じた危機迫る殺戮者の顔は既に鳴りを潜めている。敵意は感じない。

 反射的に構えを取りかけた万丈だったが、ひとまず警戒を解き、肩の力を抜いた。

 

「私は八華のランサー、真名を長尾景虎と申します。いえ、それとも……上杉謙信、と名乗った方がわかりやすいですか?」

 

 ランサーはたっぷりと間を溜めて、深い笑みとともにその名を名乗り、胸を張った。

 

「――あン? 誰だそれ、知らねえな」

「えっ……上杉謙信を、知らない?」

「おう、知らねえな。誰だそれ」

「え、そんな……謙信ですよ? かの戦国武将、武田信玄と川中島の戦いで相争った……」

「あァん? タケダだかシンジだか知らねェが、ンなこたどうでもいいんだよ! ともかく、アンタは味方ってことでいいんだな!?」

「ど、どうでも……いい」

 

 ランサーは微笑みを絶やさぬまま、剥製のように固まり、瞠目した。大きく見開かれた瞳の中で、混濁した瞳孔が開ききっている。瞳に、光を感じられない。

 バーサーカーは、袖で口元を隠してくすくすと笑った。

 

「ふふ、ライダーったら、本当に()()なお方。ですが、ここで無意味な見栄や虚勢を張らないところには好感が持てます」

「あ? ンだよ、有名なのか? そのタカスギなんとかってのは。全ッ然知らねェぞ!」

「あの、高杉ではなく上杉……あっいえ、もういいです。手助けしますので、私のことはお虎さんとでも呼んでください」

「おう、だったら最初からそう言えよ。よろしくな、お虎さん!」

 

 明らかに落胆している様子で引き笑うランサーに、バーサーカーは微笑みかける。

 

「ご安心を、謙信様。あなた様の武勇は、はるか昔、平安の世を生きた私の耳にも届いております。もっとも、座から得た知識ではございますが」

「これは清姫殿! そなたの伝説こそ、私が生きた戦国の世になってなお、語り継がれておりますよ」

「まあ……なんということでしょう。あまり語り継がれて嬉しい伝説でもないのですが」

 

 僅かに頬を赤らめ、表情を陰らせるバーサーカーの言葉の意図が読み取れないのか、ランサーは穏やかな笑みを浮かべたまま、小首を傾げていた。かくいう万丈にも、ふたりがなんの話をしているのかはさっぱり理解できてはいない。

 

「なんかよくわかんねーけど、ともかくお虎さんも戦兎の味方ってことでいいんだろ?」

「ええ。私はこれで、戦兎が掲げる理想を大変気に入っています。叶うならば、その行く末を見定めたい。であれば、斯様な戦場(いくさば)を、彼の者の最期とするわけにはいきませんので」

 

 変わらず笑顔のままそう言ってのけるランサーだったが、その瞳には確かな熱が灯っていた。戦場を真っ直ぐ見つめるその瞳を見たとき、万丈はランサーの言葉に嘘がないことを直感的に察した。

 万丈が雁夜やバーサーカーと出会えたように、戦兎もまた、この世界で新しい仲間と出会えていたのだ。その事実に安堵しつつ、クローズは残る最後の仲間に視線を向ける。

 戦兎のサーヴァントにして、この聖杯戦争において最も信頼するべき仲間であるキャスターは、クローズを見据え、不敵に微笑んでいた。

 

 

「うぉおぉおおあああああッ!!」

 叫びとともに、闇を纏ったビルドの拳が幾度となくダークキバへと叩き込まれる。けれども、そのうちの一撃たりとも直撃はない。すべてが正確無比なダークキバの手さばきでいなされるか、受け止められるかを繰り返していた。

 

「ふん。少しはやるかと思えば、所詮は雑種の足掻きか」

 

 ダークキバは、数歩ずつ後退はしているものの、それだけだ。ハザードフォームの攻撃は、命中さえすればいかなる装甲であろうとも無効化し、内部に直接ダメージを叩き込める。だけれども、そもそも攻撃が当たらないのでは意味がないのだ。

 幾度目かの激突ののち、戦兎はベルトのレバーを高速回転させた。

 

 『Ready Go!』

 

 次第にハザードの限界が近付いている。視界の隅に、ノイズが走り始めている。闘志を昂ぶらせ続けた戦兎の意識の糸は、己の熱で焼け、擦り切れる寸前だった。

 意識が飛ぶ前に、ここで一気にハザードレベルを跳ね上げて、ダークキバを追い詰める。

 

「セイバーッ、お前は、ここで倒す……!」

 

 『HAZARD FINISH!!』

 

 脳神経を、ハザードの強化剤が駆け巡る。

 ビルドの体を覆う闇が色濃くなり、その身を闇の霧が覆い隠す。昏く輝く闇が、ビルドの拳の威力を強制的に上げる。通常の打撃の速度を遥かに越える連打が、ダークキバ目掛けて放たれた。

 

「ぐっ……貴様、これは……!」

「うぉぉぉおおおおおあああああああッ!!」

 

 己の脳神経にひたすら負荷をかけて、ハザードレベルを際限なく跳ね上げる。それが、ハザードトリガーの能力だ。

 戦兎のハザードレベルの上昇に応じて、拳の速度が目に見えて加速する。はじめは上手くいなせていたダークキバだったが、やがてその守りを突き崩し、ビルドの連撃が押し始めた。

 ビルドの拳が、ダークキバの鎧の中央を殴り付ける。ハザードフォームの能力で闇のキバの鎧すらも透過し、ビルドは内部のセイバーへと直接攻撃を叩き込んだ。

 

「ぬ……ぐうっ」

 

 それでも、ダークキバは僅かにひるんだだけだった。

 構わず攻撃を叩き込む。キバの鎧の胸、肩、腹部を問わず、狂ったように拳を叩き付ける。一撃一撃が、ダークキバの内部のセイバーに直接ダメージを叩き込んでいるはずだが、戦兎は確かな手応えを感じられずにいた。

 やがて、ビルドの正拳突きがダークキバを突き放した。その一瞬の隙を突いて、ビルドは足にハザードより噴出する闇の輝きを纏う。必殺のライダーキックを叩き込もうとした、その瞬間だった。

 

「そこまでだ、雑種」

「――ッ」

 

 四方八方から伸びた黄金の鎖が、ビルドの四肢を絡め取っていた。

 十重二十重に雁字搦めにされたビルドは、完全に身動きを封じられ、蹴りの姿勢のまま固まった。足に纏った闇が、すう、と霧散する。

 

「この(キング)を前にして、よくもやったと褒めてやろう」

 

 ダークキバは、ビルドに殴られた箇所から漂う白煙を軽く掌で払うと、腰元の魔皇剣(ザンバットソード)を引き抜いた。振り上げられたその刀身は、僅かに差し込む月明かりを吸い込み、虹色に乱反射して煌めいている。

 

「せめてもの褒美だ。(キング)自ら、誅をくだしてやる」

 

 魔皇剣が振り下ろされるその瞬間、草木を吹き払う極熱の熱風が、嵐となって吹き付ける。さしものダークキバも一瞬動きを止めた。その刹那、空を舞う炎の龍が、ダークキバ目掛けて飛来するのを、セイバーは確認した。

 今飛び込んできたドラゴンよりも遥か上空には、背中の翼とスラスターからマグマを噴出させ、ドラゴンたちとともに空を飛ぶクローズの姿が見える。

 

「セイバァアアアッ! テメェ、さっきはよくもやってくれたなコラァッ!!」

「見苦しいな……小煩い羽虫が、ぶんぶんと喚きおって」

 

 空を舞う八頭の龍が、続け様にダークキバに襲い掛かる。最初の一頭を、頭から魔皇剣で両断する。魔皇剣の真紅のエネルギーが、クローズの放ったマグマライズドラゴンを突き抜け、形を崩したドラゴンは溶岩となってダークキバへと降りかかった。

 赤熱する溶岩が闇のキバの鎧を焦がし、周囲の足場に火が灯る。ダークキバの鎧に纏わり付いた溶岩はすぐに冷え固まったが、鎧の表面は灰褐色の煤で覆われた。それが、セイバーは気に食わなかった。

 

「雑種風情が、この闇のキバの鎧に泥を塗るか――ッ」

 

 続け様に飛来するマグマの龍を斬り払って応戦するダークキバの懐目掛けて、今度は八頭の白馬が殺到する。八頭の白馬に跨ったすべてのランサーが、それぞれ異なる武器を携えていた。

 空間に生じさせた歪から、大量の魔皇剣を射出するが、そのすべてをランサーは掻い潜り、必要に応じて打ち返し、猛進する。

 

「あっはははははははッ! 霊脈を奪われたセイバーなど、所詮はこの程度ッ! 圧倒的な知名度補正を誇るこの私との差は一目瞭然! みなのもの、怯むな! 進めェーーィ! にゃーーーーッ!!」

 

 ふざけた奇声を上げながら、ランサーは夜を昼へと塗り替えんばかりの眩い後光を纏って突撃を仕掛けてくる。

 上杉謙信の名が持つ絶大な知名度補正に加え、謙信自身が持つスキルと、霊脈を味方につけたキャスターの術式が味方しているのだろう。セイバーの遠隔射出程度では、もはやランサーには届かない。

 

「――だからなんだというのだ」

 

 ビルドにそうしたように、四方八方から天の鎖(エルキドゥ)が飛び出した。

 エルキドゥは、神性を持つサーヴァントに対しては絶大な威力を誇る鎖。軍神の名を恣にする上杉謙信もまた、その例外ではない。

 はじめ、殺到する鎖の群れを上手くかわしていたランサーだったが、やがて鎖の一本が、武器を握り締めたランサーの細腕を捉えた。鎖はそこからするするとランサーの腕を登り、容赦なくランサーの四肢を絡め取った。

 いななく白馬の首に巻き付いた鎖が、完全にランサーの進撃を封じる。同じ要領で、セイバーへと踊り掛からんとするランサーらの腕に、足に、鎖は絡みつき、鎧に守られていない柔肌に深く食い込む。

 残りのランサーもすべて捕縛してやろうと、宙を舞う鎖を加速させる。

 

「――どこを狙ってるんです?」

 

 今しがたエルキドゥで絡め取ったランサーの体が、乗り跨った白馬ごと霧散し、消え去った。一体、二体、三体。まるで溶けるように、はじめからなにもなかったように、跡形もなく消えてゆく。

 エルキドゥが捉えたのは、いずれもランサーの宝具で増えた分身だ。本体は、己の分身をすら囮にして、上手くかわし続けていたのだ。

 戦場を駆け回る残りのランサーへと鎖を伸ばす。しかし、それそのものがセイバーの意識を一点に向けるための罠だったことを、セイバーは一瞬遅れて悟る。

 空から飛来したマグマのドラゴンが、ビルドを雁字搦めにしていた鎖を真上から呑み込んだ。黄金の鎖は瞬く間に赤熱し、溶解しはじめる。寸前まで空中から生じ、ぴんと強く張られていた鎖が、だらりと弛緩し、燃え落ちてゆく。

 

「……ライダーか」

「ッラァアア!!」

 

 空から舞い降りたクローズマグマが、燃え盛る大剣を振り下ろし、ビルドを捉えていた残りの鎖をすべて断ち切った。同時に、クローズのスラスターから噴出した炎と溶岩の渦の中を泳ぐようにして飛来した蒼龍が、ビルドの体へまとわりつく。

 

「ちょぉっと、失礼しまぁーす」

 

 バーサーカーは、器用にもその上半身だけを和服の少女へと戻し、ビルドのベルトに装着されていたハザードトリガーを引き抜いた。同時に、ビルドの装甲が溶けて消えてゆく。中から現れたのは、既に意識を失い、糸の切れた人形のように項垂れ、前のめりに倒れ込む桐生戦兎だった。

 

「清姫、あとは私が!」

 

 白馬に乗って駆けつけたランサーが、意識を失い倒れ込もうとしていた戦兎の腕を乱暴に引き寄せ、強引に己の馬上に担ぎ上げた。放生月毛は一声いななくと、くるりと踵を返す。

 

「ライダー、後は任せます!」

「おう、そっちこそ、戦兎を頼んだ!」

 

 戦兎を乗せたランサーが、キャスターの待つ柳洞寺本殿へと退避してゆく。下半身だけを燃える蒼龍へと変えたバーサーカーもまた、ランサーに追随するように宙を泳ぐ。万事すべてが想定通りだった。

 クローズマグマが全力で戦うためにも、生身で戦う彼女らは先に退避するようにと、他ならぬ万丈がそう申し出たのだ。

 

「貴様ら、最初からその男を救うために……!」

 

 小賢しい雑種の群れにしてやられたことにセイバーは苛立ちを禁じ得ず、その場の全員を睥睨し、声を震わせた。

 

「たかが一介のサーヴァント如きが(キング)の手を煩わせるなどと……弁えろよ雑種! 王に対してその狼藉……刎頸(ふんけい)にも値するぞ!」

「ごちゃごちゃうッせえな、テメェはここでブッ倒す! つーかよくよく考えりゃ、テメェさえいなくなりゃあ遠坂さんも聖杯戦争から解放されんじゃねェか!」

 

 クローズが口にする言葉のあまりの浅はかさに嘆息するダークキバを尻目に、クローズマグマは燃え盛るビートクローザーを掲げ、駆け出した。

 

「うぉぉぉおおおおおおらぁああああああッ!!」

 

 構わず魔皇剣を精製し射出するが、そのいずれもがクローズマグマの燃える剣に叩き伏せられる。どうやら、霊脈の加護を失ったことで、攻撃の威力が落ちていることは確からしい。

 ダークキバは、軽く腕を掲げた。地面に描かれた光り輝くキバの紋章が、すう、と抜け出して、クローズマグマの元へと伸びてゆく。キバの紋章は、クローズマグマの背後を取ると、宙へと浮かび上がった。そのままクローズマグマを背中から磔にしてやろうとした、そのとき――

 

「洒ャア落臭ェエエエッ!!」

「なっ!?」

 

 紋章がクローズマグマを捉えるよりも早く、その背中から爆発的な勢いでマグマを噴出し、クローズは空へと飛び上がった。燃える爆炎のジェットスラスターを推進力に、轟音を唸らせ、溶岩の火柱を伴って空高く飛翔したクローズマグマが、燃える大剣を振りかざして急降下する。

 黄金の歪から無数のザンバットソードを射出するが、そのすべてがクローズの咆哮とともに叩き落された。ただ落とされるだけではすまない。クローズの剣に触れただけで、射出された魔皇剣の複製は、爆炎とともにマグマを噴出させ、やがて溶岩となって燃え落ちるのだ。

 クローズマグマが誇る熱量が、時間経過とともに跳ね上がっていることの証左だった。

 

「うぉぉおおおおおおッ!!」

「――ッ」

 

 間髪入れずに飛び込んできたクローズマグマと、ダークキバの魔皇剣がかち合う。剣の接触面から炎が吹き上がり、爆炎の竜巻が両者を襲う。仮面越しでなければ、呼吸さえままならないほどの高圧力の爆風だ。

 

「ぐっ……貴様ッ、その判断力……、よもや()()とでもいうのか!?」

「魂が燃える……! 俺のマグマが迸るッ!! もう誰にもッ、俺は止められねェエエエーーッ!!!」

 

 絶叫とともに、クローズマグマはビートクローザーを投げ捨てた。燃え盛る拳を、ただ力任せに叩きつけんと振るう。

 

「図に乗るなよ雑種ッ!」

 

 彼方から飛来した天の鎖が、クローズマグマの腕を絡め取った――かに見えた。

 実際には、クローズマグマの動きが止まったのはほんの一瞬にすぎない。天の鎖が触れた瞬間、クローズマグマの腕が爆発したのだ。爆炎とマグマが、火山の噴火さながらの勢いで溢れ出し、燃え滾る溶岩は鎖をも溶かした。

 身に降りかかるあらゆる枷を単純な剛力と圧倒的な熱量だけで無に帰しながら、クローズマグマはストレートパンチを繰り出す。

 

「うぉぉおぉおおおおぁあああああああッ!!!」

 

 砲弾のような威力を誇る拳が、ダークキバの胸部に突き刺さった。

 殴られた箇所から、太陽フレアを思わせる爆炎が噴出する。次いで、ダークキバの鎧から、およそ十メートルにも迫る極太の火柱が空へ向かって噴出する。今のクローズは、もはや荒れ狂う活火山も同然だった。

 

「おおぉぉぉおおおらぁぁぁああああああッ!!!」

 

 続く二撃目。クローズマグマの腕から噴出した大量のマグマが、その拳を覆い隠すように巨大な龍の顎門をかたどった。燃え盛る真紅の龍を巨大な手甲として拳に纏い、クローズマグマはダークキバ目掛けて渾身の一撃を叩き付ける。

 

「おおぉぉおあああああああああああああああッ!!」

「ぐ……ッ」

 

 爆裂、轟音、そして噴火。

 大気を震わせ、焦がしながら、キバの鎧から溶岩の火柱が噴出する様を見て、さしものセイバーも絶句した。続け様に振るわれる拳のラッシュをすべて己の装甲で受け止め、そのたびに燃え盛るマグマの熱に焦がされ、セイバーは歯噛みする。

 ふたりの周囲は、既にクローズマグマの体から噴出した爆炎と、その攻撃によって溢れ出したマグマによって、火の海と化していた。

 セイバーは察した。これは、必殺技でもなんでもない。ただの通常攻撃だ。なんでもない攻撃の一発一発が、マグマと同等の熱量を持っているのだ。

 

「こんな、馬鹿なことが……!」

 

 核弾頭の直撃を受けても傷一つつかないキバの鎧を、真っ向からの攻撃で突破することは不可能だ。とはいえ、最前まで見下していた雑種一匹を相手に、こうも一方的に押されているという事実が、セイバーには腹立たしかった。

 

「今の俺はッ、負ける気がしねェェエエエエエエッ!!!」

 

 『Ready Go!』

 

 咆哮とともに、クローズマグマは背中のマグマの翼から爆炎と溶岩を勢いよく吹き出して、再び空へと高く、高く飛んだ。

 地面に巨大なクレーターだけを残し、マグマそのものとなって空へと昇るクローズを、燃え盛る八岐の大蛇(マグマライズドラゴン)が追いかける。

 

「うぅぅぅぅぅぅぅぅッ、ぉおおおおおおおあああああああッ!!」

 

 頂点に達したクローズが、今まさに装甲の表面で赤熱化し、爆発とフレアの噴出を繰り返している右足を突き出し、裂帛の叫びを響かせた。

 空を舞う八頭の龍が、一斉にクローズの足元へと集まる。元々赤熱していたクローズの装甲はさらに熱く燃え滾り、背中から吹き出したマグマは炎の渦となってクローズの背を押す。もはやクローズそのものが、赤く燃えるマグマと同化していた。

 爆炎を広範囲に噴出し、もはや昼夜の区別すらつかぬほどに赤く燃える夜空を背景に、燃え盛るクローズマグマのライダーキックは、ダークキバ目掛けて急加速する。

 セイバーは、ふん、と鼻を鳴らした。

 

「――よかろう。ここまで追い縋ったその意気に免じて、貴様に我が至宝たる()()()の閃きを魅せてやる」

 

 両手で握り締めた魔皇剣を、眼前に掲げる。きらめく虹の刀身に、血のような赤の輝きが差した。虹色の煌めきは損なわず、ただその刀身を煌々と輝く赤一色に満たしてゆく。

 ダークキバは、赤色化した魔皇剣を構え、上空から迫り来る敵を見据えた。

 

()が告げるは絶滅の時刻(とき)。一瞬で()()へと送り届けてやる――!」

 

 ダークキバを中心に、膨大な魔皇力の奔流が渦を巻く。突風を孕んだ魔皇力の波濤は、クローズマグマがあちこちにばら撒いた炎の残滓を一瞬で吹き消した。

 爆発的に増加する真紅の魔皇力は、ザンバットの刀身を満たしただけでは収まらず、溢れ出した赤色光は乱反射し、周囲のあらゆる闇を払う極光と化した。

 膨大な魔皇力を内包し、既に飽和状態となったザンバットソードを振り翳し、セイバーは昂然とその名を宣言する。

 

「死して拝せよ、天地乖離す絶滅の魔皇剣(ジ・エンド・オブ・ザンバット)――!」

 

 創世の光を宿した魔皇剣が、一振りのもとに、赤く煌めく光の束を放出した。

 放たれた真紅の極光は、ダークキバを起点に爆発し、天へと昇る巨大な柱へと変わる。光の奔流は、クローズマグマを容易く呑み込んだ。なお欠けることのない絶対なる輝きは、上空でばら撒かれた爆炎も、溶岩も、一切合切の隔てなく、あらゆるものを一呑みにする。

 

 同時に、宝具の解放によって生じた余波が、ダークキバを起点に周囲のすべてを無に帰さんと吹き飛ばしてゆく。敷き詰められた石畳は一枚残らず捲れ上がり、剥き出しの地面が露出した。生い茂る木々は圧し折れ、吹き飛び、創世の輝きをもろに受けたものは、もはや存在の痕跡すら認識できぬ粉微塵となって消滅した。

 

「ライダーーーッ!!」

 

 この場に集まった誰かの絶叫がセイバーの耳朶を打つ。けれども、天を衝く極光の奔流がもたらす、大地すら軋ませる轟音を前に、ひとひとりが発する絶叫など矮小な羽虫が掻き鳴らす羽音と大差はない。

 セイバーは、微かにほくそ笑んだ。

 

「ふん。加減はしたつもりだがな……所詮はヒトが造った紛い物の鎧。我が至宝の前には霞むも道理か」

 

 やがて宇宙の法則をも揺るがす極光は収束する。ダークキバは魔皇剣を降ろした。

 光に呑まれたクローズマグマが、身に纏った装甲を消失させ、地へと堕ちてゆくのが見える。クローズマグマが纏う赤熱化した溶岩の装甲は、まさしく原初の地獄を示す大地そのもの。かつて天と地とを隔てた乖離剣の因子をも取り込んだ魔皇剣の直撃を受けて、無事で済むはずがない。それでも万丈が原型を保っていられる程度に耐えて見せたことは、セイバーにしてみれば予想外ではあるが、もはや些事だ。

 意識を失い地へと墜ちゆく万丈を、空へと舞い上がった蒼龍が迎えに行く。バーサーカーは上空で人の体を形成すると、その華奢な体で、自分よりも大きな万丈の体を抱き抱えた。

 キャスターを中心に、ランサーとバーサーカーは障壁で余波を防いでいたらしく、宝具の解放によるダメージは及んでいない。ブラッドスタークもちゃっかりと障壁の後ろに入り込んでいる様子だった。

 

「残るは雑兵のみか……さあ、どうする雑種ども。頼みの綱の仮面ライダーは二騎ともそのザマだ。望むなら、一瞬で()()させてやろう」

 

 セイバーは、ダークキバの仮面の下で冷徹に嗤った。

 一歩を踏み出す。濃密な魔力を内包したダークキバが踏み締めると、それだけで足跡は焼け、ゆらりと炎が燃え立つ。

 霊脈を奪われたところで、圧倒的な地力の差は縮まらない。セイバーの勝利は、目前だった。

 

「さて、それはどうかな、セイバー」

「なに?」

 

 もはや仮面ライダーはふたりとも戦闘不能に追い込まれたというのに、非戦闘員であるはずのキャスターはなおも不敵に微笑んでいた。ダークキバは脚を止め、キャスターを睥睨する。

 

「キャスター風情が、この我に楯突く気か」

「まだ気付かないか? 自分が、この場所へ誘い込まれたのだということに」

 

 はじめ、セイバーにはキャスターの言葉が理解できず、眉をひそめた。

 どう考えても、現状でチェックメイトに手をかけているのはセイバーの方だ。もはや有力な戦力を失った今のキャスターらに、逆転の目があるとは思えない。

 キャスターは、脚を止めたダークキバに向かい合ったまま、滔々と語り始めた。

 

「チャンスは、ほんの一度きりだった。昨日、あれだけ派手に暴れ回ったのだ……流石に遠坂も黙ってはいまい。それははじめから分かっていた」

「貴様……なにが言いたい」

「今日、ここに貴様(セイバー)が現れることは織り込み済みだったと言っているのだよ。勿論、払った犠牲も大きかったがね。マスターとライダーには無理をさせた……あとで労ってやらねばな」

 

 そこまで喋らせてなお、セイバーにはキャスターの言葉の意味が理解できなかった。当惑するセイバーの前で、キャスターは腰を屈め、地面に描いた己の陣に掌を触れる。

 

「わからないなら、お見せしよう。このキャスター、諸葛孔明が……自らの陣営すら囮に起ち上げた()()()()の輝きを」

 

 にい、とほくそ笑んだキャスターが、魔力の輝きを地面へと流し込んだ。長い黒髪がふわりと舞い上がる。キャスターが触れた箇所を起点に、眩い魔力の輝きが地面を駆け抜けていった。

 

「これは……まさかッ」

 

 一瞬遅れて、セイバーは気付いた。

 これは、召喚陣だ。キャスターは、この冬木でもっとも強い霊地であるこの場所を中心に、円蔵産全体をぐるりと取り囲むように、超巨大な召喚陣を描いていたのだ。

 

「流石に気付いたか、セイバー。貴様とその魔剣には、我らが真なる切り札を喚び込むための依代となっていただいた」

「なん……だと」

 

 ただ一瞬、このときだけをキャスターはひたすらに待ち続けていたのだ。ダークキバが己の持てる能力を発揮し、更にはその宝具すら開放し、膨大な魔力を消耗するこの瞬間を。

 冬木の地脈が一箇所に集まっている円蔵山を丸ごと舞台装置へと作り変え、アサシンによる怒涛の攻撃を掻い潜り、ダークキバの苛烈な猛攻を耐え忍び、そして、ビルドとクローズが稼いだ時間を最大限に利用して、この瞬間を虎視眈々と待ち続けていたのだ。

 それこそは、闇のキバそのものを依代として利用した、反則中の反則。キバを討つための英霊を喚ぶための術式。

 

「この闇のキバを依代として利用する、だと? 痴れ者がッ! 貴様、誰の許しを得て――ッ!」

「なにを言ったところでもう遅いッ! サーヴァント召喚の布石は打たれた。もはや誰にも止められはしない……この私自身にも」

「……ッ」

 

 不意に、セイバーの動きが止まった。ヴァイオリンの澄んだ音色が、風に乗って運ばれてゆく。

 ダークキバの仮面の下で、セイバーの目がぎょろりと見開かれた。

 

「なっ……これ、は」

 

 聴き覚えのある音色だった。

 セイバーからすべてを奪った男が奏でる音色に酷似した、忌むべき人間の音楽。歴代最強のキングと謳われたセイバーが転落するきっかけを生み出した、あの男の――。

 或いは、幻聴なのかもしれない。吹き荒れる風の音が、そういう錯覚を齎しているだけかもしれない。けれども、セイバーの直感が、この身の全神経が、生前のセイバーを()()()死に追いやった男の召喚を予感し、戦慄いている。

 

「馬鹿な……そんなことが」

 

 大気中に咲き乱れたエーテルの輝きは赤い薔薇の花弁へと姿を変え、セイバーの眼前で舞い踊る。赤い花弁吹き荒ぶエーテルの嵐のただなかで、黄金の輝きが、夜の闇を染め上げた。

 眩い極光の中、セイバーはダークキバの仮面越しに目線を伏せる。ただの光ではない。濃密な魔力を内包した、熱量を持った輝きだ。

 光が収まり、顔を上げたとき、降り積もる薔薇の花弁の中心に――セイバーは男の存在を、認めた。

 

 セイバーと同じ漆黒の装束に赤のマントを身に着けた男は、セイバーと同じように腰から虹色の煌めきを宿した魔皇剣を提げている。ただひとつ違うのは、男が提げた魔皇剣には、巨大な蝙蝠を模した黄金の鍔が取り付けられていることだ。

 男の、亜麻色の髪が風になびく。少女のように整った顔立ちをした男は、眼前の敵――セイバーを視界に捉えると、きっとその双眸を尖らせた。

 男は腰に提げたザンバットを引き抜き、地面へと突き立てた。その衝撃で、降り積もった薔薇の花弁が、一斉にぶわりと舞い上がる。

 突き刺した剣の柄に両手を軽く乗せ、男は高らかに名乗りを上げる。

 

「サーヴァント、アルターエゴ。喚び声に応じ、推参した」

 

 見知った顔だ。忘れるはずもない。

 歴代最高にして最強のキングと謳われたセイバーから、なにもかもを奪い去ったあの男の息子の顔を!

 

「貴様ッ……貴様は」

 

 舞い散る薔薇の花吹雪の中心で、男は、今しがた地面に突き刺した魔皇剣を引き抜き、その切っ先をダークキバへと突き付けた。ザンバットの刀身が、僅かな星明かりを吸収し、虹色の煌めきを乱反射させる。

 

「我が真名はネロ――皇帝ネロ・クラウディウス! この電脳世界において、星を蝕む悪意に立ち向かわんとする勇者の喚び声に応えし、至高のサーヴァント!」

 

 ネロと名乗った男は、ちらと後方を振り返った。そして、自分を見上げる三人のサーヴァントの顔を順に見渡す。それから、傷付き、意識を失った二人の青年の顔を。

 ネロはもう一度、セイバーへと向き直った。その瞳に宿る義憤の輝きは、まさしく守るべきものと倒すべきものとを正しく理解した男の闘志の発露。

 

「セイバー……いや、キング。お前はもう一度、この()が倒す」

 

 この世にたった一振りしか存在しない至高の魔皇剣。その、存在するはずのない二振り目を携えた暴君は、ダークキバと真っ向から向き合い、決然と宣言した。

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