プロローグ第一弾”武藤 遊戯”です。
フィールド表記の①~⑤の番号はフィールドの位置です。
同じ番号は縦列でつながっています。
もしフィールドなどが見づらい、こうしたほうがいいなどあったら
お知らせください。
それでは遊戯王20周年&ヴレインズ完結&ワタクシ復帰記念リハビリ作品
遊戯王 ~Crossover Dimensions~
どうぞご覧ください。
武藤 遊戯
きっかけは、何時だって”デュエルモンスターズ”。
都市が戦場になるのも、学園が異世界に飛ばされるのも、未来が破滅を迎えるのも。
きっかけは、何時だって”決闘者”。
記憶の欠片をばら撒いたのも、次元を分断したのも、文明を崩壊させようとしたのも。
引き起こしたのは”決闘者”、為そうとする力が”デュエルモンスターズ”――――
「ならばそれらは”闇”か?」
否、そうではない。そうではないはずなのだ。
なぜならそれらを防いだのも”決闘者”であり、”デュエルモンスターズ”なのだ。
「ならば”光”?」
否、そうではない――――ならばどちらなのか?
「……答えを出さなければならない」
私は”調整者”――――私は審判を下さなければならない。この”混沌”とした存在に。
「……知らなければならない」
私は知らなければならない。
”デュエルモンスターズ”を。”決闘者”を。審判を下すために――――
「……集え、最強の”決闘者”」
我が下に集え。そして示すのだ。己の存在を――――
「ふう……まさか、あんなことが起きるなんてなぁ」
とあるビルの屋上、その一角で一人の少年が手すりに手を置き、夕暮れに染まる町を見下ろしていた。燃え立つような髪が風に揺れ、首に掛かる黄金の逆四角錐――――”千年パズル”が陽光をキラリと反射する。
「十代君と遊星君、無事に元の時代に帰れたのかな……」
つい先ほどまで、目下の広場で世界の命運を掛けた”決闘”をしていた――――などと言っても誰も信じないだろう。それ程に静かで平和な時がこの町を包んでいる。
少年――――”武藤 遊戯”は夕空の下で”戦友”達を想いながら佇んでいた。
「……そうだね、彼らなら大丈夫。ボク達も帰ろうか。爺ちゃんも突然いなくなったから心配してるだろうしね」
ふと千年パズルに目を落とし呟いた後、遊戯は屋上の出口へと足を向けた――――その瞬間、頭の中に声が響く。
遊戯……武藤遊戯……
「え……誰!?」
足を止めとっさに振り向くが、誰もいない。見渡してみてもこの屋上には自分以外の存在は見当たらない。気のせいかと思って再び歩き出そうとすると、再び声が聞こえる。
光と闇……魂の器……闇の番人……名もなきファラオ……決闘王――――
幾多の闘いを越えし者……最強の”決闘者”
「ど、何処にいるんだ!? 誰なの!?」
集え、我が下に――――その”誇り高き魂”をもって、我が試練を受けよ!
「えっ……うわぁぁぁ!?」
その瞬間、辺りは光に包まれる。光が消えた時、そこに遊戯はおらず、夕暮れの中の静寂が残されているだけだった。
* * *
「う……うう……ここは……?」
眩い光を遮っていた腕を下げると、遊戯は辺りをキョロキョロと見渡す。そこは先ほどまでいた屋上ではなく、石の壁に囲まれた広い空間。窓などはなく、遊戯から少し離れた位置に通路が伸びている。照明も篝火もないのに、空間の中は明るかった。
それらを見て遊戯は最近プレイしているRPGを思い出した。
「(何だろうここ……まるで”ゲームのダンジョン”の広間みたいだ)」
明らかに異常な事態だが、遊戯は冷静に広間の探索を始める。ゲームっ子故の好奇心からか、それとも今までの冒険と闘いでこういった事態に慣れてしまっているのか、まるで臆した様子を見せない。
「ここには何もないか……危険かもしれないけど、進むしかないよね。……大丈夫、”君”もいるんだから」
通路の前で止まり一度千年パズルに触れた後、遊戯は通路の奥へと進んだ。
しばらく進むと、再び広い空間へと出る。最初の広間よりずっと広く、天井も高い。ソリッドビジョンシステムを使った決闘も楽に行えるだろう。
「うん? あれは……」
視線の先にはさらに奥へと続く通路、そして通路の前に立つ男の姿が見えた。
「待っていたぞ決闘者!」
男の姿は奇妙なものだった。顔の上部を隠す仮面にフードを被り、ガタイの良い身体を白い装束が覆っている。男は遊戯に対して一歩踏み出すと、左腕を構えて威勢よく叫んだ。
「貴様の道は二つ! 一つはこのまま引き返すか、この私と決闘することだ!」
「ま、待って! 一体どういうことなんだ? 貴方は誰なんですか!?」
「私を知らないとは……私は”ハノイの騎士”! 最強の”決闘者”だ!」
「ハノイの騎士? 最強の決闘者……?」
まったく聞き覚えの無い名前。”グールズ”や”カードプロフェッサー”のように個人ではなく組織やチーム名だろうと予想できるが、そんな名前のチームは聞いたこともない。名の知れたチームからは何度も挑戦を受けたが、あんな奇抜な恰好をした者は一人もいなかった。
「ならば教えてやろう……完璧な決闘というものを! 決闘だ!」
「(こんな訳の分からない状況で……でもやるしかないみたいだな……) ようし……!」
「「デュエル!!!」」
遊戯 LP:4000
ハノイの騎士 LP:4000
遊戯は決闘盤を展開させると、ある違和感に気づく。
「(あの人……決闘盤は?)」
ハノイの騎士と名乗る男は決闘盤を装着していなかった。本来決闘盤があるはずの左腕にはブレスレットがつけられているのみである。そして何気なく自分の決闘盤に目をやると――――
「あ、あれ!? ボクの決闘盤が!?」
そこにあるのはたしかに決闘盤。しかし微妙に形状が変わっている。モンスターゾーンとなるプレートの上部にプレートが増設され、モンスターゾーンが二つ増やされていたのである。
「(ど、どういう事なんだ? これは一体……)」
「おい! 貴様のターンからだぞ! 早くしろ!」
「あ……ボ、ボクのターン!」
遊戯がデッキからドローしようとした瞬間、決闘盤から警告音が鳴り響く。
「え!?」
『先攻プレイヤーは1ターン目にドローすることはできません』
「な、なにそれぇ!?」
遊戯が今まで行ってきた決闘では先攻プレイヤーも問題なくドローできていた。それが当たり前であり、何故決闘盤から警告を受けなければならないのか。謎の場所に送られてもさほど動揺しなかった遊戯が、豆鉄砲をくらったハトのように目を白黒させる。
「何をしている! そんなの常識だろう! 早く進めろ!」
「えぇ……し、仕方ないなぁ」
遊戯はドローを諦め、手札を眺める。
「……ボクは魔法カード《融合》を発動! 手札の《幻獣王ガゼル》と《バフォメット》を融合!」
遊戯の場に獣と悪魔が現れ、場の中心に現れた渦の中に飲み込まれる。
「融合召喚! 《有翼幻獣キマイラ》!」
遊戯は2枚のカードを墓地スロットへと送り、融合デッキからキマイラのカードを取り出し、モンスターゾーンに――――置いた瞬間、警告音が鳴り響く。
「えぇ!? 今度は何!?」
『
「なにそれぇ!? え、EX?」
聞き覚えの無いルールに、聞き覚えの無い用語。遊戯の混乱は頂点に達する。
「おいふざけているのか! 融合モンスターだろ? さっさとEXモンスターゾーンに置け!」
「だ、だからEXモンスターゾーンって……あ」
ここで遊戯は察する。増設されたモンスターゾーン――――
「ここのことか! キマイラ!」
モンスターゾーンからEXモンスターゾーンへカードを置き直すと、遊戯の場に現れていた渦の中から1体の獣が飛び出す。その獣は背中に翼を生やし、ガゼルとバフォメットの頭をもつ二首の獣であった。
有翼幻獣キマイラ 風属性 獣族 レベル6 ATK:2100
「はぁ……一体何なんだろうこのルールは……カードを1枚伏せてターンエンド」
遊戯
LP:4000
手札:1
EXモンスター
②:有翼幻獣キマイラ
④:
メインモンスター
①
②
③
④
⑤
魔法・罠
①
②
③セット
④
⑤
「私のターン!」
ハノイの騎士のターンになると、ハノイの騎士は左腕のブレスレットへと右手を近づける。するとブレスレットの上辺り、何もないところからカードが現れ、ハノイの騎士はそれをドローする。
ハノイの騎士 手札:5→6
ハノイの騎士はドローしたカードを手放すとカードが消え、目の前に6枚のカードのソリッドビジョンが現れてハノイの騎士の前に並ぶ。未知の技術を前に興味を惹かれた遊戯は感心した様子でそれを見ていた。
「(凄いな……どういう技術何だろう?)」
「……イマイチ」
ハノイの騎士は不愉快そうに呟くと、表示されているカードの一枚をタッチする。
「魔法カード《手札抹殺》! お互いに手札を全て捨て、その分だけドローする!」
今度は表示されているカード全てを押し退けるようにスライドさせて目の前から消すと、再びハノイの騎士の前に5枚のカードが表示される。
ハノイの騎士 手札:5→0→5
遊戯 手札:1→0→1
「クックック……!」
新しくなった手札を確認したハノイの騎士は突然笑い出し、表示されているカードの内2枚をタッチし、手札から取り除く。
「完璧な手札だ! これなら最初から全力でいける! 魔法カード《死者蘇生》! 墓地の《クラッキング・ドラゴン》を復活させる! 出でよ最強の僕! 《クラッキング・ドラゴン》!」
ハノイの騎士の場に現れたのは、黒い鋼鉄の装甲に覆われた機械仕掛けの巨大龍。身体のいたるところに備えられた発光体がその恐ろしい姿を浮かび上がらせる。
クラッキング・ドラゴン 闇属性 機械族 レベル8 ATK:3000
「ハッハッハッハッハ! このクラッキング・ドラゴンを従える私こそが最強決闘者だ!」
「(
遊戯はクラッキング・ドラゴンに対して身構えると、ハノイの騎士は隠れていない口元に愉悦を浮かべて更なるカードを繰り出す。
「続いて魔法カード《悪夢再び》! 墓地から守備力0の闇属性モンスター2体を手札に! そして魔法カード《
続けて現れたのはクラッキング・ドラゴンによく似た機械仕掛けの小型ドラゴン2体。クラッキング・ドラゴンと同じように発光体を光らせて遊戯を威嚇する。
ジャック・ワイバーン 闇属性 機械族 レベル4 ATK:1800
ハック・ワーム 闇属性 機械族 レベル1 ATK:400
「まだまだ行くぞぉ! ジャック・ワイバーンの効果発動! 自分の場の機械族1体とこのカードを除外し、墓地の闇属性モンスター1体を特殊召喚する! 出でよ2体目の《クラッキング・ドラゴン》!」
ジャック・ワイバーンとハック・ワームが姿を消すと、ハノイの騎士の場にクラッキング・ドラゴンがもう一体出現する。
クラッキング・ドラゴン 闇属性 機械族 レベル8 ATK:3000
「また!?」
「魔法カード《アイアンドロー》! 自分の場のモンスターが機械族効果モンスター2体のみの場合、2枚ドローできる!」
ハノイの騎士 手札:1→3
「フフフ……これで私の手札はさらに完璧となった! フィールド魔法《
指示を受けたクラッキング・ドラゴンの一体が飛び出し、キマイラに向かって青い炎のブレスを放つ。ブレスは一瞬にしてキマイラを飲み込み、余波が遊戯を襲う。
「うわぁ!? ……くっ、キマイラの効果発動! 破壊された時、墓地のバフォメットかガゼルを特殊召喚できる! 《バフォメット》を守備表示で特殊召喚!」
遊戯 LP:4000→3100
遊戯の場に翼を生やした獣のような悪魔”バフォメット”が姿を現す。
バフォメット 闇属性 悪魔族 レベル5 DEF:1800
「ならば私もフィールド魔法《鋼鉄の襲撃者》の効果発動! 1ターンに1度、自分の場の元々の種族・属性が機械族・闇属性のモンスターが、戦闘または自身の効果で場のカードを破壊した場合、
手札から機械族・闇属性1体を特殊召喚する! 来い! 3体目の《クラッキング・ドラゴン》!」
またもやハノイの騎士の場に現れるクラッキング・ドラゴン。3体並んで一斉に咆哮を上げる。
クラッキング・ドラゴン 闇属性 機械族 レベル8 ATK:3000
「そんな!? 3体目だなんて!?」
「バトルフェイズはまだ終わっていない! 2体目のクラッキング・ドラゴンでバフォメットを攻撃!」
クラッキング・ドラゴンのブレスがバフォメットを襲い、焼き尽くす。
「3体目でダイレクトアタック!」
「ま、負けないぞ! 墓地の《クリアクリボー》を除外して効果発動! デッキから1枚ドローして、そのドローしたカードがモンスターだった場合、そのモンスターを特殊召喚! そして攻撃対象をボクからそのモンスターに移し替える! ドロー!」
ドローカード
聖戦士カオス・ソルジャー
「よし! 《聖戦士カオス・ソルジャー》を特殊召喚!」
遊戯の危機に駆け付けたのは、輝く白銀の鎧を身にまとった聖戦士。伝説の戦士の名を冠する聖戦士は臆することなく剣と盾を構え、3体のドラゴンへと駆け出す。
聖戦士カオス・ソルジャー 光属性 戦士族 レベル8 ATK:3000
「(攻撃力は同じ3000! 相打ちになるけど、攻撃は止められる!) 行けカオス・ソルジャー!」
「バカめ! クラッキング・ドラゴン2体の効果発動! 相手がモンスター1体のみを召喚・特殊召喚した時、そのモンスターの攻撃力はターン終了時までそのレベル×200ダウンし、ダウンした数値分だけ相手にダメージを与える! カオス・ソルジャーのレベルは8! よって攻撃力を1600ダウン! それを2回だ! ⦅クラックフォール⦆!」
向かってくるカオス・ソルジャーに向かって攻撃を終えていたクラッキング・ドラゴン2体が衝撃波を放ち、カオス・ソルジャーを遊戯の場へと吹き飛ばす。
聖戦士カオス・ソルジャー ATK:3000→0
「カオス・ソルジャー!?」
「そして下がった攻撃力分のダメージを貴様に与える!」
カオス・ソルジャーを押し戻した衝撃波がそのまま遊戯へと襲い掛かる。
「うわぁぁぁ!?」
遊戯 LP:3100→100
「クックック……言っただろう? クラッキング・ドラゴンは最強の僕だと! クラッキング・ドラゴンの前ではどんな最上級モンスターでも弱者と化す! 終わりだ! 止めを刺せクラッキング・ドラゴン!」
倒れた遊戯と攻撃力を奪われ膝をつくカオス・ソルジャーに向かってクラッキング・ドラゴンがブレスを放つ。それに遊戯が気が付くと立ち上がり、最後の手札を墓地スロットへと送る。
「手札の《クリボー》を捨てて効果発動! この戦闘での自分へのダメージを0にする!」
『クリリー!』
遊戯の前に毛玉のような可愛らしい悪魔が飛び出し、体を膨らませてブレスを受ける。ブレスはカオス・ソルジャーとクリボーを焼き尽くしたが、遊戯に届くことはなかった。
「防いだだと!? ちっ……だがもう何もできまい! 次のターンで終わりよ! カードを伏せてターンエンド!」
ハノイの騎士
LP:4000
手札:0
EXモンスター
②:
④:
メインモンスター
①
②クラッキング・ドラゴン
③クラッキング・ドラゴン
④クラッキング・ドラゴン
⑤
魔法・罠
①
②
③セット
④
⑤
フィールド魔法
鋼鉄の襲撃者
「(完璧な手札から作り上げた完璧な陣形! クラッキングとフィールド魔法のコンボ性、クラッキング3体の制圧力もさることながら、セットカードは《禁じられた聖槍》! これであらゆる魔法・罠からクラッキングを守ることができる……死角などないのだ! さあ早くターンを終えろ決闘者。私こそが”最強の決闘者”だ)」
ほくそ笑むハノイの騎士。完全に追い詰められた遊戯は何とか身構え、デッキトップに指を掛ける。
「ボクのターン、ドロー!」
遊戯 手札:0→1
遊戯ほどのゲームタクティクスの持ち主ならば、ハノイの騎士程度の相手に後れを取ったりはしない。しかし異常な環境と異常なルール、そして未知なる決闘者とモンスターのプレッシャーによって本来の実力を出せず、ゲームコントロールを掴めずにいた。この困難を跳ね除けなければ遊戯に勝ち目は無い。
「(ボクの決闘、ボロボロだ……これで勝てるのだろうか?)」
『(”相棒”)』
突然聞こえてくる声。それは先ほどのような頭に響くような声ではなく、心の奥底から伝わってくるような、力強く頼もしい声。遊戯は反射的に千年パズルに右手を置く。
「”もう一人のボク”……」
『(レベル8、攻撃力3000のドラゴンが3体、何だか懐かしい状況じゃないか。なあ相棒?)』
その声は絶体絶命の状況に似合わない楽し気な調子で遊戯に語り掛ける。
「ホント、恐ろしい相手だよねドラゴンって……あっという間に追い詰められちゃったよ」
『(相棒、ここは俺に任せてくれないか? 相棒が繋いだゲーム、無駄にはしないぜ!)』
さっきとは打って変わって迫力のある真剣な口調の声。遊戯は頷くと、両手を千年パズルにかざし、目を閉じる。その瞬間、千年パズルから眩い光が放たれた。
「な、何だ!?」
ハノイの騎士は突然の事に驚くが、本当に驚いたのは光が収まった瞬間であった。光が収まり、その場に立っていたのは武藤遊戯。しかし明らかに雰囲気が違う。
「さあ……ゲームはここからだぜ!」
鋭い眼差しに自信に満ち溢れた表情。先程まで気弱に見えた少年は不敵に笑ってカードを繰り出す。
「魔法カード《アースクエイク》! 場のモンスターを全て守備表示に変更するぜ!」
魔法が発動すると、場全体に地響きが起こり、クラッキング・ドラゴン達は防御態勢を取る。
クラッキング・ドラゴン ATK:3000→DEF:0
クラッキング・ドラゴン ATK:3000→DEF:0
クラッキング・ドラゴン ATK:3000→DEF:0
「クラッキング・ドラゴンを守備表示に!? ……なんてな、大方守備力0ならば楽に倒せると踏んだのだろうが、残念ながらクラッキング・ドラゴンはこいつ以下のレベルのモンスターとの戦闘では破壊されんのだ! 第一貴様の手札はそれで最後! 無駄なあがきとはこのことだ!」
「慌てるなよ、まだ俺のターンは始まったばかりだぜ? 罠カード《裁きの天秤》! 相手の場のカードが自分の手札・場のカードの合計数より多い場合、自分はその差の数だけデッキからドローする! お前の場は5枚、俺の手札と場のカードはこの裁きの天秤のみ! よって4枚ドローするぜ!」
遊戯 手札:0→4
「さらに魔法カード《強欲で貪欲な壺》を発動! デッキの上からカードを10枚、裏のまま除外し、2枚ドロー!」
遊戯 手札:3→5
「て、手札を0から5枚にしただと!?」
「魔法カード《
遊戯 手札:4→6
「融合召喚をする気か? 無駄だ無駄だ! クラッキング・ドラゴンの餌食に――――」
「魔法カード《儀式の下準備》! 儀式魔法1枚とそれに名が記されている儀式モンスター1体をデッキから手札に加えるぜ! 《カオス・ソルジャー》と《カオスの儀式》を手札に!」
遊戯 手札:5→7
「融合ではなく儀式か? だから何だと言うのだ! どの道――――」
「うるさいぜ少し黙ってろ! 何時俺が融合や儀式で闘うなんて言った? 俺の目的はただ一つ……速攻魔法《リロード》! 手札を全てデッキに戻しシャッフル! 戻した枚数分だけドローする!」
遊戯 手札:6→0→6
「(ば、バカな!? 大量の手札から融合や儀式を行うチャンスだったというのに、それをフイにする手札全交換だと!? 幾ら勝ち目がないといったって……自棄になったか?)」
遊戯の意味不明な行動に仮面の上からでも動揺を隠せないハノイの騎士。そんなハノイの騎士には目もくれず、遊戯は新たな手札を手にする。
「フハハ!」
新たに手にした6枚のカードを確認すると、遊戯は愉快そうに笑った後、手札をハノイの騎士に対して突きつける。
「完璧な手札だぜ! 俺はこれを待っていた。これで全力が出せるな」
「なっ!?」
「これで俺もお前も完璧な手札。完璧同士がぶつかったらどうなるかな?」
「ほざけ! 今更遅いんだよ! 私の場は完璧だ! 何度も言うがモンスターを出せばその場でクラッキング・ドラゴンの餌食! もうお前に勝ち目などない!」
「それじゃあ試してみようぜ。どちらの完璧が勝つか……永続魔法《王家の神殿》! このカードがある限り、俺は1ターンに一度だけ罠をセットしたターンに発動できる。罠をセットし、発動! 永続罠《永遠の魂》! その効果により、手札から《ブラック・マジシャン》を特殊召喚するぜ!」
遊戯が罠を発動させると場に魔法陣が現れ、その中心から黒い装束の魔術師が杖を振り回しながら飛び出す。
「我が”最強の僕”! 《ブラック・マジシャン》!」
ブラック・マジシャン 闇属性 魔法使い族 レベル7 ATK:2500
「さ、最強の僕だと!? 何処までもこの私と張り合うつもりか!? ……いいだろう、思い知らせてやる! クラッキング・ドラゴン! 〈クラックフォール〉!」
再びクラッキング・ドラゴンが体から衝撃波を放つ。衝撃波は狂いなくブラック・マジシャンに命中する――――が、ブラック・マジシャンは意に介さず、平然と腕を組んで場に佇んでいた。
「な、何故だ!? 何故攻撃力が下がらない!?」
「永続罠《永遠の魂》が存在する限り、ブラック・マジシャンは相手の効果を受けないぜ」
無敵かと思われた能力をあっさりと突破して見せた遊戯。ハノイの騎士は悔しさを表すように歯ぎしりするが、それを何とか抑えて余裕の表情を取り戻す。所詮遊戯は”第一の壁”を突破したに過ぎないのだ。
「……予想外の事ではあったが、何てことはない! 我が僕の足元にも及ばぬ雑魚が生き残っただけだ! そんなものを残して何になる?」
「言ったはずだぜ? ブラック・マジシャンは”最強の僕”だと。……速攻魔法《非常食》! 俺の場の《王家の神殿》を墓地へ送り、LPを1000ポイント回復する!」
遊戯 LP:100→1100
「そして装備魔法《
遊戯が装備魔法を発動すると、ブラック・マジシャンの杖が槍へと変化する。
「(雀の涙程度の回復に、攻撃力も上がらない装備魔法、これは本当に自棄を起こしたな)」
にやりと勝利を確信したハノイの騎士に、遊戯は同じくにやりと不敵な笑みを返す。
「これが最後の手札! LPを1000払い、ブラック・マジシャンを対象に魔法カード《拡散する波動》を発動!」
遊戯 LP:1100→100
「拡散する……波動?」
「対象となったモンスターはこのターン、相手モンスター全てに攻撃を行う!」
「全て……全てのクラッキング・ドラゴンに攻撃するつもりか!」
防御態勢のままのクラッキング・ドラゴン達に対し、ブラック・マジシャンは槍の先に魔力を集中させて構える。
「ハッハッハ! どうやらお前はとことん話を聞かない奴らしい! クラッキング・ドラゴンは自身以下のレベルのモンスターには戦闘破壊されない! そいつはレベル7! 無駄なんだよ! そして守備表示だからダメージもない! 無駄無駄無駄ァ! アーハッハッハ!」
「黒の魔法槍は装備モンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が上回っていれば、その差分だけ相手に戦闘ダメージを与える」
「……は?」
「つまりブラック・マジシャンの攻撃はドラゴンを貫通し、全てお前へと届く! 行くぜ! ブラック・マジシャンで攻撃! 【超・魔・導・烈・貫・弾】!」
ブラック・マジシャンが魔力のチャージを終えると、その場から飛び上がり、クラッキング・ドラゴン達に向かって高速で槍を突き出す。突き出された槍の先からは無数の魔法弾が放たれ、クラッキング・ドラゴンを貫き、全てハノイの騎士へと降り注いだ。
「バカなァァァーーーー!!? うわぁぁぁーーーー!!?」
ハノイの騎士 LP:4000→1500→0
ソリッドビジョンが消え、決闘終了のアラームが鳴り響く。
魔法弾を全て受けたハノイの騎士のLPは0となり、その場に崩れ落ちて座り込んだ。遊戯は決闘盤を収めてハノイの騎士へと歩み寄る。
「完璧……完璧だったはずだ……手札も場も……なのに何故……」
「何で負けたか、教えてやろうか?」
「何……?」
「それはお前が”完璧”にこだわり過ぎていたからだ」
「何だと……!?」
ハノイの騎士がわなわなと唇を震わせて遊戯を見上げる。
「完璧なカード、完璧な戦術、お前はそれを”あのドラゴン”の中に求めて腕を磨いてきたんだろう。その一生懸命な思いは伝わってきた。だがな……本当は決闘に”完璧”なんてものはないんだぜ」
「完璧が……無いだと……?」
「正確に言えば……”完璧”なんて、常に変化している」
決闘における可能性は無限大。決闘者とカードの数だけ存在していると言っていい。組み合わせまで考えると到底数え切れるものではない。そんな可能性の中にガチガチに凝り固まった一つの”完璧”を放り込んだらどうなるか――――飲み込まれて見えなくなってしまうに決まっている。
「俺はその変化を、”決闘の流れ”を読み取り、ドラゴンを攻略するための”完璧な手札”を引き出した……デッキを信じてな」
強力な融合召喚や儀式召喚の選択肢を捨ててまで遊戯がドローを強行したのは、全てはクラッキング・ドラゴンを利用してハノイの騎士を確実に討ち取るため。相手が特定のカードに頼り切っているならば、それを制する手札さえ揃えばいいのである。ハノイの騎士が言う”完璧”を崩してしまえば後は何も残らないのだから。
遊戯の言葉を聞いた後、ハノイの騎士は俯き考える様にじっとしていたが、突然飛び跳ねて遊戯との距離を取る。
「”武藤 遊戯”、お前の勝ちだ! 敗者である私はお前に一つ”ヒント”を与える義務がある!」
「ヒント……?」
「そうだ! ……ここはお前の知る世界であり、知らない世界。知っているが知らないのだ」
「どういう意味だ?」
「この世界の決闘はあらゆる世界の決闘を”超越”しているのだよ! ……私に勝ったからと言って調子に乗るなよ? この世界の決闘者はお前のあらゆる”常識”を覆す! せいぜい足元をすくわれんようにな……」
そう言い残すと、ハノイの騎士の姿が一瞬の内に消滅する。彼は遊戯と同じ人間だったのか、それとも幻だったのか、残っているのは決闘をしたという事実のみである。
「……相棒、今は進むしかないみたいだぜ。この”一方的に仕掛けられたゲーム”の先に何が待っているか知らないが、必ず”黒幕”ってやつを見つけ出し、元の世界に戻らせてもらうぜ!」
立ち止まってはいられない。遊戯は通路の先へと歩き出す。誰が何の為に仕組んだのかは知らないが、必ずこの”ゲーム”に勝利し帰るのだ。遊戯の帰りを待つ人達のために。光の中で完結するために――――
久しぶりの執筆でしたがいかがでしたでしょうか。
遊戯の相手はハノイの騎士。デッキテーマは”クラッキング・アルティメット・ドラゴン”です。クラッキング・ドラゴンを主軸のままにパワーアップさせた脳みそ筋肉デッキです。クラッキング・ドラゴンって単体だと微妙な感じですけど複数並べると中々恐ろしいですね。
LAL知ってる人なら思ったでしょうが、これ導入まんまLALですね。ここまで似るとは書いてるときは思っていませんでした。まあそれだけ好きなゲームなんです。まあ似てるのはこれとカオスな世界観くらいで、後はまあいつもの遊戯王なはずです。