遊戯王 ~クロスオーバーディメンションズ~   作:鬼柳高原

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プロローグ第三弾”不動 遊星”です。


不動 遊星

 

 

 

あいつ等が戻ってきた時、俺達の故郷は、”チーム5D's”が救った街は、こんなに素晴らしい場所だったんだって、そう誇れるネオ童実野シティにしていくのが、俺の役目さ――――

 

 

 

 

 

 

 眠れない、眠りたくない夜。そんな深夜の公園に佇む青年――――”不動 遊星”は”ネオ童実野シティ”の夜景を眺め続ける。何だかんだあって長い付き合いとなった”牛尾 哲”が立ち去った後も、変わらずに眺め続ける。”旅立ちの朝”を迎えるその瞬間まで、仲間達がいるこの街の空気を1秒でも長く感じていたかった。

 

「(遊戯さん、十代さん、俺達はやりました……そして、これからも繋いでいきます。皆で守り抜いたこの街で――――)」

 

 

 

遊星……不動 遊星……

 

 

 

「(何……!? 誰だ?)」

 

 他に誰もいないはずの深夜の公園で、聞こえるはずのない声が遊星の頭に響く。牛尾が戻ってきたのかと辺りを見渡すが誰もいない。そもそも牛尾の声ではない。

 遊星は素早く愛車のDホイール”遊星号”に駆け寄り、決闘盤を取り出して装着、辺りを警戒する。

 

 

 

赤き竜に選ばれし者……サテライトの英雄……竜頭の継承者……揺るがなき境地――――

幾多の闘いを越えし者……最強の”決闘者”

 

 

 

「誰だ! 姿を現せ!」

 

 

 

集え、我が下に――――その”断ち切れぬ絆”をもって、我が試練を受けよ!

 

 

「!?」

 

 真夜中の公園が眩い光に包まれる。やがて光は消え、そして――――誰もいなくなった。

 

 

 

* * *

 

 

「……ここは?」

 

 気が付くと、遊星は見知らぬ建物の中に立っていた。見渡して判るのは、ここが何かしらの施設の廊下だということ。自分の決闘盤に付けた覚えのないプレートパーツが取り付けられていること。そして、自分の服装が仲間との集まりの為に着ていたカジュアルな服から何時もの服に変わっていたことだった。

 

「(何が起こっているんだ……)」

 

 動揺する遊星だが、これまでに幾度となく超常現象に遭遇してきただけありすぐに冷静さを取り戻す。辺りを警戒しながら慎重に廊下を進むと、壁が大きなガラスとなって中の様子が見える部屋にたどり着く。

 

「(これは……決闘の教育施設か?)」

 

 遊星は身を潜めつつガラス越しに中を覗くと、そこには少年少女達が大勢集まり、それぞれスペースを分け合って決闘を行っている姿が見えた。生徒達にあれこれ言いつけている大人の姿も見えるので、おそらく決闘を教わっているのだろう。

 

「(ならここは”デュエルアカデミア”か? だが前に来た時と内装が違い過ぎる。生徒達の中に見知った顔は一人もいない。それに……)」

 

 遊星の目を惹いたのは子供達が使っているカード。融合モンスターやシンクロモンスターは分かるが、EXデッキから取り出された黒いカードと青いカードは何なのか。

 

「(EXデッキから取り出されたということは儀式モンスターではない……俺の知らないカード)」

 

 決闘者故の好奇心。本来ならば抑えてこの状況の解明に努めるべき時なのだが、クールな遊星でもこれには抗えなかった。息を潜めつつ、遊星は未知なるデュエル・モンスターズの調査を始めた。

 

 

 

 * * *

 

 

 

「(成程……俺の知らないルール。エクシーズ、ペンデュラム、そしてリンク召喚)」

 

 一通り施設を周り、遊星はこの世界の”決闘”を知った。未知なるルール、未知なる召喚法。自分の知らない”決闘”がここには溢れていた。

 ふと遊星の脳裏に尊敬すべき先人”武藤 遊戯”と”遊城 十代”の顔が過った。自分が行ったシンクロ召喚に驚き興奮した二人の顔――――

 

「(俺のシンクロ召喚を見た時、二人もこんな気持ちだったんだろうか……未来の召喚法に……未来? ここは未来の世界なのか? 未来の、アカデミア……)」

 

 そう思った瞬間、遊星の顔から優しい笑みがこぼれる。

 当然だ。自分たちが救った世界の未来には、こんなにも進化した決闘がある。そして、それを子供達が当たり前のように学んでいる――――こんなに嬉しいことはない。

 

「(ゾーン、アポリア、パラドックス……ブルーノ。お前達にも見えるか? 見て欲しかった。この未来を――――)」

「あら? 見学の方ですか?」

 

 声に反応して振り向くと、何時の間にか後ろに見知らぬ女性が立っていた。優しそうな雰囲気の女性である。おそらく教師の一人だろうと考え、遊星はペコリと軽く頭を下げた。

 

「すいません、迷い込んでしまって……」

「あらあら、うふふ! ”アカデミア”は広いですものね」

 

 可愛らしく笑う女性。胸元についているネームプレートには”鮎川”と書かれていた。そして彼女の言葉によりここが”デュエルアカデミア”であることが確定する。

 

「あ、もしかして貴方が”教頭先生”の言っていた決闘者かしら?」

「え?」

「ほらほらもう時間がないわよ! ”実演決闘”が始まっちゃうわ! 急ぎましょう!」

 

 鮎川先生は遊星の腕を掴むとぐいぐいと引っ張って速足で歩きだす。裏を感じられず、相手が女性だということもあって無理に振り払うことができない遊星。引かれるままに何処かへと連れていかれてしまった。

 

 

 

 * * *

 

 

 

「ここは……決闘場か」

 

 遊星が連れてこられて立たされたのは広い決闘場。巨大なドームの中に作られた決闘場であり、周りは大人数を収容できる観客席に囲まれ、席にはアカデミアの生徒達が隙間なく座り、決闘が始まるのを静かに待っていた。

 しばらくすると教師の一人が決闘場の中心へと進みでる。

 

「これより、外部から招いた決闘者と、実技担当最高責任者である”クロノス・デ・メディチ”教頭とのエキシビションデュエルを行う!」

 

 この瞬間、静かだった観客席がわっと沸き立つ。その歓声の中、宣言した教師と入れ替わって一人のイタリア人決闘者が決闘場へと上がる。一目見たら忘れられない強烈な個性の塊のような男で、大きな決闘盤をギターのように抱えて構えている。そして開いた口から出た声もまた強烈だった。

 

「ボンジョォォォルゥノッ! セニョール決闘者! ワタクシは”クロノス・デ・メディチ”! 学園では実技最高責任者にして教頭をやってルーノデス!」

「(やはりハイトマンではないか……しかし”クロノス”……どこかで聞いた覚えがある)」

 

 聞き覚えのある名前を探そうと記憶を探る遊星。それを遮るように個性的すぎる声が降りかかる。

 

「コラッ! ちゃんート挨拶返すノーネ! 社会人のジョーシキナノーネ!」

「あ、はい……不動 遊星です」

「お仕事ォーは? マサーカその年齢で”社会的ドロップアウトボーイ”ダナーンテ言わないデショー?」

「仕事は……”モーメント開発”の開発主任を。それと街の人に頼まれて機械修理をすることもあります」

「ホホォー! よく分からないけード、立派なお仕事してるみたいナノーネ! デモ……デュエルの実力はどうナノーネ?」

「誰にも負けません」

 

 遊星が即答すると、クロノスはホホホッ、と愉快そうに笑う。

 

「その意気やヨーシィ! デ~モ、”井の中の蛙”って事もあるノーネ! ゲロゲーロ!」

 

 クロノスが専用決闘盤”デュエル・コート”を構えると、遊星も決闘盤を展開させて構える。

 

「世界の広さを教えてあげマース!」

「(クロノス……思い出した!)」

 

 

「「 デュエル!!! 」」

 

 

「先攻は譲ってあげるノーネ!」

「俺のターン! 俺は魔法カード《ワン・フォー・ワン》を発動! 手札からモンスター1体を墓地へ送り、手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する! デッキから《チューニング・サポーター》を特殊召喚!」

 

 墓地へ送ったカード

 チューニング・サポーター

 

 遊星の場に中華鍋を被った小さなロボットが現れる。

 

 チューニング・サポーター 光属性 機械族 レベル1 ATK:100

 

「(未知のルールに、俺のデッキは通用するか……勝負だ!)チューナーモンスター《ジャンク・シンクロン》を召喚!」

 

 続けて現れたのはジャンクパーツを体に纏った小さな戦士。遊星をここまでずっと支えてきたチューナーモンスター、ジャンク・シンクロンである。

 

 ジャンク・シンクロン 闇属性 戦士族 レベル3 ATK:1300

 

「ジャンク・シンクロンの効果発動! 墓地のレベル2以下のモンスター1体の効果を無効にし、守備表示で特殊召喚する! 墓地に送ったもう1体の《チューニング・サポーター》を特殊召喚!」

 

 ジャンク・シンクロンが隣に手をかざすと、そこに2体目のチューニング・サポーターが現れる。

 

 チューニング・サポーター 光属性 機械族 レベル1 DEF:300

 

「チューニング・サポーターはS素材とする場合、レベル2として扱うことができる! レベル2、レベル1の《チューニング・サポーター》にレベル3《ジャンク・シンクロン》をチューニング!」

 

 ジャンク・シンクロンが背負ったエンジンを起動させると、自身を3つの光輪へと変える。そしてチューニング・サポーター達を光輪で囲み、3つの光、そして光の柱へと変化させる。

 

「疾風の使者に鋼の願いが集う時、その願いは鉄壁の盾となる! 光差す道となれ! シンクロ召喚! 現れよ《ジャンク・ガードナー》!」

 

 光の柱の中から現れたのは、要塞のような姿をした鉄壁の戦士。両手の大盾を地面に打ち付け、クロノスに対して構える。

 

 ジャンク・ガードナー 地属性 戦士族 レベル6 DEF:2600

 

「素材となったチューニング・サポーター2体の効果により2枚ドロー!」

 

 遊星 手札:2→4

 

「カードを2枚セット! ターンエンド!」

 

遊星

LP:4000

手札:2

EXモンスター

②:ジャンク・ガードナー DEF:2600

④:

メインモンスター

魔法・罠

②セット

③セット

 

 

「ワタクシのターン!」

 

 クロノス 手札:5→6

 

「フフン! カードを伏せ、フィールド魔法《歯車街(ギア・タウン)》! そしーテ永続魔法《古代の機械要塞(アンティーク・ギアフォートレス)》発動! ……魔法カード《古代の機械射出機(アンティークギア・ギアカタパルト)》発動! ワタクシの場にモンスターが存在しなーイ場合、自分の表側表示カード1枚を破壊し、デッキから”アンティーク・ギア”1体を召喚条件を無視して特殊召喚するノーネ! 《古代の機械要塞》をハカーイし、デッキから《古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)》を特殊召喚!」

 

 クロノスの場が歯車で構成された街と機械仕掛けの要塞に変わると、要塞の中から1体の機械巨人が要塞を破壊しながら現れる。

 

 古代の機械巨人 地属性 機械族 レベル8 ATK:3000

 

「これコーソガ、我が”暗黒の中世”デッキのエースモンスター”古代の機械巨人”ナノーネ! ……ンン?」

 

 クロノスが誇らしげに胸を反らせ、機械巨人が威圧的に見下ろすも、遊星は顔色一つ変えずに身構えている。それが面白くなかったのか、クロノスは不満げに鼻を鳴らした。

 

「フン! ちょっとは驚いたらどうナノーネ! 可愛くないノーネ! こうなったら”アンティーク・ギア”の力を思い知らせてやるノーネ!」

「(”古代の機械巨人”の力はよく知っている。そしてクロノス、アンタのこともな)」

 

 遊星は思い出す。あれはWRGP開催前、仲間である十六夜アキ、龍亜、龍可に誘われて行ったアカデミアの学園祭でのことだった――――

 

 

 * * *

 

 

「遊星ー! 早く早く! 面白い出し物がいっぱいあるんだよー!」

「龍亜! 走らないのー! 危ないでしょ!」

 

 はしゃぐ龍亜を龍可が叱りながら追いかけ、その後ろを遊星とアキが並んで歩く。

 

「龍亜ったら、遊星が遊びに来てくれたのがよっぽど嬉しかったのね。 ……遊星、よかったの? 忙しかったんじゃない?」

「たまには息抜きしてこいとゾラやクロウに言われてしまってな。ブルーノにも作業効率が落ちていることを指摘された。ちょうど良かったんだ。今日1日は楽しんでいくつもりさ」

「ふふ、よかった……ねえ遊星、こうして4人で歩いているとなんだか私達……”家族”みたいね」

 

 アキがわずかに顔を赤らめて遊星を見ると、遊星は反対方向の壁に掛けられている写真を見上げて立ち止まっていた。

 

「アキ、これはハイトマンの写真か? ハイトマン以外の写真も飾ってあるようだが……」

「……ハァ」

 

 落胆と不機嫌を隠さないアキのため息。まさかこの場にいない上にいけ好かないハイトマンに遊星の興味を奪われるとは思わなかった。

 ハイトマンとはデュエル・アカデミアネオ童実野校の教頭で、伝説のレアカードにして代々の教頭に受け継がれるビンテージ・モンスター”古代の機械巨人”の使い手。遊星は以前にこのハイトマンと決闘し、3体の古代の機械巨人に追い詰められたことがある。最後はアカデミア生の絆の力によって逆転し、ハイトマンの”外れかけた頭のネジ”を見事に締めなおした。

 

「……そうよ、ここは歴代の教頭先生の写真が飾ってあるの。一番新しいのがハイトマン先生のね」

「随分人数が多いように見える。ここの歴史はそんなに深くないと聞いていたが」

「ああ、ここは割と最近に本校から分かれてできた学園だから、大半は本校の教頭先生の写真らしいわ」

「もー遅いよ遊星!」

 

 遊星とアキが写真を見上げていると、先行していた龍亜と龍可がやってくる。二人が写真を見上げていることに気づくと、龍亜が笑いながら写真の1枚を指さす。飾られている写真の中でも古い1枚だった。

 

「教頭先生の写真? 俺はこの人が一番好きかな! 面白い顔ー!」

「龍亜! 失礼なこと言わないの!」

 

 龍亜の指差す写真を遊星も見上げる。そこには確かに面白い顔をした外国人男性の顔が写っており、下に”2代目教頭 クロノス・デ・メディチ”と書かれていた。

 

「クロノス・デ・メディチ。歴代教頭の中でも最も優秀な教頭先生だったらしいわ。ハイトマン教頭の”アンティーク・ギア”も、元々はこの人のカードらしいの」

「そうなのか?」

「って、ハイトマン教頭が特別授業で熱弁してたわ。ハイトマン教頭はこの人の教え子だったらしくて、凄く尊敬してるのが感じられたわね。生涯の目標とも言ってたわ」

 

 余程の熱量だったのか、アキは苦笑いを浮かべて肩をすくめる。

 

「あの自信家のハイトマンがそこまで……」

「ハイトマン教頭ほどではないけど、彼を尊敬している先生は多いらしいわ。教師の理想像みたいな人なんじゃないかしら。 ……ふふ、そんな先生なら、一度会って教えてもらいたいものね」

 

 

 * * *

 

 

「(――――目の前のこの男がその”クロノス”なら、間違いなく最強の”アンティーク・ギア”使い! 面白くなってきた! ……だが)」

 

 楽しみと同時に、一つの大きな謎が生まれてしまった。それは遊星の確信を崩す、大きな問題――――

 

「(クロノスは俺がいる世界の”過去の人間”……つまり、ここは過去ということになるが……それならこのルールとカードは一体?)」

「破壊シータ《古代の機械要塞》の効果発動! 手札・墓地から”アンティーク・ギア”1体を特殊召喚するノーネ! 手札から《古代の機械飛竜(アンティーク・ギアワイバーン)》を特殊召喚!」

 

 クロノスの場に機械仕掛けの飛竜が現れ、ジャンク・ガードナーに対して威嚇する。

 

 古代の機械飛竜 地属性 機械族 レベル4 ATK:1700

 

「古代の機械飛竜の効果発動! 召喚・特殊召喚に成功した場合、デッキから”アンティーク・ギア”カード1枚を手札に加えるーノ! デッキから《古代の機械巨人-アルティメット・パウンド》を手札ーニ!」

 

 クロノス 手札:1→2

 

「歯車街が存在する場合、”アンティーク・ギア”を生贄召喚する場合のリリースを1体少なくできるノーネ! 飛竜をリリース! レベル8の《古代の機械巨人-アルティメット・パウンド》を召喚!」

 

 古代の機械飛竜が光の中へと姿を消すと、その光の中から古代の機械巨人が姿を現す。先ほどの機械巨人と同じ姿だが、こちらの方が幾らか動きが機敏なように見える。

 

 古代の機械巨人-アルティメット・パウンド 地属性 機械族 レベル8 ATK:3000

 

「速攻魔法《ダブル・サイクロン》発動! 自分と相手ーノ魔法・罠を1枚ずつ破壊するノーネ! 《歯車街》とセニョール遊星の伏せカードを破壊するノーネ! ヴーラヴラヴラヴラ!」

 

 場に二つの竜巻が吹き荒れ、歯車街と遊星の伏せカードを吹き飛ばす。

 

「歯車街が破壊され墓地に送られた時、手札・デッキ・墓地から”アンティーク・ギア”1体を特殊召喚するノーネ! デッキから《古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)》を特殊召喚!」

 

 竜巻により吹き飛ばされる歯車街。その残骸が集まって形となり、機械飛竜よりも遥かに巨大な1体の機械竜となる。 

 

 古代の機械熱核竜 地属性 機械族 レベル9 ATK:3000

 

「破壊されたカードは罠カード《リミッター・ブレイク》! このカードが墓地へ送られた場合、手札・デッキ・墓地から《スピード・ウォリアー》を特殊召喚する!」

 

 吹き荒れる風の中、一人の強化アーマーを纏った戦士が飛び交う残骸の間を駆け抜け、遊星の場に現れる。ジャンク・シンクロンと共に遊星を支えてきた戦士”スピード・ウォリアー”である。

 

 スピード・ウォリアー 風属性 戦士族 レベル2 DEF:400

 

「オホホホホ! なんて可愛らしいモンスターデショウ! 残念ナガーラ、ワタクシのアンティーク・ギアで一捻りにしてあげるーノ! バトル!」

「この瞬間、ジャンク・ガードナーの効果発動! 1ターンに1度、相手モンスター1体の表示形式を変更する! 《古代の機械熱核竜》を守備表示に変更!」

 

 ジャンク・ガードナーが両手の盾を構えながら機械熱核竜に衝撃破を放つと、それを受けた機械熱核竜はジャンク・ガードナーと同じように防御の体勢を取ってしまう。

 

 古代の機械熱核竜 ATK:3000→DEF:3000

 

「マンマミーアッ!?」

「悪いが得体の知れないモンスターは封じさせてもらう。機械巨人の方が相手にしやすいんでね」

「ヌウ~! 知ったような口を利くんじゃないノーネ! アンティーク・ギアの恐ろしさを特別授業してあげるーノ! 古代の機械巨人-アルティメット・パウンドでジャンク・ガードナーを攻撃! その名のトーリ【アルティメット・パウンド】!」

 

 古代の機械巨人-アルティメット・パウンドがジャンク・ガードナーに向かって拳を放つと、ジャンク・ガードナーはそれを盾で受け止める――――が、盾は無残にも変形し、ジャンク・ガードナーは弾き飛ばされて爆散する。

 

「機械巨人の十八番! 貫通ダメージを受けるノーネ!」

「ぐっ! ジャンク・ガードナーの効果発動! 場から墓地へ送られた場合、モンスター1体の表示形式を変更する! 《古代の機械巨人》を守備表示に変更!」

 

 遊星 LP:4000→3600

 

 ジャンク・ガードナーが消えた瞬間、控えていた機械巨人が突然膝を付き、防御体勢を取る。

 

 古代の機械巨人 ATK:3000→DEF:3000

 

「……最上級アンティーク・ギア3体の攻撃を最小限に抑えてしまうなんーテ、セニョール、只の決闘者ではアーリマセンーネ?」

「アンティーク・ギアは経験済みなんでね。ここまでは予測できていた。……だが、アンタの決闘はまだまだこんなものじゃないんだろう? 教頭先生」

 

 不敵に笑う遊星の挑発に、クロノスは嬉しそうに頷く。

 

「……よろしいデショウ! セニョールを”生徒”のつもりで相手をしていましたーガ、ここからは一人の”決闘者”として本気でお相手するノーネ! ターンエンド!」

 

 

クロノス

LP:4000

手札:0

EXモンスター

②:

④:

メインモンスター

②古代の機械巨人-アルティメット・パウンド ATK:3000

③古代の機械巨人 DEF:3000

④古代の機械熱核竜 DEF:3000

魔法・罠

③セット

 

 

「俺のターン!」

 

 遊星 手札:2→3

 

「罠カード《ロスト・スター・ディセント》! 自分の墓地のSモンスター1体の守備力を0にし、レベルを1つ下げ、効果を無効にして特殊召喚する! 《ジャンク・ガードナー》を特殊召喚!」

 

 遊星の場に再びジャンク・ガードナーが現れるが、まるで抜け殻のように微動だにせず、固まったまま動かない。

 

 ジャンク・ガードナー 地属性 戦士族 レベル6→5 DEF:2600→0

 

「チューナーモンスター《ニトロ・シンクロン》を召喚!」

 

 続けて遊星の場にガスボンベに手足が生えたような姿をしたロボットが現れる。

 

 ニトロ・シンクロン 炎属性 機械族 レベル2 ATK:300

 

「レベル5となった《ジャンク・ガードナー》にレベル2《ニトロ・シンクロン》をチューニング!」

 

 ニトロ・シンクロンが頭部のメーターを振り切らせると、自身を2つの光輪へと変えジャンク・ガードナーを囲み、5つの光、そして光の柱へと変える。

 

「集いし思いが、ここに新たな力となる! 光差す道となれ! シンクロ召喚! 燃え上がれ《ニトロ・ウォリアー》!」

 

 光の柱の中から現れたのは、厳つい悪魔のような姿をした戦士。緑色の体を震わせ、雄叫びを上げる。

 

 ニトロ・ウォリアー 炎属性 戦士族 レベル7 ATK:2800

 

「ニトロ・シンクロンがニトロ・ウォリアーのS素材として墓地へ送られた場合、1枚ドローする!」

 

 遊星 手札:2→3

 

「戦士族のスピード・ウォリアーをリリースし、手札の《ターレット・ウォリアー》を特殊召喚!」

 

 スピード・ウォリアーが光の中へと消えると、その光の中から人の形をした旋回砲塔が現れる。

 

 ターレット・ウォリアー 地属性 戦士族 レベル5 ATK:1200→2100

 

「ターレット・ウォリアーの攻撃力は特殊召喚の為にリリースした戦士族の元々の攻撃力分アップする! 魔法カード《フォース》! 場のモンスター2体を選択し、1体の攻撃力を半分の数値に、もう1体の攻撃力をその数値分アップする! 《古代の機械巨人》の攻撃力を半分の数値にし、《ターレット・ウォリアー》の攻撃力をその数値分アップする!」

 

 古代の機械巨人 ATK:3000→1500

 ターレット・ウォリアー ATK:2100→3600

 

「なんでスート!?」

「クロノス教頭、俺は最初から本気だ! バトル! ニトロ・ウォリアーで古代の機械巨人-アルティメット・パウンドを攻撃! 自分のターンに自分が魔法カードを発動した場合、ニトロ・ウォリアーの攻撃力はそのターンのダメージ計算時のみ1度だけ1000ポイントアップする!」

 

 ニトロ・ウォリアー ATK:2800→3800

 

「砕け! 【ダイナマイト・ナックル】!」

 

 ニトロ・ウォリアーが両拳を突き出して機械巨人へと突進すると、拳からあふれ出たオーラが巨大な拳となり、機械巨人を殴り飛ばして粉砕する。

 

「ワ、ワタクシの古代の機械巨人ガッ!?」

 

 クロノス LP:4000→3200

 

「ニトロ・ウォリアーの効果発動! このカードの攻撃によって相手モンスターを破壊したダメージ計算後、相手の表側守備表示モンスター1体を選択して攻撃表示にし、1度だけそのモンスターに続けて攻撃できる! 《古代の機械巨人》を攻撃表示にし、攻撃する!」

「何ですトォー!? くっ! 古代の機械巨人-アルティメット・パウンドの効果発動! 場のこのカードが戦闘・効果で破壊された場合、デッキから《融合》1枚を手札に加え、自分の墓地からこのカード以外の”アンティーク・ギア”モンスター1体を選んで手札に加えるノーネ! 墓地から《古代の機械飛竜》を手札ーニ!」

 

 クロノス  手札:0→2

 

「〈ダイナマイト・インパクト〉!」

 

 ニトロ・ウォリアーが古代の機械巨人に向かって光線を放つと、機械巨人はゆっくりと立ち上がって構える。

 

 古代の機械巨人 DEF:3000→ATK:1500

 

「【ダイナマイト・ナックル】!」

「【アルティメット・パウンド】!」

 

 ニトロ・ウォリアーと機械巨人が互いの拳を衝突させる。暫く押し合った後、機械巨人の拳に亀裂が入り、粉々に粉砕された。

 

「グ、グヌウ……!」

 

 クロノス LP:3200→1900

 

「ターレット・ウォリアーで古代の機械熱核竜を攻撃! 【リボルビング・ショット】!」

 

 ターレット・ウォリアーが機銃から弾丸を連射し、機械熱核竜を撃ち抜いて撃墜する。

 

「ア、アンティーク・ギアが全滅してしまったノーネ……」

「カードをセットし、ターンエンド!」

 

 

遊星

LP:3600

手札:0

EXモンスター

②:ニトロ・ウォリアー ATK:2800

④:

メインモンスター

③ターレット・ウォリアー ATK:3600→2100

魔法・罠

③セット

 

「ワタクシのターン!」

 

 クロノス 手札:2→3

 

「魔法カード《古代の整備場(アンティーク・ギアガレージ)》発動! 墓地から”アンティーク・ギア”モンスター1体を手札に加えるノーネ! 《古代の機械巨人》を手札に戻すノーネ! 《古代の機械飛竜》を召喚! 効果でデッキから2体目の《古代の機械巨人》を手札ーニ!」

 

 クロノスの場に再び機械飛竜が現れる。

 

 古代の機械飛竜 地属性 機械族 レベル4 ATK:1700

 

 クロノス:2→3

 

「”アンティーク・ギア”がホコール、奥の手中の奥のーテ! 生徒相手には決して見せない切り札、お見せするノーネ! 魔法カード《融合》! 手札の《古代の機械巨人》2体と場の《古代の機械飛竜》を融合!」

 

 クロノスの場の空間が歪み渦が現れると、その中に3体のアンティーク・ギアが吸い込まれる。

 

「現れるノーネ! 《古代の機械超巨人(アンティーク・ギア・メガトン・ゴーレム)》!」

 

 渦の中から現れたのは、腕が6本、脚が4脚備わった古代の機械巨人。赤いアイセンサーを光らせ、体中から蒸気を噴出させる。

 

 古代の機械超巨人 地属性 機械族 レベル9 ATK:3300

 

「アンティーク・ギアの融合モンスター……!?」

「バトル! 古代の機械超巨人でニトロ・ウォリアーを攻撃ナノーネ!」

 

 機械超巨人が6つの拳を連続で繰り出すと、ニトロ・ウォリアーは防ぎ切ることができずに殴り飛ばされて破壊されてしまう。

 

「ニトロ・ウォリアー!?」

 

 遊星 LP:3600→3100

 

「古代の機械超巨人は融合素材とした”古代の機械巨人”モンスターが2体以上の場合、その数だけ攻撃できるノーネ!」

 

 ニトロ・ウォリアーを葬った後、今度はターレット・ウォリアーへと拳を繰り出し、これも殴り飛ばして破壊する。

 

「ぐうっ!? ターレット・ウォリアー……」

 

 遊星 LP:3100→1900

 

「ターンエンド! さあ、アナタにこのアンティーク・ギアを倒すことができるノーネ?」

 

クロノス

LP:1900

手札:0

EXモンスター

②:

④:古代の機械超巨人 ATK:3300

メインモンスター

魔法・罠

③セット

 

 

「倒して見せるさ。今度は俺の番だ! 俺のターン!」

 

 遊星 手札:0→1

 

「永続罠《エンジェル・リフト》! 墓地からレベル2以下のモンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する! 《チューニング・サポーター》を特殊召喚! そしてチューナーモンスター《ジェット・シンクロン》を通常召喚!」

 

 遊星の場にチューニング・サポーターと、ジェットエンジンに手足と顔を付けたようなロボットが現れる。

 

 チューニング・サポーター 光属性 機械族 レベル1 ATK:100

 ジェット・シンクロン 炎属性 機械族 レベル1 ATK:500

 

「レベル1《チューニング・サポーター》に、レベル1《ジェット・シンクロン》をチューニング!」

 

 ジェット・シンクロンが自身を光輪へと変え、チューニング・サポーターを囲み、1つの光、そして光の柱へと変える。

 

「集いし願いが、新たな速度の地平へ誘う。光差す道となれ!」

 

 光の柱の中から頭部と手足が付いたレーシングカーが飛び出す。これこそが遊星を新たなる境地へと導く”駆け抜ける閃光”――――

 

「希望の力、シンクロチューナー! 《フォーミュラ・シンクロン》!」

 

 フォーミュラ・シンクロン 光属性 機械族 レベル2 ATK:200

 

「ジェット・シンクロンの効果発動! S素材として墓地へ送られた場合、デッキから”ジャンク”モンスター1体を手札に加える! 《ジャンク・ジャイアント》を手札に! そしてフォーミュラ・シンクロンのシンクロ召喚に成功した時、デッキから1枚ドローできる! チューニング・サポーターと合わせて2枚ドロー!」

 

 遊星 手札:0→1→2→3

 

「ムフフン! 召喚権を使ってまでのドロー……いいカードは来たノーネ?」

 

 逆転しようと必死なのだろうと思い、クロノスは愉悦の笑みで尋ねる。遊星はそれに不敵の笑みで返した。

 

「……俺の決闘はここから加速する! 魔法カード《死者蘇生》! もう一度《チューニング・サポーター》を墓地から特殊召喚! そして速攻魔法《地獄の暴走召喚》! 相手の場に表側モンスターが存在し、自分が攻撃力1500以下のモンスター1体の特殊召喚に成功した時、デッキ・墓地から特殊召喚したモンスターの同名のモンスターを可能な限り攻撃表示で特殊召喚する!」

 

 遊星の場にチューニング・サポーター3体が雪崩込み、わちゃわちゃと暴れだす。

 

 チューニング・サポーター×3 光属性 機械族 レベル1 ATK:100

 

「ウヌヌ……地獄の暴走召喚は相手にもモンスターの特殊召喚をさせるカードナノーネ……しかし」

 

 古代の機械超巨人は融合モンスター。デッキには存在せず、2体目以降はまだ特殊召喚されていない。よってクロノスは暴走召喚の恩恵を受けることができない。

 

「レベル1《チューニング・サポーター》2体とレベル2として扱う《チューニング・サポーター》に、レベル2《フォーミュラ・シンクロン》をチューニング!」

 

 フォーミュラ・シンクロンが自身を2つの光輪へと変えると、チューニング・サポーター達を囲み、4つの光、そして光の柱へと変える。

 

「星空を焦がす聖槍よ、魂を放ち世界を醒ませ! シンクロ召喚! 《スターダスト・アサルト・ウォリアー》!」

 

 光の柱から現れたのは、両手にドライバーのような槍を装備した白い戦士。プラスとマイナスの双槍を打ち合わせ、勇ましく構える。

 

 スターダスト・アサルト・ウォリアー 風属性 戦士族 レベル6 ATK:2100

 

「スターダスト・アサルト・ウォリアーの効果発動! S召喚に成功した時、自分の場に他のモンスターが存在しない場合、自分の墓地の”ジャンク”モンスター1体を特殊召喚する! 甦れ《ジャンク・ガードナー》!」

 

 遊星の場に再びジャンク・ガードナーが現れ、防御の体勢で構える。

 

 ジャンク・ガードナー 地属性 戦士族 レベル6 DEF:2600

 

「S素材となったチューニング・サポーターの効果により3枚ドロー!」

 

 遊星 手札:1→2→3→4

 

「魔法カード《シンクロキャンセル》! スターダスト・アサルト・ウォリアーをEXデッキに戻し、素材一組を墓地から特殊召喚!」

 

 遊星の場からスターダスト・アサルト・ウォリアーが消滅すると、再びフォーミュラ・シンクロンとチューニング・サポーター達が現れる。

 

 フォーミュラ・シンクロン 光属性 機械族 レベル2 ATK:200

 チューニング・サポーター×3 光属性 機械族 レベル1 ATK:100

 

「もう1度、同じ組み合わせでチューニング!」

 

 同じ組み合わせで、再び光の柱が現れる。しかし、中から現れたのはスターダスト・アサルト・ウォリアーではなかった。

 

「星雨を束ねし聖翼よ、魂を風に乗せ世界を巡れ! シンクロ召喚! 《スターダスト・チャージ・ウォリアー》!」

 

 現れたのは鋼鉄の翼を身に着けた戦士。スターダスト・アサルト・ウォリアーに似たその戦士は翼を展開し、機械超巨人に対して構える。

 

 スターダスト・チャージ・ウォリアー 風属性 戦士族 レベル6 ATK:2000

 

「スターダスト・チャージ・ウォリアーの効果発動! S召喚に成功した時、1枚ドローする! チューニング・サポーターと合わせて4枚ドロー!」

 

 遊星 手札:3→4→5→6→7

 

「な、何回ドローするつもりナノーネ! ずるいノーネ!」

「いや、これで十分だ! 相手の場にレベル5以上のモンスターが存在する場合、《ジャンク・ジャイアント》を手札から特殊召喚できる!」

 

 遊星の場に大きな球体に手足とドリルを付けたような姿をしたロボットが現れる。

 

 ジャンク・ジャイアント 地属性 機械族 レベル6 ATK:2000

 

「魔法カード《精神同調波》! 自分の場にSモンスターが存在する場合、相手モンスター1体を破壊する! 放てジャンク・ガードナー!」

 

 遊星が指示すると、ジャンク・ガードナーは体から波動を機械超巨人に向かって放つ。その波動を受けた機械超巨人はバラバラになって崩れ落ちる。

 

「言ったはずナノーネ、このカードは我がアンティーク・ギアの切り札! 破壊した位で乗り越えられる壁ではないノーネ! 古代の機械超巨人の効果発動! 融合召喚したこのカードが相手の効果で場から離れた場合、EXデッキから《古代の機械究極巨人》1体を召喚条件を無視して特殊召喚するノーネ! 出でよ真の切り札! 《古代の機械究極巨人》!」

 

 崩れ落ちた残骸の山を蹴散らし、新たなる機械巨人が姿を現す。その姿は半人半馬”ケンタウロス”を模していて、左手にはクローを装備し、右手には遊星も苦しめられてきた鉄拳が健在している。古代の機械超巨人はアンティーク・ギア融合モンスターの”先兵”であり、どうやら本命はこちらの巨人であるようだ。

 

 古代の機械究極巨人 地属性 機械族 レベル10 ATK:4400

 

「残念だったノーネ!」

「……いや、解っていたさ。アンタほどの決闘者なら、次の手を即座に繰り出してくることくらいはな」

「ンン?」

「俺はその上を行く! ジャンク・ガードナーの効果発動! 古代の機械究極巨人を守備表示に変更!」

 

 ジャンク・ガードナーが放った波動により究極巨人は強制的に防御の体勢を取らされる。

 

 古代の機械究極巨人 ATK:4400→3400

 

「守備表示? それでもセニョールのモンスターでは……」

「魔法カード《一騎加勢》! スターダスト・チャージ・ウォリアーの攻撃力をターン終了時まで1500アップする!」

 

 スターダスト・チャージ・ウォリアー ATK:2000→3500

 

「なんート!?」

「これで究極巨人を上回った! バトル! スターダスト・チャージ・ウォリアーで古代の機械究極巨人を攻撃! 【流星乱射(シューティング・クラッシャー)】!」

 

 スターダスト・チャージ・ウォリアーが流星のような光弾を乱射し、究極巨人を撃ち貫く。全身を穴だらけにされた究極巨人はガラガラと崩れ落ち、機械超巨人と同様にジャンクの山を築く。

 

「グウゥ!? まだナノーネ! 古代の機械究極巨人の効果発動! 破壊された場合、自分の墓地の《古代の機械巨人》を召喚条件を無視して特殊召喚するノーネ!」

 

 ジャンクの山を掻き分け、今度は機械巨人が姿を現す。

 

 古代の機械巨人 地属性 機械族 レベル8 DEF:3000

 

「スターダスト・チャージ・ウォリアーは特殊召喚された相手のモンスター全てに攻撃ができる! 続けて攻撃!」

 

 星屑戦士の無慈悲な一撃。復活したばかりの機械巨人は先の2体と同じようにジャンクの山の一部となってしまった。

 

「マンマミーア……!?」

「トドメだ! ジャンク・ジャイアントでダイレクト・アタック!」

「ンイィ~!!! 罠カード《カウンター・ゲート》! 相手の直接攻撃宣言時、その攻撃を無効とし、1枚ドローするノーネ!」

 

 クロノス 手札:0→1

 

 ジャンク・ジャイアントがクロノスを押しつぶそうと動き出すが、罠の発動により動きを止め、遊星の場とどまる。

 

「攻め切れなかったか……」

 

 悔し気に拳を握る遊星。遊星の猛攻を凌いだクロノスであったが、切り札を破られた今、精神的ダメージは大きい。

 

「(セニョール遊星……何というデュエルタクティクス!? 融合アンティーク・ギアの戦術を完璧に読み切り、ワタクシの喉元に手を伸ばしてくるトーハ……セニョール遊星の”試練”の相手、どうやらワタクシでは力不足だったノーネ……ならバ!)」

「カードを4枚セットし、ターンエンド!」

 

 

遊星

LP:1900

手札:0

EXモンスター

②:スターダスト・チャージ・ウォリアー ATK:3500→2000

④:

メインモンスター

②ジャンク・ジャイアント ATK:2000

③ジャンク・ガードナー DEF:2600

魔法・罠

①セット

②セット

③セット

④セット

 

 

「……ワタクシのターン!」

 

 クロノス 手札:1→2

 

「セニョール遊星! ちょっと失礼するノーネ!」

 

 そう言うとクロノスは懐からリモコンスイッチを取り出し、スイッチを押す。すると突然決闘場がせり上がり、天井へと向かう。

 

「何だ!? 何をするんだ!」

 

 驚いたのは遊星だけではなく、観客の生徒や教師達も何事かとざわめく。どうやらこれは完全にクロノス独断の行動らしい。やがて決闘場が天井に近づくと天井が開き、決闘の場は屋上へと移された。ここにいるのはクロノスと遊星だけである。

 

「申し訳アリマセーン。ここからの決闘を生徒に見せるわけにはいかないノーネ」

 

 クロノスの謝罪を聞きながら遊星は辺りを見渡す。屋上から見える景色は森に囲まれ、さらにその森を海が360度囲んでいる。どうやらアカデミアが存在するこの場所は絶海の孤島らしい。

 

「(ネオ童実野シティですらなかったのか……本当にここは何処なんだ?)」

「セニョール遊星、特別授業をしてあげマスーノ」

「何?」

「アナタにとって”機械族”モンスターとは、どのようなモンスターナノーネ?」

「俺にとって?」

「アナタなりの答えで構いませンーノ。機械族とはどんなカードナノーネ?」

 

 クロノスの問いの意味は理解できていないが、遊星は真剣に考える。自分が使っているカード達、今まで戦ってきたライバルや強敵達との決闘を思い出しながら答えを探す。

 

「……機械族は、爆発的なパワーを持ち、それでいて柔軟に戦うことができる。非常にバランスのいい種族。だが、それ故に弱点もはっきりしている」

「ホウ、それーハ?」

「強力である故に、決闘者の力量がハッキリと現れてしまうことだ。決闘者の力量が足りなければ、強力な力に振り回されるだけ。逆にカードを理解し、己の持てる力を十分に注いでやれば、これほど頼りになるカードはないだろう」 

「デハ、アナタは機械族は使い方を理解すれば誰でも扱える強いカード、と言いたいノーネ?」

「それは違う。 ……俺が今まで出会ってきた使い手達は皆、何かしらの強い”覚悟”を持っていた」

 

 妹を守るため戦い、シグナーにまでに覚醒した少年。

 故郷と家族の仇を撃つため、ダークシグナーにまで身を堕とした男。

 絶望の未来を変える為に自らを兵器と化した男達――――遊星が出会った機械族の使い手は皆、形は違えど自らが信じるものの為に戦っていた。その”信念と覚悟”がカードに現れていた。その姿は今でも遊星の心の奥底に刻み込まれている。

 

「”機械族”とは、人の”心”を強く反映する種族! ……俺はそう思う」

「……機械なのに”心”とは、恐れ入ったノーネ」

 

 クロノスは静かに笑った後、遊星に拍手を送る。

 

「ヨロシイ! 合格ナノーネ! 機械とは、人の叡智で創り出したモノ。そこには人の善意や悪意、あらゆる感情が宿っているノーネ! だからこそ機械は人の生活を助ける”パートナー”でもあれば、人からあらゆるものを無慈悲に奪い取る”悪魔”にもなりまスーノ!」

 

 クロノスの言葉が遊星の心に響き渡る。この言葉がありえたかもしれない”破滅の未来”そのものを現していたからだ。

 

「セニョール遊星は”サイバー流”をご存知ナノーネ?」  

「聞いたことはある。機械族の代表的な流派だと」

「そのトーリ。強大なパワーで迎撃し、対戦相手の力を最大限まで引き出してお互いを高め合う、リスペクト精神溢れる素晴らしき流派。我がアカデミア校長”マスター鮫島”が師範を務める機械族使いの最高峰ナノーネ! しかし――――」

 

 クロノスは表情を曇らせて俯く。

 

「そんな輝かしいサイバー流にも”裏”が存在するノーネ。ただひたすら勝利だけを求め、自分や相手が傷付くのも厭わない、”暴力”そのものが……そして、それはワタクシのアンティーク・ギアにも存在するノーネ!」

「何だって……!?」

「ワタクシのデッキを”暗黒の中世”と呼ぶのも、そのカードの存在があるからナノーネ。 ……鮫島校長もワタクシも、その”暴力”が悪意ある者に渡らぬように封印し、守ってきまシータ。しかし、ワタクシはそれではいけないと思うノーネ!」

 

 クロノスはカッと目を見開き拳を握る。少々不気味な表情となってしまっているが、昔志していたという”熱血教師”の片鱗が垣間見えた。

 

「決闘とは本来、青少年に”希望と光”を与えるモノでアーリ、決して”恐怖と闇”をもたらすモノではないノーネ!」

 

 その言葉に遊星は力強く頷く。ゼロ・リバースで家族を失い、サテライトでの貧しい生活を強いられて来た少年少女達。そんな子供達に”希望と光”を与えたのが”デュエル・モンスターズ”だったのだから。

 

「闇は決して光を凌駕できナイ! それを証明しなければならないノーネ! セニョール遊星、ワタクシの上を行くアナタならそれができるノーネ! それがアナタの”試練”ナノーネ!」

「俺の試練……」

「セニョール遊星、これから現れる”アンティーク・ギアの闇”に必ず打ち勝つこと。 ……ワタクシと約束してくだサーイ」

「……ああ、任せてくれ! 俺は必ず勝つ! アンタに”光”を示して見せる!」

「ヨロシイ! ……それでは行くノーネ! 魔法カード《オーバーロード・フュージョン》! 自分の場・墓地から機械族・闇属性の融合モンスターによって決められた融合素材を除外し、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚するノーネ! 墓地の”アンティーク・ギア”4体を除外!」

 

 除外したカード

 古代の機械巨人

 古代の機械超巨人

 古代の機械究極巨人

 古代の機械熱核竜

 

「融合召喚! この世の全てを形なき混沌に帰す忌まわしき破壊神! 《古代の機械混沌巨人(アンティーク・ギア・カオス・ジャイアント)》!」

 

 クロノスの場に現れたのは、これまでのアンティーク・ギアが玩具に見えるほどの巨体をもった機械巨人。その黒い巨体から放たれる異質な雰囲気は、明らかに今までのアンティーク・ギアのものではなかった。

 

 古代の機械混沌巨人 闇属性 機械族 レベル10 ATK:4500

 

「これが……アンティーク・ギアの闇!?」

「バトル! 混沌巨人でスターダスト・チャージ・ウォリアーを攻撃! 【クラッシュ・オブ・ダークネス】!」

 

 遊星が混沌巨人の異様さに呆然としていると、混沌巨人がスターダスト・チャージ・ウォリアーに向かって獣の頭のような形をした手を伸ばす。

 

「ジャンク・ガードナーの効果で混沌巨人を守備表示に変更!」

 

 ジャンク・ガードナーに向かって指示するが、ジャンク・ガードナーは恐怖のせいかまったく動けないでいた。

 

「ジャンク・ガードナー!?」

「混沌巨人が存在する限り、相手はバトルフェイズ中にモンスター効果は発動できないノーネ!」

「くっ! ならば罠カード《重力解除》! 場の全てのモンスターの表示形式を変更する!」

 

 遊星が発動した罠により遊星のモンスター達は全て表示形式が変わるが、混沌巨人の動きは止まらない。混沌巨人の手がスターダスト・チャージ・ウォリアーを掴む。

 

 スターダスト・チャージ・ウォリアー ATK:2000→DEF:1300

 ジャンク・ガードナー DEF:2600→ATK:1400

 ジャンク・ジャイアント ATK:2000→DEF:2400

 

「混沌巨人は魔法・罠の効果を受けないノーネ! そして混沌巨人も貫通ダメージを与えることができるノーネ!」

「何っ!? ……罠カード《ガード・ブロック》! 戦闘ダメージを0にする!」

 

 混沌巨人はスターダスト・チャージ・ウォリアーを場外へと投げつけ、遥か下の地面へと叩きつけて破壊する。

 

「その後、デッキから1枚ドローする!」

 

 遊星 手札:0→1

 

「まだ終わりじゃないノーネ! 混沌巨人は相手モンスター全てに1回ずつ攻撃が可能ナノーネ! ジャンク・ガードナーを攻撃!」

 

 混沌巨人はジャンク・ガードナーに向かって獣頭の手を向けると、獣の口にエネルギーを集中させる。

 

「罠カード《パワー・ウォール》! 相手モンスターの攻撃によって自分が戦闘ダメージを受けるダメージ計算時、その戦闘で発生する自分への戦闘ダメージが0になるよう500ダメージにつき1枚、自分のデッキの上からカードを墓地へ送る! この戦闘で受けるダメージは3100! よって7枚のカードを墓地へ!」

 

 墓地へ送られたカード

 サルベージ・ウォリアー

 ロード・シンクロン

 マックス・ウォリアー

 スターダスト・ファントム

 スキル・サクセサー

 ターボ・シンクロン

 ネクロ・ディフェンダー

 

 遊星が罠を発動した瞬間、混沌巨人の手から光線が放たれジャンク・ガードナーを一撃で消し飛ばす。

 

「ジャンク・ジャイアントを攻撃!」

「罠カード《スピリット・フォース》! ダメージを0にし、墓地の守備力1500以下の戦士族チューナー1体を手札に加える! 《ジャンク・シンクロン》を手札に!」

 

 遊星 手札:1→2

 

 混沌巨人が腕を突き出し、ジャンク・ジャイアントを押しつぶす。

 

「よくかわしたノーネ。ですーガ、何時までも凌げるほどこのカードは甘くないノーネ! カードを伏せてターンエンド!」

 

クロノス

LP:1900

手札:0

EXモンスター

②:

④:古代の機械混沌巨人 ATK:4500

メインモンスター

魔法・罠

③セット

 

 

「(奇襲的に現れ、効果を受けず、全体攻撃を行い、攻撃力4500からの貫通能力……成程、クロノス教頭が”暴力”と呼ぶわけだ) 俺のターン!」

 

 遊星 手札:2→3

 

「チューナーモンスター《ジャンク・シンクロン》を召喚! 効果で墓地から《チューニング・サポーター》を特殊召喚!」

 

 遊星の場にジャンク・シンクロンとチューニング・サポーターが現れる。

 

 ジャンク・シンクロン 闇属性 戦士族 レベル3 ATK:1300

 チューニング・サポーター 光属性 機械族 レベル1 DEF:300

 

「自分の場に”ジャンク”モンスターが存在する場合、このカードを手札から特殊召喚できる! 来い《ジャンク・サーバント》!」

 

 続けて遊星の場にジャンクパーツのアーマーを纏った小柄な戦士が現れる。

 

 ジャンク・サーバント 地属性 戦士族 レベル4 ATK:1500

 

「レベル4《ジャンク・サーバント》とレベル1《チューニング・サポーター》に、レベル3《ジャンク・シンクロン》をチューニング!」

 

 ジャンク・シンクロンが自身を3つの光輪へと変えると、2体のモンスターを囲み、5つの光、そして光の柱へと変える。

 

「集いし闘志が、怒号の魔神を呼び覚ます! 光差す道となれ! シンクロ召喚! 粉砕せよ《ジャンク・デストロイヤー》!」

 

 光の柱の中から現れたのは、4つの腕を持つ黒鉄の魔神。混沌巨人にも怯まずに怒声を上げて構える。

 

 ジャンク・デストロイヤー 地属性 戦士族 レベル8 ATK:2600

 

「ジャンク・デストロイヤーの効果発動! S召喚に成功した時、このカードのS素材としたチューナー以外のモンスターの数まで場のカードを選択して破壊できる! 素材の数は2体、よって《古代の機械混沌巨人》とセットカードを破壊する! 〈タイダル・エナジー〉!」

 

 遊星が指示すると、ジャンク・デストロイヤーはエネルギー弾をクロノスの場に向かって2発放つ。

 

「バトルフェイズでなければモンスター効果が通る! くらえ!」

「甘いと言っているノーネ! 速攻魔法《禁じられた聖杯》発動! ターン終了時までジャンク・デストロイヤーの攻撃力を400アップし、効果を無効にするノーネ!」

 

 タイダル・エナジーが混沌巨人の目の前まで迫るが、クロノスが発動した魔法により直前で消滅してしまう。

 

 ジャンク・デストロイヤー ATK:2600→3000

 

「混沌巨人の唯一の隙と言っていいバトルフェイズ外のモンスター効果。そこを的確に突いてきたことは褒めてあげまショウ。 しかーし! それはワタクシも解り切っていることナノーネ! そんな浅い発想ではダメナノーネ! やり直ーシ!」

「くっ……これも駄目か……チューニング・サポーターの効果で1枚ドロー!」

 

 遊星 手札:1→2

 

「墓地の《ネクロ・ディフェンダー》の効果発動! 墓地に存在するこのカードをゲームから除外し、

自分の場に存在するモンスター1体を選択! 次の相手のエンドフェイズ時まで選択したモンスターは戦闘で破壊されず、選択したモンスターの戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になる! 対象は《ジャンク・デストロイヤー》! これでターンエンド!」

 

遊星

LP:1900

手札:2

EXモンスター

②:ジャンク・デストロイヤー ATK:3000→2600

④:(古代の機械混沌巨人 ATK:4500)

メインモンスター

魔法・罠

 

 

「ワタクシのターン!」

 

 クロノス 手札:0→1

 

「魔法カード《強欲で貪欲な壺》発動! デッキトップからカードを裏側のまま10枚除外し、2枚ドロー!」

 

 クロノス 手札:0→2

 

「《古代の機械砲台(アンティーク・ギアキャノン)》を召喚!」

 

 クロノスの場に機体から歯車を剥きだした砲台が現れる。

 

 古代の機械砲台 地属性 機械族 レベル2 ATK:500

 

「魔法カード《アイアンドロー》発動! 自分の場に機械族効果モンスターが2体のみの場合、カードを2枚ドローするノーネ! その代わり、このターンは特殊召喚をあと1回しか行えないノーネ」

 

 クロノス 手札:0→2

 

「魔法カード《機械複製術》発動! 自分の場の攻撃力500以下の機械族1体を対象に、デッキからその同名モンスターを2体まで特殊召喚するノーネ! デッキから《古代の機械砲台》2体を特殊召喚! 2体だけど、これは”1回”ナノーネ!」

 

 クロノスの場に機械砲台が2台追加され、3台が並ぶ。

 

 古代の機械砲台×2 地属性 機械族 レベル2 ATK:500

 

「古代の機械砲台の効果発動! リリースすることで相手に500ポイントのダメージを与えるノーネ! 3体全てリリース!」

 

 クロノスが号令を掛けると、機械砲台全てが遊星に向かって砲撃を放つ。放った後、砲台全てが消滅した。

 

「うわぁぁぁーーーー!?」

 

 遊星 LP:1900→400

 

「魔法カード《古代の機械整備場》! 《古代の機械砲台》を手札に加えるノーネ!」

 

 クロノス 手札:0→1

 

「ワタクシの攻撃を封じたつもりのようデスガ、こんなこともできるノーネ。これで次のターン、アナタにトドメを刺せるノーネ。 ……セニョール遊星、アナタの試練はこの混沌巨人を倒すことデスーガ、このワタクシも同時に相手していることを忘れてはならないノーネ! ターンエンド!」

 

 

クロノス

LP:1900

手札:1

EXモンスター

②:(ジャンク・デストロイヤー ATK:2600)

④:古代の機械混沌巨人 ATK:4500

メインモンスター

魔法・罠

 

「くっ……(追い詰められたか……俺の今の手札では混沌巨人も、クロノス教頭も倒すことはできない! 全てはこのドローに……俺はデッキを信じる!)」

 

 窮地など何度も超えてきた。その度にデッキを信じて打ち勝ってきた。今度も同じ、恐れは無い。勝つのだ。ここまで共に戦ってきてくれたモンスター達の為に。そして、敵ながら遊星を信じ、ここまで導いてくれたクロノスの為に――――

 

「俺の……ターン!!!」

 

 遊星 手札:2→3

 

 引いたカードが視界に入った途端、遊星の中で”光差す道”が駆け抜ける。道は遊星の手札、ドローカード、場のカード、墓地のカード、EXデッキのカードを次々と繋げ、最後のカードに辿り着き、閃光を放つ――――

 

 

「……魔法カード《死者転生》! 手札を1枚捨て、自分の墓地のモンスター1体を手札に加える! 《サルベージ・ウォリアー》を手札に!」

 

 捨てたカード

 くず鉄の像

 

「《くず鉄の像》の効果発動! このカードが墓地へ送られた場合、自分の墓地の”ジャンク”モンスター1体を守備表示で特殊召喚する! 甦れ《ジャンク・ガードナー》!」

 

 遊星の場に三度現れるジャンク・ガードナー。遊星の希望が伝わっているからなのか、恐怖に打ち勝ち、混沌巨人に対して構える。

 

 ジャンク・ガードナー 地属性 戦士族 レベル6 DEF:2600

 

「ジャンク・デストロイヤーをリリース! 《サルベージ・ウォリアー》をアドバンス召喚!」

 

 ジャンク・デストロイヤーが光の中へと消えると、その光の中からフック付きの鎖を持った青い巨漢が現れる。

 

 サルベージ・ウォリアー 水属性 戦士族 レベル5 ATK:1900

 

「サルベージ・ウォリアーの効果発動! アドバンス召喚に成功した時、手札・墓地のチューナー1体を特殊召喚できる! 墓地から《ジャンク・シンクロン》を特殊召喚!」

 

 サルベージ・ウォリアーが空間の間に鎖を投げ入れすぐに引き上げる。すると鎖のフックにジャンク・シンクロンが引っかかっており、フックを外して場に降り立つ。

 

 ジャンク・シンクロン 闇属性 戦士族 レベル3 ATK:1300

 

「レベル5《サルベージ・ウォリアー》に、レベル3《ジャンク・シンクロン》をチューニング!」

 

 ジャンク・シンクロンが自身を3つの光輪へと変え、サルベージ・ウォリアーを囲み、5つの光、そして光の柱へと変える。

 

「集いし願いが、新たに輝く星となる! 光差す道となれ!」

 

 光の柱の中から現れたのは、白銀に輝く白き竜。大きな翼を広げると星屑の光が風と共に舞う。これこそが不動遊星のエースにして絆の象徴――――

 

「シンクロ召喚! 飛翔せよ《スターダスト・ドラゴン》!」

 

 スターダスト・ドラゴン 風属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:2500

 

「ホウ……美しいモンスターデスーネ! しかーし、それでは混沌巨人を倒せないノーネ」

「いや、これで俺の場は整った! ジャンク・ガードナーの効果発動! 混沌巨人を守備表示に変更する!」

 

 ジャンク・ガードナーが波動を放ち、混沌巨人を防御体勢へと変える。

 

 古代の機械混沌巨人 ATK:4500→DEF:3000

 

「それでもその攻撃力デーハ……」

「バトル! スターダスト・ドラゴンで混沌巨人を攻撃!」

 

 スターダスト・ドラゴンは上空へと飛翔し、混沌巨人の頭上を取った後、ブレス攻撃の構えを取る。

 

「墓地から罠カード《スキル・サクセサー》の効果発動! このカードを除外することで自分のモンスター1体の攻撃力を800ポイントアップする! 響け! 【シューティング・ソニック】!」

 

 スターダスト・ドラゴン ATK:2500→3300

 

 遊星の掛け声と同時に、スターダスト・ドラゴンが音波のブレスを放ち、古代の機械混沌巨人をバラバラに吹き飛ばす。

 

「オオ……忌まわしき混沌巨人ガ……!」

「クロノス教頭……これが俺の最後の答えだ! 速攻魔法《瞬間融合》! 俺の場の《スターダスト・ドラゴン》と《ジャンク・ガードナー》を融合!」

 

 遊星の場の空間が歪み渦となると、その中にスターダスト・ドラゴンとジャンク・ガードナーが吸い込まれる。

 

「融合召喚! 暗黒の中世を貫く光の矢! 《波動竜騎士 ドラゴエクィテス》!」

 

 渦の中から現れたのは大きなジャベリンを手にしたドラゴンの騎士。新たな脅威に立ち向かうため遊星が導き出した”進化への結論”の一つ。シンクロ同士の融合モンスター”波動竜騎士 ドラゴエクィテス”である。

 

 波動竜騎士 ドラゴエクィテス 風属性 ドラゴン族 レベル10 ATK:3200

 

「……よくできましタ、セニョール遊星。合格ナノーネ」

「ドラゴエクィテスでダイレクトアタック! 【スパイラル・ジャベリン】!」

 

 ドラゴエクィテスがクロノスに向かってジャベリンを投擲すると、ジャベリンはクロノスの足元に突き刺さり、その衝撃でクロノスは後方へと吹き飛ばされる。

 

「ヌオッ!? ゴルゴンゾーラチィィィーズ!!?」

 

 クロノス LP:1900→0

 

 思いのほか威力が強く、このままでは場外まで吹き飛ばされてしまいそうな勢いで飛ぶクロノス。幸い吹き飛ばされた方向にポールが立っていたため、それに引っかかって無事に屋上へと降り立つことができた。

 

「し、死ぬかと思ったノーネ……」

「大丈夫ですか!?」

 

 クロノスが一息つくと、決闘盤を収めた遊星が急いで駆け寄ってくる。

 

「ダイジョーブ、こんなの掠り傷ナノーネ。……それよりも、やってくれましたノーネ。よくぞ闇に打ち勝ちまシタ。これを受けとりなサイ」

 

 クロノスは懐からカードパックを取り出すと、それを遊星に差し出す。

 

「これは……リンクモンスターのパック!?」

「この”世界”のルールでは闘い辛いでショウ? それでデッキを強化し、戦術の幅を広げるノーネ。 ワタクシとの約束を守ったのと、”試練”を乗り越えたことへのご褒美ナノーネ!」

 

 遊星はクロノスからカードパックを受け取り、それを懐へと収める。

 

「有難く使わせてもらいます。 ……ところで、さっきから”試練”とは一体なんの事なんですか? どうやらここは俺がいた場所とは違う世界。俺は何のためにここへ呼ばれたのか……知ってることを教えてください」

「ノン。それをワタクシから伝えることはできないノーネ。デスガ、心配しなくてもアナタが止まらずに進み続けれーバ、おのずと答えは見えてくるデショウ!……さて、あれはアナタのモノナノーネ?」

 

 クロノスが指差した方へ向くと、そこには遊星のDホイール”遊星号”が置かれていた。

 

「俺のDホイール! 何故こんなところに……」

 

 遊星は遊星号に駆け寄り状態を調べる。ここに来る前と変化はない。何時でも走れる状態である。更に遊星号の前には屋上から地上、そして地上から海の果てまで伸びる1本の道が現れていた。

 

「さあ、行くノーネセニョール遊星! この道を行けば別のエリアへと辿り着きマス。そこでもきっとアナタのことを待っている者がいるはずナノーネ!」

「……分かりました。俺は行きます。 ……そうだ、クロノス教頭」

 

 遊星号に跨り、ヘルメットをかぶろうとした遊星はふと動きを止め、クロノスへと顔を向ける。

 

「学生である俺の仲間が言っていました。貴方から1度教えを受けてみたいと。俺もそう思いました」

「ウン?」

「俺にも”学生時代”なんてものがあったら、貴方に教わってみたかった」

「な、生意気言うんじゃないノーネ! おだててもこれ以上パックは出さないノーネ! ホレさっさと行くノーネ! シッシッ!」

「ハハハ! ……ありがとう!」

 

 遊星は爽やかにそう言うとヘルメットをかぶり、遊星号を走らせる。赤く輝くDホイールはあっという間に地上へと駆け下り、水平線の彼方へと消えていった。クロノスはそれを見送ると、静かに笑った。

 

「フフ……セニョール遊星、ガンバルノーネ」




遊星のお相手は皆大好きクロノス先生。

デッキテーマは”最新鋭アンティーク・ギア 暗黒の中世の意味”です。
アクファで悪者になったアンティーク・ギアを見て、私はすぐにクロノス先生のデッキ名を思い出しました。その後に思い出したのが裏サイバー流。そこから繋がってできた妄想が今回の話です。まあアニメでの意味はきっと邪神像で召喚したからなだけでしょうが。

遊戯、十代の相手が割と初期の性格なのに対し、今回のクロノス先生は原作終盤のキャラでした。そっちのほうが好きなので。

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