遊戯王 ~クロスオーバーディメンションズ~   作:鬼柳高原

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プロローグ第四弾”九十九 遊馬”です。


九十九 遊馬

 

 

 

 

 

かっとビング!

それは勇気を持って一歩踏み出すこと! 

それは、どんなピンチでも決して諦めないこと!

それはッ! あらゆる困難にチャレンジすることッ!

忘れねぇ……お前のこと……絶対に忘れねぇッ!!!

アストラル……アストラルーーーーー!!!

 

 

 

 

誰でも、良い心と悪い心が戦っている。

だが、そこから逃げ出さなければ、誰とでも解り合える。

遊馬、私は闘い続ける。

誰もが解り合える日が来るまで――――

これが私の、かっとビングだァーーーーー!!!

 

 

 

 

 

 

「さあ、取り戻しに行くんでしょ? ”一番大事なもの”を?」

「おう! 待ってろよアストラル! 行くぜ皆ー!」

 

 

かっとビングだァーーーーーーー!!!

 

 

 一日の終わりを告げる夕暮れ時。少年”九十九 遊馬”は仲間達と共にアストラル世界を目指して茜色の空を飛んでいた。

 傷付くことばかりであった。傷付いて、泣いて、何度も打ちのめされた。でも、遊馬はその度にまた立ち上がれた。立ち上がって、闘って、最後に取り戻した。掛け替えのない仲間を、日常を、笑顔を――――そしてまた闘いへと赴く。”一番大事なもの”の為に――――

 

「オレェーーーーーーーー!!!」

 

 

遊馬……九十九 遊馬……

 

 

「ん? 小鳥なんか言った?」

「え? 何も言ってないけど?」

 

 遊馬は隣で手を繋いでいる少女”観月 小鳥”に訊ねるが、小鳥は首を横に振る。

 

 

かっとビング……希望の創造者……カオスをもたらす者……救世主ZEXAL――――

幾多の闘いを越えし者……最強の”決闘者”

 

 

「や、やっぱり聞こえる!? 誰だ!? まさか……アストラル!?」

 

 

集え、我が下に――――その”折れない精神”をもって、我が試練を受けよ!

 

 

「うわぁ!?」

 

 突如視界を覆う眩い光。遊馬は驚きと混乱の中で、思わず叫ぶ――――

 

「ア、アストラルーーーー!!!」

 

 叫びが途絶えると同時に、光も収まる。遊馬の仲間達は何事かと戻った視界の中を見渡すが、そこに遊馬の姿はなかった。

 先ほどまでは確かにあった幼馴染の手の感触を逃がさぬように、小鳥は掌を合わせて握り締める。

 

「遊馬……どこ行っちゃったの……遊馬ぁーーーーーーー!!!」

 

 

 

 * * *

 

 

 

「う、ううん……アストラルゥ……はっ! ここは!?」

 

 気を失っていた遊馬。目覚めるとそこは何かの施設の中。薄暗い廊下の真ん中に寝ころんでいたようで、前にも後ろにも終着点の見えない薄暗い廊下が続いている。

 

「ど、何処だよここ!? 何か気味悪ぃ~……」

 

 遊馬は戸惑いながら、ゆっくりと廊下を進む。暫く進むと大きな空間に出る。薄暗いことには変わりないが、空間の中心に大きな舞台のようなものがあることが確認できる。

 

「何だぁここ……?」

「待っていたよ、”DEATH-T”の新しい挑戦者」

 

 この瞬間、空間がライトアップされる。舞台の正体は旧式の決闘リング。決闘リングとは決闘盤の前身であり、まだソリッド・ビジョン・システムが小型化される前に作られたものである。決闘リングの前には学生服を着た一人の少年が立っていた。

 

「え? 挑戦者? いや、オレは別にそんなんじゃ……」

「何だ? ここまで来て怖気ついたのかい? ま、仕方ないかな。この僕が作り上げたゲームだ」

「こ、怖くなんかねぇやい! それに挑戦からは絶対に逃げない! それがオレの”かっとビング”だ! ……それにしても、お前誰だよ?」 

 

 遊馬が小首をかしげて訊ねると、少年は遊馬を小馬鹿にするように笑う。

 

「何だ? 君、僕のこと知らないのか? とんだ素人が来たものだ。ハッハッハ!」

「な、何だと!? 誰が素人だ! オレはWDCって大会で優勝……」

 

 優勝したと言いそうになった瞬間、遊馬は口をつぐんだ。

 

「(……優勝できたのは、”あいつ”と一緒だったからだ)」

「何だって? そんな大会聞いたこともない。大方小さな町の町内決闘大会だろう?」

「ちげーよ! お前こそ、何かの大会に出たことあんのかよ?」

「フフフ……僕はね、デュエルモンスターズの全国大会で優勝する程の腕なのさ。ま、君とはレベルが違うっていうか……」

「な、何だよさっきから嫌味ばかり言いやがって! 本当にお前誰なんだよ!?」

 

 遊馬がそう言うと、少年はライトに照らされた位置へと進み出る。これによりその顔がハッキリと視認できるようになった。

 

「僕の名前は”海馬 瀬人”。|DMVRS《デュエルモンスターズ・バーチャル・リアリティ・システム》の開発者にして、デュエルモンスターズのエキスパートだ」

 

 海馬 瀬人――――整った顔立ちだが、その目は陰に覆われ、内面の”闇”が浮き出しているように見える。

 

「さあ、もう一度聞くぞ? 君は僕のゲーム”DEATH-T”の最終ステージを受けるか、受けないか?」

「(正直、こんなことしてる場合じゃねぇ。だけど、ここで引いたらオレの”かっとビング”が嘘になる!) 受けてやる! 勝負だ海馬!」

 

 遊馬はDパットを取り出し、腕に装着して展開させる。

 

「決闘盤、セット! ……って、あれ? こんな形だったっけ?」

 

 展開したDパッドのモンスターゾーンが明らかに多い。これに遊馬は首をかしげる。

 

「……まあいいか! Dゲイザー、セット!」

 

 ARビジョン視認システム”Dゲイザー”を左目に装着し、準備は完了。いよいよ決闘――――というところで、海馬が手を向けて遊馬を制止する。

 

「慌てるなよ。やるのはこの上でだ。このゲームのルールも説明しよう」

 

 

 

 * * *

 

 

「――――これが今回の決闘のルール”新マスタールール”だ。素人の君の為に解りやすく説明してやったけど、理解できたのかな?」

「お、おう! 結構親切じゃねぇか! ありがとよ! (結構ややこしいぞこれ~!? EXモンスターゾーンに、リンクモンスターにぃ~……先攻はドローできない~)」

 

 決闘リング上で、意外にも解りやすく丁寧にこの世界のルールを遊馬に説明してくれた海馬。遊馬は危なげにだがルールを把握したようだ。

 

「一々ルールミスでゲームを止められちゃ興覚めだからね。ま、期待はしてないけど。……僕はこの決闘リングを使って決闘をする。君はその腕に付けてる機械を使っていいよ。決闘システムをリンクできるようになってるからね」

「分かったぜ! 行くぞ!」

 

 

 

「「 デュエル!!! 」」

 

 

 

「先攻は僕からだ。このカードを攻撃表示! 《闇・道化師のサギー》!」

 

 海馬の場に胡坐をかいた体勢のまま宙に浮かぶ道化師が現れる。

 

 闇・道化師のサギー 闇属性 魔法使い族 レベル3 ATK:600

 

「カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

 

海馬

LP:4000

手札:2

EXモンスター

②:

④:

メインモンスター

③ 闇・道化師のサギー ATK:600

魔法・罠

②セット

③セット

 

 

「よっしゃ! オレのターン! ドロー!」

 

 遊馬 手札:5→6

 

「攻撃力600! これならエクシーズ召喚しなくても倒せる! 《ゴゴゴゴーレム》を召喚!」

 

 遊馬の場に現れたのは石の体を持つ巨人。ゴゴゴーッ、っと叫びながら頭部で光るモノアイを動かし、大きな腕を振るった後に構える。これぞ遊馬を支える”オノマトペ”の一派”ゴゴゴ”の先兵、ゴゴゴゴーレムである。

 

 ゴゴゴゴーレム 地属性 岩石族 レベル4 ATK:1800

 

「何だそのふざけた名前のモンスターは? ハッハッハ!」

「そ、それはこっちの台詞だ! 攻撃力600なんて倒してくれって言ってるようなもんだぜ! ゴゴゴゴーレムで攻撃! 【ゴゴゴブロー】!」

 

 ゴゴゴゴーレムが拳を振りかぶり、サギーに向かって突き出す。

 

「馬鹿め! 罠カード《ジャスティブレイク》! 通常モンスター以外のモンスターを全て破壊する!」

 

 ゴゴゴゴーレムの拳がサギーに届く直前、雷がゴゴゴゴーレムに直撃。哀れゴゴゴゴーレムは一瞬で塵と化してしまった。

 

「ゴゴゴーッ!?」

「ふざけたゴーレム粉砕! ……こんな見え透いた罠に引っかかってくれるとは、素人の相手なんて楽なものさ。フハハハハ!」

 

 海馬の高笑いを受け、遊馬は言い返すこともなく膝に手を置き、俯く。

 

「何やってんだよオレ……あんな挑発に乗せられて、まんまと罠に掛かって……これじゃ”あいつ”に会う前のオレじゃねぇか……」

 

 愕然とした表情で腕を震わし、首にかけた”皇の鍵”を握り締める遊馬。ここでハッと気づいた様に顔を上げる。

 

「オレ……”あいつ”って言ってばっかりだ……」

 

 ”あいつ”と別れて戻った日常。遊馬は”あいつ”との日々を懐かしむ毎日を過ごしていた。かっとビングを忘れたわけではないが、それでも何かが抜け落ちたような、どうしようもない”喪失感”を抱きながらの毎日であった。仲間達から”あいつ”の世界の危機を知らされ一度は奮い立ったものの、それでも拭い切れるものではなかった。

 

「……寂しいさ、ああ寂しいさ! やっと逢えると思ったのに……! でも、こんなんじゃ合わせる顔なんてねぇーーー!!!」

 

 遊馬は決闘リングの決闘者用の足場から飛び出し、モンスター達が立つ決闘場の上に直に立つ。

 

「かっとビングだァーーーーオレーーーー!!!」

「おい何をしてるんだ!?」

「あんな狭いとこにいられるかよ! オレはここで決闘するぜ! カードをセットしてターンエンド!」

 

 

遊馬

LP:4000

手札:4

EXモンスター

②:

④:

メインモンスター

魔法・罠

③セット

 

 

「僕の決闘リングで勝手なことしやがって……僕のターン、カードドロー!」

 

 海馬 手札:2→3

 

「魔法カード《調和の宝札》! 手札から攻撃力1000以下のドラゴン族チューナーを捨て2枚ドロー!」

 

 海馬 手札:2→1→3

 

捨てたカード

伝説の白石

 

「捨てた《伝説の白石(ホワイト・オブ・レジェンド)》の効果発動! デッキから《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》1体を手札に加える」

 

 海馬 手札:3→4

 

「ブルーアイズ!? 伝説のモンスターじゃねぇか!? なんでこんなやつがブルーアイズなんて持ってんだよ!?」

「フフフ、僕はね、欲しいものは必ず手に入れる主義なんだよ」

 

 ブルーアイズについては遊馬もよく知っている。修行の場”決闘庵”で闘ったのは木像であったが、その時に見せられた”力と恐怖”は本物で、”大事な教え”と共に今でも遊馬の胸に焼き付いている。

 

「永続魔法《魔法吸収》! 魔法が発動する度に僕のLPが500回復する! 魔法カード《トレード・イン》! 手札のレベル8モンスター1体を捨て、2枚ドローする!」

 

 捨てたカード

 青眼の白龍

 

 海馬 手札:2→1→3 LP:4000→4500

 

「魔法カード《竜の霊廟》! デッキからドラゴン族モンスター1体を墓地へ送る! この時送ったのが通常モンスターだった場合、さらにもう1体ドラゴンを墓地へ送れる!」

 

 墓地へ送ったカード

 青眼の白龍

 青眼の白龍

 

 海馬 LP:4500→5000

 

「クックック……前のターン、なぜ僕がサギーなんて弱小モンスターを守ったか、素人の君に解るかな?」

「知らねぇ! もう挑発には乗らねぇぞ!」

「つれないな……まあいいだろう、教えてやるよ。このためさ! 魔法カード《ドラゴン・復活の狂奏》! 自分の場に魔法使い族が存在する場合、ドラゴン族の通常モンスターを含む、自分の墓地のドラゴン族を2体まで特殊召喚する! 来い! 2体の《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》!」

 

 海馬の場に現れたのは、美しくも力強い白き龍。主たる者には”誇りと勝利”を、敵には”恐怖と敗北”をもたらす伝説の龍――――”青眼の白龍”が2体、遊馬を見下ろし咆哮を上げる。

 

 青眼の白龍×2 光属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:3000

 海馬 LP:5000→5500

 

「来るとは思ったけど、いきなり2体かよ!?」

「フフフ……まだ終わりじゃないさ! 魔法カード《死者蘇生》! 3体目の《青眼の白龍》!」

 

 2体のブルーアイズの間に、さらにもう1体のブルーアイズが現れ、3体同時に咆哮を上げる。デュエルモンスターズを知るものなら誰でも知っている”力の象徴”、”最強の陣形”――――”青眼の白龍3体召喚”が遊馬の前で現実となる。

 

 青眼の白龍 光属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:3000

 海馬 LP:5500→6000

 

「ふはははー! すごいぞー! カッコいいぞー!!」

「ブ、ブルーアイズが3体も……!」

「さあひれ伏せ! ブルーアイズで一斉攻撃――――」

「くっ!?」

 

 遊馬はとっさに身構えて攻撃に備える――――が、攻撃は一向にやってこない。

 

「あ、あれ?」

「――――と、言いたいところだが、ドラゴン・復活の狂奏を発動したターンは相手にダメージを与えられないんだ。命拾いしたな」

 

 そう言って海馬がやれやれと手を振ると、遊馬は気が抜けたようにため息をつく。

 

「……な、何だよ……でも助かった」

「ま、これはゲームだからね。簡単に決着してはつまらない。挑戦者には攻略のチャンスを与える……それが”DEATH-T”のルールだ」

「? さっきから言ってる”ですてにー”って一体なんだ?」

「”デスティー”だ。……君、これがどんなゲームか知らないで挑戦しに来たのか?」

「だからちげーよ! 気づいたら廊下で寝てて、廊下を進んだらここに着いたんだ」

 

 海馬は遊馬の話を聞いて呆れた様な表情を浮かべ、少し考えるように顎を触る。

 

「運が良いのか悪いのか……理由は知らないが、君はこの”DAETH-T”の最終ステージに迷い込んだ素人って訳か……ま、いいだろう。ここに辿り着ける奴自体、中々いないからな。正直退屈だったんだ」

「だから素人じゃねー! 何だよ、そんなに難しいゲームなのかよ?」

「難しいさ、生きて帰ることさえな」

「は?」

「DAETH-Tとは死のテーマパーク。クリアすれば惜しみない報酬と称賛が与えられるが、ゲームオーバーとなれば死よりも苦しい罰ゲームが待っている……それはこの最終ステージも例外ではない」

「何だって!?」

「君はそれに耐えられるかな? サギーを守備表示に変更し、ターンエンド!」

 

 

海馬

LP:6000

手札:0

EXモンスター

②:

④:

メインモンスター

①青眼の白龍 ATK:3000

②青眼の白龍 ATK:3000

③ 闇・道化師のサギー DEF:1500

④青眼の白龍 ATK:3000

魔法・罠

②魔法吸収

③セット

 

「冗談じゃねぇ、こんなところで死んで堪るかよ! オレのターン! ドロー!」

 

 遊馬 手札:4→5

 

「《ゴブリンドバーグ》を召喚!」

 

 遊馬の場に小型飛行機に乗ったゴブリンが3体現れる。3機がかりで大きなコンテナを吊り上げ、それを遊馬の場に落とす。

 

 ゴブリンドバーグ 地属性 戦士族 ATK:1400

 

「ゴブリンドバーグの召喚に成功した時、手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚できる! 《ガガガガードナー》を特殊召喚!」

 

 ゴブリンドバーグが落としたコンテナの中から、手に大盾を持ったガラの悪い戦士が飛び出す。

 

 ガガガガードナー 地属性 戦士族 レベル4 ATK:1500

 

「この効果を使った後、ゴブリンドバーグは守備表示になる!」

 

 ゴブリンドバーグ ATK:1400→DEF:0

 

「(こんなところで終わって堪るか! オレはもう一度”あいつ”と逢うんだ!) レベル4の《ゴブリンドバーグ》と《ガガガガードナー》でオーバーレイ!」

 

 ゴブリンドバーグとガガガガードナーが橙色の光となって飛び上がり、遊馬の場に現れた赤い光の渦へと飛び込む。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 渦から赤い閃光が放たれ、その中から一振りの大剣を持った赤い鎧の戦士が現れる。激戦を闘い抜き、”ノリ”を重視するライバルから授かった魂のカード――――

 

「光纏いて現れろ! 闇を斬り裂く眩き王者! 《H-C(ヒロイック チャンピオン) エクスカリバー》!」

 

 H-C エクスカリバー 光属性 戦士族 ランク4 ATK:2000 ORU:2

 

「エクシーズ召喚か。だがブルーアイズの敵じゃないな」

「エクスカリバーの力はこんなもんじゃねぇ! 効果発動! 1ターンに1度、ORUを2つ取り除き、エクスカリバーの攻撃力を次の相手のターン終了時まで元々の攻撃力の倍にする!」

 

 エクスカリバーが自身のORU(オーバーレイユニット)を全て吸収すると、闘気を漲らせて大剣を構える。

 

  H-C エクスカリバー ATK:2000→4000 ORU:2→0

 

「何!? 攻撃力4000だと!?」

「これでブルーアイズを超えたぜ! バトル! エクスカリバーでブルーアイズを攻撃! 【一刀両断! 必殺真剣】!」

 

 エクスカリバーが大剣を振り上げ飛び上がり、ブルーアイズ1体の首を両断し破壊する。

 

「ぼ、僕のブルーアイズがっ!?」

 

 海馬 LP:6000→5000

 

「よっしゃー! まずは1体! ターンエンド!」

 

 

遊馬

LP:4000

手札:3

EXモンスター

②:H-C エクスカリバー ATK:4000 ORU:0

④:

メインモンスター

魔法・罠

③セット

 

「1体倒したからって良い気になるなよ! 僕のターン!」

 

 海馬 手札:0→1

 

「魔法カード《馬の骨の対価》! 自分の場の効果モンスター以外のモンスター1体を墓地へ送り2枚ドローする! サギーを墓地に送って2枚ドローだ!」

 

 海馬がデッキから2枚ドローすると、サギーは白骨化してボロボロと崩れ去る。

 

 海馬 手札:0→2 LP:5000→5500

 

「フフ、馬の骨ほども価値のないザコモンスターでも、使い道はあるということだな」

「さっきからサギーにひでぇことばっか言いやがって……サギーのおかげでブルーアイズ出したりドローできたんだから感謝くらいしてやれよ!」

 

 あまりにも無情な海馬を遊馬が非難すると、海馬は呆れと嘲笑を顔に浮かべる。

 

「馬鹿な。何でカードごとき、しかもザコモンスターに僕が感謝なんかしなければならないんだ? 弱者は強者の為に使われればいいんだよ。僕やこの”ブルーアイズ達”の為にな」

 

 そう言って海馬はドローしたカードのうちの1枚を取り出す。

 

「特別に見せてやるよ、僕のとっておきをね。チューナーモンスター《太古の白石(ホワイト・オブ・エンシェント)》を召喚!」

 

 海馬の場に白く輝く石が現れる。見ようによっては卵にも見えなくはない。

 

 太古の白石 光属性 ドラゴン族 レベル1 ATK:600

 

「レベル8《青眼の白龍》に、レベル1《太古の白石》をチューニング!」

 

 太古の白石が光輪へと変わると、ブルーアイズ1体を囲み、8つの光、そして光の柱へと変える。

 

「強靭・無敵・最強! 太古からの称号に、新たな伝説を刻むがいい!」

 

 光の柱の中から現れたのは、銀色に輝く蒼い眼の龍。ブルーアイズによく似たそのドラゴンは遊馬をその蒼い眼で見据え、咆哮を上げる。

 

「《蒼眼の銀龍》! シンクロ召喚!」 

 

 蒼眼の銀龍 光属性 ドラゴン族 レベル9 ATK:2500

 

「シ、シンクロ召喚!? 初めてみたぜ!」

 

 遊馬がいた世界でもシンクロ召喚は存在している。ただエクシーズ召喚が台頭していたこともあってか使い手が非常に少なく、遊馬は存在を聞いていただけで実物を見たのはこれが初めてであった。

 

「だけど、エクスカリバーの方が攻撃力は上だ! それじゃ倒せないぜ!」

「ククク……ブルーアイズの攻撃方法は1つではない! 魔法カード《滅びの爆裂疾風弾(バーストストリーム)》! このターンのブルーアイズの攻撃を放棄する代わりに相手のモンスター全てを破壊する! 消え去れエクスカリバー!」

 

 海馬 LP:5500→6000

 

 ブルーアイズが口に凄まじい量のエネルギーを集中させ、それを弾としてエクスカリバーへと放つ。

 

「させるかよ! 永続罠《ディメンション・ガーディアン》! オレの場の攻撃表示モンスター1体は戦闘・効果では破壊されない!」

 

 爆裂疾風弾はエクスカリバーに命中する前に異空間の壁に阻まれて消滅する。

 

「小賢しい真似を……! ターンエンド! ここで墓地の太古の白石の効果発動! 墓地に送られたターンのエンドフェイズ時、デッキから”ブルーアイズ”モンスター1体を特殊召喚する! 《白き霊龍》を特殊召喚!」

 

 海馬の場に青眼の白龍と同じ姿をしたドラゴンが現れる。だが青眼の白龍と比べるとどこか儚げで、今にも消えてしまいそうに見える。

 

 白き霊龍 光属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:2500

 

「このカードは”ブルーアイズ”として扱うことができる。そして効果発動! 召喚・特殊召喚に成功した時、相手の魔法・罠1枚を除外する! 消え去れ《ディメンション・ガーディアン》!」

 

 今度は白き霊龍がエクスカリバーに向かってエネルギー弾を放つと、それを防ごうと異空間の壁が現れる。エネルギー弾は異空間の壁に当たると、そのまま壁と共に消滅した。

 

「オレの罠が!?」

「これでお前を守る壁は無くなった! そしてエクスカリバーの攻撃力は元に戻る」

 

 H-C エクスカリバー ATK:4000→2000

 

「攻撃を凌いだと思っているようだが、違うな! 追い詰められたんだよお前は!」

 

海馬

LP:6000

手札:0

EXモンスター

②:(H-C エクスカリバー ATK:2000)

④:蒼眼の銀龍 ATK:2500

メインモンスター

①青眼の白龍 ATK:3000

②白き霊龍 ATK:2500

魔法・罠

②魔法吸収

③セット

 

 

「チクショウ、悔しいけどあいつの言う通りだ……」

 

遊馬の手札

ドドドウォリアー

ガガガマジシャン

ガガガガール

 

「今のオレの手札じゃブルーアイズは倒せねぇ……頼むぜオレのデッキ! オレのターン! ドロー!」

 

 遊馬 手札:3→4

 

ドローカード

ゴゴゴジャイアント

 

「(来た! ゴゴゴジャイアント! こいつを使えばランク4のモンスターエクシーズを出せる! そして――――)」

 

 遊馬は自分の場のエクスカリバーを一瞥してニッと笑う。

 

「(”未来皇ホープ(オレのナンバーズ)”で逆転だ!) オレは《ゴゴゴジャイアント》を召喚!」

 

 遊馬の場に岩石の体を持つ巨人が現れる。

 

 ゴゴゴジャイアント 地属性 岩石族 レベル4 ATK:2000

 

「ゴゴゴジャイアントの効果発動! 自分の墓地の”ゴゴゴ”1体を守備表示で特殊召喚できる! 《ゴゴゴゴーレム》を特殊召喚!」

 

 続けてゴゴゴゴーレムが現れる。ゴゴゴゴーレムは体色を茶色に変えると、両掌を相手に向けて壁を作るように構えた。

 

 ゴゴゴゴーレム 地属性 岩石族 レベル4 DEF:1500

 

「この効果を使った後、ゴゴゴジャイアントは守備表示になる」

 

 ゴゴゴジャイアント ATK:2000→DEF:0

 

「行くぜ! レベル4の《ゴゴゴジャイアント》と《ゴゴゴゴーレム》でオーバーレイ!」

 

 この瞬間、遊馬の決闘盤から警告音が鳴り響く。

 

「うわっ!? 何だよ良いところで!」

『EXモンスターゾーンに空きがないため、X召喚を行えません』

「え? あっ!?」

 

 遊馬はようやく気付く。自身のEXモンスターゾーンにはすでにエクスカリバーが存在することに。

 

「そうだった……何時もとルールが違うんだった……」

「ワーッハッハッハ! 愚かな凡骨決闘者め! せっかくルールを説明してやったのにどうしようもない奴だな君は! アッハッハッハ!」

「わ、笑うなぁ! 笑うんじゃねぇ! チクショーチクショー! エクスカリバーを守備表示にしてターンエンド!」

 

遊馬

LP:4000

手札:3

EXモンスター

②:H-C エクスカリバー ATK:2000→DEF:2000 ORU:0

④:

メインモンスター

②ゴゴゴゴーレム DEF:1500

③ゴゴゴジャイアント DEF:0

魔法・罠

 

 

 やってしまった。己の不甲斐なさのあまり、羞恥と怒りで顔を真っ赤にする遊馬。何度も膝を叩きながら、自身を落ち着かせようと皇の鍵を握り締める。

 

「(どうしちまったんだよオレ……オレは結局、”あいつ”がいないと駄目だったってことなのか?)」

「もういい分かった。どうやら君にこの”DEATH-T”は早すぎたようだな。これ以上恥を掻く前に決着をつけてやろう。僕のターン! ドロー!」

 

 海馬 手札:0→1

 

「スタンバイフェイズ! 蒼眼の銀龍の効果発動! 自分の墓地の通常モンスター1体を特殊召喚する! 甦れ《青眼の白龍》!」

 

 銀龍が凄まじい咆哮を上げる。轟砲と言えるそれは冥界で眠るブルーアイズを呼び覚ます。覚醒したブルーアイズは地の底から飛び出し、海馬の場へと舞い戻った。

 

 青眼の白龍 光属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:3000

 

「倒したブルーアイズが復活しちまった!?」

「強靭、無敵、最強、ブルーアイズを現す3語に、”不死身”を加える! これが蒼眼の銀龍だ! 墓地の《古代の白石》を除外し効果発動! 墓地の”ブルーアイズ”1体を手札に加える!」

 

 海馬 手札:1→2

 

「永続魔法《ピンポイント・ランディング》発動!」

 

 海馬 LP:6000→6500

 

「バトル! ブルーアイズでエクスカリバーを攻撃! 【滅びのバーストストリーム】!」

 

 青眼の白龍の1体がエネルギー弾を放ち、エクスカリバーを消し飛ばす。

 

「エクスカリバァー!?」

「2体目でゴゴゴジャイアントを攻撃!」

 

 2発目のバーストストリームがゴゴゴジャイアントを襲い、跡形もなく消滅する。

 

「ゴゴゴジャイアント……!」

「白き霊龍でゴゴゴゴーレムを攻撃!」

 

 白き霊龍による3発目のバーストストリームがゴゴゴゴーレムを襲うが、ゴゴゴゴーレムはこれを受け切る。

 

「ゴゴゴゴーレムは守備表示の時、1ターンに1度戦闘で破壊されない!」

「とことん小細工を弄するつもりか! だがブルーアイズはそれさえもひねり潰す! 白き霊龍の効果発動! 相手にモンスターが存在する場合、霊龍をリリースすることで手札の《青眼の白龍》を特殊召喚する!」

 

 攻撃を終えた白き霊龍が消滅すると、3体目のブルーアイズが姿を現す。これで再び青眼の白龍が3体揃う。

 

 青眼の白龍 光属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:3000

 

「また3体揃っちまった……!」

「永続魔法《ピンポイント・ランディング》の効果発動! 1ターンに1度、自分の場に手札からモンスター1体のみが特殊召喚された場合、1枚ドローする!」

 

 海馬 手札:0→1

 

「銀龍でゴゴゴゴーレムを攻撃! 【滅びの轟砲-バーストカノン】!」

 

 銀龍がエネルギー弾を放ち、バーストストリームを受けて消耗していたゴゴゴゴーレムを粉砕する。

 

「残るはお前だけだァー! 【滅びのバーストストリーム】!」

 

 3体目のブルーアイズのバーストストリームが遊馬に迫り、足元に着弾。遊馬を吹き飛ばし、決闘リングの足場を支える柱に叩きつける。

 

「うわぁぁぁーーーー!!? ぐわぁ!?」

 

 遊馬 LP:4000→1000

 

「粉砕! 玉砕! 大喝采! ワハハハハ!」

「うう……!」

 

 高笑いしながらブルーアイズのパワーに酔い痴れる海馬。柱に叩きつけられた遊馬は呻きながらなんとか立ち上がる。

 

「エクスカリバー、ゴゴゴ、すまねぇ……オレがドジやったせいで……」

「ターンエンド!」

 

 

海馬

LP:6500

手札:1

EXモンスター

②:

④:蒼眼の銀龍 ATK:2500

メインモンスター

①青眼の白龍 ATK:3000

②青眼の白龍 ATK:3000

③青眼の白龍 ATK:3000

魔法・罠

②魔法吸収

③セット

④ピンポイント・ランディング

 

 

「どうだブルーアイズの力、思い知ったか! お前のザコモンスターが束になっても勝てはしない! 弱いクズモンスターしか持たない無能な弱者には良い経験になっただろう? 運よく生きて帰れたら活かすことだな! ワハハハハ!」

「……オレのことは何と言おうが構わねぇ。だけど、オレのモンスターをザコ呼ばわりすんな!」

「あ?」

 

 愉悦に浸る海馬に対し、遊馬は怒りを浮かべて睨みつける。

 

「エクスカリバーはゴーシュから貰った魂のカードだ! ゴゴゴ達はずっとオレと一緒に闘ってきたんだ! オレの”心”に応えて闘ってきてくれた”仲間”なんだ!」

「馬鹿馬鹿しい。”心”だと? カードは”力”だ! 力あるレアカードを独占し、唯一無二のデッキを作り上げる! これが全てだ! 弱者の馴れ合いを決闘に持ち込むな。ザコカードと一緒に消えるがいい!」

 

 この瞬間、遊馬の中で何かが切り替わった。ここまでのミスも、それによる恥も、全てを押しのけ一つの感情が心を占める。”オレは絶対に、こいつに負けるわけにはいかない”――――

 

「……許さねぇ! オレはお前を許さねぇ!」

「許さなければ何だと言うんだ? ええ?」

「オレは絶対にお前に勝つ! 勝ってモンスターとの絆を、”心”の力をお前に教えてやる! そして、胸を張って”あいつ”に……”アストラル”に逢いに行ってやる! オレのターン!」

 

 遊馬は右手を握り締め振り上げると、右手が金色の光を放つ。

 

「最強決闘者の決闘は全て必然! ドローカードさえも決闘者が創造する!」

「な、何だ!? VRの誤作動か!?」

 

 光輝く手をデッキへと導き、デッキトップへと指をかける。不思議な現象に狼狽える海馬をまっすぐ見据え、遊馬は指先に力を籠める。

 

「シャイニング・ドロォーーーー!!!」

 

 遊馬 手札:3→4

 

 遊馬はドローしたカードと共に、手札を1枚取り出す。

 

「”ドドドウォリアー”、オレを導いてくれ! 魔法カード《ドドドドロー》! 手札、または場の”ドドド”1体を墓地へ送り、カードを2枚ドローする! 手札の《ドドドウォリアー》を墓地へ送り、2枚ドロー!」

 

 遊馬 手札:3→2→4

 海馬 LP:6500→7000

 

「オレは諦めない! 《ガガガマジシャン》を召喚!」

 

 遊馬の場に現れたのは、シルバーチェーンなどで装飾された魔導着を纏う、ガラの悪い魔術師。これぞ遊馬を支えてきた”オノマトペ”の一派”ガガガ”の特攻隊長、ガガガマジシャンである。

 

 ガガガマジシャン 闇属性 魔法使い族 レベル4 ATK:1500

 

「魔法カード《ガガガウィンド》! 手札の”ガガガ”1体のレベルを4にして特殊召喚する! 来い! 《ガガガガール》!」

 

 海馬 LP:7000→7500

 

 続けて現れたのはガガガマジシャンのように派手な魔導着を着た不良少女。ガガガマジシャンの姿を見つけると嬉しそうに”先輩”と呼ぶ。

 

 ガガガガール 闇属性 魔法使い族 レベル3→4 ATK:1000

 

「ガガガマジシャンの効果発動! レベルを1から8の間の数値に変更する! レベル6に変更! そしてガガガガールはガガガマジシャンと同じレベルにできる!」

 

 ガガガマジシャン レベル4→6

 ガガガガール レベル4→6

 

「レベル6になった《ガガガマジシャン》と《ガガガガール》でオーバーレイ!」

『センパ~イ!』

『オウ!』

 

 ガガガマジシャンとガガガガールが紫色の光となって飛び上がり、遊馬の場に現れた赤い光の渦の中へと飛び込む。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 渦の中から閃光が放たれる。その中から現れたのは全身を赤い装甲で覆い、両手に巨大なクローガントレットを装備した戦士。大きな体で遊馬を守るようにしてドラゴン達と対峙する。

 

「熱き魂を引き絞り、狙いを付けろ! 《ガントレット・シューター》!」

 

 ガントレット・シューター 地属性 戦士族 ランク6 ATK:2400 ORU:2

 

「ガガガガールを含む”ガガガ”モンスターのみでX(エクシーズ)召喚に成功した場合、相手の特殊召喚したモンスター1体の攻撃力を0にする! ブルーアイズ1体の攻撃力を0に! 〈ゼロゼロコール〉!」

 

 ORUとなったガガガガールが元の姿に戻ると、手に持った携帯電話を操作し、それをブルーアイズの1体に向ける。すると携帯電話から音波が放たれ、ブルーアイズの力を奪い取る。

 

 青眼の白龍 ATK:3000→0

 

「何ィ!?」

「まだだ! ガントレット・シューターの効果発動! ORUを1つ使うことで相手のモンスター1体を破壊する! ORUを2つ使い、残り2体のブルーアイズを破壊する!」

 

 ガントレット・シューター ORU:2→0

 

 ガントレット・シューターがORUを2つ吸収すると、両手のガントレットを射出し、2体のブルーアイズを貫いて破壊する。

 

「グワァァァーーー!? 僕のブルーアイズがぁ!?」

「魔法カード《ガガガドロー》! 墓地の”ガガガ”3体をデッキに戻し、2枚ドロー!」

 

戻したカード

ガガガマジシャン

ガガガガール

ガガガガードナー

 

 遊馬 手札:0→2

 海馬 LP:7500→8000

 

「魔法カード《破天荒な風》! ガントレット・シューターの攻守を次のオレのスタンバイフェイズまで1000アップする!」

 

 ガントレット・シューターの周りを破天荒な風が吹き荒れる。

 

 ガントレット・シューター ATK:2400→3400

 海馬 LP:8000→8500

 

「バトル! ガントレット・シューターで蒼眼の銀龍を攻撃! 【爆圧鋼鉄籠手(ダイナミックプレスガン)】!」

 

 ガントレット・シューターは大きな体躯に似合わないスピードで銀龍との間合いを詰めると、クローを銀龍に突き刺し、そのままガントレットを射出して銀龍を貫く。

 

「ぎ、銀龍まで破壊するだと……!?」

 

 海馬 LP:8500→7600

 

「どうだ! カードはオレに応えてくれる! 例えパワーに差はあっても、皆で乗り越えられるんだ! ターンエンド!」

 

 

遊馬

LP:1000

手札:1

EXモンスター

②:ガントレット・シューター ATK:3400 ORU:0

④:

メインモンスター

魔法・罠

 

「おのれ……おのれおのれおのれ! ザコの癖によくも!」

 

 最強と信じていたブルーアイズの布陣。それを1体が無力化、残りが全滅。LPは大量に残っているが、海馬にとっては最悪に近い結果である。海馬のどす黒いプライドは決してこの事実を許さないだろう。憎悪に満ちた視線で遊馬を貫く。

 

「僕のターン! ドロー!」

 

 海馬 手札:1→2

 

「罠カード《無謀な欲張り》! デッキから2枚ドローする!」

 

 海馬 手札:2→4

 

「魔法カード《強欲で貪欲な壺》! デッキトップからカードを裏側のまま10枚除外し、2枚ドローする!」

 

 海馬 手札:3→5 LP:7600→8100

 

「じ、自分から10枚も除外しちまうのか!?」

「ブルーアイズさえいれば他はいらない! 取るに足らんザコだ!」

「てめぇ! まだそんなこと言ってんのか!」

「黙れ! どんな手を使ってでもお前を叩き潰す!」

 

 遊馬のカード達の連携によって見せた逆転劇は海馬を改心させるどころか、憎悪を加速させる結果となってしまったようだ。今まで以上にブルーアイズに固執し、もはや戦術も何もない、遊馬をねじ伏せる”力”だけを求めている。

 

「魔法カード《モンスター・ゲート》! モンスター1体をリリース! 無様な姿を晒すぐらいなら消えろブルーアイズ!」

 

 海馬 LP:8100→8600

 

 海馬の場から最後のブルーアイズが消滅する。

 

「唯一信じてたブルーアイズまで……!? 何がしたいんだよお前は!」

「お前を完膚なきまで叩き潰す! モンスターゲートはデッキトップを通常召喚が可能なモンスターが出るまでめくり、出たモンスターを特殊召喚する! それ以外のめくったカードは全て墓地へ送る!」

 

めくったカード

青眼の亜白龍

Sin 青眼の白龍

青眼の混沌龍

青眼の光龍

ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン

 

「おいやめろ! それ以上めくったらデッキがなくなっちまうぞ!?」

 

 遊馬の声を無視し、狂気に満ちた顔で海馬はカードをめくり続ける。

 

めくったカード

青眼の亜白龍

高等儀式術

白き霊龍

 

「《白き霊龍》! 通常召喚可能だ! 特殊召喚!」

 

 海馬の場に2体目の白き霊龍が現れる。

 

 白き霊龍 光属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:2500

 

「魔法カード《闇の量産工場》! 墓地の通常モンスター2体を手札に加える! 《青眼の白龍》2体を手札に加える!」

 

 海馬 手札:3→5 LP:8600→9100

 

「白き霊龍をリリースし、手札の《青眼の白龍》を特殊召喚!」

 

 白き霊龍が消滅し、海馬の場に1体目の青眼の白龍が現れる。

 

 青眼の白龍 光属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:3000

 

「《ピンポイント・ランディング》により1枚ドロー!」

 

 海馬 手札:4→5

 

 このドローにより、海馬のデッキが尽きる。決闘においてデッキからカードが無くなり、ドローができなくなった場合は敗北となる。だが海馬にはその事実が見えていないのか、不気味な笑みのまま決闘を進める。

 

「海馬のデッキが無くなっちまった……海馬はこのターンで決着を付けるつもりなのか?」

「魔法カード《古のルール》! 手札のレベル5以上の通常モンスターを特殊召喚する! 2体目の《青眼の白龍》!」

 

 海馬 LP:9100→9600

 

 続けて2体目のブルーアイズが現れ、海馬の場に並ぶ。

 

 青眼の白龍 光属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:3000

 

「装備魔法《光の導き》! 自分の墓地に”ブルーアイズ”が3体以上存在する場合、その内の1体の効果を無効にして特殊召喚! そしてこのカードを装備する! 出でよ3体目の《青眼の白龍》!」

 

 海馬 LP:9600→10100

 

 3体目のブルーアイズが現れ、またしても”青眼の白龍3体”の布陣が出来上がる。

 

 青眼の白龍 光属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:3000

 

「もう驚かねぇぞ。ブルーアイズ3体……だけど、ガントレット・シューターの方が攻撃力は上だ!」

「クックックック……僕には誰も勝てはしない。見せてやる。僕の力を! 魔法カード《ユニオン・アタック》! バトルフェイズの間、3体目のブルーアイズに残り全てのブルーアイズの攻撃力を集中させる!」

 

 海馬 LP:10100→10600

 

 海馬が魔法を発動させると、どこからともなく長い鎖が現れ、3体のブルーアイズを絡めとって一つにつなぐ。

 

 青眼の白龍 ATK:3000→9000

 

「こ、攻撃力9000!?」

「ワーハッハッハ! これが僕の最大にして最強のコンボ! ”青眼の白龍3体連結”! ユニオン・アタックの対象となったブルーアイズは装備魔法《光の導き》の効果により、墓地の”ブルーアイズ”1体につき1回攻撃できる。その代わり他のモンスターは攻撃に参加できない! 僕の墓地の”ブルーアイズ”は8体! よってこのターン8回連続攻撃が可能!」

「は、8回も……!?」

「そしてユニオン・アタックの効果により、相手に与える戦闘ダメージは0となり、対象のブルーアイズ以外は攻撃に参加できない」

「へ? そ、それじゃあオレは倒せねぇじゃねぇか……?」

 

 攻撃力9000という圧倒的な数値なら、ガントレット・シューターは倒せるだろう。しかし与えるダメージが0になってしまっては幾ら攻撃しても遊馬のLPを削ることはできず、デッキからカードを引けない海馬は次のターンで敗北することとなってしまう。

 遊馬が困惑した表情をしていると、海馬はにやりと笑った。

 

「削る必要なんてないのさ、LPなんて」

「何だって?」

「君が受けたブルーアイズの攻撃、効いたろ? 吹っ飛んで柱にぶつかって? あれこそが我がVRが成せる”リアルな体験”ってやつさ」

「あ、ああ……あれは効いたけど、それが何だって言うんだよ?」

「あれは3000の1回攻撃。”3000の1回”の威力なのさ。じゃあ……”9000の8回”なんて受けたら、君はどうなってしまうんだろうな?」

「え?」

 

 遊馬は一瞬、海馬が言いたいことが理解できなかった。理解なんてしたくなかった。海馬が遊馬に対してしようとしていること、それはつまり――――

 

「”LP(ゲームの数値)”を削る必要なんてない! 君の”生命(LP)”を消せばそれで終わりなんだよ! ゲームを超えて相手を屠る、これがブルーアイズの……最強である僕の力! 相手の生命ですら思いのままなのさ! アッーハッハッハ!」

 

 海馬の言葉を聞き、遊馬は目を見開いて海馬を見つめ、崩れ落ちて膝を付く。

 

「お前……オレを殺すつもりなのか? 決闘で決着も着けないまま、オレを……」

「なぁに、罰ゲームが少し早まるだけだ。何の問題もないだろう?」

 

 決闘を汚すことにも、相手を殺すことにも何の躊躇も見せない海馬。遊馬は恐怖でも怒りでもなく、”悲しみ”で泣き叫びたい気分になった。泣き叫びたいのを必死に堪えて海馬を見つめていた。

 

「(決闘をすれば解り合える……決闘が終われば皆”仲間”なんだ……でも、あいつはオレを殺そうとしている……決闘が終わらないままオレを!)」

「消えろ! 【滅びのバーストストリーム8連弾】!」

 

 海馬が指示すると、1つとなったブルーアイズがそれぞれの口からエネルギー弾を連射する。ガントレット・シューターは遊馬を庇うように立ちふさがり、エネルギー弾を受けた。エネルギー弾が炸裂すると同時に遊馬の場が白煙に包まれる。

 

「ハハハ! さあ見せてみろ! 無様に転がった弱者の姿――――何!?」

 

 白煙が引き始めるその瞬間、白煙の中から一筋の虹が飛び出し、ブルーアイズ達に巻き付いて拘束する。白煙が完全になくなると、そこにはガントレット・シューターと遊馬が場に立っていた。

 

「相手の攻撃宣言時、手札から《虹クリボー》の効果発動! このカードを攻撃モンスターに装備する! 装備したモンスターは攻撃できねぇ!」

「ぐっ!? うう……がぁぁぁーーーー!!!」

 

 海馬の苛立ちが頂点に達した。ガシガシと頭を掻きむしり、血走った目で遊馬を睨みつける。

 

「バトル終了ォ!」

 

 海馬がバトルフェイズ終了を宣言すると同時に、3体のブルーアイズが鎖の拘束から解き放たれる。

 

 青眼の白龍 ATK:9000→3000

 

「魔法カード《スタンピング・クラッシュ》! 自分の場にドラゴン族が存在する場合、場の魔法・罠1枚を破壊し、そのコントローラーに500のダメージを与える! 《虹クリボー》を破壊だァーーーー!!!」

 

 海馬 LP:10600→11100

 

 3体のブルーアイズが地面を強く踏み鳴らすと、その衝撃で虹の拘束が解けてしまう。さらに衝撃は遊馬へと襲い掛かる。

 

「うわぁ!?」

 

 遊馬 LP:1000→500

 

「フーッ! フーッ! ……勝ったと思うな! 僕のデッキは0、これでお前がターンを終了すればデッキ切れで僕の負けとなるが、僕はこのターンに《無謀な欲張り》を発動している! このカードは2枚ドローできる代わりに自身のドローフェイズを2回スキップする! よって僕はデッキ切れで敗北することはない! ブルーアイズが3体残っているんだ! それで十分! 次で仕留めてやる! ターンエンド!」

 

 

海馬

LP:11100

手札:0

EXモンスター

②:(ガントレット・シューター ATK:3400 ORU:0)

④:

メインモンスター

①青眼の白龍 ATK:3000(装備:光の導き)

②青眼の白龍 ATK:3000

③青眼の白龍 ATK:3000

魔法・罠

②魔法吸収

③光の導き

④ピンポイント・ランディング

 

 

「……そうだ、まだ決闘は終わってねぇんだ! 終わってねぇんだよ! オレのターン!」

 

 遊馬 手札:0→1

 

 この瞬間、ガントレット・シューターの周りで吹いていた破天荒な風が止む。

 

 ガントレット・シューター ATK:3400→2400

 

「魔法カード《命削りの宝札》! 手札が3枚になるようにドローする! その代わりオレはこのターン特殊召喚ができず、相手が受けるダメージは全て0になる! 3枚ドロー!」

 

 遊馬 手札:0→3

 

 海馬 LP:11100→11600

 

「……海馬、お前――――」

「もうお前の戯言に付き合うつもりはない! さっさと決闘を続けろ!」

「(……オレは諦めない! お前にだってあるはずなんだ! 悪い心と戦う”良い心”が!)」

 

 幾ら敵意や殺意を向けられようとも、遊馬は目を背けなかった。拒絶されても海馬の中に決闘者としての”心”があると信じて、諦めず正面から向き合う。

 

「(例え無かったとしても、その”心”ができるまでオレは信じる! オレはお前から絶対に逃げない! それがオレのかっとビングだ!) ガントレット・シューターを守備表示に変更! モンスターをセット! カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

 

遊馬

LP:500

手札:0

EXモンスター

②:ガントレット・シューター ATK:2400→DEF:2800 ORU:0

④:

メインモンスター

③セット

魔法・罠

③セット

④セット

 

 

「僕のターン! ブルーアイズでガントレット・シューターを攻撃ィ!!! 第1弾!」

 

 ブルーアイズがエネルギー弾を放ち、ガントレット・シューターを破壊する。

 

「第2弾! セットモンスターを破壊しろ!」

 

 続けて2発目がセットモンスターに向かって放たれ、粉砕する。

 

「セットモンスターは《リトルトルーパー》! こいつは戦闘破壊された場合、デッキからレベル2以下の戦士族1体を裏側守備表示で特殊召喚する! こいつ自身レベル2以下の戦士族だ! 《リトルトルーパー》を特殊召喚!」

 

 リトルトルーパー 地属性 戦士族 レベル1 DEF:500

 

「悪足掻きを! 第3弾! 第4弾!」

 

 遊馬の場に再びセットモンスターが現れると、それをブルーアイズが粉砕し、効果によりまたリトルトルーパーが場に現れ、それも粉砕する。

 

「くそぉ! レベル1の戦士族《針剣士》を特殊召喚!」

 

 針剣士 風属性 戦士族 レベル1 DEF:600

 

「第5弾!」

 

 無慈悲な5発目によって姿を現せないまま針剣士も消し飛ばされてしまう。これで遊馬の場のモンスターは尽きた。

 

「第6弾!」

「墓地の《虹クリボー》の効果発動! 相手の直接攻撃宣言時、墓地のこのカードを特殊召喚できる! 守備表示で特殊召喚!」

 

 6発目が遊馬に迫った瞬間、虹のマークを頭に付けた丸っこい悪魔が飛び出し遊馬を庇う。ダメージは全て受け流すことはできたが、その小さな体では衝撃を防ぎ切ることができず、遊馬と共に後方へと弾き飛ばされてしまった。

 

「うわぁぁぁ!? ……に、虹クリボー……虹クリボーの効果で特殊召喚されていた場合、場から離れたら除外される……ぐう……!」

 

 遊馬は7発目に備えて立ち上がろうとするが、中々立てない。それもそのはず、もう遊馬には攻撃を防ぐ手立てがないのだ。目の前ではブルーアイズがエネルギーを集中させている。迫りくる恐怖と絶望を押しのけようと遊馬は足にありったけの力を籠める。

 

「(立て! 立てよオレ! くそ……やっぱりオレだけじゃ――――)」

 

 

 

 

 

『立て、遊馬』

「え?」

『勝つぞ』

 

 遊馬が振り向くと、そこには青白く光る人型が浮かんでいた。その力強い意志を宿した瞳でブルーアイズを真っすぐ見据えた後、遊馬に向き直る。

 ずっと逢いたかった。想わぬ日などなかった。これは夢なのではないか――――様々な思いが遊馬の胸に去来する。目の前に突然現れた最愛の友にむかって、ようやく一言絞り出す。

 

「……遅ぇよ”アストラル”!!!」

『すまない、遅くなった』

 

 表情も変えずにさらりと返すアストラル。遊馬は先程までの苦し気な表情を一変、にかっと笑って勢いよく立ち上がる。その様子を見てようやくアストラルは表情を和らげた。

 

『……やはり、君にはその顔が一番だ』

「へへっ! ……でもアストラル、どうしてここに? アストラル世界は?」

『話は後だ。今はこの決闘に決着を付ける』

「ああ……でも、もうオレには手が――――」

『君の”希望”はここに』

 

 アストラルが遊馬のEXデッキを収納しているデッキケースを指さすと、デッキケースの中から金色の光があふれだす。遊馬はデッキケースを開け、中からその光源を取り出した。

 

「”希望(ホープ)”……ははっ!」

「これで終わりだァーーーー!!! 消え去れ!」

 

 ブルーアイズの口から7発目のエネルギー弾が放たれる。

 

『行け、遊馬!』

「おう! 罠カード《マスター・ピース》! 自分の墓地からモンスター2体を効果を無効にして特殊召喚し、その2体でX召喚を行う! 来い《ゴゴゴゴーレム》! 《ゴゴゴジャイアント》!」

 

 遊馬の場に2体のゴゴゴが現れると遊馬の前で壁となり、エネルギー弾を打ち消す。

 

「何ィ!? くそぉーーーー今度は何だ!?」

「『 レベル4の《ゴゴゴゴーレム》と《ゴゴゴジャイアント》でオーバーレイ! 』」

 

 ゴゴゴゴーレムとゴゴゴジャイアントが橙色の光となって飛び上がると、遊馬の場に現れた金色の渦の中へと飛び込む。

 

「『 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! 』」

 

 渦の中から金色の閃光が放たれ、中から大きな白い剣が現れる。これはこのモンスターエクシーズの”ニュートラル体”であり、完全に姿を現すと変形を始める。

 

「『 我が闘いはここより始まる! 白き翼に望みを託せ! 』」

 

 変形した剣は人型へと姿を変え、翼を広げて己の名を叫ぶ。これこそが遊馬とアストラルの絆の象徴、進化の軌跡、”希望”の名を冠するNo.(ナンバーズ)の皇――――

 

「『 エクシーズ召喚! 現れよ《No.39 希望皇ホープ》! 』」

 

 No.39 希望皇ホープ 光属性 戦士族 ランク4 ATK:2500 ORU:2

 

「くうぅ~! ホープ!!! またお前と一緒に決闘ができるなんて!」

『気を抜くな遊馬。来るぞ』

「何を出すかと思えばブルーアイズに及ばぬザコモンスター! 一緒に粉砕してくれる! 【滅びのバーストストリーム】!」

 

 ブルーアイズは先程よりもエネルギーを蓄え、ホープを砕く為の7発目、そして遊馬を葬る為の最後のエネルギー弾を続けて放つ。

 

「『 希望皇ホープの効果発動! ORUを1つ取り除くことで攻撃を無効にする! 残り2回の攻撃を全て無効にする! 〈ムーンバリア〉! 』」

 

 No.39 希望皇ホープ ORU:2→1→0

 

 ホープがORUを2つ吸収すると、背中の翼”ライトウィング・シールド”を前面に展開し、エネルギー弾2発を受け止める。

 

「何だとぉ!!?」

「どうだ! 8回連続攻撃、受け切ってやったぜ!」

「ウ、ギギ……! だがその効果はもう使えまい! 次でとどめを刺してやる! ターンエンド! 効果を使われなかったピンポイント・ランディングは墓地に送られる!」

 

海馬

LP:11600

手札:0

EXモンスター

②:(No.39 希望皇ホープ ATK:2500 ORU:0)

④:

メインモンスター

①青眼の白龍 ATK:3000(装備:光の導き)

②青眼の白龍 ATK:3000

③青眼の白龍 ATK:3000

魔法・罠

②魔法吸収

③光の導き

 

 

「ふうー! 何とか防ぎ切ったな! それじゃあ、逆転してやろうぜ!」

『君と私なら、できる』

「オウ! 行くぜアストラル! かっとビングだァーーーーオレーーーー!!!」

 

「オレと!」

『私で!』

「『 オーバーレイ!!! 』」

 

 遊馬は赤い光、アストラルは青い光となって飛び上がる。二人は縦横無尽に飛び回った後、上空で衝突、一つとなって場に舞い戻る。

 

「『 遠き2つの魂が交わるとき、語り継がれし力が現れる! 』」

 

 現れたのは黄金に輝く決闘者。Dゲイザーと一体となった赤いアーマーを身に纏い、決闘盤は盾のような形に変化している。その決闘者は場に降り立つと、遊馬とアストラル両者の物を分け合った力強い瞳で海馬を見据えた。これこそが二人の本来の姿にして最強の姿――――

 

「『 エクシーズ・チェンジ! ”ZEXAL(ゼアル)”! 』」

「どういう……ことだ……? 何が起こっているんだ!? こんなシステム僕のVRSには無い!?」

「『 オレのターン! ドローフェイズ時に罠カード《強欲な瓶》を発動! デッキから1枚ドローする! 行くぜ! 』」

 

 ZEXALの右手が先程の遊馬のように光輝く。

 

「『 全ての光よ、力よ! 我が右腕に宿り、再び希望の道筋を照らせ! ファイナル・シャイニング・ドロー!!! 』」

 

 遊馬 手札:0→1→2

 

「『 《No.39 希望皇ホープ》1体でオーバーレイ・ネットワークを再構築! 』」

 

 ホープがニュートラル体へと変形し、ZEXALの場の現れた金色の渦の中へと沈む。

 

「『 カオス・エクシーズ・チェンジ! 』」

 

 渦の中から閃光が放たれ、その中から黒い剣が現れる。その剣は変形をはじめ、全身が黒く染まった異形のホープへと姿を変える。これこそがホープの進化系。混沌を制し、光を持って闇を切り裂く新たなる希望――――

 

「『 混沌を光に変える使者! 《CNo.(カオスナンバーズ)39 希望皇ホープレイ》! 』」

 

  CNo.39 希望皇ホープレイ 光属性 戦士族 ランク4 ATK:2500 ORU:1

 

「『 ホープレイの効果発動! LPが1000以下の時、ORUを使うことで攻撃力を500アップし、相手モンスターの攻撃力を1000下げる! 〈オーバーレイ・チャージ〉! 』」

 

 ホープレイがORUを1つ吸収すると、体から光を発し、全身を白く染め上げる。それと同時にブルーアイズ1体が光を前に怯んだ様子を見せる。

 

  CNo.39 希望皇ホープレイ ATK:2500→3000 ORU:1→0

 青眼の白龍 ATK:3000→2000

 

「何をしてくるかと思えば、それでは1体倒すのがやっとだな! 所詮ブルーアイズ達の敵じゃない!」

 

 嫌らしい笑みに安堵を含ませる海馬だが、それに対するZEXALは不敵に笑って手札の1枚を取り出す。

 

「『 勝利の方程式は全て揃った! 《RUM(ランクアップマジック)-アストラル・フォース》! 自分の場のランクが一番高いXモンスター1体を同じ種族・属性でランクが2つ高いモンスターへとランクアップさせる! 限界突破だ! ホープ!!! 』」

 

 海馬 LP:11600→12100

 

『ホォォォーーーープッ!!!』

 

 ZEXALの声に応えるようにホープレイが叫ぶと、ホープレイは金色の光となり、ZEXALの場の上空に現れた金色の渦へと飛び込む。飛び込んだ瞬間にホープレイは元のホープの姿へと戻った。

 

「『 ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!!! 』」

 

 遊馬とアストラルと共に歩みし者、始まりの”希望皇ホープ”。彼もまた多くの闘いを経て進化を重ねてきた。

 恐怖の闇を払い、絆の光を得た”希望皇ホープレイ”。

 光の中に心の闇を見た”希望皇ホープレイV”。

 心の闇に打ち勝ち、絆を深めた”希望皇ホープレイ・ヴィクトリー”。

 遊馬が示した進化の新たなる可能性”希望皇ホープ・ルーツ”。

 渦の中へと飛び込んだ”希望皇ホープ”を進化体の4体が囲み、希望皇ホープと共に愛剣”ホープ剣”を掲げる。

 

「『 人が希望を超え夢を抱く時、遥かなる彼方に新たな未来が現れる! 』」

 

 4体の進化体が光となってホープを包む。光は白き鎧となってホープに装着され、背中のライトウィング・シールドはより硬く機械的に変化する。これぞNo.39の進化の最終到達点。闇を斬り裂き光へ変える”希望皇”の最高位が閃光と共に渦から飛び出す。

 

「『 限界を超え、その手に掴め! 《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》!!! 』」

 

 No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ 光属性 戦士族 ランク6 ATK:3000 ORU:1

 

「『 ビヨンド・ザ・ホープの効果発動! X召喚に成功した時、相手のモンスター全ての攻撃力を0にする! 〈ビヨンド・ホープ・フォース〉!!! 』」

 

 ビヨンド・ザ・ホープが翼の上部に光を収束させると、その光をブルーアイズ達に向かって照射する。光を受けたブルーアイズ達は力を失い、がくりと項垂れた。

 

 青眼の白龍 ATK:2000→0

 青眼の白龍×2 ATK:3000→0

 

「何ィ!? 今度は全てのブルーアイズを無力化するだとぉ!?」

「『 ビヨンド・ザ・ホープは”希望皇ホープ”としても扱う! 手札から《ZW-阿修羅副腕(ゼアル・ウエポン アシュラ・ブロー)》の効果発動!  ”希望皇ホープ”に装備! 』」

 

 ZEXALの手札から赤い光が飛び出すとビヨンド・ザ・ホープを覆う。光を受けたビヨンド・ザ・ホープの翼が腕に変化し、4本の腕となる。合計6本となった腕を振るい、翼に付いていた刃を1本ずつ持って構える。

 

「『 阿修羅副椀を装備したホープは攻撃力が1000ポイントアップし、相手のモンスター全てに攻撃できる! 』」

 

  No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ ATK:3000→4000

 

「攻撃力4000のぜ、全体攻撃!?」

「『 天地神明にオレは誓う! 未来を掴む為に闘い抜くと! 輝け希望の光! 【ホープ剣・ビヨンド・アシュラ・スラッシュ】!!! 』」

 

 ビヨンド・ザ・ホープが6本の手に持った刃をブルーアイズ達に向かって投擲する。刃は1体に2枚ずつ襲い掛かり、ブルーアイズの体を斬り裂いて破壊した。

 

「ぼ、僕の”青眼の白龍”がぁぁぁぁぁ……ぜ……ぜん……め……めつめつめつ……」

 

 海馬 LP:12100→100

 

「『 確かにブルーアイズはすげぇカードだ! だけど、カード1枚1枚が力を合わせることでもっとすげぇ力が、”無限の力”が生まれるんだ! お前だって解っているだろう! ブルーアイズ達が出てくるまでの間、サギーやチューナーモンスター、色んなカード達の力があったことを! 』」

「ぐ、ぐぐ……」

「『 オレのカード達には色んな奴の思いが込められている! 父ちゃん、ゴーシュ、六十郎じいちゃん、エリファス……そしてオレ達自身の全身全霊の思いが! それが勝利への希望を生む! 』」

 

 ZEXALは墓地から光輝く1枚のカードを取り出す。

 

「『 ビヨンド・ザ・ホープの更なる効果発動! ORUを1つ取り除き、自分のモンスターエクシーズ1体を除外することで、墓地から”希望皇ホープ”を特殊召喚する! 自身を除外し、甦れホープ! 』」

 

 ビヨンド・ザ・ホープがORUを吸収すると、白き鎧が砕け散り、中からホープが現れる。

 

 No.39 希望皇ホープ 光属性 戦士族 ランク4 ATK:2500 ORU:0

 

「『 そしてLPを1250ポイント回復する! 』」

 

 現れたホープから光の粒子が放たれ、ZEXALを包み込む。ここまでのダメージを癒し、ZEXALは今一度体に力を籠める。

 

 ZEXAL LP:500→1750

 

「『 オレ達の勝ちだ、海馬! ホープでダイレクト・アタック! 【ホープ剣・スラッシュ】!!! 』」

 

 ホープは腰のホープ剣一振りを掴むと鞘が砕け散り、腰から引き抜いて構える。一呼吸の後にホープは飛び上がり、海馬に向かってホープ剣を振り下ろす。

 

「アアアアアーーーーーーー!!!?」

 

 海馬 LP:100→0

 

 決闘が終了し、ホープやカードのSVが消滅する。

 海馬は信じられないといった表情で場の台に手をついて項垂れた。

 

「そんな馬鹿な!? この僕が負けるなんて! こんなのありえない!」

「『 まだ解らねぇのか!? 』」

 

『遊馬』

 

 ZEXALの中でアストラルが遊馬に語り掛ける。

 

『どうやら彼の心は完全に”悪”に染まり切っているようだ。何を言っても無駄だろう』

「でも……それでもオレは諦めたくねぇ!」

『その通りだ。諦める必要などない。私達の”力”なら、彼の心を救える。行くぞ遊馬!』

「オウ!」

 

「『 熱き情熱が勝利を導く! エクシーズ・セカンド・チェンジ! ”ZEXAL”!! 』」

 

 ZEXALが赤く輝きを放つと、その姿が大きく変化する。Dゲイザーは完全に体と一体化し、アーマーは白く染まりより強固に。そして赤く燃えるような髪が背中まで伸びる。これこそ最強を超えし姿、”ZEXALⅡ(ゼアルセカンド)”である。ZEXALⅡは飛び上がって海馬との距離を詰めると、海馬に向かって右手をかざす。

 

「『 この世の全ては1枚のカードから創られた。ならば”人の心”もまた同じ! 善と悪を表裏とする”人の心”。黒く染まった海馬の”善の面”を描き換える! リ・コントラクト・ユニバース!!! 』」

「ぐわぁぁぁぁぁーーーー!!?」

 

 海馬の心の奥の底。深い深い場所に漂う1枚のカード。真っ黒に染まったカードの表面が白く染まる。それと同時に海馬の顔から陰が消え去った。

 

「あ、あ……」

 

 海馬はその場に崩れ落ちるように座り込み、ガクリと項垂れて気を失った。

 ZEXALⅡは飛び退いて最初に立っていた決闘リングの足場に着地すると、合体を解除して遊馬とアストラルに戻る。

 

「海馬、どうなっちまうんだ? LP12100を一気に削り取ったから、ダメージも心配だぜ……」

『ダメージに関しては問題ないだろう。この装置によるダメージは君にしか及んでいないようだ。おそらくは、そのように最初から仕組んでいたのだろう』

「マジかよ!?」

『ダメージ毎の彼の様子を見れば分かることだろう』

「ぐぐ……そういやそうだった……」

 

 苦虫を噛み潰したような遊馬に呆れながら、アストラルは再び海馬を見る。

 

『彼の心の表面に再び善が現れた。今、彼の中で善と悪が闘いを始めている。……彼が誇り高き決闘者となるか、再び堕ちるかは彼次第だ』

「そっか……負けんじゃねぇぞ海馬! オレは信じて待ってるからな!」

 

 遊馬が胸の前で拳を握り締めた瞬間、突然決闘リングからファンファーレが鳴り響く。

 

「おわぁ!? な、何だ!?」

{DEATH-Tクリア、オメデトウゴザイマス。ショウシャニハオシミナイショウサンヲ、ソシテホウシュウガアタエラレマス}

 

 機械音声がそう告げると、遊馬の足場の台にある場が開き、中からカードパックが出てくる。

 

「え? ”リンクモンスターパック”? 貰っていいのか?」

『貰っておけ遊馬。この世界のルールで闘うには、リンクモンスターが不可欠だ』

「……お前、いやに詳しいな? あ、そういやまだ聞かせて貰ってないぞ! なんでお前がここにいるんだ?」

『……君の声が聞こえたからだ』

 

 

 

* * *

 

 

 

 バリアン世界と融合を果たしたアストラル世界。カオスの力を受け入れて皆が生きる力を取り戻したが、それは新たなる闘いを生み出した。”敵”を迎え撃つため、アストラルは闘いへと赴いた。

 

『これが私の、かっとビングだァーーーーー!!!』

 

 ”敵”と相対し、決闘を始めようとした瞬間、別の方向からの叫びがアストラルの動きを止めた。

 

 

 

アストラルーーーーー!!!

 

 

 

『ッ!? 遊馬……?』

 

 アストラルは叫びが聞こえた方へ向く。しかしそちらには何もない。アストラル世界の雲海が広がっているだけである。

 

『(気のせいではない! 確かに聞こえた! 私の名を呼ぶ遊馬の声が!) どこだ遊馬!!?』

 

 必死に呼びかけるアストラル。しかし返事は返ってこない。来たのは”敵”からの攻撃であった。

 

『くっ!?』

 

 間一髪で避けるアストラル。”敵”は雲海の間から次々と現れる。これでは遊馬を探すどころではない。

 

『どうする……このままでは……』

 

 再び襲い掛かってくる”敵”の集団。アストラルが身構えた瞬間、巨大な黒い槍が”敵”を一気に刺し貫く。

 

「ボーっとしてるんじゃねぇ!」

『シャーク!? 何故ここに!?』

 

 突然アストラルの前に現れたのはシャークこと”神代 凌牙”とそのエースモンスター”ブラック・レイ・ランサー”。そして次々と増援が現れ、”敵”との闘いに参加していく。バリアン七皇、トロン一家、オービタル7――――そして最後に小鳥が現れ、ふらふらと飛ぶのに慣れない様子でアストラルに近づく。その顔は不安で今にも泣きそうであった。

 

「ア、アストラル……」

『小鳥まで!? どうしてここに!? 何があったのだ!?』

「アストラル世界の危機だって聞いて、遊馬と皆で助けに来たの……そしたら……遊馬が突然いなくなっちゃって……」

『遊馬が……!? やはりあれは気のせいではなかったか!』

 

 アストラルは再び叫びが聞こえた方を向く。

 

『助けに行かなければ……だが、ここを離れてしまっては……』

「行きなよアストラル。その為に僕らがいるんだ」

 

 迷うアストラルに、仮面を着けた少年――――トロン一家の父”トロン”が遊馬の下へ行くことを促す。

 

「ここは僕らが食い止める。その間に君は遊馬を連れて戻ってくるんだ。いいかい? 必ず連れて戻ってくるんだ。食い止めて見せるけど、僕らだけで倒すのは無理だからね」

「もう俺達はただの人間なんだ。バリアルフォーゼだってできねぇ。ナンバーズも無い。勝つには絶対にあのバカとお前の力が必要なんだよ」

 

 闘いながらバリアン七皇の長”ナッシュ”であったシャークがアストラルに振り向く。

 

「アストラルお願い! 遊馬を助けて!」

 

 最後に小鳥が涙を迸らせてアストラルに懇願する。アストラルは一度目を閉じ、決意を示すように目を見開く。その瞬間、アストラルを囲むように100枚のカードが現れた。

 

『ナンバーズ達よ! 遊馬への道を切り開け!』

 

 アストラルはナンバーズ達と共に遊馬の叫びが聞こえた方へと飛び出す。ある程度飛んだ後、ナンバーズ達が空間をこじ開けた。

 

『この先か! ナンバーズ、堪えてくれ!』

 

 ナンバーズ達が空間を開いている間、アストラルはその中へと飛び込んだ。

 

『よし、戻れナンバーズ――――!?』

 

 アストラルがナンバーズ達を回収しようとした瞬間、ナンバーズ達は力尽き、異空間の中へと飛び散ってしまう。アストラル自身もナンバーズを放出したことにより力を消耗してしまっており、飛び散ったナンバーズ達を回収することができなかった。

 

『しまった!? くっ……”皇の鍵の船”が無い今、ナンバーズ無しではこの空間を渡ることはできない!』

 

 バランスを崩し、アストラルも異空間の彼方へと流されようとしていた。

 

『(皆……遊馬……すまない……)』

 

 悔しさを噛みしめながらアストラルが目を閉じようとした瞬間、1枚のカードがアストラル目掛けて飛来し、実体化してアストラルを掴む。

 

『これは……お前は……!?』

『ムカエニイコウ……ワガヌシ、ワガトモ、ワガハンシン……』

『”ホープ”……』

『ソレガワタシノ”イシ”デアル』

 

 ホープは守るようにアストラルを胸に抱き、異空間を突き進む。

 

『……そうだったな。あの時だって、お前が”始まり”だった。行こうホープ。遊馬を迎えに――――』

 

 

 

* * *

 

 

 

「ナンバーズが飛び散ったって……アストラルお前”記憶”は大丈夫なのか!?」

『心配ない。ドン・サウザンドの時とは違うからな』

 

 アストラルから事の経緯を聞きながら、遊馬は施設内を再び探索していた。出口を探すためである。かれこれ数十分、階段やエレベーターを上ったり下ったり、施設内を歩き回ったりしたが外への出口は見つからない。

 

『ただ、問題は起きている』

 

 そう言ってアストラルは1枚のカードを遊馬に見せる。

 

 No.25 重装光学撮影機フォーカス・フォース

 

「あ、ナンバーズ! お前一人で回収したのか?」

『ああ。そしてこのカードはこの世界の決闘者が所持していた。おそらく残りのナンバーズもこの世界に散らばったのだろう』

「……それってもしかして?」

『……ナンバーズがなければ”船”も動かせない。我々が元の世界に戻るため、また”ナンバーズ集め”だ』

「ぐわぁぁぁ~! またかよぉ~!? えーと、ホープとフォーカス・フォースだから……後98枚~!?」

『私がここまで回収したナンバーズはホープを含め6枚。後94枚だ』

「そんな変わんねぇ!?」

 

 そう叫んで遊馬はふと気づき、アストラルに向き直る。

 

「そういやお前、ルールとかリンクモンスターのこととか知ってたし、ナンバーズも回収してるんだよな? 何時からここにいるんだ?」

『この世界に来てから既に3日だ』

「げぇ!? どんだけ寝てたんだよオレ!?」

『ここは異世界だ。到着の時間にズレが起こっても不思議ではない……遊馬、ここまで話を聞いていたのなら、君でも流石にここが君のいた世界やアストラル世界とは違うことは解っているな?』

「わ、解ってらぁ! 馬鹿にすんなよ!」

『私達が知らないルール、カード……そして、異世界でなければ変身できない”ZEXAL”になれたのがその証拠だ』

「そういやそうだな。まったく意識してなかった……お?」

 

 歩いていた廊下を抜けると、施設のエントランスへと出る。つまり出口である。遊馬は駆け出して自動ドアをくぐると、太陽の光に目を細めた。

 

「くぅ~! やっと外に出られたぜ! それにしても……」

 

 遊馬が辺りを見渡すと、そこはビルと街路樹が並び、道路が伸びる”街中”であった。後ろを振り返ると、今までいた施設は大きなビルの中であったことがわかる。

 

「異世界って言うからゲームとかに出てくるもっとこうファンタジ~みたいなとこかと思ってたぜ。しかも妙に古臭い町だなぁ。歴史の教科書に載ってそうだ」

『この建物は”海馬コーポレーション”というらしい。さっき闘った相手と同じ名前だな』

「へぇー自分の名前がついたビル持ってるなんて、金持ちなんだな。……で、アストラルは3日前からここにいるんだから、この辺詳しいよな?」

『観察に抜かりはない。街並みは違うが、基本は君の世界と変わらない。皆が食事をし、仕事をし、学校へ行き、決闘をする』

「……そんだけ?」

『食事からの出す永久コンボもある。トイレに駆け込むのを見た。中は見ていないぞ。死なれたら困るからな』

「そうじゃねぇよ! もっとこう……どこ行ったら何があるとか、何か知ってるやつがいるとか、あるだろ?」

『すまないが、君が求める情報は無い』

「え~? 一体3日間何してたんだよ?」

『君を捜していた』

 

 あっと固まる遊馬。当然な話である。

 

「……ワリィ、ありがとよ」

『解ればいい。……とりあえずこの町を出よう。もうここにはナンバーズの気配もしない』

「そっか。……よっしゃ、行くぜアストラル! 分かんないことだらけでもかっとビングで突き進むだけだ! 皆も闘いながら待ってる! 急ごうぜ!」

『ああ!』

 

 見知らぬ世界に分からないことだらけ。ナンバーズも集めなければならない。前途多難な道だが、何も恐れることはない。腰には頼もしい仲間(カード)達、胸には熱いかっとビング、そして隣には最高の相棒がいるのだから――――




遊馬の相手は海馬瀬人(マイクラ前)でした。
デッキテーマは”初期を意識したバニラ型ブルーアイズ”。
”原作以上にブルーアイズに拘るやべー奴”な感じで書きました。
ラスト付近の無理のありすぎる戦術はどうしてもバンダイ版の”ブルーアイズ3体連結”を再現したかったからです。
8回連続攻撃は3体連結のモンスター効果でした。

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