今年もよろしくお願いします。
ちょっとミスって辻褄が会わなくなっていたので、遊矢のプロローグに一部修正を加えました。大きな設定や展開に関わるものではなく、見返さなければならないほどの修正ではありませんが、ご了承ください。
「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンでダイヤモンド・ドラゴンを攻撃! オッドアイズの効果により戦闘ダメージは倍だ! 【螺旋のストライク・バースト】!」
遊矢が駆るDホイールに並走する二色の眼を持つ龍。それが後方へと振り返り、後ろから追ってくるDホイールの上空を飛ぶダイヤモンドの鱗に覆われたドラゴンに向かってブレスを放つ。
「俺のレアが!? ぐわぁぁぁ!?」
名蜘蛛 LP:800→0
「ターンエンド!」
LPが0になると相手のDホイールが急停止して転倒し、決闘者ごと遥か後方へと消える。
勝利したと言うのに遊矢の顔から緊張が抜けない。何故なら相手が後”3人”もいるからである。
「俺のターン! よくも名蜘蛛をやりやがったな! 凍氷帝メビウスで攻撃!」
追手の一人”氷丸”が従える凍氷帝メビウスがオッドアイズに向かって飛び掛かる。
「イッツ・ショータイム! 罠カード《万能地雷グレイモヤ》! 凍氷帝メビウスを破壊する! 1・2・3! イグニッション!」
オッドアイズに迫るメビウスの足元が爆発し、メビウスは空に打ち上げられ、爆散して色取り取りの花火となる。
「如何でした? きれいな花火――――」
「テメェよくもやりやがったな! ターンエンド!」
「うわー! せめて楽しんでやろうよ~! こっちは何人も相手してるのに~!」
自慢のエンタメも通じず、逃げるようにアクセルを掛けて距離を離す遊矢。牛尾との決闘の後、夜が明けたものの、空は気が滅入りそうな曇り空。その曇り空の下で行く当てもなく街を探索していた遊矢は、ガラの悪い決闘者達に目を付けられて追いかけまわされていた。最初こそは遊矢のエンタメに気を取られていた不良達も、今や仲間を倒した遊矢憎しで追ってきている為、エンタメに見向きもしない。
「俺のターン! さっきはよくも弟を! ここからタダで帰れると思うな! ジュラック・スピノスで攻撃!」
弟を遊矢に倒された事への報復に来た兄”陸王”が炎の背びれを持つスピノ・サウルスをオッドアイズにけしかける。
遊矢は道路の先にAカードを見つけると、それを手に取って発動する。
「Aマジック《ナナナ》! このターン、オッドアイズの攻撃力を700アップする!」
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK:2500→3200
ジュラック・スピノス ATK:2600
迫るスピノスに対し、オッドアイズは尻尾による強烈な薙ぎ払いを頭部に浴びせ、スピノスをノックダウンして破壊する。
「ぐわぁ!? おのれ……ターンエンド!」
陸王 LP:2000→800
「よし行けリュウ!」
「うん兄ちゃん! ドロー! 闇より出でし絶望で攻撃!」
Dホイールを運転する学ランを着た兄”虎太郎”と、サイドカーに乗って決闘を行う眼鏡を掛けた小男の弟”龍二郎”、”水沼兄弟”の二人が巨大な影の化け物に命じ、オッドアイズを攻撃させる。最上級モンスターの三連撃には流石の遊矢も手が回らず、オッドアイズは化け物が振るった爪の一撃で破壊されてしまう。
「うわぁ!?」
遊矢 LP:1000→700
「おおリュウ! 流石は俺の弟だぜ!」
「へへ! ターンエンド!」
「一人一人は大したことないけど、流石にこの人数は……」
最初は6人いた不良決闘者達。氷丸の相棒”雷丸”、陸王の弟”海王”、そして名蜘蛛コージは倒すことはできたが、幾ら遊矢でも6対1は厳しい。手札は0、LPは僅か、Pスケールも氷丸のメビウスに崩されてしまった。
「Aカードも見えない……どうする……!」
突破口探る遊矢。そんな時、後ろの3台とは違うエンジン音が決闘コースに響き始める。
「に、兄ちゃん皆! 何か来る!」
音に気付いた龍二郎が後ろを振り返ると、凄まじいスピードで接近してくる赤いDホイールがあった。そのDホイールには青いジャケットの青年が跨り、ヘルメット越しからでも解る鋭い眼光を前の3台に向けていた。
「また新手か!?」
遊矢が緊張した面持ちで赤いDホイールの乱入者へと振り返る。遊矢が振り返った瞬間、乱入者は左腕に装着したデッキホルダーからカードを引く。
「俺のターン!」
??? 手札:5→6
〔乱入ペナルティ! 2000ポイント!〕
??? LP:4000→2000
「ぐっ!? ……相手の場のみモンスターが存在する場合、《レベル・ウォリアー》をレベル4として特殊召喚できる!」
乱入者の場に4つの星のマークがついたヒーローが現れ、4つの星全てが点灯する。
レベル・ウォリアー 光属性 戦士族 レベル3→4 ATK:300
「手札のレベル1モンスター1体を墓地に送ることで、手札の《ビッグ・ワン・ウォリアー》を特殊召喚!」
墓地へ送ったカード
ジェット・シンクロン
続けて頭部に大きな”1”の数字が書かれた全身スーツの戦士が飛び出す。
ビッグ・ワン・ウォリアー 光属性 戦士族 レベル1 ATK:100
「相手の場にレベル5以上のモンスターが存在する場合、手札から《ジャンク・ジャイアント》を特殊召喚できる!」
更にジャンク・ジャイアントが現れ、大きな巨体を揺らしながら場に降り立つ。
ジャンク・ジャイアント 地属性 機械族 レベル6 ATK:2000
「戦士族のビッグ・ワン・ウォリアーをリリースし、《ターレット・ウォリアー》を特殊召喚!」
ビッグ・ワン・ウォリアーが光の中へと消えると、その光からターレット・ウォリアーが現れる。
ターレット・ウォリアー 地属性 戦士族 レベル5 ATK:1200→1300
「墓地のチューナーモンスター《ジェット・シンクロン》の効果発動! 手札を1枚墓地へ送り、このカードを特殊召喚する! そして墓地へ送った《ボルト・ヘッジホッグ》は俺の場にチューナーモンスターが存在する場合、墓地から特殊召喚できる!」
最後にジェット・シンクロンと、背中に沢山のボルトが突き刺さったネズミが現れる。
ジェット・シンクロン 炎属性 機械族 レベル1 ATK:500
ボルト・ヘッジホッグ 地属性 機械族 レベル2 ATK:800
「随分と並べてきたが、どいつもこいつもザコばかりじゃねぇか! リュウのモンスターの足元にも及ばないぜ!」
「に、兄ちゃん! たくさんモンスターを出してきたってことは――――」
「レベル4《レベル・ウォリアー》に、レベル1《ジェット・シンクロン》をチューニング!」
ジェット・シンクロンが自身を光輪へと変えると、レベル・ウォリアーを囲み、4つの光、そして光の柱へと変える。
「疾風の使者に鋼の願いが集う時、その願いは音速の翼となる!」
光の柱から飛び出したのは、ジェット機をモチーフとした機械の戦士。胴体のジェット機から五体が伸び、エンジンを点火させて飛び上がる。
「シンクロ召喚! 舞い上がれ! 《ジェット・ウォリアー》!」
ジェット・ウォリアー 炎属性 戦士族 レベル5 ATK:2100
「ジェット・ウォリアーの効果発動! S召喚に成功した場合、相手の場のカード1枚を手札に戻す! 《闇より出でし絶望》を手札に!」
ジェット・ウォリアーが手を翳し、そこから衝撃波を放つ。それを受けた化け物は霧散して消滅する。
「ひぇぇぇ!? モンスターが!?」
「バトル! ターレット・ウォリアーでドレッドの男を攻撃! 【リボルビング・ショット】!」
ターレット・ウォリアーが砲塔を旋回させ、陸王に向かって機関砲を乱射する。
「ぐわぁぁぁ!?」
陸王 LP:800→0
陸王のDホイールは強制停止し、転倒して後方へと消える。
「ジャンク・ジャイアント! 黒いジャンパーの男を攻撃!」
ジャンク・ジャイアントが突進し、その巨体を氷丸にぶつける。
「だぁぁぁぁ!?」
氷丸 LP:2000→0
その攻撃方法に驚いた氷丸は強制停止の前に転倒し、陸王と同じように遥か後方へと消える。
「残った対象はお前だ! ジェット・ウォリアーで攻撃!」
「ワァァァ!? 暴力反対暴力反対!」
ジェット・ウォリアーが飛び出し、音速のスピードで龍二郎に拳を食らわせ、駆け抜ける。
「ギャー!?」
水沼兄弟 LP:2900→800
「リュウーーーー!?」
まだLPが残っているというのに、小心者の龍二郎は気絶してしまった。
「ボルト・ヘッジホッグ!」
最後にボルト・ヘッジホッグが丸まり、気絶した龍二郎の代わりに虎太郎へと体当たりを食らわせる。
「ぐはぁ!?」
水沼兄弟 LP:800→0
水沼兄弟のDホイールが強制停止し、後方へと消える。
今度は自分かと身構える遊矢を前に、乱入者は決闘を終了させた。
「大丈夫か? 大人数に襲われているように見えたが」
「え? あ、ああ……」
Dホイールの通信機から聞こえてくる落ち着いた声。遊矢は不思議とその声に安心感を抱き、緊張を解いた。
「俺はお前の敵じゃない。話をしたいんだが、構わないか?」
「え、あ、はい……えっと、貴方は?」
「俺の名は”不動 遊星”」
「俺は遊矢、”榊 遊矢”っていいます」
「遊矢、表通りにいるとまたさっきの連中に絡まれる。ここから少し離れた人気のない場所へ移ろう」
そう言うと遊星は先導してDホイールを走らせる。
「(話が通じる……今まで会った人は誰でもまず決闘しろだったのに)」
『遊矢』
遊矢が遊星の後ろについた瞬間、ユーゴが姿を現す。
『あいつ今”不動 遊星”って言ったか?』
「言ってたけど、ユーゴ知ってるの?」
『俺どころか、S次元で遊星を知らない決闘者はいないと思うぜ』
「え? じゃああの人はS次元の人なのか?」
『人っつーか……うーん、本当に実在したかは分からない、言わば”都市伝説”なんだ』
ユーゴ曰く、”不動 遊星”はコモンズの人々が創り出した”架空の英雄”であるとのこと。
『例えば遊矢、お前はライディング・デュエルのルーツは知ってるか?』
「ああ、コモンズ達が最初にやりだしたって聞いてるけど」
『その最初のDホイーラーが遊星だって言われてる』
続けてユーゴは遊星に関する伝説を語り始める。
遊星はトップス出身であり、トップス、コモンズどちらにも分け隔てなく接する人だった。機械に強く、何時もコモンズの生活を助けていたり、鬱憤を募らせるコモンズの為にライディング・デュエルを考案したり。更にかの決闘王”ジャック・アトラス”のライバルだったとも言われており、彼のエースモンスター”レッドデーモンズ・ドラゴン・スカーライト”の傷は遊星との決闘で付けられたものであると言われる。
「ええ~? S次元でそんな話聞いたことなかったけどなぁ? ジャックも特にそんな話してなかったし……」
『だからあくまで”都市伝説”だっつーの! そんな奴本当にいたらシティの歴史変わってるって』
「で、その都市伝説が今、目の前にいると……」
『何なんだろうな~?』
* * *
遊星に連れられてやってきたのは、表通りから離れた廃墟の前だった。
「ここでいいだろう。これくらいなら崩れる心配もない」
遊星はDホイールから降りると、ヘルメットを脱いで遊矢へと向き合う。鋭角で特徴的な髪型に、整った顔立ち。そしてその顔に走るラインのようなマーカー――――
『やっぱり遊星だ。昔リンに読んでもらった都市伝説の本に載ってたイラストそっくりだ!』
少し興奮した様子のユーゴを横に、遊矢もDホイールから降りて着込んでいた学生服を肩に掛け、ゴーグルを上げる。すると遊星の無表情だった顔に少しだけ驚きが浮かぶ。
「……まだ中学生ぐらいか? その歳であれだけのレベルのDホイーラーなのは凄いな」
「え、や、まあ……色々あって」
照れながら笑う遊矢を連れて遊星は廃墟内に入ると、中で見つけた二つの椅子の内の一つを遊矢に勧め、自分ももう一つに座る。
「……聞きたいことがあるんだが、いいか?」
「は、はいどうぞ!」
ユーゴの話を聞いてから、目の前の人物が大物であると感じた遊矢は少し緊張した様子で頷く。
「まず一つ、君はここの人間か?」
「違います。気づいたらここにいて……」
「……」
少し考えるように視線を落とした後、遊星は再び顔を上げる。
「俺もそうだ。気づけばこの世界にいた。決闘が支配するこの世界に」
「決闘が?」
「会う人間は必ず決闘を挑んでくる。こちらが話をしようとしても、聞かないかはぐらかされてしまう。ようやく話が通じたのが君だった」
「そ、そうなんだ! 皆問答無用で……」
「この世界のある決闘者は、それを俺への”試練”だと言っていた」
「試練……試練って一体何なんですか?」
「俺にも分からない。分かるのはそれが俺と……君に課せられているということだけだ」
遊星の言葉に目をパチクリとさせ、遊矢は自身を指さす。
「俺も!?」
「俺と同じようにここへと連れてこられたのなら、そうだろう」
「俺への試練って……」
少し前に赤馬 零児から課せられた”試験”を突破したばかりだと言うのに、また試されるのか――――その理由に心当たりの無い遊矢は難しい顔をして首をひねる。
「とにかく、今はどうやって元の世界へと戻るか、その手掛かりを共に探そう。君と俺ならば、さっきの連中が来ても対処できるだろう」
「(こんな状況で、随分と落ち着いた人だなぁ)」
「ならいい情報があるわよ?」
突然、建物の出入り口から聞こえてきた声に、遊星と遊矢は立ち上がりながら声の方へと向き直り、身構える。出入口には一人、ライダースーツを身に纏った女性が立っていた。
「何者だ?」
「やだ、そんな怖い顔しないでよ。折角出向いてきたって言うのに」
女性は先でまとめた長い後ろ髪を揺らし、渦巻くように跳ねた前髪を弄りながら遊星に笑い掛ける。スタイルの良い美人であった。
「私は”ゴーストガール”。このエリアの”番人”よ」
「ゴースト……」
「あら? 何か引っかかったかしら?」
渋い顔の遊星に首を傾げるゴーストガール。確かに遊星にとって”ゴースト”の名は縁起の良いものではない。
「もしかして”ガール”なんて歳じゃないだろっていいたいわけ? 失礼しちゃう」
「いや違う……だが、君もDホイーラーだろう?」
「そうね、できるわよ?」
「なら、”ゴースト”は止めておいた方がいい。もっと……相応しい名乗りがあるはずだ」
遊星の世界での出来事は、彼女には関係の無い話だろう。しかし、遊星にとって”ゴースト”と言う名前は繰り返してはいけない、繰り返させてはならないキーワードなのである。
「何かよく解んないけど……ま、本名でいいか! ここで気にすることじゃないし」
ゴーストガールは髪をかき上げ、改めて遊星へと向き合う。
「私は”別所 エマ”。このエリアの番人よ。私を倒さなければ貴方たちはこのエリアから出られない。でも私を倒せたら良い事教えてあげる」
「これも試練か?」
「そう言う人達もいるわね。まあ私もそう言われてきてるんだけど、私にとっては単なるお仕事。決闘者が来たら決闘する。勝ったら報酬、負ければメッセンジャー、それだけね」
「指示したのは何者だ?」
「それを言うのはお仕事じゃないわ」
「……分かった、決闘しよう」
遊星は頷いた後、遊矢へと向き直る。
「遊矢――――」
遊星が遊矢へ呼びかけようとした瞬間、遊矢の後ろの壁が突然爆発し、遊矢が遊星の元へと吹き飛んでくる。
「うわぁぁぁーーーー!?」
「遊矢!?」
遊星は遊矢を受け止めて状態を確認する。凄い吹き飛び方だったが、遊矢に大きな外傷は見られず、遊矢は痛がりながらも一人で立ち上がる。
「いてて……何だ一体?」
「大丈夫か遊矢!?」
「はい、何とか……」
「オラァァ! 見つけたぜ決闘者! こんな所に隠れてやがったのか!」
爆煙の中から聞こえてくる乱暴な言葉遣い。さっきの不良達が報復に来たのかと身構える遊矢だったが、ふと違和感を覚える。
「(何だ? 凄い乱暴な言葉だけど……女の子?)」
とても荒くれ共の姿を想像できない黄色い声が、廃墟内に響く。煙が晴れると、そこには背丈と同じ位大きなランチャーを担いだ少女が立っていた。気の強そうな顔はキリリと勇ましく、しかしランチャーや服装、髪色は少女らしくピンク色中心。遊矢よりも年下に見えるが、出るとこは出た体型など、相反する要素を幾つも兼ね備えている少女であった。
少女はDゲイザー越しの目を手前に立っている遊矢に向け、ランチャーを構える。
「お前か! ゴロツキどもが話してた決闘者は?」
「いきなりなんだよ君は!? それ本物の大砲!? それで壁を俺ごと吹っ飛ばしたの!?」
「ゴチャゴチャうるせぇ! 決闘者かどうか聞いてんだから答えやがれ!」
「(何てめちゃくちゃ娘だ!? 柚子よりも気が強いぞ!? いや、もう気が強いとかいう問題じゃ……)」
「あら”アンナちゃん”じゃない? 相変わらず賑やかな娘ねぇ」
突然の乱入者に対して身構えている遊星の後ろから、エマがひょっこりと顔を出す。それに気付いた少女――――”神月 アンナ”は構えたランチャーを下げる。
「あれ? エマ姉ちゃんじゃん。番人がこんなとこで何してんだよ?」
「お仕事。このエリアにいる決闘者が固まって集まってたから、こっちから出向いたのよ。遊撃手達が頑張ってるから、何時こっちにくるか分かったもんじゃないし」
「悪いがこいつは俺の獲物だからな! 譲らねぇぞ!」
「取らないわよ。私のお相手はこっちのお兄さんだもの。……そうだ!」
エマはポンと掌を叩くと、遊星の後ろからアンナの側へと歩み寄る。
「どうせならタッグデュエルにしない? 私とアンナちゃん、お兄さんと……遊矢君だったわね? そのチームで」
「えー!? いいよそんなの! 俺が二人ともやっつけてやる!」
「アンナちゃん、アンナちゃんと私の関係は?」
「うっ……エリアリーダーは番人、俺は遊撃手……」
「そ、アンナちゃんは私の言うことを聞く義務がある。これを破ったら怒られるじゃすまないわねぇ」
「わ、分かったよ! タッグやればいいんだろやれば!」
「はいお利口様。……こっちは話し付いたけど、お兄さん達はどう?」
エマに問われると、遊星も遊矢の側に立つ。
「遊矢、行けるか?」
「はい! 大砲撃ちあえって言われてもできないけど、決闘ならできます!」
「よし……その決闘、受けて立つ!」
* * *
「それじゃ、ルールを説明するわね」
表通りに出た4人はDホイールを横一列に並べる。エマのDホイールは、通常のバイクにRSVプレートを発生させる装置を取り付けて改造した物のようだ。
「今回のルールは”ライディング・タッグフォース・ルール”よ。簡単に言えばライディング決闘をタッグフォース形式で行う決闘ね」
LPはチームで8000ポイント。一つの場・墓地・除外ゾーンをチームで共有。決闘場には一人が入り、相手のターン終了時にパートナーと入れ替わる。
「ここまでは通常のタッグフォースだけど、違いはここから。お兄さんの所のライディング決闘と、遊矢君の所のライディング決闘の違いは解ってるかしら?」
「え? 違うんですか?」
学生服を着こんで準備する遊矢が遊星へと振り向く。
「俺の知っているライディング決闘は《スピード・ワールド2》というフィールド魔法の中で、デッキに”
「そして遊矢君が参加すると、コース上に”Aカード”がバラまかれる”アクション・ライディング決闘”が始まるのよね?」
「アクション……?」
「
遊矢が遊星にA決闘を説明する。エンタメ感満載で。
「――――というわけで、決闘の最終進化系、それがA決闘なのです!」
「……成程、理解した。ライディング決闘以上に、決闘者の身体能力が求められるようだな」
「(遊星さん、せめて顔色くらいは変えて欲しかったな……)」
理解はしてもらえたものの、遊星は無表情のまま真面目に返答する。遊矢としては遊星に楽しんでもらいたいという考えがあったので、この反応は少し寂しい。
「(いや、俺がまだ未熟なんだ! 必ず遊星さんを笑顔にしてみせるぞ!)」
「違いは解った。だが、それが今回のルールにどう関係する?」
「これを見て」
エマが決闘盤からSVのモニターを出現させ、カードリストを映し出す。
《ASp-回避》
①:自分のSPCが4つ以上存在する場合、SPCを2つ取り除いて発動できる。相手モンスター1体の攻撃を無効にする。
《ASp-奇跡》
①:自分のSPCを全て取り除き、フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターは戦闘では破壊されず、戦闘ダメージは半分になる。
《ASp-加速》
①:自分にダメージを与える効果が発動した場合に発動できる。自分のSPCを4つ増やし、その効果で自分が受けるダメージを0にする。
②:このカードを発動したターン終了時、自分のSPCを1にする。
「あ、これってAカード?」
「そ、遊矢君は見慣れてるわよね? じゃあ違いは分かる?」
「えっと……あれ? アクション・スピードスペル?」
「デッキには通常の魔法カードを投入してもらうけど、今回の決闘にはSPCが存在するわ」
SPCは2ターン目以降のお互いのスタンバイフェイズ時に1つずつプレイヤー自身に追加されるカウンターである。本来ならばフィールド魔法の効果やSpを発動するための条件やコストだったりするのだが、今回のルールでは扱いに違いがある。
「本来のA決闘ではAカードは拾った瞬間から使えたけど、今回の決闘では発動条件や効果にSPCが絡んでくるわ」
「本当だ。テキストにSPCって書いてある」
「以上のルールを展開するフィールド魔法は《クロスオーバー・アクセル2》! スタンバイフェイズ時のSPCのチャージは先攻1ターン目から。スピード・ワールド2にあったSPCを消費する起動効果は無くなってるから注意ね。それと、ASpは出番のプレイヤーしか拾えないわ。後は何時ものタッグフォースルールと一緒、以上! 何か質問ある?」
エマが3人を見渡すと、遊矢がおずおずと手を上げる。その視線はアンナへと向けられていた。
「あの、ルールについては大丈夫なんだけど……アンナはそれでライディング決闘するつもりなの?」
「ああ!? 何か文句でもあんのかよ!」
「いや文句も何も……Dホイールじゃないじゃん!?」
アンナが横に置いているのはDホイールではなく、先程担いでいたランチャー。ランチャーは飛行機に変形できるらしく、変形して現れた翼に垂直離陸の為のプロペラファンが付いている。
「この娘、”フライング・ランチャー”にしか乗れないのよ、決闘自体は決闘盤があるからできるし、見逃してあげて」
「まあ、決闘ができるならいいのかな……? (決闘中に撃ったりしないよな?)」
「もういいだろ! とっとと始めようぜ!」
全員がDホイールとフライング・ランチャーに跨り、エンジンと決闘盤を起動させる。Dホイールは唸り、フライング・ランチャーはふわりと宙に浮く。アンナはバランスを崩して落ちかけるが、何とか堪えた。
「先攻・後攻はこの先の十字路の左……決闘コースの第一コーナーを制した決闘者のチームからでいいかしら?」
全員が頷き、いよいよスタートが迫る。
〔フィールド魔法《クロスオーバー・アクセル2》、セット〕
「「「「 ライディングデュエル! アクセラレーション!!! 」」」」
決闘スタートと同時にASpがコース上にバラまかれ、4人が一斉にスタートする。真っ先に飛び出たのは遊星、続けてエマ、遊矢の順。WRGPを制したマシンである”遊星号”の性能はダントツであり、遊星の腕と経験も合わさって他の追随を許さない勢いで先行する。元々が通常のバイクであるエマのマシンと、初心者用のオートパイロット設定の補助がついている遊矢のマシンではとても追いつけない。このまま遊星が第一コーナーを制するかに見えたが――――
「……簡単にはいかないようだな」
「うわ!? なんだこの道!?」
「遊矢、俺に続け!」
第一コーナーまでの直線コースのコンディションは最悪の一言。道路の所々が抉れていたり、ゴミや瓦礫の障害物が点々と置かれていて思う様に進めない。遊星は難なく躱し、遊矢はそれに倣って続く。エマはこのことを知っていたのか、障害が少ないルートをスイスイ進んでいく。そして最後の一人は――――
「よーし、貰ったぜ!」
穴も障害物も飛び越え、一直線に第一コーナーへと向かうのはフライング・ランチャー。トップの遊星すら飛び越し、難なく第一コーナーを制する。
「さ、流石にそれはずるいぞ!」
「飛んじゃいけないなんてルールは無かったぜぇ! 俺達の先攻だ!」
アンナが通った後、障害物の影響で並んだ3人がほぼ同時にコーナーを通過する。
「アンナちゃんが1番だったから、パートナーである私は自動的に3番手ね。元々の相手で考えるなら、2番手は遊矢君かしら?」
「俺は構わない。遊矢はどうだ?」
「遊星さんがいいなら、行かせて貰うよ!」
アンナ、遊矢、エマ、遊星の順となり、決闘が始まる。
「俺のターン!」
アンナ SPC:0→1
遊星 SPC:0→1
「《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》を召喚!」
アンナの場に白いボディの列車が現れる。その列車の上には巨大な騎士の上半身が繋がっており、上半身は剣と盾を構える。
深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト 地属性 機械族 レベル10 ATK:3000→0
「最上級モンスターをリリース無しで召喚か……」
「その代わり元々の攻撃力が0になるけどな。俺の場のモンスターが地属性・機械族のみの場合、こいつを手札から特殊召喚できる! 《弾丸特急バレット・ライナー》!」
続けてアンナの場に、まるで弾丸のような凄まじいスピードで駆け付ける列車が現れる。
弾丸特急バレット・ライナー 地属性 機械族 レベル10 ATK:3000
「行くぜ! レベル10の《弾丸特急バレット・ライナー》と《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》でオーバーレイ!」
アンナの場の2体の列車が橙の光となって飛び上がると、アンナの場に現れた赤い渦の中へと飛び込む。
「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」
渦の中から赤い閃光が放たれると、その中から正方形のブロック体を乗せた車両が現れる。
「鉄路の彼方より、地響きと共にただいま到着! 現れろ《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》!」
超弩級砲塔列車グスタフ・マックス 地属性 機械族 ランク10 ATK:3000 ORU:2
「どうだ! 俺のエースモンスターで、Dホイールなんかペシャンコにしてやる!」
「(X召喚……話には聞いていたが、S召喚とは違った可能性を感じる)」
自分の知らない決闘の世界がここにある。そう思った瞬間、体中の血が沸き立つような感覚を得た遊星。自分のS召喚を見た時、先人二人はこんな気持ちだったのか――――そう思った遊星は、フッと笑みを漏らした。
「てめー何笑ってんだ! もう怒ったぞ! グスタフ・マックスの効果発動! ORUを1つ取り除き、相手に2000ポイントのダメージを与える!」
超弩級砲塔列車グスタフ・マックス ORU:2→1
グスタフ・マックスがORU1つを取り込むと、ブロック体が開き、中から長砲身の大砲が伸びる。
「発射オーライ! 〈ビッグ・キャノン〉!」
大砲が遊星へと向けられると、轟音と共に砲弾が放たれる。遊星はそれを躱すが、コースに着弾した弾が凄まじい爆発を起こし、爆炎が遊星と近くにいた遊矢を飲み込む。
「うわぁぁぁ!?」
「ぐうっ……本人も決闘も規格外というわけか……!」
遊星 LP:8000→6000
「どうだどうだ! 俺はカードを伏せてターンエンド!」
アンナ
LP:8000
SPC:0
手札:2
〔EXモンスターゾーン〕
・超弩級砲塔列車グスタフ・マックス ATK:3000 ORU:1
〔魔法・罠〕
・セット
「(凄いな、とにかくデカくてド派手な決闘……これも”エンタメ決闘”と言えるかも)」
遊矢は遊星と代わって前に出る。
「(アンナ、さっき遊星さんが笑ってたって言ってたな……これは負けてられないぞ!) 俺のターン!」
遊矢 手札:5→6 SPC:1→2
アンナ SPC:1→2
「レディースエーンジェントルメーン!」
遊矢はDホイール上で立ち上がり、両腕を広げる。
「な、何だぁ!? 何やってんだお前!?」
流石に困惑したアンナ。エマも遊星もそれぞれのパートナーの後ろで目を丸くしている。
「エンタメ決闘なら私も負けません! 私のエンタメもド派手に行きましょう! 魔法カード《螺旋のストライクバースト》!」
遊矢が魔法を発動させると、遥か上空に赤い輝きが現れる。それはどんどん大きさを増し、よく見ればそれはアンナ目掛けて一直線に飛ぶ赤い光線であった。
「仕返しのつもりか!? くそ!」
アンナは慌てて躱そうとするが、慌てていたせいかうまくフライング・ランチャーをコントロールすることができず、光線はアンナに命中する。
「うわぁ!? ……あれ?」
しかし、アンナにダメージが通るどころか衝撃すらない。困惑してキョロキョロしているアンナに、遊矢が笑いながらデッキから1枚のカードを取り出し、アンナを見せる。
「残念ながら螺旋のストライクバーストは相手にダメージを与えるカードではなく、デッキからレベル7の”オッドアイズ”を1体手札に加えるカードなのです」
遊矢 手札:5→6
手札に加えたカード
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン
「……テメェーーー!!! 紛らわしいことしてんじゃねぇぞーーーー!!!」
完璧に騙され顔を真っ赤にするアンナ。からかった遊矢は愉快そうに笑い、見せたカードを手札に加えた。アンナの後ろを走るエマは笑いを堪えながら遊矢へと顔を向ける。
「(遊矢君、上手いわねぇ。先制して優位に立ってたアンナちゃんを自分のペースに引き込んだわ。アンナちゃん、やり込められなければいいけど)」
「スケール1の《星読みの魔術師》と、スケール8の《時読みの魔術師》でPスケールをセッティング!」
遊矢が魔法・罠ゾーンの両端にカードを2枚置くと、プレートに”PENDULUM”の文字が浮かび上がり、それと同時に遊矢の場の両側面に光の柱が立ち上がる。左の柱には白い装束の魔術師が、右の柱に黒い装束の魔術師が、それぞれのスケールの数字と共に浮かび上がる。2つのスケールが揃ったことにより、柱の間に巨大な振り子が現れて揺れ動く。
「これでレベル2から7のモンスターが同時に召喚可能! 行くぞ! 揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け光のアーク!」
二人の魔術師の間を振り子が何度も往復すると、遊矢の場の上空に異空間の穴が開く。
「ペンデュラム召喚! 現れろ俺のモンスター達!」
遊矢の号令と共に、異空間の穴から3つの光が飛び出す。
「手札からレベル4《EMオッドアイズ・ミノタウロス》!」
最初に現れたのは二色の眼を持つ、蝶ネクタイを締めた半人半牛の怪物。だが見た目は恐ろしい怪物ではなく、漫画に出てきそうなコミカルなキャラクターであった。
EMオッドアイズ・ミノタウロス 闇属性 獣戦士族 レベル4 ATK:1200
「レベル4《EM
続いて現れたのは、額に小判を張り付けた竜。EMらしく蝶ネクタイを締め、小判には星型のマークが描かれている。
EM小判竜 水属性 ドラゴン族 レベル4 ATK:1700
「レベル7! 雄々しくも美しく輝く二色の眼! 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」
最後は遊矢のエースモンスター”オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン”が現れ、遊矢のDホイールと共に並んで走りだす。
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 闇属性 ドラゴン族 レベル7 ATK:2500
「EM小判竜が存在する限り、このカード以外のドラゴン族の攻撃力は500上がり、効果では破壊されない!」
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK:2500→3000
「グスタフ・マックスと並べてきやがったか!」
「バトル! オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンでグスタフ・マックスを攻撃!」
その瞬間、アンナはコース上で浮かぶASpを掴み、目を通してから発動する。
「同士討ちなんかさせねぇ! 《ASp-フレイム・チェーン》! SPCを1つ取り除き、相手モンスターの攻撃力を400ダウンする!」
「天空を見定める”星読みの魔術師”よ! その深遠なる力で仇成す敵を封じよ! 〈ホロスコープディビネイション〉!」
Pゾーンの星読みの魔術師がホロスコープの杖を構えると、アンナの決闘盤から警告音が鳴り、発動した魔法を手札に戻すように警告する。
アンナ 手札:2→3
「発動しない!? なんでだ?」
「Pゾーンに星読みの魔術師が存在する限り、相手はPモンスターとの戦闘時、ダメージステップ終了時まで魔法を発動できない!」
「チィ! なら罠カード――――」
「時空を見定める”時読みの魔術師”よ! その精緻なる力で守護せよ! 〈インバース・ギアウィス〉!」
Pゾーンの時読みの魔術師が弧を描く右腕のプレートを伸ばし、自身を中心に一周させる。その瞬間、開きかけていたアンナの罠カードがピタリと止まり、まるで時が止まったかのように動かなくなる。
「またかよ!?」
「星読みが魔法なら、時読みは罠さ! 行けオッドアイズ・P・ドラゴン! 正真正銘の攻撃技! 【螺旋のストライクバースト】!」
オッドアイズ・P・ドラゴンが赤い渦巻くブレスをグスタフ・マックスに向かって放つ。
「オッドアイズ・ミノタウロスの効果発動! 自分のPモンスターが相手モンスターに攻撃するダメージ計算時、その相手モンスターの攻撃力をそのダメージ計算時のみ、俺の場の”EM”及び”オッドアイズ”カードの数だけ100ポイントダウンする! 俺の場の条件を満たすカードは3枚! よってグスタフ・マックスの攻撃力を300ダウンだ!」
オッドアイズ・ミノタウロスが手に持った片手戦斧を山なりに放り投げると、グスタフ・マックスのボディに落ちてきた斧の刃が食い込む。
超弩級砲塔列車グスタフ・マックス ATK:3000→2700
「オッドアイズ・P・ドラゴンの効果発動! 相手モンスターと戦闘を行う場合、このカードが相手に与える戦闘ダメージは倍となる! 〈リアクション・フォース〉!」
ブレスがグスタフ・マックスに命中し、機体を爆散させる。
「うわぁ!?」
アンナ LP:8000→7400
「オッドアイズ・ミノタウロス! 小判竜!」
2体のEMも続いて飛び出し、斧や尻尾の一撃をアンナに浴びせる。
「ぐううっ!?」
アンナ LP:7400→6200→4500
「これでターンエンド!」
「このエンドに墓地へ送られたバレット・ライナーの効果発動! 墓地の機械族1体を手札に加える! 《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》を手札に!」
アンナ 手札:3→4
遊矢
LP:6000
手札:1
SPC:2
〔メインモンスター〕
・EMオッドアイズ・ミノタウロス ATK:1200
・EM小判竜 ATK:1700
・オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK:2500
〔魔法・罠〕
・LS:星読みの魔術師 スケール1
・RS:時読みの魔術師 スケール8
「くっそー! 見てろよ俺の――――」
「はいストップ! 次は私のターン!」
エマ 手札:5→6 SPC:2→3
遊矢 SPC:2→3
エマのカードはハノイの騎士と同じようにデータ化されており、デッキホルダーから突然現れたカードを引き、空中に浮かぶ手札のリストの中にドローしたカードを加え、使用するカードを指先でタッチする。
「(遊矢君は意外にできるみたいね。アンナちゃんはまだまだ突っ込んでくれると思うし、とりあえず私は場を固めるかな) 《オルターガイスト・マリオネッター》を召喚!」
エマの場に機械の花の中心から、不気味で機械的な上半身を生やしたモンスターが現れる。
オルターガイスト・マリオネッター 光属性 魔法使い族 レベル4 ATK:1600
「マリオネッターの効果発動! 召喚に成功した時、デッキから”オルターガイスト”罠カード1枚を自分の場にセットする! 永続罠《オルターガイスト・ホーンデッドロック》をセット! このカードは”オルターガイスト”の効果でセットされた場合、セットしたターンに発動できる! 手札から”オルターガイスト”1体を墓地へ送るわ!」
墓地へ送ったカード
オルターガイスト・フィフィネラグ
「罠カードを発動したことにより、手札の《オルターガイスト・マルチフェイカー》を特殊召喚!」
続けてエマの場に、蜘蛛の胴体から人型の上半身が生えた怪物が現れる。
オルターガイスト・マルチフェイカー 闇属性 魔法使い族 レベル3 ATK:1200
「このカードの特殊召喚に成功した場合、デッキから”オルターガイスト”1体を守備表示で特殊召喚! 来なさい《オルターガイスト・フィジアラート》!」
今度は魚のような胴体に4本の脚を生やし、頭に当たる部分から人型の上半身を生やした怪物が現れる。
オルターガイスト・フィジアラート 水属性 魔法使い族 レベル4 DEF:1200
「マリオネッターの効果発動! 自分の場の”オルターガイスト”カード1枚を墓地へ送り、墓地から”オルターガイスト”1体を特殊召喚する! オルターガイスト・ホーンデッドロックを墓地へ送り、墓地の《オルターガイスト・フィフィネラグ》を特殊召喚!」
エマの永続罠が消滅すると、入れ替わりで場に脚の無い竜に似た怪物が現れる。
オルターガイスト・フィフィネラグ 闇属性 魔法使い族 レベル2 ATK:0
「さあ、私の前に開きなさい! 未知なる異世界へ繋がるサーキットよ!」
エマが宣言すると、エマのDホイールの下に巨大なアローヘッドが現れる。
「アローヘッド確認! 召喚条件は”オルターガイスト”2体! 《オルターガイスト・マリオネッター》と《オルターガイスト・マルチフェイカー》をリンクマーカーにセット!」
エマの場のオルターガイスト2体が光の風となって”下・右”に位置するリンクマーカーへと飛び込む。
「サーキットコンバイン! リンク召喚!」
アローヘッドのゲートが開き、中から現れたのは炎を纏った異形の怪物。龍の様な胴体に六本の腕が生え、それを脚のように場について動き回る。そして龍の首に当たる部分に頭は無く、代わりに人型の上半身が生えていた。
「現れなさいLINK-2《オルターガイスト・へクスティア》!」
オルターガイスト・へクスティア 炎属性 魔法使い族 LINK-2(下・右) ATK:1500
「まだまだ行くわよ! レベル4の《オルターガイスト・フィジアラート》に、レベル2の《オルターガイスト・フィフィネラグ》をチューニング!」
エマがシンクロプログラムを起動し、2体のオルターガイストに青い炎を浴びせる。すると2体は粒子となり、混ざり合って6つの光輪を形成し、輪を連なってゲートを創る。
「伝説の悪しき聖霊よ! 悠久の時を超え、今ここに姿を現せ!」
ゲートが輝き、中から4本腕のドラゴンの様な怪物が現れる。手の一つには杖を持ち、登場と共に唸り声を上げる。
「シンクロ召喚! 現れろレベル6《オルターガイスト・ドラッグウィリオン》!」
オルターガイスト・ドラッグウィリオン 闇属性 魔法使い族 レベル6 ATK:2200
へクスティアリンク先:オルターガイスト・ドラッグウィリオン(下)
「
「遊矢君、アンナちゃんだけじゃなく私もやるもんでしょ? バトル! へクスティアの攻撃力はリンク先のオルターガイストの元々の攻撃力分アップするわ!」
オルターガイスト・へクスティア ATK:1500→3700
「ドラッグウィリオンで小判竜を攻撃!」
「くっ!」
遊矢はDホイールから身を乗り出し、コースに漂うASpを手にする。
手にしたカード
ASp-回避
遊矢 手札:1→2
「(回避! だけど……)」
遊矢はDホイールのモニターに映るSPCの残量を確認する。
「(俺のSPCは3つ、回避を発動するには4つ必要、これじゃ発動できない!)」
ドラッグウィリオンは3本の尾を伸ばし、小判竜を打ち据えて破壊する。
「ううっ!? 小判竜……」
遊矢 LP:6000→5500
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK:3000→2500
「ASpは外れだったのかしら? それともSPC不足? どちらにせよついてないわね。へクスティアでオッドアイズ・P・ドラゴンを攻撃!」
へクスティアが掌から火球を放つと、それはオッドアイズ・P・ドラゴンに命中し、爆発して破壊する。
「オッドアイズ!? うわぁ!?」
遊矢 LP:5500→4300
「1体残っちゃったけど、攻めは私の役割じゃないからいいわね? カードを伏せてターンエンド!」
エマ
LP:4500
SPC:3
手札:2
〔EXモンスター〕
・オルターガイスト・へクスティア ATK:3700 リンク先:O・ドラッグウィリオン(下)
〔メインモンスター〕
・オルターガイスト・ドラッグウィリオン ATK:2200
〔魔法・罠〕
・セット(アンナ)
・セット(エマ)
「くそ……カードはあるのに発動できないなんて格好悪い……次はもっとちゃんとエンタメしないと……」
「大丈夫か?」
「遊星さん……」
「俺に任せてくれ」
『さーて、都市伝説の実力、見せて貰うぜ!』
遊矢の後ろでユーゴは期待の眼差しを送っていた。その視線を受けながら、遊星は遊矢と入れ替わり、場に乗り出す。
「(X召喚、P召喚、L召喚……俺の時代、世界には無かった新しい召喚法)」
遊星は左手で強くグリップを握り、右手の指をデッキトップに掛ける。
「(俺の想像の先を行く新時代の決闘! だが、置いて行かれるつもりはない!)」
遊星は静かに闘志を燃やし、気合いを込めてカードを引き抜く。
「(誰よりも早く辿り着いて見せる! 新時代の先へ! 俺の決闘で!) 俺のターン!」
遊星 手札:5→6 SPC:3→4
エマ SPC:3→4
遊星はドローカードを素早く手札に加え、コース上のASpを手に取る。
遊星 手札:6→7
「遊矢がセットしたPスケールでP召喚を行う!」
遊星の宣言により、柱の間の振り子が大きく揺れ始める。
「集いし絆が、星の
柱の間に異空間の穴が開くと、そこから4つの光が飛び出す。
「ペンデュラム召喚! 出でよ俺のモンスター達! 手札からレベル2チューナーモンスター《サテライト・シンクロン》!」
最初に現れたのは、人工衛星型のロボット。
サテライト・シンクロン 闇属性 機械族 レベル2 ATK:700
「レベル2《クリア・エフェクター》!」
続けて現れたのは長く美しい黒髪と煌びやかな衣装を纏った巫女。
クリア・エフェクター 光属性 魔法使い族 レベル2 ATK:0
「レベル3チューナーモンスター《ドリル・シンクロン》!」
次は3つのドリルを装着した丸いロボット。
ドリル・シンクロン 地属性 機械族 レベル3 ATK:800
「レベル4《ジャスティス・ブリンガー》!」
最後に大剣を持った戦士が青いマントを翻して現れる。
ジャスティス・ブリンガー 地属性 戦士族 レベル4 ATK:1700
「あら、一気に出してきたわね? そこからどうするのかしら?」
「永続魔法《シンクロ・チェイス》を発動!」
「それってキーカード? ならへクスティアの効果発動! 魔法・罠が発動した時、リンク先のオルターガイスト1体をリリースすることでその発動を無効にして破壊する!」
へクスティアがドラッグウィリオンに命令すると、遊星が発動した永続魔法にむかってドラッグウィリオンが飛び掛かる。
「ジャスティス・ブリンガーの効果発動! 相手の場の特殊召喚されたモンスターの効果の発動を無効にする!」
「なら永続罠《オルターガイスト・プロトコル》発動! 自分の場の”オルターガイスト”カードの効果の発動及び、その発動した効果は無効化されない!」
「速攻魔法《コズミック・サイクロン》! LPを1000払い、場の魔法・罠1枚を除外する! オルターガイスト・プロトコルを除外!」
遊星 LP:4300→3300
遊星の場から発生した輝く竜巻が、エマの場の永続罠を消し去る。それと同時にジャスティス・ブリンガーが突っ込んでくるドラッグウィリオンを迎え撃ち、大剣で斬り捨てる。
「嘘!? 競り負けた!? ……リリースされて墓地へ送られたドラッグウィリオンの効果発動! 場に特殊召喚するわ!」
再びドラッグウィリオンが場に現れ、へクスティアの後ろに控える。
オルターガイスト・ドラッグウィリオン 闇属性 魔法使い族 レベル6 ATK:2200
へクスティアリンク先:オルターガイスト・ドラッグウィリオン(下)
「(凄い……今のチェーン合戦中に、遊星さんから凄い闘志を感じられた。何時もは不愛想な程クールなのに)」
「お兄さん、思ったより熱いじゃない? 決闘の方はおしゃべりなのかしら?」
「……”お前は一見クールに見えて、すぐ熱くなる”……俺の友が昔そう言っていた」
「嫌いじゃないわよそういうの? で、熱くなった貴方はここからどうするのかしら?」
「臆さず攻める! 光差す道よ、開け!」
遊星が空中を指さすと、そこにアローヘッドが現れる。
「アローヘッド確認! 召喚条件は”チューナーを含む戦士族・機械族効果モンスター2体”! チューナーの機械族《ドリル・シンクロン》と、戦士族《ジャスティス・ブリンガー》をリンクマーカーにセット!」
2体のモンスターが光の風となって飛び上がり、”左下・右下”に位置するリンクマーカーに飛び込む。
「集いし未来が、鋼の軌跡に絆を繋ぐ! 光差す道から出でよ!」
アローヘッドのゲートが開き、中から全身鋼のアーマーで覆われ、太腿にロケットブースターを付けた戦士が現れる。
「サーキットコンバイン! リンク召喚! LINK-2《ジャンク・コネクター》!」
ジャンク・コネクター 闇属性 戦士族 LINK-2(左下・右下) ATK:1700
「遊矢、モンスターを使う! レベル2《クリア・エフェクター》とレベル4《EMオッドアイズ・ミノタウロス》に、レベル2《サテライト・シンクロン》をチューニング!」
サテライト・シンクロンが自身を2つの光輪へ変えると、2体のモンスターを囲み、6つの光、そして光の柱へと変える。
「集いし願いが、新たに輝く星となる! 光差す道となれ!」
光の柱から飛び出したのは、星屑が輝く遊星のエースモンスター――――
「シンクロ召喚! 飛翔せよ《スターダスト・ドラゴン》!」
スターダスト・ドラゴン 風属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:2500
ジャンク・コネクターリンク先:スターダスト・ドラゴン(左下)
「S素材となったクリア・エフェクターの効果により、デッキから1枚ドロー!」
遊星 手札:1→2
「そして永続魔法《シンクロ・チェイス》の効果発動! 1ターンに1度、”ウォリアー、シンクロン、スターダスト”のS召喚に成功した場合、その素材の1体を墓地から守備表示で特殊召喚する! 《サテライト・シンクロン》を特殊召喚!」
遊星の場に再びサテライト・シンクロンが現れる。
サテライト・シンクロン 闇属性 機械族 レベル2 DEF:100
ジャンク・コネクターリンク先
スターダスト・ドラゴン(左下)
サテライト・シンクロン(右下)
「バトル! スターダスト・ドラゴンでドラッグウィリオンを攻撃! 【シューティング・ソニック】!」
スターダスト・ドラゴンがドラッグウィリオン目掛けて音波のブレスを放つ。
「ドラッグウィリオンの効果発動! 特殊召喚された相手モンスターの攻撃宣言時、自分の場のオルターガイスト1体を手札に戻すことで、攻撃を無効にする! へクスティアをEXデッキに戻し、攻撃を無効!」
今度はドラッグウィリオンがへクスティアに命じると、へクスティアはドラッグウィリオンを庇ってブレスを受け、消滅する。
「(残ったのが攻撃力2200のドラッグウィリオンなら、ジャンク・コネクターで追撃できない。ダメージも受けないし、これが今の最善策でしょ?)」
「ジャンク・コネクターの効果発動! バトルフェイズ時にこのカードのリンク先のモンスターのみでS召喚を行う! レベル8《スターダスト・ドラゴン》に、レベル2《サテライト・シンクロン》をチューニング!」
サテライト・シンクロンが自身を2つの光輪へと変え、スターダスト・ドラゴンを囲み、8つの光、そして光の柱へと変える。
「
光の柱から現れたのは、巨大な金色のロケット。それが人型へと変形し、背中の太陽光パネルをX字に展開する。
「シンクロ召喚! 到達せよ《サテライト・ウォリアー》!」
サテライト・ウォリアー 闇属性 戦士族 レベル10 ATK:2500
ジャンク・コネクターリンク先:サテライト・ウォリアー(左下)
「バトル中にS召喚!? ちょっとちょっと、予想外のことしないでよ!」
「サテライト・ウォリアーの効果発動! S召喚に成功した場合、自分の墓地のSモンスターの数だけ相手の場のカードを破壊する! 俺の墓地にはスターダスト・ドラゴンが1体! よってドラッグウィリオンを破壊する! 〈サテライト・バスターキャノン〉!」
サテライト・ウォリアーが背中からキャノン砲を取り出すと、曇り空の間から太陽光が漏れ、サテライト・ウォリアーの太陽光パネルへと降り注ぐ。充電が完了したサテライト・ウォリアーはエマの場へと狙いを定め、砲身からビームを放ってドラッグウィリオンを撃ち抜いた。
「この効果で破壊したカード1枚につき、攻撃力を1000アップする!」
サテライト・ウォリアー ATK:2500→3500
「バトルフェイズ時での特殊召喚により、サテライト・ウォリアーは攻撃できる!」
「アンナちゃんが伏せた罠カード《あまのじゃくの呪い》を発動! このターンの終了時まで攻守の変動を逆転させるわ! よってサテライト・ウォリアーの攻撃力は2000ダウンする!」
サテライト・ウォリアー ATK:3500→1500
サテライト・ウォリアーは機雷を体から射出し、エマに向かって投下する。機雷はエマの側で爆発し、エマのDホイールを激しく揺さぶる。
「くうう!?」
エマ LP:4500→3000
「ジャンク・コネクターでダイレクトアタック!」
「そう何度もやらせない……っての!」
エマはコース上のASpを手に取り、発動する。
「《ASp-ダメージ・バニッシュ》! 相手の戦闘モンスターの攻撃力1000ポイントにつき、SPCを1つ取り除いて発動!」
ジャンク・コネクター ATK:1700
エマ SPC:4→3
「戦闘ダメージを0にする!」
ジャンク・コネクターがジェット噴射でエマに向かって突っ込むが、ASpによって張られたバリアによって弾き返される。
「押しきれなかったか……魔法カード《一時休戦》! お互いにカードを1枚ドローし、次の相手のターン終了時までお互いが受ける全てのダメージは0となる!」
遊星 手札:1→2
エマ 手札:2→3
「カードを2枚伏せ、ターンエンド!」
遊星
LP:3300
手札:0
SPC:4
〔EXモンスター〕
・ジャンク・コネクター ATK:1700 リンク先:サテライト・ウォリアー(左下)
〔メインモンスター〕
・サテライト・ウォリアー ATK:1500→3500
〔魔法・罠〕
・LS:星読みの魔術師 スケール1
・シンクロ・チェイス
・セット
・セット(ASp)
・RS:時読みの魔術師 スケール8
「(用意周到……火力持ちのアンナちゃんを警戒してダメージ対策を立てるなんて)」
エマは後方へ下がり、アンナに近づく。
「ごめんねアンナちゃん。もっといい状態で回してあげたかったんだけど」
「気にすんなよ! 俺に任せとけ! 俺のターン!」
アンナ 手札:4→5 SPC:3→4
遊星 SPC:4→5
「速攻魔法《緊急ダイヤ》! 相手の場のモンスターが自分の場のモンスターより数が多い場合、デッキから地属性・機械族のレベル4以下のモンスター1体と、レベル5以上のモンスター1体を効果を無効にして守備表示で特殊召喚する! レベル4の《無頼特急バトレイン》とレベル10の《重機貨列車デリックレーン》を特殊召喚!」
アンナの場に、燃えるように赤い特急列車と、大型クレーンが付いた貨車を牽引する機関車が現れる。
無頼特急バトレイン 地属性 機械族 レベル4 DEF:1000
重機貨列車デリックレーン 地属性 機械族 レベル10 DEF:2000
「《爆走軌道フライング・ペガサス》を召喚! こいつは召喚・特殊召喚に成功した場合、墓地から地属性・機械族1体を守備表示で特殊召喚できる! 効果は無効になるけどな! 《弾丸特急バレット・ライナー》を特殊召喚!」
続けてアンナの場に、機械のペガサスと一体になった機械の騎士がバレット・ライナーを牽引して現れる。
爆走軌道フライング・ペガサス 地属性 機械族 レベル4 ATK:1800
弾丸特急バレット・ライナー 地属性 機械族 レベル10 DEF:0
「現れろ! どこまでも続く未来軌道!」
アンナが空中を指さすと、その先にアローヘッドが現れる。
「アローヘッド確認! 召喚条件は”機械族2体”! 《無頼特急バトレイン》と《爆走軌道フライング・ペガサス》をリンクマーカーにセット!」
2体の列車が光の風となって飛び上がると、アローヘッドの”下・右”に位置するリンクマーカーに飛び込む。
「リンク召喚! LINK-2《機関重連アンガー・ナックル》!」
アローヘッドのゲートから、二本のアームを腕の様に伸ばした機関車が現れる。
機関重連アンガー・ナックル 地属性 機械族 LINK-2(下・右) ATK:1500
「レベル10の《重機貨列車デリックレーン》と《弾丸特急バレット・ライナー》でオーバーレイ!」
今度は2体の列車が橙の光となって飛び上がる。
「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!」
光がアンナの場の上空に現れた金色の渦の中へと飛び込むと、渦の中から閃光が放たれる。
「拾ったばかりのカードでよく解んねぇけど、今は十分だ! エクシーズ召喚!」
閃光の中から現れたのは、左右に二両ずつ列車を引き連れた大きな列車。他よりも2倍近くはあるその列車は変形を始め、頭部に巨大な主砲を取り付けた上半身だけの人型ロボットへと姿を変える。右肩に自身の数字である”81”を刻み、左右の一番外側にある車両に副砲を取り付ける。
「いでよ! 《No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ》!」
No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ
地属性 機械族 ランク10 ATK:3200 ORU:2
アンガー・ナックルリンク先:No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ(下)
「ぐっ!?」
No.が現れた瞬間、遊星の”シグナーの痣”が疼き出す。
「(何だ? あのモンスターに何かあるのか?)」
「アンナちゃん、ちゃんと指示を守って”No.”を集めてたのね? 偉いじゃない」
「つっても効果が守り一辺倒だし、イマイチピンとこないんだよなぁ……だから、俺好みに変えてやるぜ! 《No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ》1体でオーバーレイ!」
スペリオル・ドーラが橙の光となって飛び上がると、アンナの場の上空に現れた赤い渦の中に飛び込む。
「1体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを再構築! ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!」
渦から赤い閃光が放たれ、中からスペリオル・ドーラより巨大な列車が現れる。それは4両の列車を横に繋げ、その上に巨大な陸上戦艦が築かれ、その頂点に巨大な主砲がそびえる。あまりの大きさにDホイーラー達と共に走ることは適わず、遠くの街中に鎮座する。
「ランク11《超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ》!」
超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ
地属性 機械族 ランク11 ATK:4000 ORU:3
アンガー・ナックルリンク先:超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ(下)
「バトルだ! ジャガーノート・リーベはORUの数だけモンスターへの攻撃回数を増やせる! ダメージは与えられないが、お前のモンスターを全滅させてやるぞ! サテライト・ウォリアーに攻撃!」
ジャガーノート・リーベは主砲をサテライト・ウォリアーへと向け砲撃する。砲弾はサテライト・ウォリアーに直撃し、爆発して撃墜する。
「サテライト・ウォリアー……破壊されたサテライト・ウォリアーの効果発動! 墓地のレベル8以下の”ウォリアー・シンクロン・スターダスト”のSモンスターを3種類まで特殊召喚できる! 《スターダスト・ドラゴン》を特殊召喚!」
遊星の場に再びスターダスト・ドラゴンが舞い上がる。
スターダスト・ドラゴン 風属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:2500
「ならそいつも破壊だ!」
二撃目の砲撃が放たれ、スターダスト・ドラゴンを撃ち落として破壊する。
「次はジャンク・コネクター!」
三撃目がジャンク・コネクターを吹き飛ばす。
「リンク召喚したジャンク・コネクターが戦闘、または相手の効果によって破壊され墓地へ送られた場合、EXデッキから”ジャンク”SモンスターをS召喚扱いで特殊召喚する!」
遊星が宣言すると、ジャンク・コネクターがいた場所に光の柱が立ち上がる。
「疾風の使者に鋼の願いが集う時、その願いは鉄壁の盾となる! 光差す道となれ! シンクロ召喚! 現れよ《ジャンク・ガードナー》!」
柱の中から現れたのはジャンク・ガードナー。ジャガーノート・リーベの方へと向き、両手の盾を合わせて構える。
ジャンク・ガードナー 地属性 戦士族 レベル6 DEF:2600
「へん! まだ攻撃は残ってんだ! ジャンク・ガードナーを――――」
「ジャンク・ガードナーの効果発動! 相手モンスター1体の表示形式を変更する!」
ジャガーノート・リーベが主砲の照準をジャンク・ガードナーに合わせた瞬間、突然主砲を下げ、沈黙する。
超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ ATK:4000→DEF:4000
「あ!? このやろ……バトル終了だ」
「罠カード《
沈黙を破るようにスターダスト・ドラゴンが舞い戻る。
スターダスト・ドラゴン 風属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:2500
「くっそー……見てろよ! ジャガーノート・リーベの効果発動! ORUを1つ取り除くことで、攻守を2000アップする!」
ジャガーノート・リーベがORUを1つ取り込むと、主砲の照準を遊星の場へと向ける。
超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ DEF:4000→6000 ORU:3→2
「ORUのデリッククレーンを効果発動の為に取り除いて墓地へ送った場合、相手のカード1枚を破壊する! ジャンク・ガードナーを破壊だ!」
ジャガーノート・リーベの主砲から取り込んだORUが発射され、ジャンク・ガードナーに迫る。
「スターダスト・ドラゴンの効果発動! このカードをリリースし、場のカードを破壊する効果を無効にして破壊する! 〈ヴィクティム・サンクチュアリ〉!」
スターダスト・ドラゴンが光の粒子となって消えると、ジャンク・ガードナーの目の前でORUの弾丸が消滅する。
「このぉ……カードを2枚伏せてターンエンド! このエンドフェイズ時に墓地へ送られたバトレインの効果発動! デッキから地属性・機械族・レベル10のモンスター1体を手札に加える! 《除雪機関車ハッスル・ラッセル》を手札に!」
アンナ 手札:1→2
「ターン終了時、自身の効果でリリースした《スターダスト・ドラゴン》を墓地から特殊召喚する!」
散らばった粒子が集まり、再びスターダスト・ドラゴンの姿へと戻る。
スターダスト・ドラゴン 風属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:2500
アンナ
LP:3000
SPC:4
手札:2
〔EXモンスター〕
・機関重連アンガー・ナックル ATK:1500
リンク先: 超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ (下)
〔メインモンスター〕
・超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ DEF:6000 ORU:2
〔魔法・罠〕
・セット(ASp)
・セット
「よし、遊矢――――」
「まかせて! 俺のターン!」
遊星が後ろに下がるよりも先に前に出る遊矢。食い気味にカードをドローする。
遊矢 手札:2→3 SPC:5→6
アンナ SPC:4→5
「(どうした遊矢?)」
「よし、チューナーモンスター《EMオッドアイズ・シンクロン》を召喚!」
遊矢の場に二色の眼を持つシルクハットを被った魔術師ロボットが現れる。
EMオッドアイズ・シンクロン 闇属性 魔法使い族 レベル2 ATK:200
「まずはジャンク・ガードナーの効果でジャガーノート・リーベを攻撃表示へ変更!」
超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ DEF:6000→ATK:6000
「レベル6《ジャンク・ガードナー》に、レベル2《EMオッドアイズ・シンクロン》をチューニング!」
オッドアイズ・シンクロンが2つの光輪へと姿を変えると、ジャンク・ガードナーを囲み、6つの光、そして光の柱へと変える。
「剛毅の光を放つ勇者の剣! 今ここに閃光と共に目覚めよ!」
柱の中から現れたのは、白い衣装を身に纏った魔導剣士。双剣を振りかざし、勇ましく構える。
「シンクロ召喚! レベル8《
覚醒の魔導剣士 闇属性 魔法使い族 レベル8 ATK:2500
「魔法カード《フォース》! ターン終了時までモンスター1体の攻撃力を半分にし、別のモンスター1体の攻撃力をその数値分アップする! ジャガーノート・リーベの攻撃力半分を覚醒の魔導剣士に加える!」
遊矢が発動させた魔法から光が放たれ、ジャガーノート・リーベへと光が伸びる。
「(これで覚醒の魔導剣士の攻撃力が大逆転! ド派手な効果ダメージでフィニッシュだ!)」
「カウンター罠《マジック・ジャマー》! 手札を1枚捨てて魔法の発動を無効にする!」
「え!?」
遊矢の魔法はアンナが発動した罠によって掻き消されてしまう。
捨てたカード
除雪機関車ハッスル・ラッセル
「(しまった……これじゃ逆転できない……!?)」
「おらどうしたんだよ! まさか魔法1枚無効にされただけで打つ手が無くなっちまったのか?」
「そ、そんなことはない! バトル――――」
「おっとその前に! アンガー・ナックルの効果発動! 手札・場のモンスター1体を墓地へ送り、自分の墓地の機械族・レベル10モンスター1体を効果無効・守備表示で特殊召喚する! アンガー・ナックル自身を墓地へ送り、さっき墓地へ送った《除雪機関車ハッスル・ラッセル》を特殊召喚!」
アンガー・ナックルが消滅すると、入れ替わりでピンクの車体の除雪機関車が現れる。
除雪機関車ハッスル・ラッセル 地属性 機械族 レベル10 DEF:3000
「守備力3000!? 覚醒の魔導剣士じゃ太刀打ちできない!?」
「へっ、いいとこねぇなぁ! どうせもう打つ手ねぇんだろ? ターンエンドしちまえよ」
「くっ……ターンエンド」
遊矢
LP:3300
手札:1
SPC:6
〔EXモンスター〕
・覚醒の魔導剣士 ATK:2500
〔メインモンスター〕
・スターダスト・ドラゴン DEF:2000
〔魔法・罠〕
・LS:星読みの魔術師 スケール1
・シンクロ・チェイス
・セット(ASp)
・RS:時読みの魔術師 スケール8
「(逆転どころか何もできなかった! 早く何とかしないと……)」
『遊矢!』
俯く遊矢の前にユーゴが姿を現す。納得がいかず、責めるような表情で遊矢に詰め寄った。
『何で”クリスタルウィング”を出さなかったんだ!?』
「え?」
『クリスタルウィングだって十分フィニッシャーになりえたはずだろ! 少なくともこんな最悪な結果にはならなかったはずだ!』
「あ……」
オッドアイズ・シンクロンとジャンク・ガードナーの組み合わせでS召喚できた《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》ならば、フォースで強化された戦闘ダメージだけでもLPを削り切れた上、相手のモンスター効果を無効にできた。フォースを無効にされても最低限の仕事をこなすことができたのである。遊矢が覚醒の魔導剣士を召喚したのは単にアンナの火力への対抗心からであり、その必要性は殆ど無いと言ってよかった。
「(そうだ……クリスタルウィング……見落としてた……俺、アンナへの対抗心で全然見えてなかった……)」
* * *
だからお前は”独り善がり”だというのだ!!!
* * *
「(――――”ジャック”……)」
もう何度言われたか分からない、S次元で出会った強敵からの厳しい言葉が甦る。興奮するユーゴを抑えるように、ユートも姿を現した。
『落ち着け遊矢。お前の戦術が間違っていたわけじゃない。ちゃんと勝ち筋は見えていたんだからな。だがこれはタッグ決闘だ。決着が着かない可能性がある以上、パートナーへの負担は減らしてやるように考えるべきだった。だからこその”クリスタルウィング”なんだ』
「うん……ありがとうユーゴ、ユート。俺、見えてなかったよ」
『よし、切り替えろ。相手がくるぞ!』
「私のターン!」
エマ 手札:3→4 SPC:5→6
遊矢 SPC:6→7
「やっと流れがこっちに来たわね! 遠慮なく乗るわよ! 魔法カード《死者蘇生》! 墓地の《オルターガイスト・へクスティア》を特殊召喚!」
エマの場に再びへクスティアが現れる。
オルターガイスト・へクスティア 炎属性 魔法使い族 LINK-2(下・右) ATK:1500
「《オルターガイスト・ピクシール》を通常召喚!」
続けてエマの場に妖精を模した機械の人形が現れる。
オルターガイスト・ピクシール 風属性 魔法使い族 レベル1 ATK:100
「開きなさい! 未知なる異世界へ繋がるサーキットよ!」
エマが宣言すると、エマのDホイールの下に巨大なアローヘッドが現れる。
「アローヘッド確認! 召喚条件は”オルターガイスト2体以上”! LINK-2《オルターガイスト・へクスティア》と《オルターガイスト・ピクシール》、そして手札の《オルターガイスト・プークエリ》はオルターガイストをリンク召喚する際、手札から素材にできるわ! この3体をリンクマーカーにセット!」
エマの場のへクスティアが2体に分裂し、ほかのオルターガイスト2体と共に光の風となって”左・左下・右下・右”に位置するリンクマーカーへと飛び込む。
「サーキットコンバイン! リンク召喚!」
アローヘッドのゲートから現れたのは、悪魔の様な翼と大鎌を持ったオルターガイストの女神。大鎌を振り回し、その鋭い切っ先を遊矢へ向ける。
「殺戮の女神よ、悪夢の淵より顕現せよ! LINK-4《オルターガイスト・メモリーガント》!」
オルターガイスト・メモリーガント
闇属性 魔法使い族 LINK-4(左・左下・右下・右) ATK:2800
「ハッスル・ラッセルを攻撃表示に変更!」
除雪機関車ハッスル・ラッセル DEF:3000→ATK:2500
「バトル! ジャガーノート・リーベのORUは2つ、よってモンスターへ3回攻撃ができるわ! 覚醒の魔導剣士へ攻撃!」
「SPCが4つ以上存在し、その中から2つ取り除くことで《ASp-回避》を発動! 攻撃を無効にする!」
遊矢 SPC:7→5
ジャガーノート・リーベが覚醒の魔導剣士に向かって砲撃するが、魔導剣士はこれを躱す。
「ならもう一度!」
ジャガーノート・リーベが再び砲撃へと移ろうとした瞬間、遊矢は身を乗り出してASpを手にする。
「《ASp-クイックガード》! SPCを1つ取り除き、モンスター1体を守備表示に変更する! ジャガーノート・リーベを守備表示に!」
遊矢 SPC:5→4
超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ ATK:6000→DEF:6000
「ならメモリーガントでスターダスト・ドラゴンを攻撃! 【エターナル・ナイトメア】!」
メモリーガントが大鎌を振り下ろし、スターダストを切り裂く。
「メモリーガントの効果発動! モンスターを戦闘破壊した時、相手モンスター1体を破壊する!」
メモリーガントは素早く覚醒の魔導剣士との間合いを詰め、大鎌で切り裂いて破壊する。
「スターダスト!? 覚醒の魔導剣士!?」
「この効果で破壊した場合、メモリーガントはもう一度だけ続けて攻撃できるわ! ダイレクトアタック!」
2体のSモンスターを仕留めたメモリーガントが遊矢へと迫る。
「遊星さんが伏せた《ASp-魔回避》を発動! SPCを4つ取り除き、《魔回避トークン》を攻撃表示で特殊召喚!」
遊矢の場に悪魔のトークンが現れ、メモリーガントの注意を引く。
遊矢 SPC:4→0
魔回避トークン 闇属性 悪魔族 レベル1 ATK:0
「魔回避トークンは攻撃対象となった時、その攻撃を1度だけ無効にする!」
メモリーガントはトークンを仕留めようと大鎌を振り回すが、トークンはそれをのらりくらりと躱す。
「ならハッスル・ラッセル! 踏みつぶしちゃいなさい!」
ハッスル・ラッセルが隙を突いて突撃し、魔回避トークンを轢きつぶす。
「うわぁぁぁ!?」
遊矢 LP:3300→800
「(仕留め切れなかったのは痛いかも……遊星はどう来るかしらね?) カードを伏せてターンエンド!」
エマ
LP:3000
SPC:6
手札:0
〔EXモンスター〕
・オルターガイスト・メモリーガント ATK:2800
〔メインモンスター〕
・超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ DEF:6000 ORU:2
・除雪機関車ハッスル・ラッセル ATK:2500
〔魔法・罠〕
・セット(ASp)
・セット
エマがターンを終えると、遊矢は遊星の元まで下がる。
「遊星さん……すいません」
「遊矢、今のお前は自分勝手すぎる」
項垂れる頭に浴びせられるきつい一言。遊星の言葉で、再び脳裏にジャックの姿が浮かぶ。
「ッ……すいませんでした。勝手にモンスターも使っちゃって……」
「そうじゃない」
「え?」
顔を上げて遊星を見ると、その眼には怒りも呆れも宿ってはいなかった。遊星の透き通った青い瞳が、遊矢を真っすぐ、そして力強く射抜いていた。
「お前は置いて行ってしまっている。お前自身を」
「俺自身を……?」
「最初……ごろつき共に追われていた時、お前はあの状況で楽しそうに決闘をしていたな」
「見てたんですか?」
「遠目でな。そしてこの決闘の序盤でも、お前は楽しそうだった。それがお前の本来の決闘だな?」
その通りである。”皆を笑顔に”――――それが遊矢の目指すエンタメ決闘であったはずだ。
「(俺は遊星さんやアンナの決闘を見て焦った……置いていかれるんじゃないかと思ったんだ。プロ決闘者としての俺のエンタメが通じるかどうか……どこか不安だったのかもしれない)」
「遊矢、昔、俺の友がこんなことを言っていた」
* * *
決闘とは、モンスターだけでは勝てない。罠だけでも、魔法だけでも勝てはしない。全てが一体となってこそ意味をなす。そして、その勝利を築きあげる為に最も大切な物は……ここにある。
* * *
言い終わると、遊星は右拳で自身の胸を叩く。
「そいつはそれが何なのかは言わなかった。だが俺には解る」
「それは……?」
「全てのカードを信じる、”決闘者の魂”だ!」
そう言って遊星はアクセルを回し、前へ出る。
「遊矢! モンスターがあっても、魔法・罠があっても、”お前自身”がいなければカードは応えてくれない!」
「俺自身……」
* * *
借り物の言葉で語るな! 俺と話したければ、お前自身の言葉で、決闘で語れ!
その言葉で叫んでみろ! お前自身の決闘を!
* * *
「何があろうと、臆するな遊矢! 自分自身に、決闘に! 今から俺が友の言葉を証明して見せる! それで思い出せ遊矢! お前の決闘を! 俺のターン!」
遊星 手札:0→1 SPC:0→1
エマ SPC:6→7
「魔法カード《貪欲な壺》! 墓地のモンスター5体をデッキに戻してシャッフル! その後2枚ドローする!」
戻したカード
サテライト・ウォリアー
ジャンク・ガードナー
ジャンク・コネクター
サテライト・シンクロン
ドリル・シンクロン
遊星 手札:0→2
「相手の場のみモンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる! チューナーモンスター《アンノウン・シンクロン》を特殊召喚! そして《チューニング・サポーター》を召喚!」
遊星の場に目玉のような機械とチューニング・サポーターが現れる。
アンノウン・シンクロン 闇属性 機械族 レベル1 ATK:0
チューニング・サポーター 光属性 機械族 レベル1 ATK:100
「レベル1《チューニング・サポーター》に、レベル1《アンノウン・シンクロン》をチューニング!」
アンノウン・シンクロンが自身を光輪へと変えると、チューニング・サポーターを囲み、1つの光、そして光の柱へと変える。
「集いし願いが、新たな速度の地平へ誘う! 光さす道となれ! シンクロ召喚! 希望の力、シンクロチューナー《フォーミュラ・シンクロン》!」
光の柱の中からフォーミュラ・シンクロンが現れ、遊星のDホイールの前を走る。
フォーミュラ・シンクロン 光属性 機械族 レベル2 ATK:200
「フォーミュラ・シンクロン、チューニング・サポーターの効果により1枚ずつドロー!」
遊星 手札:0→1→2
「魔法カード《星屑のきらめき》! 自分の墓地のドラゴン族Sモンスター1体のレベルと同じ数値のレベル合計になるように墓地からモンスターを除外することで、そのドラゴン族Sモンスターを特殊召喚する! 墓地からレベル4の《ジャスティス・ブリンガー》、レベル2の《クリア・エフェクター》、レベル1の《アンノウン・シンクロン》、《チューニング・サポーター》、合計レベル8になるように除外し、レベル8の《スターダスト・ドラゴン》を特殊召喚する!」
遊星の場に星屑が集まり、形を成してスターダスト・ドラゴンとなる。
スターダスト・ドラゴン 風属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:2500
「確かにそのドラゴンは厄介だけど、この布陣を突破するのは無理じゃないかしら?」
「突破して見せる! 俺は限界を超える!」
遊星はフォーミュラ・シンクロンを先頭に、スターダスト・ドラゴンを後方に置き、決闘場の先頭へと躍り出る。
「(前へ出た? ASpかしら?)」
「……クリア・マインドッ!!! レベル8Sモンスター《スターダスト・ドラゴン》に、レベル2Sチューナー《フォーミュラ・シンクロン》をチューニング!」
フォーミュラ・シンクロンが二つの光輪となってスターダスト・ドラゴンを囲むと、スターダスト・ドラゴン、そして遊星が眩い光の風に包まれる。
「集いし夢の結晶が、新たな進化の扉を開く! 光差す道となれ!」
加速する遊星とスターダスト・ドラゴン。それに比例して光はどんどん強くなり、もはや彼らの姿が見えている者はいない。
「アクセルシンクロォォォォォーーーー!!!」
遊星が手に持ったカードを掲げた瞬間、遊星と遊星号、そしてスターダスト・ドラゴンの姿が光と共に消える。
「消えた!? え? 何処!?」
正面を走っていたはずの遊星が消えた――――エマは慌てて振り返ると、そこには同じ様に遊星を見失って慌てるアンナと遊矢の姿が見える。そして3人よりも遥か後方より、遊星が見知らぬSモンスターと共に姿を現す。
「生来せよ! 《シューティング・スター・ドラゴン》!!!」
その青白く輝く、スターダスト・ドラゴンの面影を残したドラゴンは両手足をコンパクトに畳むとジェット機の様に飛び上がり、曇天を吹き飛ばしながら空を行く。これこそが遊星が辿り着いた進化の境地”クリア・マインド”。その境地に辿り着いた者だけが使いこなせるアクセルシンクロモンスター”シューティング・スター・ドラゴン”である。
シューティング・スター・ドラゴン 風属性 ドラゴン族 レベル10 ATK:3300
「何これ……色々嘘でしょ?」
「装備魔法《月鏡の盾》をシューティング・スター・ドラゴンに装備! 装備モンスターの攻守はダメージ計算時のみ、相手モンスターの攻守の高い方の数値に100足した数値となる!」
遊星が発動した装備魔法の光を受けてパワーアップするシューティング・スター・ドラゴン。上空から下降し、遊星の側まで戻ってくる。
「シューティング・スター・ドラゴンの効果発動! デッキトップを5枚めくり、その中のチューナーの数だけ、このターン攻撃できる!」
「……大層なドラゴンが出てきたと思ったら、随分運任せな効果ね。チューナーなんて数入るカードじゃないし、期待は薄いんじゃない?」
「確かに確立は低い。だがシューティング・スターは、俺のデッキは必ず応えてくれる! まず1枚目!」
遊星は勢いよくデッキトップを引き抜き、めくる。
「チューナーモンスター《ジャンク・シンクロン》! 2枚目――――」
2枚目を引き抜き、エマに向かって掲げる。
「チューナーモンスター《ドリル・シンクロン》! 3枚目――――」
3枚目を引き抜き、迷いなくめくる。
「チューナーモンスター《サテライト・シンクロン》! 4枚目――――」
「3枚連続チューナー!? どうなってんの!? これだけでも相当な確率――――」
エマは決闘盤で確認するが、不正は無い。遊星は本当にチューナーを連続でめくり当てている。
「チューナーモンスター《エフェクト・ヴェーラー》! これが最後――――」
遊星は最後のカードに指を掛け、引き抜く。そしてこの場の全員に見えるようにカードを高く掲げた。
「5枚目! チューナーモンスター《デブリ・ドラゴン》! チューナーの数は5体! よって5回連続攻撃を行う! 〈スターダスト・ミラージュ〉!」
遊星が宣言すると、シューティング・スター・ドラゴンが5体に分裂し、それぞれ5色の光を纏って空を飛ぶ。
「バトル! シューティング・スター・ドラゴンでジャガーノート・リーベを攻撃!」
シューティング・スター・ドラゴン ATK:3300→6100
分身の1体が遥か遠くに鎮座するジャガーノート・リーベに向かって流れ星の如く飛来し、激突して爆散させる。
「ハッスル・ラッセルを攻撃!」
シューティング・スター・ドラゴン ATK:3300→3100
続いて2体目の分身がハッスル・ラッセルを真横からなぎ倒し、破壊する。
「うう……!」
エマ LP:3000→2400
「メモリーガントを攻撃!」
シューティング・スター・ドラゴン ATK:3300→2900
「メモリーガントは1ターンに1度、墓地のモンスター1体を除外することで破壊を無効にできる!」
除外したカード
オルターガイスト・フィフィネラグ
3体目の分身がメモリーガントに突撃するが、メモリーガントは紙一重でこれを躱す。
エマ LP:2400→2300
「ならばもう一度メモリーガントを攻撃!」
間髪入れずに4体目の分身がメモリーガントへと突撃し、破壊する。
「くうう!? 誰が想像できたのよこの状況を!」
エマ LP:2300→2200
「トドメだ! ダイレクトアタック!」
「永続罠《オルターガイスト・エミュレルフ》! このカードは発動後モンスターとなり、場に特殊召喚される! 守備表示で特殊召喚!」
エマの場に金色に輝く人型のオルターガイストが現れ、エマを庇ってシューティング・スター・ドラゴンに破壊される。
オルターガイスト・エミュレルフ 光属性 魔法使い族 レベル4 DEF:1800
「(ありがとう、シューティング・スター、俺のデッキ。きっと、遊矢にも伝わったはずだ) ターンエンド!」
遊星
LP:800
手札:0
SPC:1
〔EXモンスター〕
・シューティング・スター・ドラゴン ATK:3300
〔魔法・罠〕
・LS:星読みの魔術師 スケール1
・シンクロ・チェイス
・月鏡の盾(装備:シューティング・スター・ドラゴン)
・RS:時読みの魔術師 スケール8
「(私の不幸は、この不動 遊星を迎撃する立ち位置に立ったことかしらね。とにかく、チャンスは凌ぎ切った今しかない!) アンナちゃん頼んだわよ!」
「今度こそやっつけてやる! 俺のターン!」
アンナ 手札:1→2 SPC:7→8
遊星 SPC:1→2
「《深夜急行列車ナイト・エクスプレス・ナイト》をリリース無しで召喚! そして魔法カード《アドバンスドロー》! 自分の場のレベル8以上のモンスター1体をリリースし、2枚ドロー!」
現れたナイト・エクスプレス・ナイトが消滅すると、アンナはデッキから2枚ドローする。
アンナ 手札:0→2
「よし来た! 魔法カード《グローリアス・ナンバーズ》! 俺の墓地のNo.1体を特殊召喚する! 《No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ》を特殊召喚!」
アンナの場に再びスペリオル・ドーラが現れる。
No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ 地属性 機械族 ランク10 ATK:3200
「さらにデッキから1枚ドロー! ここで墓地のこいつを除外して更なる効果発動だぜ! 手札1枚をNo.のORUにする!」
アンナの手札1枚がORUへと変わり、スペリオル・ドーラの周りを漂う。
No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ ORU:0→1
「ここで墓地のアンガー・ナックルの効果発動! 手札・場のカード1枚を墓地へ送り、特殊召喚する! 場の《ASp-フレイム・チェーン》を墓地へ送り、特殊召喚!」
アンナの場に再びアンガー・ナックルが現れる。
機関重連アンガー・ナックル 地属性 機械族 LINK-2(下・右) ATK:1500
「スペリオル・ドーラの効果発動! ORUを1つ取り除き、モンスター1体を選択、選択されたモンスターはターン終了時まで自身以外のカード効果を受けない! 対象はシューティング・スター・ドラゴンだ!」
No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ ORU:1→0
スペリオル・ドーラはORUを一つ取り込むと、主砲からシューティング・スター・ドラゴンに向かって弾丸を発射。弾丸はシューティング・スター・ドラゴンの目の前で弾け、何かの粒子を散布する。
「へっへーん! 何でそっちのモンスターに耐性を付けたか解るか?」
「……”月鏡の盾”を無力化するためか」
他のカードの効果を受けないということは、装備カードの強化も受けられないということ。常に相手の上を取ることが出来る月鏡の盾はスペリオル・ドーラによって無力化されてしまったのである。
「力一辺倒かと思えば、こんな裏技を持っているなんてな」
「俺様に掛かればこんなもんだ! そして!」
アンナはコース上のASpを手に取る。
「よしよし! 《ASp-立体交差》! SPCを7つ取り除くことで、このターンに戦闘を行うモンスターの攻撃力をバトルフェイズ終了時まで入れ替える! これでスペリオル・ドーラの方が攻撃力が上になる! バトルだ!」
アンナ SPC:8→1
「スペリオル・ドーラでシューティング・スター・ドラゴンに攻撃!」
No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ ATK:3200→3300
シューティング・スター・ドラゴン ATK:3300→3200
「シューティング・スター・ドラゴンの効果発動! 相手の攻撃宣言時、このカードを除外してその攻撃を無効にする!」
スペリオル・ドーラが放った砲撃がシューティング・スター・ドラゴンへと飛ぶが、シューティング・スター・ドラゴンは自身の姿を消してそれを躱す。
「だがこれでがら空きだぜ! トドメだアンガー・ナックル!」
アンガー・ナックルが大きなアームで遊星に殴り掛かる。遊星は慌てずそれに対峙し、いつの間にか拾っていたASpを発動させる。
「《ASp-奇跡の選択》! SPCを全て取り除くことで、戦闘ダメージを半分にする!」
遊星 SCP:2→0
アンガー・ナックルのアームが遊星号を小突き、大きく揺さぶる。
「ぐうう!?」
遊星 LP:800→50
「くっそーあとちょっとだったのに! イライラするぜ! 魔法カード《オーバーレイ・リジェネレート》! このカードをモンスターエクシーズのORUにするぜ!」
No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ ORU:0→1
「これでスペリオル・ドーラはもう1度あの効果が使える! No.はNo.でしか戦闘破壊できないから、この効果が合わされば無敵だぜ!」
「何だと!?」
「(あらら、アンナちゃんいらないことを……)」
アンナの言葉を聞き逃さなかった遊星。No.から感じ取った異常性のこともあり、遊星は改めてNo.へと目を向ける。
「(やはりただのカードではないのか?)」
「俺はこれでターンエンドだ!」
「このエンド時、除外した《シューティング・スター・ドラゴン》を場に特殊召喚する!」
姿を消していたシューティング・スター・ドラゴンが再び現れ、場に舞い戻る。
シューティング・スター・ドラゴン 風属性 ドラゴン族 レベル10 ATK:3300
アンナ
LP:2200
SPC:1
手札:0
〔メインモンスター〕
・No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ ORU:1 ATK:3300→3200
・機関重連アンガー・ナックル ATK:1500
「遊矢」
遊星は後方へと下がり、遊矢の側に着く。
「行けるか?」
「はい! もう大丈夫です! 俺の決闘を見せます!」
「よし、頼んだぞ!」
遊矢は迷いの無い態度で頷き、前へと出る。
「(凄い決闘だった……俺もやるんだ! 俺の言葉で! 俺の決闘で!) 俺のターン!」
遊矢 手札:0→1 SPC:0→1
アンナ SPC:1→2
「魔法カード《ペンデュラム・ホルト》! 自分のEXデッキに表側表示のPモンスターが3体以上存在する場合、2枚ドローする!」
EXデッキに存在する表側Pモンスター
EM小判竜
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン
EMオッドアイズ・シンクロン
遊矢 手札:0→2
「(カード達、俺のエンタメに、俺の”魂”に応えてくれ!) セッティング済みのスケールでP召喚を行う! 揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け光のアーク!」
二人の魔術師の間を振り子が何度も往復すると、遊矢の場の上空に異空間の穴が開く。
「ペンデュラム召喚! 現れろ俺のモンスター!」
遊矢の号令と共に、異空間の穴から1つの光が飛び出す。
「EXデッキからレベル2《EMオッドアイズ・シンクロン》!」
EMオッドアイズ・シンクロン 闇属性 魔法使い族 レベル2 ATK:200
「魔法カード《エンタメ・バンド・ハリケーン》! 自分の場の”EM”モンスターの数だけ相手の場のカードを手札に戻す! 俺の場のEMは1体! スペリオル・ドーラをEXデッキに!」
「させねぇ! スペリオル・ドーラの効果発動! ORUを1つ取り除き、スペリオル・ドーラ自身に効果耐性を付けるぞ!」
遊矢の場から賑やかな竜巻が発生し、スペリオル・ドーラに迫る。しかし、スペリオル・ドーラはORUを一つ取り込むと、自身の真上に弾丸を放ち、炸裂させて粒子を周りに散布する。粒子に触れた竜巻は消滅してしまい、スペリオル・ドーラへと届くことは無かった。
「無駄無駄! そんな魔法じゃスペリオル・ドーラは倒せないぜ!」
「解ってるさ! 魔法カード《死者蘇生》! 墓地から《覚醒の魔導剣士》を特殊召喚!」
続けて遊矢の場に覚醒の魔導剣士が再び現れる。
覚醒の魔導剣士 闇属性 魔法使い族 レベル8 ATK:2500
「(無駄にして堪るもんか……S次元での決闘は、今でもこの胸の中で生きている! エンタメ決闘者”榊 遊矢”! もう一度このモンスターで魂に刻む! 俺の決闘を!) レベル8《覚醒の魔導剣士》に、レベル2《EMオッドアイズ・シンクロン》をチューニング!」
オッドアイズ・シンクロンが自身を2つの光輪へと変えると、覚醒の魔導剣士を囲み、8つの光、そして光の柱へと変える。
「平穏なる時の彼方から、あまねく世界に光を放ち、蘇れ!」
光の柱から飛び出したのは、清浄なる静かな気を纏った魔導剣士。一振りの大剣を手に取り、後光を背に静かに佇む。これこそがS次元で悩み抜き、闘い抜いてきた榊 遊矢が出した答え――――
「シンクロ召喚! 現れろレベル10《
涅槃の超魔導剣士 闇属性 魔法使い族 レベル10 ATK:3300
「涅槃の超魔導剣士の効果発動! P召喚したPモンスターをチューナーとしてS召喚に成功した場合、自分の墓地のカード1枚を手札に加える! 俺が加えるのは《月鏡の盾》!」
遊矢 手札:0→1
「(これで揃った! 後は実行あるのみ!)」
遊矢はDホイール上で立ち上がり、両腕を広げる。
「レディースエーンジェントルメーン!」
「またかよ!? 今度は何するつもりだ!」
先程おちょくられたアンナは遊矢のエンタメに噛みつくが、遊矢は気にせずにエンタメを続ける。
「パワーとパワーのぶつかり合い! テクニックとテクニックの応酬! 凄まじき決闘者達が集まるこのタッグ決闘も、いよいよフィナーレを迎えます! 私、榊 遊矢。パートナーは涅槃の超魔導剣士! そして私のタッグパートナーにしてスペシャルゲスト! ミスター遊星!」
遊矢に手を向けられると、遊星は呆気にとられた表情の後、少しだけ笑う。
「パートナーは儚くも美しく輝く流星の如きドラゴン”シューティング・スター・ドラゴン”! この四人で送るパフォーマンスにて、閉幕と行きましょう!」
「さっきから何言ってやがる! さっさと決闘を進めやがれ!」
「慌てないでミスアンナ! それでは参ります! 装備魔法《月鏡の盾》をシューティング・スター・ドラゴンに装備! そして効果を発動します!」
シューティング・スター・ドラゴンが遊星の頭上から遊矢の元へと移動する。
「デッキトップを5枚めくり、その中のチューナーの数だけこのターン攻撃を行うことができます!」
「お前のデッキ、そんなにチューナー入ってんのか?」
「んーオッドアイズ・シンクロン含めて3枚程でしょうか?」
「ぶっ!? そ、それで本当にやる気かよ!? 下手したら攻撃出来ないんだぜ!?」
「心配ご無用! 何故なら……私の”決闘者の魂”がめくれと囁いているからです!」
「はぁ!? 何だこいつ……敵ながら大丈夫かよ?」
「大丈夫! きっとカードは応えてくれる! さあ1枚目!」
遊矢は迷いなくデッキトップを引き抜く。
「1枚目はチューナーモンスター《貴竜の魔術師》! これで攻撃出来ない結果は免れました!」
「ひ、引きやがった!? だけどあと1枚だろ! めくれるか!」
「2枚目!」
めくったカード
EMディスカバー・ヒッポ
「ああっと! 外してしまいました! でも引いたのはディスカバー・ヒッポ、探し物の達人です! これは次に期待ができるかも! 3枚目!」
めくったカード
カバー・カーニバル
「ああっとこれも外れ! でも引いたのはヒッポとは切っても切れないカバー・カーニバル! ある意味運命を感じます! では4枚目!」
めくったカード
EMトランプ・ウィッチ
「ああ~トランプ・ウィッチ! これはチューナーではなく融合召喚に関係するカードです! 惜しくもなんともない!」
「ほら見ろ! そうそう当たるか!」
「では最後の1枚です。5枚目――――」
焦る様子もなく、穏やかな表情でデッキトップに指を掛け引き抜く遊矢。ゆっくりとカードを反転させる。
「最後の1枚、めくったのは……チューナーモンスター《調律の魔術師》!」
「めくりやがった!? 最後の最後で!?」
「よってシューティング・スター・ドラゴンはこのターン、2回攻撃が可能となります!」
「だったら何だってんだ! お前らのモンスターじゃスペリオル・ドーラは倒せねぇ!」
「”倒せるか倒せないか”ではありません! ”辿り着ける”かどうかです! バトル! 涅槃の超魔導剣士でアンガー・ナックルを攻撃!」
涅槃の超魔導剣士は大剣を手に取り、飛び上がる。
「そっち狙いか! だが甘いぜ! バトルフェイズの前にアンガー・ナックルの効果発動! 自身を墓地へ送り、墓地から守備力3000の《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》を守備表示で特殊召喚!」
アンガー・ナックルが消滅すると、入れ替わりでナイト・エクスプレス・ナイトが現れ、涅槃の超魔導剣士の行く手を遮る。
深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト 地属性 機械族 レベル10 DEF:3000
「どうだ! これでダメージは通らないぜ!」
「ですがその手で止められるのは覚醒の魔導剣士までです! 涅槃の超魔導剣士を止めることはできません! バトル! ナイト・エクスプレス・ナイトを攻撃! 【トゥルース・スカーヴァティ】!」
涅槃の超魔導剣士は大剣を掲げ、格納されていた刃を展開させる。そして全魔力を剣に集中させると、魔力で巨大化した大剣を振り下ろし、ナイト・エクスプレス・ナイトを一撃で消し飛ばす。
「涅槃の超魔導剣士の効果発動! 戦闘で相手モンスターを破壊した時、相手のLPを半分にする!」
大剣の一撃はナイト・エクスプレス・ナイトを消し飛ばすだけでは足りず、余波がアンナへと襲い掛かった。
「うわぁぁぁ!?」
アンナ LP:2200→1100
アンナのフライングランチャーが空中で回転しながら吹き飛び、アンナも危うく落ちそうになるが持ち直し、平常飛行へと戻る。
「あ、あぶねぇ……これが狙いだったのかよ。だが月鏡の盾を装備したシューティング・スター・ドラゴンの攻撃力はスペリオル・ドーラより100高い数値。それっぽっちのダメージじゃ俺は倒れないぜ!」
「いやいやミスアンナ、嘘はダメですよ」
「あ?」
「私はちゃんと決闘盤で確認しているのです。スペリオル・ドーラの守備力を」
「スペリオル・ドーラの……守備力?」
「そう、月鏡の盾で得る能力値は相手の攻撃力か守備力、どちらか”高い方”の数値プラス100です。スペリオル・ドーラの守備力は攻撃力よりも高い4000。よってシューティング・スター・ドラゴンの攻撃力は――――」
シューティング・スター・ドラゴン ATK:3300→4100
「あ、あ~~~~!!?」
「さあフィニッシュと行きましょう――――お?」
遊矢が攻撃に移ろうとした瞬間、遊矢の隣に遊星がDホイールを並べる。
「遊星さん!」
「俺はスペシャルゲストなんだろう? 混ぜてくれよ。俺も少し遊びたくなった!」
サムズアップと共に光る笑顔。不動 遊星、本日一番の笑顔を浮かべてエンタメ決闘への参加を希望する。
「はははッ! もちろん! それじゃ一緒に―――――」
「ああ!」
「「 スターダスト・ミラージュ!!! 」」
本来、2回攻撃の場合は2体に分裂するのが普通である。しかし、エンタメ決闘に感化されたシューティング・スター・ドラゴンは何と7体に分裂し、虹の7色となって大空を行く。7色は曇空を吹き飛ばしながら縦横無尽に飛び回り、晴天を創り出す。雲一つない青空を一つとなった虹色の流星が飛び、その流星は二つに分かれてスペリオル・ドーラへと直撃。大爆発を巻き起こし、爆煙が場を包む。
「あ、ああ……すげぇ……」
アンナ LP:1100→200→0
やがて爆煙は急激に巻き上げられ、それを吹き飛ばして中からシューティング・スター・ドラゴンが現れる。何時の間にか、その背には涅槃の超魔導剣士が乗っていた。
アンナは停止したフライングランチャーの上で呆然とドラゴン達を見上げ、エマも停止したDホイールから降りてヴィクトリー・ロードを走る遊矢達を見つめていた。
「……ふう、完敗。お見事決闘者」
* * *
決闘が終了し、RSVが消滅する。
遊矢と遊星はDホイールを止め、降りてヘルメットを脱いだ。
「はぁ! ……勝った」
「素晴らしい決闘だったな、遊矢」
「遊星さん!」
ヘルメットを脱いでゴーグルを上げる遊矢に、ヘルメットを脇に抱えた遊星が歩み寄る。
「お前の決闘、確かに見せてもらった。ああいう決闘もあるんだな」
「遊星さん、遊星さんのおかげで、大事なことを忘れずに済みました。楽しい決闘をありがとう!」
遊矢が差し出した手を、遊星は固く握り返す。ここにまた一つ、決闘によって生まれた”絆”が結ばれた。
「俺、プロ決闘者になってからずっと不安だったんです。今までとは違うステージ。そこで俺は胸を張ってエンタメ出来る決闘者なのか、って……今回の遊星さんやアンナ達の高いレベルの決闘を見たら、もっとしっかりしなきゃ、って思いこんじゃって。焦っちゃって……でも、そうじゃなかったんだ」
遊矢は遊星の手を放し、握っていた掌を見つめる。
「昔、とある決闘者のチャンピオンが俺に言ったんです――――」
* * *
デュエルで証明してみろ! これこそ、榊遊矢が信じるデュエルであると! 何かを成し遂げたいと、思っているのなら、怯むな!
* * *
「――――怯まないこと。どんなステージだろうと、自分の信じる決闘を伝えていくしかない。この言葉が、遊星さんが言った言葉と繋がって、俺の中でしっくり来たんです」
遊矢は掌を握り締め、遊星を見返す。
「俺は何度も迷ってきた。今回だってそう。だけど、何度だって思い出すことができる! 今回の決闘が、それを教えてくれました!」
「ああ、そうだ。それでいい遊矢」
遊星は決闘中と同じように拳を自分の胸に当てる。
「迷っても、ここまで繋いできた絆が導いてくれる。絆は決して断ち切れはしない。俺の友も言っていた――――」
* * *
俺は孤独じゃない。興味も無かったが、気がつけば五月蠅い連中の只中にいる!
どんなに否定しようと、絆と言う物から逃れることは出来無いらしい!
人はそう簡単に孤独にはなれんのだ!
* * *
「――――だから、これからも大事にしていってくれ。自分の信じる決闘を。それを形作ってくれた周りとの絆を……」
「……ふふっ!」
「遊矢?」
「いや、遊星さんの友達のこと聞いてると、何だか他人の様な気がしなくって。不思議ですね」
「ふふ……案外、知り合いなのかもしれないな」
「まさか。ハハハ!」
そんな会話をしていると、後方から1台のDホイールがやってくる。先程まで決闘をしていた別所エマであった。
「お二人さん、お疲れ様。いい決闘だったわ」
「エマさん! アンナは?」
「拗ねてどっか行っちゃったわ。まあお役目も終わった事だし、好きにさせてあげるわよ」
「別所エマ、約束通りこの世界の情報を教えてくれ」
「勿論、その為に追ってきたんですもの。私から伝えられる情報……それは貴方たちの”人数”よ」
エマから伝えられた言葉を上手く呑み込めずに目をパチクリさせる遊矢。もっと具体的な脱出方法を期待していただけに呆然としてしまう。大体”人数”とは何なのだ。
「人数とは、もしや俺達以外にもここへ連れてこられた決闘者がいるということか?」
「あら鋭い。その通り、貴方たちの人数は合計6人。その内の一人がこの世界からの脱出の”鍵”を握っているわ。文字通り”鍵”をね……」
「その決闘者達の名は? 今は何処に?」
「残念だけどそこまでは教えられないわ。でもそうね……まずは脱出云々よりも、先に残りの4人との合流を目指してみたらいいんじゃないかしら? はい、私からの情報はここまで。参考になった?」
「……成程、情報感謝する。とりあえず指針は出来た」
遊星は一人納得したように頷いた。
自分と遊星以外にも、同じ境遇の決闘者がいる――――とりあえず遊矢が思うことは一つであった。
「(残り4人も、エンタメ決闘が好きな人だといいなぁ)」
案外呑気なことを考えていた遊矢。エマは実体のカードを1枚取り出し、遊星に手渡す。
「このカードが、きっと貴方達を他のメンバーの下へ導いてくれるわ」
「これは……アンナが持っていたNo.とかいうカードか」
遊星が受け取った瞬間、凄まじい悪寒が遊星の腕から全身へと伝わる。
「うっ!?」
一瞬、手放しそうになるが、何故か手放してはならないような気がする。遊星はNo.のカードを力強く掴むと、遊星の”シグナーの痣”が輝いた。
「(悪寒が消えた……シグナーの痣が俺を守ってくれたか)」
「ヤな感じしたでしょ? 使うのはお勧めできないわね。それでも皆使うのだろうけど」
「このカードは一体……?」
「多分、他のメンバーが知ってるだろうから会って聞きなさいな。……サービスしすぎちゃったわね。それじゃ退散しますか。二人とも、バーイ!」
そう言ってエマはヘルメットを被り、Dホイールに跨ってその場から走りだす。遊星がNo.のカードを仕舞う頃には既に見えなくなっていた。
「……とりあえず遊星さん。何処へ向かいましょうか? 他の4人が何処にいるかも教えてくれなったし……」
「その前に、客のようだ」
「え?」
遊星が後方へ振り向きながら言う。それに合わせて遊矢も振り向くと、そこにはガラの悪いDホイーラーが群れを成して迫って来ているところであった。
「どうやらさっきの連中の仲間が報復に来たらしいな。タッグ決闘の音やSVを頼りに場所を特定したのだろう」
「お、俺が派手にやり過ぎたせいで……ごめん遊星さん」
「……昔、俺の友がこんなことを言っていた」
「え?」
* * *
俺に合った仕事が無い以上、仕方あるまい!
凡人には俺の価値が分からんのだ!
伏せカードが入れ替わってないか確認しただけだ!
その件に関してはノーコメントだ!
* * *
「――――時には開き直るのも大事かもしれない」
「ええ!?」
「どの道、このエリアから出ようとすれば闘いは避けられなかっただろう。なら、ここでまとめて倒してしまおう。そう、考えよう」
「(ていうか、遊星さんの友達は一体何を言ってるんだ……?)」
「それに……お前となら切り抜けられないことじゃない。そうだろう?」
「!? ……はい!」
遊星と遊矢は再びヘルメットを被り、Dホイールに跨って決闘者の群れへと走りだす。
苦難の道が続こうとも、絆と信念があれば乗り越えて行ける――――まだ見ぬ仲間を想像しながら、遊星と遊矢は再び闘いへと身を投じるのであった。
次回予告
無事に廃墟を突破した俺と遊矢。
辿り着いたのは遺跡が立ち並ぶ深い森の中。
そこで俺達は思いがけない”出会いと再会”を果たす。
「やっぱりいると思ったぜ! 遊星!」
次回、遊戯王~クロスオーバーディメンションズ~
「出会いと再会 ~十代と遊星~」
ライディング・デュエル、アクセラレーション!
今日の最強カード
超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ
実用的ロマン。ジャガーノート・リーベです。
今回は全員が環境入り経験のあるガチデッキということでハイレベルな決闘が期待されていたのですが……残念ながら作者が動かしたことがあるデッキがジャンドと列車のみという体たらくであり、特にオルターガイストなんか全然解らん状態な上まったく使いこなすことができなかったので特に残念なことになっていました。御免エマさん……
今回の相手は二人とも女子。ゼアルの超ド級ボディ……もとい、超弩級火力ヒロイン”神月アンナ”。デッキは勿論【列車】。そしてヴレインズ影のヒロインことエマおば……もとい、”別所エマ/ゴーストガール”、使用デッキは勿論【オルターガイスト】。
華やかで楽しかったけど、ちょっとキャラづくり自信なかったな~。特にエマさんってあれでよかったっけ? ちょっとおばさん臭かった?
次回は団体行動組2チームの合流です。よろしかったら見てやってください。