霊夜は涙を流していた。
「あ…あれ…?」
蝕が心配そうに聞く
「…霊夜?」
霊夜はハッとしたように涙を拭き取ると苦笑いをして
「すまない。少し…な」
と呟いた。
…ふむ。あいつの世界では何かあったようだな。あまり、詮索はしないようにしよう。
「それじゃあ、行くぞ」
そう言って、俺たち三人は人里に向かった。
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人里は先程来た時と変わらず賑わっている。
取り敢えず、酒を買わないとな。
酒屋に向かうと行商人と出会った。
「零ー、いい野菜あるんだけどどうかな?」
この行商人、実は亡霊だったりする。名前は無いらしい。人の姿に化けて商売をしているが、ここの野菜はどれも美味いのだ。
「今なら、何がいい?」
そう、俺が聞くと亡霊は頷いて
「今の時期は大根とかだね。煮付けにしても良し。おろしにしても良しだよ」
「ふむ…大根か。まぁ、買ってくよ」
どうせだから、霊夢にでもやろう。もしかしたら、妖夢が何か作ってくれるかもしれないし。最悪、家で食べよう。
「毎度あり」
さてと、酒屋に行こうか。
こうして、俺たちは酒屋に向かった。
そんな時、三人の腹がぐぅーとなった。
酒屋の隣は、飯屋になっている。
もう昼だし、食べて行こうか。
俺たちは飯屋に入ろうとしたその時
「主様ー」
相棒の水覇がむぅ…とした顔で話しかけてきた。
ずっと刀の状態だったので構って欲しいらしい。
「お前、飯食わんだろ?」
そう言うと、水覇はムッとして
「一緒に居るくらい良いじゃないですか!」
と言ってきた。
チラッと霊夜と蝕を見る。
構わんと言った表情だが、それよりも水覇に驚いているようだ。
そう言えば、まだ水覇のことを話してなかったな。
「こいつは水覇。刀の付喪神だよ」
「水覇と言います。よろしくお願いしますね」
そう、水覇が言うと二人は納得したように頷いた。
「そう言えば蝕。お前の剣も喋らなかったか?」
ふむ…興味深いね。
「ハガルか?まぁ、喋るぞ。あんまり、喋らないがな」
「まぁ、取り敢えず入ろうか」
俺がそう言って、四人で店の中に入った。
店の中は美味そうな匂いが漂っている。
店員もやはり、昼時ということもあって忙しそうだ。
俺たちは空いた席に座り、適当に注文を済ませて蝕と霊夜に問いかけた。
「それで?お前達について教えて貰おうか?」
二人が口を開こうとしたその時、邪魔が入った。
「あ、零だ!ほら、あかさ!零が居たぞ!!」
「見つけても話は終わらないよ?」
……面倒な奴に見つかったな。
今、俺に話しかけてきたのは影月レン。まぁ、俺の悪友みたいなもんだ。それはいい。問題はもう片方だ。今、レンに話した奴はあかさと言って自称幻想郷の管理人だ。自称ではあるものの、紫の手伝いをしている辺り管理人見習い。助手と言ったところか。
レンが騒ぐ。
「おいおい!俺への説教よりもこいつだろ!?」
「両方だよ。零、また結界にイタズラしたな?レンが吐いたぞ。」
はぁ!?
「おい、待てよ。レンだぞ??嘘に決まってんだろ!!」
そんな時、相棒からの唐突な裏切りがあった。
「主様、昨日も結界にイタズラしましたよね。よく飽きませんね」
おい!!待て待て!!非常にまずい!!!ど、どうにか話を逸らさなければ…
「取り敢えず、お前らも座れよ。な?」
はい。内心、冷や汗が出ております。それはもう、滝のようにね。
二人はそれに従って座る。
そこであかさが蝕と霊夜に気付く。
「零、この人達は?」
「こいつらは、さっき知り合ったんだよ」
二人がそれぞれ自己紹介をする。
「俺は博麗霊夜。よろしく」
「…死波蝕だ。よろしく頼む」
レンが空気を読まずに質問する。
「なぁ、博麗ってどういうことだ?霊夢にこんな親戚がいるとか聞いてないぞ。」
ちょっと待とうか。レン君??
レンを掴み、少し離れた壁際に行く。
レンが驚いているが知ったことか。
「おい!?取り敢えず、話せよ」
「はぁ?裏切っておいてそれか??」
何故こんなにキレているかと言うと、あかさの説教は四季映姫。あの地獄の閻魔並に長いのだ。つまり、面倒なのだ。
「こういうのは連帯責任だろ?」
このやろう…店の中じゃなければ問答無用で叩きつけてやるところだ。え?自業自得だろって?知らんな。
「お前なぁ…。まぁ、いい。あの二人は訳ありなんだよ。少し、話を合わせろ。あかさがまた面倒になるだろうが」
レンに説明すると、納得したようだ。
席に戻る。
あかさが訝しげにしているがスルーしよう。
重い空気が立ち込める。
そんな時、光が差し込んだ!
「お待ちどうさま。当店人気のあんかけ焼きそば定食です。」
よし、取り敢えずこれを食べよう。
蝕と霊夜は食べ始めている。
…割と量が多いな。
「お前ら二人はもう食べたのか?」
あかさが頷き、レンが首を横に振る。
丁度いい。レンと分けよう。
そうして、俺たちは腹ごしらえを済ませたのだった。