アクセル・ワールド・アナザー 無法者のヴォカリーズ   作:クリアウォーター

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第二十五話

 第二十五話 ブラック・ダイヤモンド

 

 

 幼少期の御堂ゴウが活発な男の子だったとは、現在の彼を知る者ならイメージするのは難しいだろう。

 転機があったのは五歳の夏。

 ゴウは毎年盆の時期には両親に連れられて、秋田にある母方の祖母の家へと二、三日滞在するのが、生まれてからの慣習だった。

 ゴウは優しい祖母も、祖母の住む家の雰囲気も大好きで、物心付く頃には二〇四七年の現在よりも自然に満ちた外に出ては、ひたすら遊んでいた。同年代の子供が周りにいなくても、全く気にならないほどに。

 そんなある日の夕方も近い昼下がり。この日もゴウは午前中から遊び回り、前日の到着からはしゃいでいたこともあってか、昼過ぎには疲れて眠ってしまった。

 当時は無理に起こすと寝起きが悪かったゴウを寝かせたまま、両親は買い出しに、祖母は畑の農作業へと向かい、ゴウは一人で家の中で眠り続けていた。

 こういったケースは初めてではなく、戸締りはもちろんしっかりしていたし、本州の最北端に近い地域であっても夏は当然暑いので、ゴウの眠る部屋は熱中症にならないように空調が効き、起きた際にすぐ飲める飲料もしっかり用意されていた。

 夕方になり、ゴウは目を覚ました。物音が聞こえたのだ。最初は家族の誰かが何かをしていると思ったが、物が割れる音して気になったゴウは部屋を出て、音の原因を突き止めようとした。

 家の中を進むと、物音は祖母の自室から聞こえてくる。五歳のゴウは祖母が『お片づけ』をしていると思い、手伝いをしようと考えた。手伝った自分を祖母はきっと褒めてくれると期待しながら。

 部屋の襖を開けると、予想もしない光景が飛び込んできた。

 部屋にいたのは祖母でも両親でもなかった。ゴウの知らない男が一人、土足で祖母の部屋を漁っていたのだ。

 箪笥や化粧台、机の引き出しは軒並み開けられ、収納されていた物があちこちに散らばっている。ガラス細工の置物が砕けて畳に落ちていて、先程聞こえた音の原因だとゴウは何となく理解した。

 薄汚れたタンクトップを着て、脂ぎった汗をかいている四十代半ばの外見をした男は、部屋の前にいるゴウに気付いて、ぎょっとした表情でゴウを見た。

 里帰りに来た娘夫婦が出かけ、家主も外出しているこの時を見計らい、空き巣に及んでいたからだ。まさか子供が残っていたとは予想外だったのだろう。

 ところが、一向に動きもしなければ声も出さないゴウに、男は次第に落ち着きを取り戻す。めぼしい金目の物を詰めたバッグを持ち、こちらを見ているゴウに向かってにやりと笑うと、口元に人差し指当てて『静かに』とジェスチャーをする。そうしてそのまま悠々と、入ってきたガラス戸から逃げていった。

 男が去った後の数分間も、ゴウはどうしたらいいのか全く分からず、ただその場で呆然とすることしかできなかった。

 しばらくすると、息を切らした祖母が、男が出ていったガラス戸から現れた。外から窓が割れていることに気付き、一人残していた孫の身を案じて走ってきたらしい。

 農作業着の祖母に抱きつかれたゴウは、祖母が泣いていることに気付いた。

 

 ──『ごめんね……。怖かったねぇゴウ君、ごめんね。ごめんねぇ……!』

 

 声を震わせて謝る祖母に、ゴウはようやくあの男が『悪い人』だと理解した。そして自分が何もできず、そのせいで祖母がこうして悲しんでいるのだと思い、大声を上げて泣き始めた。

 もちろんゴウの祖母は、空き巣の入った家にゴウを一人残すことになってしまったことに対して、自らの危機感の欠如により、危険な目に遭わせてしまったことを涙ながらに謝っていたのだが、当時の幼いゴウが気付くことはできなかった。

 間もなく両親も帰宅し、すぐに警察へと連絡。犯人の捜索と事情聴取が行われた。

 犯人を実際に目撃したのはゴウだけだったので、母親に抱かれながら記憶しているだけの情報を、(つたな)いながらも警官に伝えている時も、ゴウは自責の念に駆られていた。

 実際に五歳の子供が成人男性相手に、何ができたわけでもない。第一に、眠っている五歳の子供一人を家に残したままということが、そもそもあまり褒められたものではないだろう。

 だが、呆然と立ち尽くすだけだった己の不甲斐なさ、自分の前ではいつも笑顔だった祖母の悲嘆に暮れた表情を見ると、ゴウは自分のせいだと思わずにはいられなかったのだ。

 翌日、ゴウは両親に連れられ自宅へと帰っていった。

 この半年後の冬。祖母は病気で亡くなった。

 当時のゴウは知らなかったが、祖母は以前から体調を崩していて、この事件の心労が体調を更に悪化させたのではないか、というのが周囲の見解だった。

 祖母の亡くなった数ヵ月後に、捜査中だった犯人は逮捕された。犯人はセキュリティの低い祖母の家に、以前から目を付けていた地元の人間だったそうだ。

 当時からすでに、全国にソーシャルカメラは配備されていたが、その数は今よりも遥かに少なく、都市部から離れれば離れるほど、死角は多く存在していた。加えて祖母はいわゆるアナログ人間で、普通なら窓が割れた際にはアラームを鳴らし、警備会社に知らせる警報装置を始めとした機器類も嫌って、家には取り付けてはいなかったのだ。

 そんな犯人が盗んだ品物はすでに売り飛ばされており、その後の行方は掴めず、家族の元へ戻ってくることはなかった。その中には、ゴウが生まれてすぐに亡くなった祖父から貰ったのだと、以前に見せてもらったダイヤモンドの婚約指輪も含まれていたという。

 この出来事はゴウに『自分が心から決めた物事を、必ず守らなければならない』という解釈、ある種の強迫観念を植え付けることとなった。更にはこれによる『心の傷』が、ダイヤモンド・オーガーというデュエルアバターを構成する要因の一つであることを、今はまだ知らない。

 

 

 全身が黒に染まった、隻腕の鬼の一撃が周囲を破壊していった。

 オブジェクトを拳や蹴りで粉砕し、破壊がほぼ不可能な地面でさえ踏み込むだけで亀裂が走る。

 標的は怒りに満ちた攻撃をのらりくらりと避けては、隙を見て後頭部から伸ばした毒針をゴウに突き刺す。だが──。

 

「ガアッ!」

「むぅ、装甲が薄い部分を狙っているというのに、こうも弾きますか。大した硬さだ」

 

 ゴウの怒りの心意によって増強された装甲がほとんど無い箇所を狙うスコーピオンだったが、その部分も薄い膜のように黒いダイヤモンドで覆われており、毒々しい紫の光を発する毒針はアバターの素体にまで到達しない。

 一方のゴウは、自分を近付けさせようとしないスコーピオンに対して、更なる苛立ちを募らせていく。普段なら確実に攻撃を当てる為の策を考えるのだが、今はただ衝動のままに拳を振るうだけだ。

 ──許さない。ゆるさない。ユルさない。ユルサナイ。

 

「────おやっ?」

 

 そんな鬼ごっこ状態が続く中、建物から道路に着地したスコーピオンが、《霧雨》ステージの絶え間なく降り続ける雨に濡れた道路に足を滑らせ、体勢を崩した。

 間抜けなサソリを捻り潰そうと、ゴウは一層足に力を込め、一気に距離を詰めようとする。先程のフロッグとの戦闘で消失した、左足の爪先や右腕の断面からの痛みは微塵も感じていない。

 左腕を振りかぶり、スコーピオンの顔面に狙いを付け、周囲の雨さえも蒸発させる勢いで拳を打ち出し──。

 

 ギャァアアン!! 

 

 金属が擦れるような、耳障りな音が周囲に響き渡った。

 ゴウの左腕は、銀灰色の掌に受け止められている。前方にはゴウの見知らぬ、身長二メートルを超える大柄なM型アバターが立ちはだかっていた。

 まるでボディビルダーのような筋骨隆々の体は全身がメタリックなシルバーグレーで、更に両腕は(にび)色の光に包まれている。

 ──仲間か。こいつも心意を……。でも、関係ない。

 

「邪魔だ……!」

 

 ゴウは左腕を勢い付けて引きながら、そのまま半身になると、今度は左足で回し蹴りを繰り出す。

 ところが、現れたM型アバターは迫る蹴りにも動じることなく、逞しい腕で難なくこれを受け止めてみせた。

 これには怒りに満ちていたゴウも素早く足を引くと、距離を離して警戒する。両腕を包んでいる心意の力を差し引いても、自分の一撃をまともに受け止めるデュエルアバターはそう多くはなかったからだ。

 大柄なM型アバターの後方から、ぬっとスコーピオンが現れ、かいた汗を拭くような仕草で額の雨水を拭う。

 

「ふぅ……助かりましたよ、コロッサルさん。どうもそこの彼とは相性が悪いようでね。──ま、滑った振りをすれば、隙の一つでもできるかと思っていたんですが」

「スコーピオン。どういう状況だ、これは。例の心意使いは倒したのか。こやつは一体……」

「倒した心意使いの友人らしいのですがね。対戦中に後一歩のところを私に仕留められて何と言いましょうか、うーん……キレてしまったようでして……」

「………………」

 

 (いかめ)しく低い声で質問した、コロッサルと呼ばれたM型アバターは、何の悪びれもなく説明するスコーピオンから視線を逸らし、ゴウを睨む。

 

「心意を暴走に近い形で発動させている。貴様が余計なことを口にしたのだとしても、ここまでになるのは異常だな」

「ひどい言い草ですねぇ。……ところで我らが主はどうしたのです? まさかエネミーにやられてしまったわけではないでしょう?」

「当然のことを聞くな。貴様を気遣って、先に自分をここへ寄越したのだ。──ああ、いらっしゃった」

 

 こちらに向かって誰かが歩いてくる。

 人影はどんどん近付き、やがて霧雨の向こうから、今回のダイブで三人目になる見知らぬデュエルアバターが、ゴウの前に姿を見せた。

 まず印象的なのは頭部。顔にはアイレンズもゴーグルもバイザーも付いてはいない。代わりに、何も凹凸の無いのっぺりとした仮面が装着され、その縁にはリング状のピアスがいくつも付いていて仮面と顔面を固定している。

 ボディには牧師の法衣とも、拳法家の道着ともつかない、流体金属で形作られた、不思議な服を着込んでいた。このアバターの装甲に当たるのであろう。

 そんな仮面も服も含めた全身が青みがかった灰色で、コロッサルと同様に金属特有の光沢を帯びている。

 急ぐこともなく悠然と歩みを進める仮面のアバターは、スコーピオンの隣に立ち止まると、コロッサルと対峙するゴウへと、その仮面の付いた顔を向けた。

 

「────ッ!?」

 

 それだけでゴウは全身が強張り、身の危険を感じる。ゴウにはこれと似たような感覚を、以前経験した憶えがあった。

 今年の頭頃にクロム・ディザスターとの戦闘後、逃走したディザスターを追跡した際に出会ったデュエルアバター、黒の王ブラック・ロータス。《絶対切断(ワールド・エンド)》の二つ名を持つ彼女に、剣そのものである腕を向けられた時の感覚とどこか似ているのだ。

 だが、ロータスの触れるもの全てを切り裂くような威圧感に対し、顔を向ける仮面アバターから発せられているのは、こちらを否定し押し潰すような重圧とでも言おうか。それがロータスのものよりも、より冷たくゴウには感じられた。

 

「心意使いはいたのか?」

「はい、問題なく倒しました」

 

 ゴウから視線を外した仮面アバターは、青年と壮年の声が入り混じったような、どこか(いびつ)で軋むような声音(こわね)で訊ねると、スコーピオンが(うやうや)しく頭を下げて報告をする。

 

「そうか……行くぞ」

「もうよろしいので?」

「元々、現状を直接目で見るのが今回の目的だった。あれは装着者を一人ずつ倒したところで意味はない。直に過疎エリアだけでなく、王達のレギオンにまで拡がってゆくだろう。……とうとう心意技を乱用するアイテムまで横行するようになるとはな」

「嘆かわしい限りですね」

「ああ、やはり我々がこの歪みを正さなくてはならない。その実現の日が近付いている。それまでに万全の用意をしておかなければ」

 

 コロッサルもすぐに仮面アバターの元へと向かい、三人はそのままゴウに背を向けて歩き出す。

 まるで自分が存在していないかのような扱いに、ゴウは再び怒りが湧き始めた。

 

「待て……待てよ!」

 

 ゴウの怒声を受けて三人は立ち止まったが、首をこちらに向けるだけで構えもしない。その態度に余計苛立ちが募るゴウは拳を握り締め、三人めがけて走り出した。

 

「──愚か」

 

 仮面アバターの冷たい声が耳に届いた直後。

 力を込めていたゴウの左腕が肩の根元から砕け、地面へと落ちた。いきなり腕を失ったことで、バランスを崩しながら頭から転ぶと、その衝撃で今度は額の両角が折れ、フェイスマスクにまでヒビが入る。

 

「な、なんで……」

「貴様の心意の力に、貴様自身が耐え切れなかったのだ」

 

 足にも力が入らず、痛みよりも驚きの方が勝るゴウの耳に、蔑むような仮面のアバターの声が届く。

 

「未熟者が。そこで這い(つくば)っていろ。貴様のような者も加速世界からすぐに消えることに──」

 

 仮面のアバターが言い切る前に、何者かの足が地面に突っ伏すゴウの目の前に着地した。

 沈んだ青色の袴に足首には数珠。そして、下駄。

 

「師匠……」

「オーガー! しっかり!」

「こりゃひどいな……」

 

 うつ伏せに倒れているゴウは、誰かに持ち上げられているのを感じて首を動かすと、フォックスとアウトローメンバーのコングが、こちらを心配そうに覗き込んでいた。

 二人に体を支えられながら、地面に座る形になったゴウはふと自分の体を見ると、装甲はすでに漆黒から、普段の透明なダイヤモンド装甲に戻っていたことに気付いた。

 

「とりあえず……俺はアイオライト・ボンズ。お前さん達、ここらじゃ見ない顔だが何者だ? 俺の《子》がこんなボロボロなのはどういう了見だ?」

 

 名乗る大悟が、仮面アバターに負けず劣らずの威圧感を放ち、仁王立ちで目の前の三人を見据えた。

 その迫力を感じ取ったのか、仮面のアバターを守るようにコロッサルが一歩前に踏み出す。

 

「コロッサル、下がれ」

 

 ところが、仮面アバターが即座にコロッサルを下がらせ、自ら前に出た。

 

「……私はレギオン《エピュラシオン》頭目、《プランバム・ウェイト》。この二人は私の同胞、《チタン・コロッサル》とアメジスト・スコーピオン。我々はISSキットなる、心意技を扱えるようになる強化外装が出回っていると聞いて、各地を巡り様子を見て回っていたのだ」

 

 淀みなく大悟の質問に答えるプランバムに、大悟が訝しんだ様子で訊ねる。

 

「ISSキット……。そんな物見てどうする。何が目的で──」

「加速世界に必要なことだ。それ以上を会ったばかりの貴様に話す義理はあるまい、アイオライト・ボンズ。《荒法師》と言ったか、その名は耳にしたことがある。……そこの未熟者がそうなった理由は分かっているだろう。詳しくはそやつ自身に聞け。最後に一つ。《親》ならば《子》に対して最低限の手綱は握っておくことだ」

 

 プランバムはそう言い放つと、今度こそ付き従う二人を連れ、雨の中へと消えていった。

 

 

 

 予期せぬ連戦と謎のレギオンとの邂逅を経たゴウは少しその場に留まってから、大悟に付き添われてポータルへと向かっていた。

 暴走の後、全身に痛みが走り、とても動ける状態ではなかったからだ。もっとも、ブレイン・バースト内では回復の手段はほぼ皆無に等しく、安静にしたところで傷が癒えはしないが、時間を置くことでどうにか動ける程度には痛みにも慣れた。

 フォックスはゴウ達に礼を言うと、すぐにポータルへと向かっていった。

 その際にゴウは何か声をかけるべきかと、口を開きかけたが、『あいつの気持ちを察してやれ』と大悟に制されてしまった。

 コングも他の皆に事の顛末を伝える為、アウトローへと戻っていった。聞いた話では、今回はホームに到着していたメンバーの中から、機動力を優先してコングと大悟がフォックスと現場に向かい、他のメンバーが残る形になったそうだ。

 ゴウは大悟にポータルに向かう道中で、フロッグとの戦闘の最中にスコーピオンに乱入されフロッグが死亡状態にされたこと。その後自分の装甲が黒くなり、辺り一帯を破壊しながらスコーピオンと戦闘をしていたこと。そして、コロッサルとプランバムの登場後に、大悟達が到着したことを伝えた。

 それから大悟は、ゴウの隣をずっと無言で歩き続けている。未だに《変遷》は起きず、《霧雨》ステージの道中には空から落ちる雨音だけが微かに聞こえていた。

 ゴウも今はとても口を開く気にはなれず、この沈黙はむしろありがたかった。胸の中には今もいくつもの感情が渦巻いて、考えがまとまらない。ようやく口を開いたのは、ポータルのある二子玉川駅の入口に辿り着いてからだった。

 

「……ありがとうございました。ここからはもう一人で大丈夫です」

「あぁ……じゃあ俺はアウトローに戻る。……今は色々あって混乱しているだろうから、ゆっくり休め」

 

 軽く頭を下げるゴウに、大悟は労わりの言葉をかけると、それ以上は何も言わずすぐに去っていった。

 ゴウはしばらく上を向いて、雨を浴びながら曇天の空を眺めていたが、意味もない行為を馬鹿らしく感じて、ログアウトをする為にポータルのある駅構内へと進んだ。

 

 

 

「嘘だろ……」

 

 ダイブカフェから出て家への帰宅中、晴れていた空はみるみる雲に覆われていき、すぐに雨が降り出した。加速世界でも雨に打たれていたというのに、現実に戻っても雨とはツイていない。梅雨明け自体はまだ先だが、今日は梅雨前線が小休止して夜まで降らないという予報は見事に外れたようだ。

 傘は持っていないが小雨だったので、結局ゴウは雨に打たれながら帰ることにした。普段なら慌てて走るなり、安物の傘を買うなりするのだが、今はその気も起きない。

 

「ちくしょう……」

 

 自然と口から言葉が零れていた。

 別にフロッグに対して『助ける』と約束したわけではないし、ISSキットを一時的に解除させたとしても、フロッグが再度着装すればそれまでだ。そもそも最初は、フォックスにアウトローメンバーの応援を連れてきてもらうまでの、足止めをするのが目的のはずだった。

 それでも自分はISSキットによって暴走していたフロッグを必ず救うと決めたのだ。だというのにそれは叶わず、最後は怒りのままに暴れるだけ。

 

「ちくしょう……ッ!」

 

 何もできなかった己の不甲斐なさを嘆くゴウの頬を伝うのは、空から降る雨粒だけではなかった。

 


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