エロースの恋愛相談室   作:荒ぶる異族

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エロースの恋愛相談室の後日談です。


エロースの恋愛相談室 実践編

ーーー恋愛は知識だけじゃダメだって思い知ったので、その……

 

ーーー色々なことを教えてくださいね……?

 

マスターと恋人同士になり、そんなやり取りをした後も色んなことがあった。

 

最初は恋人同士になれたことが嬉しくて気にしてなかったけど……

 

皆が慕っているマスターと付き合ったことを、隊の皆に認めて貰えるか不安で堪らなかった。

 

けれど皆はマスターの選んだ人ならと、私達を祝福してくれて。

 

数週間が経ち、隊公認の私達の仲は更に深まって……

 

「はぁ~~……」

 

深まって、なかった。

 

「恋愛って、難しいですね~……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恋愛相談室に代わって立ち上げたお悩み相談室が思いの外盛況だった。

 

それはいい。

 

忙しいけどマスターと一緒にいられるから、全然構わない。

 

問題は……。

 

「あ、マスター!エロースと散歩に行きませんか?」

 

「ごめん!今から用があるんだ」

 

「じ、じゃあ一緒に……」

 

「え、いや、一人で大丈夫だよ。それじゃ行ってくるね」

 

マスターが全然構ってくれない。

 

一人で街に出掛けて行ってしまった。

 

「私、マスターの恋人ですよね……?」

 

こんなやりとりが毎日続いていた。

 

ーーーーーー

 

ーーー

 

「…………っていう感じなんです。……アダマス、エロースの話聞いてます?」

 

「アンタ、今日はいつにも増してグイグイくるわね……」

 

アダマスは(とても嫌そうな顔で)溜め息をつきながらも、相談にのってくれた。

 

「どうしてマスターは私のことを避けるんでしょう……?」

 

「全然構ってくれない、ねぇ……。しかも一人で出掛けていくとなると」

 

「浮気ね」

 

「え、えぇ!?って、マスターはそんなことしません!」

 

「思いっきり動揺してるじゃない」

 

あ、これ絶対弄られてる。

 

「もぉ、真剣に考えてくださいよ。これでもエロースは本当に困ってて……」

 

「ふぅん?じゃあマスターに構って欲しいって言ったの?」

 

「え?い、言ってないです」

 

「何の用事なのかとか、自分との時間を作って欲しいとか、そういうことは?」

 

……言ってない。

 

「相変わらず恋愛ごとに臆病ね。告白だってマスターの方からしたんじゃないの?」

 

「うっ……」

 

全部アダマスの言うとおりだった。

 

「いいから取り敢えずその辺のこと聞いてみなさいよ。マスターから話を聞けば全部済む話でしょ」

 

「そう、ですね。アダマス、ありがとうございます。上手くいったら報告しますね!」

 

「もう二度と聞きたくない」

 

アダマスはそう言うけど、口元が少し緩んでいた。

 

何だかんだいって助けてくれる、彼女の優しさに感謝した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーマスターに正直な気持ちを伝えよう

 

そう決めてから数時間後。

 

私達が泊まっている宿。マスターの部屋の前。

 

そこで、私は勇気を出せれずにいた。

 

「うぅ~……。もしマスターにしつこいって思われたら……。いや、でも……」

 

いざノックをしようとしても、言い訳がどんどん頭の中で浮かんでくる。

 

「だ、ダメです!女の子は度胸と愛嬌!覚悟してくださいねマスター!」

 

「……僕は何をされるんだろう」

 

「……あれれ?」

 

振り向くと、そこにはマスターが。

 

「…………」

 

そういえば、さっき用事で街に出掛けてましたね。

 

誰も居ない部屋の前でうんうんと唸っていたかと思うと、恥ずかしさが込み上げてくる。

 

「き、今日はこのぐらいにしておきますから!覚えててください!」

 

「えぇ~……?」

 

想定外の事態に今回は戦略的撤退を選んだのだった。

 

 

 

 

その後

 

「あ、あだます~~……」

 

「チキってんじゃないわよ!早くいけ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

気を取り直して、マスターに声を掛ける。

 

「あ、あの、マスターの用事って、何なんですか……?」

 

「ごめん、それはまだ話せないんだ」

 

まだ。

 

「それは、いつか教えてくれるってことですよね……?」

 

「うん。約束する」

 

そう言ってマスターは小指を差し出してきた。

 

自分の小指を絡ませて指切りをする。

 

まだ言いたいことはある。

 

寂しいとか、構って欲しいとか、でも。

 

「寂しい思いをさせてごめん。用事はもう少しで終わる筈なんだ。だから」

 

「その時は思いっきり遊ぼう」

 

「……はい!」

 

こうしてマスターは欲しい言葉をかけてくれるから、私は流されてしまう。

 

そこには、彼の些細な言葉や気遣いに喜んでしまう自分がいて。

 

マスターのことが大好きなのだと改めて思い知る。

 

「マスターは罪な人ですね」

 

「?」

 

ボソッと呟いたその言葉が、彼の耳に届くことはなかった。

 

 

 

 

その後

 

「あ、アダマス!聞いてください!」

 

「うるさい!いちいち報告すんな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、アダマスに嬉々として報告を済ませたその後。

 

「……え?」

 

隊の子から、街中で女の子と楽しそうにプレゼントを選ぶマスターに似た姿を見たと聞いた。

 

「うそ、ですよね?マスター……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私達が泊まってる宿。

 

アダマスの部屋をノックする。

 

「今度は何?……陰鬱な顔してないで、用があるならさっさと部屋の中に入りなさい」

 

アダマスは私を部屋にあげ、茶々を入れずに相談にのってくれた。

 

「本当に浮気してたとはね」

 

本気で彼女は怒っていた。

 

「ちょん切るか」

 

「やめてください、アダマス」

 

私はマスターを責めたい訳ではなくて。

 

「どうしたら、マスターに振り向いて貰えると思いますか……?」

 

「でもアイツは……」

 

「マスターのこと、エロースは諦めきれません」

 

「……ハァ」

 

アダマスは、仕方ないと言いたげに溜め息をついた。

 

「じゃあ、マスターにアンタがいい女だって分からせてやるしかないわね」

 

「えっと、それって……?」

 

「アンタは元々他人の恋愛相談に乗ろうとしてたんでしょ?だったら今度は自分で実践してみせなさい」

 

ーーーーーー

 

ーーー

 

マスターに告白されて。

 

マスターに欲しい言葉をかけて貰って。

 

今までずっとマスターに貰ってばかりで、自分から何かをすることはなかった。

 

だから、これがその第一歩。

 

「ま、マスター!エロースとデートしましょう!」

 

これから、乙女の戦争が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分から誘うことがこんなに勇気がいることだと思ってなかった。

 

マスターはデートの誘いに快くOKをしてくれて、今は街の中で手を繋いで歩いている。

 

「エロース」

 

「は、はい!」

 

緊張で声が上擦る、心臓がうるさい。

 

「カフェがあるからそこで一息つこうか」

 

マスターが自然にリードしてくれる。

 

嬉しい、けど。

 

自分から行動しないと!

 

「い、いえ、エロースがデートプランを考えたので、マスターは大船に乗ったつもりで……きゃう!」

 

ポキッと、靴のヒールが折れ、転びそうになる。

 

そんな私をマスターは抱き留めてくれて、

 

「よっ……と。大丈夫?」

 

「は、はい……わっ!」

 

そのままお姫様抱っこをされる。

 

「ま、マスター!ひ、人目があるのに!」

 

「僕も恥ずかしい。でも靴屋までは我慢して」

 

マスターは私を抱きかかえたまま、駆け足で靴屋に向かった。

 

その大胆さが男らしくて、きゅんとしてしまう。

 

マスターに靴屋でブーツを見繕って貰って、そのまま服屋に行って色んな格好をして、誉めて貰ったりして。

 

デートはプラン通りにいかなかったけど、これはこれで……

 

「ってこのままじゃダメです!」

 

「うわ!ど、どうしたの?」

 

カフェで一息ついてる途中で正気に戻る。

 

「か、観覧車!観覧車に乗りましょう!」

 

「この街にはないけど」

 

「だったら2人でボートに……!」

 

「この近くには湖も池もないよ」

 

「え、えと!えっと!」

 

「エロース」

 

ポンと、マスターの手が私の頭に乗せられ、そのまま優しく撫でられる。

 

「無理に恋人らしく振る舞おうとしなくても、僕達のペースでいいんじゃないかな?」

 

「……マスターはズルいです」

 

そんなこと言われて頭を撫でられたら、もう何もできない。

 

その心地よさに身を委ねて

 

「マスター、私だけを見てくれませんか……?」

 

気がつけばそんなことを呟いていた。

 

マスターの手がピタリと止まる。

 

「……エロース」

 

「それは、約束できそうにない」

 

目の前が真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?何をしてたんでしたっけ?

 

……そっか。

 

私、マスターから逃げ出したんでした。

 

あはは、エロースってこんなに独占欲が強かったんですね。

 

……エロースは悪くないですよね?

 

だってマスターが他の子と浮気するから……。

 

だから。

 

…………。

 

本当は分かってたんです。

 

マスターのそれが誤解だってことぐらい。

 

マスターは浮気するような人じゃない。

 

分かってます。分かってますけど。

 

でも自分に自信がなくて、いつかマスターの心が離れていくんじゃないかって不安で。

 

だから悪いのはマスターじゃなくてエロースなんです。

 

お悩み相談室を始めてからずっと、マスターは忙しい中でも欠かさず私のことを手伝ってくれたのに。

 

今まで私はマスターに何もしてあげられなくて。

 

愛されたいと願うばかりで、愛する努力を怠ってました。

 

それなのに私だけを見て欲しい、なんて図々しいですよね。

 

せっかく一歩を踏み出しても、マスターとのデートに浮かれてしまって失敗ばかり。

 

だって、しょうがないじゃないですか。

 

エロースはマスターのことが好きで、大好きですから。

 

…………辛いな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宿に戻ってから泣き続けて、疲れてしまった。

 

「……マスター」

 

マスターのことだから、きっと私を必死で探してくれてるに違いない。

 

……顔を合わせたら、何て言えばいいんだろう?

 

コンコン、とノックの音が響く。

 

「エロース、いる……?」

 

「……はい」

 

「入ってもいいかな?」

 

「…………今は、まだ」

 

泣きはらした顔を見られたくない。

 

どんな言葉を掛けたらいいのか分からない。

 

「そっか。だったらそのままで聞いてほしい」

 

「君が僕の恋人になって、僕は浮かれていたんだと思う」

 

「君に寂しい思いをさせてたことを知ってて、それでも自分のワガママを優先した。……ごめん」

 

「マスターだってエロースのワガママを聞いてくれました」

 

恋愛相談室の時も、お悩み相談室の時も。

 

「だから、おあいこです」

 

今回のことも、私の独占欲が強過ぎただけ。

 

「エロースなんかをずっと見て欲しい、なんて行き過ぎたワガママですよね」

 

こんな私を見てくれるなら、恋人という今の立ち位置なら、充分幸せだ。

 

それ以上を望むなんて、やっぱり私はワガママだ。

 

「違う!」

 

「君が僕に見て欲しいと言ってくれた時、本当に嬉しかった!でも」

 

「僕はこの隊の、皆のマスターだから。君だけの僕ではいられないんだ」

 

彼は、隊の皆にとってのマスターで、私の恋人だけではいられない。

 

そんな当たり前のことが抜け落ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マスター……」

 

理解はできても、納得は出来なかった。

 

「他の子達と同じじゃ、イヤなんです」

 

「ごめんなさい。こんないけない子で……」

 

「…………」

 

ドア越しに沈黙が伝わってくる。

 

自分がここまで自分勝手だなんて思わなかった。

 

「エロースのこと、嫌いになっちゃいました……?」

 

こんな最低なことを聞く自分に嫌気が差す。

 

マスターは絶対に相手を傷つけるような発言はしない。

 

「そんなことない」と言って欲しくて、自分が安心したくて、こんなズルい問いかけをマスターにしている。

 

マスターは

 

「………」

 

何も、答えてくれなかった。

 

「あはは……」

 

ーーー「好き」がこんなに辛いものだなんて、知らなかったな。

 

「恋って難しいですよね。両想いになれたら、後は勝手に上手くいくんだって思ってました……」

 

「……僕もだよ。上手くいかなくて困ってる」

 

「だから、僕の恋の悩みを聞いて貰ってもいいかな?」

 

恋の悩み。恋愛相談。

 

「……恋愛相談室は、もうやってませんよ?」

 

「今回だけお願い出来ないかな?これで最後にしてみせるから」

 

最後。その言葉が耳に残った。

 

「……はい。マスターは何に悩んでるんですか?」

 

「好きな子がいるんだ。とても可愛くて、不器用な子」

 

「金髪で、皆の為に悩みを聞いて回ってて……」

 

……私の、こと?

 

「その子は自分に自信が持ててなくて、どこか遠慮がちな所があって……」

 

「好きだって伝えたいけど、言葉だけじゃ彼女はきっとすぐに不安になってしまうと思うんだ」

 

「そんな彼女に、僕が本当に好きなんだってことを伝えたくて、沢山慣れないことをした」

 

「……え?」

 

「毎日街で働いて、自分で稼いだお金でどうしても渡したいものがあったから」

 

「給料3ヶ月分とまではいかないかもしれないけど」

 

「……エロース、君に受け取ってほしい」

 

ドアを開けて、マスターが差し出した小さな箱を受け取る。

 

「あ……」

 

箱を開けると、指輪が小さく煌めいていた。

 

「ま、マスター、これ……」

 

「ずっと黙っててごめん。君を驚かせたくて……」

 

マスターが一人で街に行っていた事実。

 

私を同伴させてくれなかった理由。

 

プレゼントを選んでたマスターの姿。

 

「全部、エロースにこれを渡すために……?」

 

「うん。僕は皆のマスターでなくちゃいけないけど、君だけが特別なんだって分かってほしくて」

 

ズルい。

 

さっきまでの辛さが嘘みたいに消えていて、幸せで瞳から涙がポロポロと溢れていく。

 

「もう、紛らわし過ぎます……!」

 

言葉とは裏腹に、自然と笑みが零れていて。

 

「ごめん、指輪を買うことに必死で、その間君をないがしろにしてたかもしれない」

 

その必死さは、自分のためにしてくれたことだから。

 

「だからこれで最後にする。もう君に寂しい想いをさせたりなんてしない」

 

「だから、指輪を付けてくれるかな?」

 

本当に、ズルい。

 

幸せ過ぎて、こんなの断れるわけなくて。

 

「……はい!」

 

本当に恋って、思い通りにならないなって思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えへへ……」

 

部屋の中彼女とベッドに腰掛け、寄り添いあう。

 

「僕の好きは伝わったかな?」

 

「はい、バッチリです!」

 

エロースは左手の薬指で輝く指輪を眺めながら、嬉しそうにはにかんだ。

 

誤解が解けて本当に良かった。

 

良かった、けど。

 

「もう少し僕のこと信じて欲しかったな」

 

「え、エロースはマスターのこと信じてましたよ!マスターが浮気してるなんて、思ってな……」

 

「ううん、そっちじゃなくて」

 

「僕が君を愛してるってことを」

 

「あ……」

 

エロースは顔を真っ赤にして俯く。

 

「ご、ごめんなさい。で、でも、もう充分伝わりましたから」

 

「そっか、やっぱり分かってないみたいだね」

 

「え、え?え?」

 

彼女は何が何だかといった感じで、あたふたしている。

 

「指輪を渡しただけで収まるような気持ちじゃないってことだよ」

 

「ま、ますた、んぅ!ちゅ、ちゅぅ…」

 

彼女の唇を強引に奪う。

 

「ぷぁ……、ますたぁ……」

 

エロースは惚けきった表情で僕を見つめて、

 

「ん……」

 

目を閉じ、唇から舌を覗かせて、無言でキスをねだる。

 

「ん!んぅ、ちゅ、ちゅる、ちゅ!」

 

僕達にとって、この日は忘れられない夜になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーだからこれで最後にする。もう君に寂しい想いをさせたりなんてしない。

 

マスターがそう言ってくれてからというものの、2人でいる時間が長くなりました。

 

互いに支え合って、些細なことで言い争って、夜には愛し合って。

 

それでも、マスターにずっと私だけを見て貰える訳ではないですけど。

 

「……ふふ」

 

でも、大丈夫です。

 

左手の薬指にはめられたこの指輪が、私がマスターにとって特別なんだって教えてくれますから。

 

それに、マスターは皆の為に頑張る私を好きだと言ってくれましたけど……。

 

「エロースも、皆の為に頑張るマスターが好きだったみたいです」

 

恋愛は難しくて、だからこそ。

 

お互いが好きな自分であるために、私もマスターも、隊の皆の為に頑張るんです!

 

「あ、あの、エロースさん、悩みを聞いて貰っていいですか……?」

 

「勿論です!その悩み、エロースが解決しちゃいますね!」

 

エロースのお悩み相談室!

 

困ったことや悩みがあれば遠慮せずに何でも相談してくださいね!

  

 

 

 

 

Fin

 

 

 

 

 

 









おまけ
エロースのお悩み相談室 番外編

・アダマスの場合

アダマス
「エロース、ちょっといいかしら?」

エロース
「え!アダマス、悩みがあるんですか!?」

アダマス
「アンタぶっ飛ばすわよ」

マスター
「まぁまぁ」

アダマス
「アンタもアンタよ。ったくこのバカップルは……」

エロース
「褒め言葉ですね!何に悩んでるんですか?」

アダマス
「……毎晩隣の部屋から聞こえてくる喘ぎ声がうるさいんだけど」

宿の壁は薄い。

もうお嫁にいけません…… byエロース
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