ゆるぽよデンドロライフ   作:ふーじん

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乙女?

 □<サウロン森林> 【高位従魔師】ねねこ

 

 ギデオンで一泊してから更に南へ一日半程。

 街道から大きく西に外れたこの<サウロン森林>というマップでは、ニルさんの勧めた通り今のあたし達にとって程良い歯応えのモンスターが多く棲息してた。

 最低層からして亜竜級上位が基本になるこの地帯は、北東部で隣接する<サウダーデ森林>とは上手く棲み分けされていて、脱初心者がレベリングするにはちょうどいい塩梅の狩場みたいー。

 更に南方向へ進んだ深部になると純竜級モンスターが犇めく上級マップになるみたいだけど、さすがにそこはまだ早いよねー。

 

 そんなマップでレベリングに励むあたし達の成果は、初挑戦にしてはなかなかいい感じじゃないかなーって思うよー。

 なんといっても魔獣系や怪鳥系がメインだから相性が良くて、相手に取り付けられればこちらの勝ちは揺るがないのが大きいよー。

 といっても安心してばかりもいられなくて、このレベルになると攻撃魔法を使ってくるモンスターもいて、炎のブレスを吐くのとかもちょこちょこいるから、さすがのスライム軍団も無傷ではいられなかったー。

 

「ありゃ、またきーちゃんズが何匹かやられちゃった。さすがにHPが足りないかなー?」

『…………』

 

 今もまたあたしの従属キャパシティの使用量が減って、どうやらどこかできーちゃんズがやられちゃったみたいだねー。

 きーちゃんズはまだまだ小さいから炎属性の魔法やブレスをくらうとあっという間に蒸発しちゃうから、遭遇した敵によってはこうしてやられちゃうんだよねー。

 るーさんは自前のHP量のおかげでこの辺の敵相手ならいくら食らっても平気だけど、きーちゃんズの方はそうはいかなーい。

 相性差で圧倒的有利を誇っていても、単純なスペックで言えばこのマップのモンスターより遥かに劣るから、不利な相手に遭遇すれば一転してこの有様だよー。

 

 とはいえ、だからといってこちらの懐が痛むかと言えばそうでもないんだけどー。

 減った戦力は補充すればいいんだしねー。

 

「んー、この減少量だと五匹くらいかな? るーさん補充よろしくー」

『…………』

 

 足元のるーさんにそう指示を出すと、るーさんは少し震えてからうにゅんと小さな塊を五つ分離させた。

 ちょうど今減ったきーちゃんズと全く同じステータスをした新しい【キンドレッド・スライム】をすかさずテイムすると、そのまま適当な方向へやって成果を待つー。

 狩りを眷属達に任せて主人であるあたし達はここで悠々と待っていればいいだけの楽な仕事だよー。

 それもこれもるーさん……【カオス・スライム】から【カオティックマザー・スライム】に進化した新生るーさんのおかげだねー。

 

 元々極端に旺盛だった雑食性を反映して進化してきたるーさんには、通常種のスライムにはないある特徴があるんだー。

 それがありとあらゆる物を捕食することでHP(体積)を回復する特性ー。

 元々雑食性のあるスライムだけど、本来なら成長していく過程である程度の嗜好性や偏食性を獲得して、言ってしまえば()()を摂取することで効率良く体積を増やしていくんだけど、うちのるーさんには特定の好物というものが存在しないー。

 通常のスライムと比べて体積への変換効率は大きく劣るけれど、その辺のオブジェクトででも回復できる特性が強みだよー。

 だからこそ混沌の粘塊(【カオス・スライム】)なんて変種に進化したんだけど、そこから【カオティックマザー・スライム】に進化したるーさんには、更に別の特徴もあるのだー。

 

 (マザー)の言葉が表す通り、眷属(子供)を生み出す能力だねー。

 以前から試験的に【ターミナル・スライム】を生み出していたるーさんだけど、それを更に強化していった結果なんだと思うよー。

 単体のスペックは低いながらも、同じスライムとしての特性を引き継いだ従順な眷属をHP(体積)を消費して生み出せるこの能力は、HP量と回復力に長けたるーさんにとってはすごーく相性抜群ー。

 

 無論あたしにとってもそれは同じことでー、今まで宝の持ち腐れだった従属キャパシティを有効活用できて、おまけにテイム回数も重ねられるという一石二鳥振りだよー。

 るーさんがこのスキルを獲得したおかげであたしも【高位従魔師】になれたわけだから、ほんとるーさんにはいくら感謝しても足りないよねー。

 

 ちなみにるーさんが直接分裂すればいいんじゃないかって意見には、それは全くの別問題だと言っておくよー。

 そりゃあ単にスペック上の話で言えばるーさんが分裂したほうが簡単だろうけど、そしたらその分あたしを守るための総量が目減りしちゃうし、おまけに分体を離しておける距離にも限界があるんだー。

 

 特に後者の問題が大きくてー、分裂に関しては体積が許す限り幾らでも可能なんだけど、距離制限を越えて分体を離すと構成を維持できなくて消滅しちゃうんだよねー。

 この距離制限に関しては個体によってまちまちで、中には桁違いに分体を配置できる個体の事例もあったみたいだけど、通常は体積が減少しない範囲で分裂・統合して獲物を捕食するのがスライムの基本的な生態だよー。

 余談ついでに言えば、そうして個体としての成長を重ねていった末に、体積の一部を分離させて別種のスライムとして独立させるのがスライム種の繁殖方法だねー。

 

 るーさんは一個のスライムとしてはとってもハイスペックだけど単独では限界がある。

 そしてるーさん自身の資質なのか距離制限に関しては若干不得手ー。

 その短所を克服し、手数を揃えるための結論がこの《眷属生成》のスキルってことだねー。

 諸々の安全マージンを考えた上で最も効率が良いと認められたのがこの手段ー。

 

 実際のところを言えばわざわざあたしがテイムする必要性も薄いんだろうけど、そこはあれかなー。あたしがテイム回数少なくて【高位従魔師】になれないことをるーさんに愚痴ってたのが原因かなー?

 まぁテイムは一瞬だし、従属キャパシティかパーティー枠に入れれば《魔物強化》の効果も乗るからメリットは大きいんだけどねー。

 そこまで考えて【キンドレッド・スライム】を生み出したのだとしたら、やっぱりるーさんって天才だねー。

 

「ん、そろそろこの辺の相手は狩り尽くしたかなー? 経験値の上がりが鈍くなってきたかもー」

 

 そんなこんなで狩り続けていると、やがて周辺のモンスターが逃げ出したのか経験値があんまり入らなくなってきたー。

 デンドロのモンスターって馬鹿じゃないから、一方的に狩り続けてると恐れをなして逃げ出しちゃうんだよねー。

 まして本来このマップにはいるはずもないスライムが集団で襲いかかってきたわけだし、その異常事態に逃げ出しちゃってもおかしくないかー。

 

 きーちゃんズは個々のスペックが低いから、逃げられると阻止できないのが数少ない欠点かなー。

 これが大魔法や広範囲攻撃で一気に倒せるならもっと効率が良いんだろうけど、あたし達だとある程度襲いかかってきてもらえないと接敵できないのが困りものだよー。

 これを解決するにはもっと数を増やすか、単体スペックを上げるかしないとだけど……うーん、流石にるーさんも今はこれが限度っぽいし、あたしの方も従属キャパシティが全然足りないからなんともならないなー。

 あーあ、もっとキャパシティかパーティー枠がいっぱいあればいいのにー。これが噂のTYPE:レギオンの<エンブリオ>なら何の問題も無かったんだけどねー。

 

 まーないものねだりしても仕方ないかー。

 しょーがない、河岸を変えるよー。

 

「るーさん、きーちゃんズを戻してねー。あと減った分も無理がない範囲で補充よろしくー。ちょっと休憩してから場所を移すよー」

『…………』

 

 ◇

 

 そうしてその後も何度か場所を変えつつレベリングするうちに、早くも【高位従魔師】のレベルが四〇目前に迫っていたー。

 るーさんやきーちゃんズに分配される分を差し引いても以前までとは段違いの効率だねー。

 元々ジョブを重ねるごとにレベリングが簡単になっていく仕様のデンドロだけど、効率の良いレベリングをするならやっぱり手数か物量、もしくは範囲火力が正義ってことかなー。

 

 集団戦闘も重ねてるから《従属拡張》や《魔物強化》のレベルも少し上がったし、この分なら【高位従魔師】カンストまでここで稼いじゃってもいいかー。

 ただ普段ホームにしてる王都からは遠いから、ここをメインにするならしばらくはギデオンに滞在することになるかもー。

 でもギデオンからも一日半かかるからなー、移動時間も考えるとちょっとしんどいとこもあるかなー? もっと速い移動手段があればいいんだけどねー。

 

 もしくはどこか別のセーブポイントがあったりしないかなー?

 王国ってあちこちに貴族の領地があるから、探せばセーブポイントのある領地が見つかるかもー?

 でも散策するにはもう遅いし、あんまりうろちょろしすぎちゃうとそれこそ迷子になるかもだからー……うーむ。

 

 ま、そのへんは諸々の用事済ませてからでいっかー。

 きっとヘルベルトさんからニルさん達への返事とかもあるだろうし、それを届けなきゃいけないだろうしねー。

 あとメヅールさんも早ければ今月中にはこっちへ来るかもしれないし、そういうのは何の予定もなくなってからでもいいよねー。

 

『…………!』

「ん? どしたのるーさんー?」

 

 考え事をしながら狩りの成果を待っていると、ふとるーさんから報告が上がった。

 どうやら狩りに出かけていたきーちゃんズの幾つかが反応をロストしたみたいー。

 その報告を受けてウィンドウを開いてみるけれど、従属キャパシティの数値には何の変化も無し。

 

「うーん? どういうことかなこれー」

『…………』

 

 『詳細は分からないが我々の同調を遮断する何かがある可能性大』とのことで、少し考えた結果直接確認することにしたー。

 無論いつでも逃げられるように壁役のきーちゃんズも招集して、全戦力で反応が途絶えた現場へ。

 あたしにはわからないことだけど、きーちゃんズと常時リンクしているるーさんには問題の座標がわかるようで、迷うことなく木々を潜り抜けていくと、その先には……、

 

「……神殿?」

『…………』

 

 ――森林の木々を掻き分けるようにして聳え立つ、石造りの巨大な神殿があった。

 

 神殿、と言われて真っ先に連想するようなギリシャのパルテノン神殿のような外観ながら、それとは違って幾本も並び立つ石柱の向こうに見える建屋は一部の隙間も無く閉ざされている。

 しいて例えるなら巨大な体育館の周囲を石柱が取り囲んでいるような形で、その建物を構成する石材は全てが血で染められたように鮮烈な赤一色だった。

 

 どうやらこの神殿がきーちゃんズの一部が反応を途絶えさせた元凶みたいー。

 うーん? 自然ダンジョン……にしてはあまりに風景と一致してないし、なによりこの神殿は()()()()()()

 まるで突如としてこの場へ出現したかのような丸出しの不自然さに、自ずと一つの推測に行き着く。

 

「ひょっとして<エンブリオ>かなー? たしか建物はTYPE――」

『…………!!』

 

 そう推測を口にしようとした瞬間、るーさんが慌てた様子であたしを外へ跳ね飛ばそうとして、

 

「――あれ?」

「ええいスライムがいるなんて話は聞いていないぞ!? 雑魚のくせにちょこまかと鬱陶しい!」

 

 ――それよりも先に、周囲の光景は薄暗い石室へと一変していた。

 

 その変化に目を丸くして周囲を見渡すと、そこがとても広い空間であることがわかる。

 外部からは一切が遮断されていて、等間隔に並べられた青白い火を灯す燭台が赤い石材で構築された大広間を照らし出している。

 そのおかげでここがさっきまで外から眺めていた神殿の内部だと察しが付き、あたし達は何らかの手段でその中へと招かれたのだと悟った。

 

 そして大広間の奥からは苛立つような女性の声が聞こえてきて、その内容から彼女がスライムと戦っていることがわかる。

 そこであたしは前後の状況からある予想がついて、意図せず見知らぬ誰かに迷惑をかけてるのだと察し声を上げた。

 

「ごめんなさーい! その子は敵じゃないですー!!」

「――あァ?」

 

 そう声を上げた瞬間、いつの間にかあたしの喉元を掴む手があった。

 薄闇に紛れてはいたけれど、それでもこの一瞬で詰められる距離にはいなかったはずの相手の手。

 それがいつでもあたしの首をへし折れる状態にあることに思わず悲鳴を上げそうになるけれど、締まった首ではその声すらも上げられない。

 

「子供……か? ティアン……じゃないな、<マスター>か。おい、お前はPKか?」

「~~~~!!」

 

 相手の問いかけへ必死に腕でバツの字を作って答えると、ようやく首を掴む手の力が緩む。

 そしてそれに安堵するよりも先にまたも声を張り上げて、

 

「るーさんストップ! 誤解! 不幸なすれ違いだから攻撃はダメー!!」

『…………』

 

 あたしの危機に反応して、今にも相手を呑み込まんとしていたるーさんを制止して、要らぬ戦いを回避したのだった。

 

 ◇

 

「なんだ、お前のテイムモンスターだったのか。この辺にスライムは棲息していないはずだからな、異常事態に気が立っていた。許せ」

「うーんー、こちらこそごめんねー」

 

 お互いに誤解が解けて敵じゃないことがわかったあと、神殿の主――カーミラさんと対面しそう言葉を交わしたー。

 座り込むあたしの膝の上にははぐれていたきーちゃんズが無邪気に乗っかり、過保護なるーさんはまだ完全に警戒を解いてはいないものの態度を軟化させている。

 

 どうやらカーミラさんもここでレベリングをしていたみたいで、この建物もやっぱり彼女の<エンブリオ>だったみたいー。

 なんでも周辺の生物を招き寄せて内部へ転送するスキルがあるとかで、あたし達はそれに引っかかっちゃったみたいだねー。

 カーミラさん曰く割と無差別なスキルだから気をつけてはいるんだけど、それでもたまにこうして迷い込む人間も多いんだってさー。

 

 ……まぁそれはそれとして、そんなことよりも大事なことがあるんだよー。

 あたしの視線はある一点に向けられていて、どう頑張ってもそこから外せそうにない。

 いや、たとえあたしじゃなくても誰だって同じことをすると思う。

 だって、だって……こんな……こんなに素敵な……!

 

「おっぱい……!」

「おい」

「違った! ご立派ですね!!」

「殴るぞ小娘」

 

 そう、カーミラさんは大変立派な()()()をお餅、じゃないお持ちなんだよー!

 もう一目見て分かるビッグサイズ。まるでメロン……いやスイカ……? こんなサイズが現実に存在するなんて思わなかったー……。

 しかも本人が長身だからスタイルも崩れてなくて、まるで二次元を一切損なわずに現実化したような奇跡の肉体美に思わず見惚れちゃうー。

 おまけに本人もすっごい美人さんで、まるで鮫を連想するような鋭い雰囲気で、呆れたようにこちらを見下ろす視線までもが様になってるー。

 

 うーん、まさかあたしがおっぱい星人だったとは……こんな出会いが無ければきっと最後まで知ることのなかった自分の一面だよー。

 思わず正座の姿勢を取って真顔で見上げる。そして膝に乗せたきーちゃんズをぽよぽよと揉んで、きっとこれよりも良い感触なんだろうなーとか考えながらじっと見上げる。じー。

 

『愉快な珍客もあったものだな。明け透けだが子供らしいではないか、ククク』

「とんだマセガキだ、まったく」

「ち、ちなみにそれは自前ですか……?」

「お前も初対面のくせに図々しいな!? 手をワキワキさせるのをやめろ!」

 

 おいそれとは拝めないご立派さんだけど、メイキングに違和感も無いしひょっとして現実にこれが存在するのかな……?

 ていうかなーんかどっかで見たことある気がするような……? 知り合いにこんな忘れようにも忘れられないご立派様なんているわけないし、ならどこで見たんだよって感じだけど……。

 ……ダメだ、記憶を掘り起こそうにも目の前のご立派様が邪魔をして集中できないー!

 うー、今なら男子達の気持ちも分かる気がするよー……。

 

「……チッ、すっかり熱が冷めてしまった。スキル効果も切れたか……」

「邪魔しちゃってごめんねー?」

「構わん、別に私の狩場でもないからな。しかし再開するにも帰るにも中途半端だな……おいアナト、外の様子はどうだ?」

『間もなく日没といった頃合いだな』

「なら休憩ついでにしばらく留まっておくか」

 

 カーミラさんの問いに対して虚空から女性の声が響く。

 あたし達以外に人影は無いはずだけど、過去に似たような事例を見たことがあるのを思い出して尋ねたー。

 

「ひょっとして今のはカーミラさんの<エンブリオ>の声ー? まるでオハンちゃんみたいー」

『如何にも。妾こそはそこなマスターの<エンブリオ>、【血闘神殿 アナト】である。……しかしそなたから知己の名を聞くとはな。もしやあやつらの知り合いか?』

「そだよー。初めてログインしたときに親切にしてもらったんだー」

『左様か。成程あやつららしいとも言える』

 

 どうやらアナトちゃんもバリンさん達とは知り合いみたいで、なかなか悪くない関係みたいだねー。

 あたしがバリンさん達についてのあれこれを話すと、アナトちゃんは相槌を打ちながらあたしの知らないバリンさんの話をしてくれたー。

 アナトちゃんって口振りは女王様みたいだけど結構気さくかもー。意外とお喋り好きー?

 

「…………うん?」

『どうした、マスター?』

 

 少しの間そうやって盛り上がってると、沈黙していたカーミラさんがふと声を漏らしてあたしをまじまじと見つめだしたー。

 正確には横に控えたるーさんも一緒にてっぺんから爪先まで何度も見返しては、「王冠を被ったスライムを連れたちんちくりん……」と呟いて凝視。

 ちんちくりんって……ぐぬぬ、さすがに目の前のダイナマイトボディと比べられたらそう言われても仕方がないかもー……。

 でも悔しいから見られた分見つめ返しちゃうー。主に二つのお山をー。

 

「じー」

「真顔で胸を見るな胸を。いや私から睨みつけといて言えた義理ではないが……それよりもおい、お前……」

「ねねこだよー。こっちはるーさんー、いっぱいいるチビ達はきーちゃんズー」

「ねねこだな、よし。……いいか、正直に答えろよ?」

「なになにー?」

 

 そう前置きするとカーミラさんは据わった目付きで凄むと(同時に腕組みしてお山のアピールがやっばいよー)、意を決したように口を開いたー。

 

「……お前、バレンタインイベントは何してた?」

「え? バリンさんと一緒に回ってたー」

『……あっ』

 

 言われた通り正直に答えたら、カーミラさんはぷるぷると震えだして……、

 

「お、お、お……」

「おー?」

「お前かぁああああああぁぁぁああああああああ!!!」

「ぎゃー!?」

『…………!』

『なんとまぁ間の悪い……』

 

 次の瞬間には魂からの絶叫と共にあたしの肩を掴んで揺さぶっていた。

 あまりの形相と勢いに思わずこちらも絶叫して、それに反応したるーさんが一気に臨戦態勢を取ろうとする。

 そしてそれを見て呆れたような声を漏らすアナトちゃんと、何がなんだかわかんないよー!?

 

「な、なになになにー!?」

「おま……お前……お前のようなぽっと出のルーキーが……! わ、私を差し置いてあ、あ、あいつとバレンタインイベントなぞ……うわぁあああぁあああああああ!!?」

『なんと見苦しい……』

 

 ……あー、なるほどー。そういうことかー……。

 

『…………?』

「るーさんステイステイー。カーミラさんは敵じゃないよー、これは乙女の嘆きだからー」

 

 何が何だか分からないといった様子で疑問符を浮かべるるーさんにそう言って、慟哭と共に蹲るカーミラさんの背中をぽんぽんと撫でた。

 

「うううううぅぅぅ……!!」

「泣かないでー、よしよしー」

 

 ……やっぱりバリンさんラブ勢、いたんだねー。

 

 

 To be continued

 




 スライムの生態については多分に捏造が含まれています。
 距離制限云々に関しては、原作「Episode Ⅵ-Ⅶ King of Crime 第十四話《悪夢の王国》」にて【犯罪王】ゼクスが分体を放った際の記述に依りますが、この特性がゼクスの<エンブリオ>としての制限なのか、それともスライムの生態としての制限なのかは不明瞭です。
 もし今後の展開でその辺りの詳細が明かされることがあった場合、対応して修正を加える可能性があります。
 予めご了承ください。

 □余談
【血闘神殿 アナト】
<マスター>:カーミラ
TYPE:テリトリー・ラビリンス 到達形態:Ⅴ
紋章:“血の流れ出る神殿”
能力特性:???
スキル:???
モチーフ:ウガリット神話における愛と戦いの女神、アナト
(・3・)<余談ですがカーミラは自作デンドロ二次三作において最大級のバストの持ち主
(・3・)<かつ「三大リアルでも美人勢」の一人
(・3・)<元○○○○選手
(・3・)<そしてデンドロでは決闘ランカー。バリンと共に現在一〇位代

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