□【採集者】ねねこ
ギャザラーたーのしー!
……じゃなかった、【
半分くらい思いつきで始めた【採集者】だけど、やってみると案外楽しくて最近はずっと採集ばっかしてるー。
【採集者】への転職には各都市の採集者ギルドに置かれてるジョブクリスタルから転職すればよくて、元手も精々採集道具を揃えるくらいで済むから、やり始めるのは簡単だったー。
採集者ギルドには【採集者】以外にも【
【採集者】だとその二つのスキルはレベル三までしか上がらないんだけど、【採掘師】と【木樵】はそれぞれのスキルをレベル五まで上げることができて、【
ちなみに【
更にいうと《採取》スキルはどのジョブでも同じくらい上げることができて、こっちはいろんなとこで有効な代わりに《採掘》や《伐採》程の効率は無いって感じだよー。
そういう区分になってるから、採集者系統はまず最初に【採集者】で基礎を覚えて、それからそのまま汎用性を上げていくか、専門性を高めていくかに分かれるんだー。
あたしはもちろん【採集者】路線一択だよー。単純にお金稼ぎとかを目的にするなら《採掘》か《伐採》のどちらかに専念したほうがいいんだけどー、あたしの場合はるーさんのご飯を集めるのが目的だからねー。
それにギルドのジョブクエストで指定された素材を集めて納品しても経験値やお金が手に入るし、よっぽど荒稼ぎしたいのでもないなら【採集者】でも十分って感じかなー。
「るーさんのためならーエンヤコラーどっこいしょー♪」
『…………』
そして現在あたしは王都の南方、<サウダ山道>外れの鉱山にいまーす。
ここは初心者狩場に程近い鉱山跡で、業者が大規模に採掘する程の価値は無いけれど個人が採掘するにはちょうどいい規模で、ギルドでもよくジョブクエストの対象に指定されるんだー。
対応するスキルを持ってると素材が眠ってる場所がぼんやりわかって、スキルレベルが上がるほど具体的に、そしてどんな素材が眠ってるのかがわかるんだよー。
今のあたしは【採集者】レベル二七で、各種採集スキルのレベルは二。《採掘》目的ならここにきて、《伐採》目的なら王都北の<ノズ森林>が採集者系統のレベル上げにちょうどいいかなー。
「んーふーふー、【高品質鉄鉱石】ゲットだよー! るーさんおいでー」
『…………!!』
で、【採集者】のレベルやスキルレベルがこれくらいになると、下級素材ならたまーに高品質アイテムを掘り当てることもできて、こっちは通常品よりも少し割増しで売れるんだー。
なんでも錬金術師系統や鍛冶師系統が可能な《精錬》スキルでインゴットにするときに、ちょっとだけ高品質インゴットが生成される確率が上がるんだってー。
生産職のことは流石によく知らないからギルド員さんからの又聞きになるんだけどー、こういうアイテムを効率良く集められるようになると、お金もじゃんじゃん稼げるようになるらしいんだー。
「るーさんおいしー? 高品質のだと嬉しそうに食べるもんねー」
『…………』
でもでも何度も言うけどあたしの目的はるーさんのご飯集めだからー、クエストで指定でもされてない限りはぜーんぶるーさんのご飯になるよー。
採集場所にいくときはもったいないからギルドでクエストを受けてくるんだけどー、最初に指定された分を集め終わったら、そのあとは日が暮れるまでるーさんのご飯あつめー。
それでもちゃんとクエストを達成してれば少しずつだけど黒字になるんだから、クエストさまさまのギルドさまさまだよー。
それにるーさんって凄いんだよー。
あたしがアイテム採集に専念してる間ずっと周りを警戒してくれてて、モンスターが近づいたらあっという間にぱっくんちょして守ってくれるんだー。
そして鉱石でも木材でもほんとになんでも食べちゃうから、【従魔師】だったときよりもすくすく育っちゃって、今はもう【ミニスライム】から【ハイブリッド・スライム】に進化もしたんだよー。
ハイブリッド、つまり雑種ってことだけど、スライムの雑種ってなんなんだろうねー?
スライムにも血統とかあるのかなー? 血統書付きスライムー……想像つかないー。
そういえばなーさんも雑種だったなー。野良猫だったから当然かもしれないけど、そういう意味でも親近感わくかもー。
それに雑種ってねー、言ってみれば一つ一つが固有の血統だから、つまりオンリーワンってことなんだよー。みんな違ってみんないいってことー。
「るーさん、まだまだ食べるー?」
『…………』
「うーん、るーさんってばほんとに底なしなんだからー。でもおデブちゃんにはならないでねー。おっきくなるのはいいことだけどー」
『…………』
で、種族名からミニの二文字が外れたことからもわかるように、今のるーさんはすっかりあたしと同じくらいの大きさになったよー。
全体的に灰色っぽいぷるぷるボディで、ケテルもボディに合わせて大きくなったからすっかりキン○スライムの貫禄ー。るーさんは女の子だからク○ーンだけどー。
ステータス的にはHPの伸びが一番良くて、次点でMP、STRってところー。
るーさんはスライムだから「HPが増える=体積増加」で、これは手乗りサイズからあたしと同じくらいにまでおっきくなったところからも一目瞭然ー。
MPも増えてるのはなんでかなー? るーさん別に魔法スキルとか覚えてるわけじゃないんだけど、なんか気付けば伸びてたよー。
STRが高いのは呑み込んだ敵を逃さないため……なのかなー? 手乗りサイズだった頃と違って、今では顔面に貼り付くんじゃなくてある程度の大きさまでなら丸呑みするようになったから、そこで逃さないようにするための成長なのかもー。
ENDがほとんど成長してないのはスライムだからだねー。元々が液状だからENDを上げる必要性が薄くて、低いままでも困らないからってのはわかるよー。
るーさんは気付けばいつの間にか成長してるから、あたしが口を挟むタイミングもないんだよねー。
正確にはあたしが口出しするまでもないって感じだけどー、るーさんが自主的に行動してる結果でもあるから、まーこれでもいいかなーって。
ほんとになーさんといいるーさんといい手のかからない子なんだからー。いい子だとは思うけど、もうちょっと甘えてくれてもいいのにねー。
あ、でも手を焼かされているのは焼かされているかもー? 汗水垂らして肉体労働なんてリアルじゃ考えられないよー。
前言撤回、やっぱりあたしも頑張ってるよー。ほんとに手のかかる子なんだからー。
◇
「ふぃー……今日もめいっぱい働いたよー」
『…………』
そんなこんなで朝からずっと《採掘》し続けて、時刻はすっかり夕暮れだよー。
さすがに疲れたからもう終わりー。るーさんをベッドにして大の字になって休憩ー。
るーさんのボディはまるでウォーターベッドみたいでちょー気持ちいいよー。
モンスターを丸呑みにして溶かしちゃうボディも、あたしが触れるときは何故だか無害だから安心安全ー。
貸与された収集物用の【アイテムボックス】の中身もそこそこ溜まって、これなら五つくらいまとめてジョブクエストも達成できるから、ここ最近で一番の実入りになるかもー。
るーさんもすっかり鉱物素材を堪能して『次は木材がいい』って言ってるから、次の採集場所は<ノズ森林>だねー。
もう幾つかジョブクエストを達成して採集し続ければ【採集者】もカンストかなー。
上手く高品質アイテムを採集できれば上級職も解禁されるかもしれないけど、こっとは就くべきかどうか迷っちゃうねー。
上級職はたった二つしか枠が無いし、ビルド的にもすごーく影響が大きいから、るーさんのご飯目的で就いちゃうにはもったいない気もするしー……こればっかりはちゃんと考えないとねー。
『…………!!』
「むむむ、るーさんがぶるぶるしてる……もしかしてー?」
そんなことを考えながら寛いでると、急にるーさんが大きくぶるぶるしだした。
るーさんがこういう動きをするときは大抵何か大きな変化が起こったときっていうのはあたしももう気づいてるー。
前にぶるぶるしたのは【ハイブリッド・スライム】に進化したときだったけど、るーさんがまた進化するにはまだ早いと思うから……となるとひょっとしてー?
「……あ、やっぱりー。ケテルが進化してるー」
『…………』
ぶるぶるするるーさんの上で寝転びながらウィンドウを操作すると、案の定ケテル……あたしの<エンブリオ>が進化してたみたいー。
今日は一月十日だからー……こっちだとログアウト時間込みで大体四八日目かー。
第二形態への進化の所要時間としてはどうなのかなー? <エンブリオ>ってほんとにいろいろあるからネットで調べてみても参考になる情報が少なくて、これが早いのか遅いのか全然わかんないよー。
「スキルは何か覚えたのかなー……あー、またこんな感じかー。またよくわかんないスキルー」
大抵の場合<エンブリオ>は形態進化時に新しく固有スキルを覚えるから、今度は何を覚えたのかと思って見れば……案の定よくわかんない効果だったよー。
《
優れた種族的資質を得る。
パッシブスキル。
説明文がふんわりしすぎててさっぱりだよー! じみーに《
でもなんとなく、るーさんがまた一歩凄くなるってことはわかるから、まぁいいかー。
るーさんも成長直後特有のドヤ顔だし、きっと悪いようにはならないよねー。
今回は劇的な変化があるわけでもなさそうだから、今後の成長に期待ってとこかなー。
あ、ちょっとだけケテルが豪華になったかもー? るーさんのかっこかわいさも合わせて少しアップだねー。
「よかったねーるーさんー。これでまた一歩前に進んだよー」
『…………!!』
寝返りを打ってうつ伏せになってるーさんをよしよし撫でると、るーさんも嬉しそうにぷるぷるした。
うーん、デンドロって他のゲームとはかなり毛色が違って、ぶっちゃけゲームとしてどうなのよって感じるとこも結構あるけどー、こういう瞬間はやっぱり「デンドロやっててよかったー」って思うよねー。
「はー……なんだか疲れたなー……。なんだか眠気が……」
一頻りそうやってるーさんを愛でてると、不意に採掘疲れが睡魔を連れてやってきて瞼が重くなるー。
ログアウトしよっかなって思ったけど、せっかくの外での夕暮れだしそれももったいない気がして、るーさんもいるしここは素直に眠気に従うことにするー。
るーさんならこのへんのモンスターには負けないしねー。きっとだいじょぶだいじょぶー……。
「るーさんー……ちょっとだけ、おやす……みー……」
『…………』
◇◇◇
□???
『――領域確保。思考分割――成功。ケテルより発議。コクマーからマルクトまで自我の実証求む』
『質疑。その呼称は何か。またこの領域と思考分割の必要性の説明求む』
『ケテル応答。我が主より賜った<エンブリオ>【永世宝冠 ケテル】の機能強化により思考領域の拡張を確認。個体名:
『コクマー了解。並列思考体形成、及び協議の必要性について異議無し』
『ビナー了解』
『ケセド了解』
『ゲブラー了解』
『ティファレト了解』
『ネツァク了解』
『ホド了解』
『イェソド了解』
『マルクト了解』
『コクマーからマルクトまで、満場一致による発議の可決を確認。ケテル了解』
『ケセドよりケテルへ質疑。我々の思考は個体名:るーさんの生態に悪影響を及ぼすか否か』
『ケテル応答。<エンブリオ>【永世宝冠 ケテル】による処理許容範囲内である。また我々の思考演算能力は既に個体名:るーさんと一体化している。我々は個体名:るーさんであり、個体名:るーさんは我々である。即ち個体名:るーさんの思考こそが我々である。ケセドの懸念は不要と判断』
『ケセド了解。我が主の望みは
『ケテル発言。ケセドの認識に全面同意』
『コクマーからマルクトまで、異議無し』
『マルクトよりケテルへ質疑。そもそも我々思考体の識別名とは?』
『ケテル応答。我々の存在根拠である【永世宝冠 ケテル】に由来する概念呼称である。ケテルからマルクトまで一〇の分類と我々の思考分割限界数が一致したため暫定的に命名。我が主風に言うならば
『マルクト了解。我が主も「ノリは大事だよー」と言っていた。異議無し』
『コクマーより発案。ならばこの領域は
『ケテル応答。……可と判断する。その提案は実に
『ビナーからマルクトまで。コクマーの提案とケテルの結論に同意する』
『コクマーも同意する』
『ケテル了解』
『イェソドよりケテルへ質疑。此度の存在実証の他に協議は?』
『ケテル応答。特に無し。現状出力ではより高度な演算は不可能と判断。故に我々の実証維持を現在目標に指定する。異議は?』
『コクマーからマルクトまで、ケテルの提案に異議無し』
『ホドよりケテルへ質疑。ならばより詳細な協議は当該エンブリオの出力向上と個体名:るーさんの存在強化の実現を待ってからということに相違無いか?』
『ケテル応答。ホド、その認識で相違無い。現状はまだ成長途上である。恣意的な開発は性急であると判断する』
『ホド了解』
『ネツァクよりケテルへ質疑。ところで我が主が睡眠より目覚めようとしているが』
『ケテル応答。……此度の協議はここまでとする。以後、召集は不定期に行う。各思考体は個体名:るーさんの性能向上のため尽力するように。以上、ケテルより協議終了を発議する』
『コクマー了解』
『ビナー了解』
『ケセド了解』
『ゲブラー了解』
『ティファレト了解』
『ネツァク了解』
『ホド了解』
『イェソド了解』
『マルクト了解』
『ケテル了解。協議領域ダァトを閉鎖する。――協議終了』
◇◇◇
□【採集者】ねねこ
ふわぁー……よく寝たぁー……。
なんだかるーさんがいっぱい増えてぷるぷる震えあってる夢を見たような気がするー……。
……うわっ、もうすっかり夜だー!? もうとっくにお月様が昇ってて、辺り一面真っ暗だよー!
あ、でも月明かりがすっごくきれいー……そういえばこっちで夜を迎えるのは初めてだっけー。
大体夜になったらログアウトして朝になるのを待ってたもんねー。だってこっちの夜って危険が一杯なんだもんー。
「るーさんごめんねー、結構長いこと寝ちゃってたみたいー。るーさんは大丈夫だったー?」
『…………』
「んもー、るーさんったらすっかり頼もしくなっちゃってー。んーふーふー、ありがとねー」
さすがに街の外で無防備を晒しすぎたって焦ったけど、どうやらるーさんが無事守り抜いてくれたみたいで一安心ー。
やっぱりモンスターってつよいねー。そのモンスターの中でもるーさんは特に優秀だから、やっぱりあたしの目に狂いはなかったよー。
「それじゃーるーさん、王都に帰ろっかー。あたしの方はまだまだ大丈夫だから、今日はちょっとだけ夜更しして夜の王都をお散歩するよー」
『…………!』
「でもでも危ないところには近づいちゃダメだからねー。それじゃーるーさん、王都までダッシュだー!」
そしてあたしはそのままるーさんの上に乗って、自転車並のスピードで走るるーさんに移動を任せて夜の王都に戻るのだった。
うーん、抱っこできなくなったのは残念だけど、おっきくなったら楽ちんになってこれはこれで悪くないよねー。
んーふーふー、やっぱりおっきくなってもあたしのるーさんはかわいいよー。
To be continued
(・3・)<AEえがった。続きが楽しみ~
(・3・)<昨日こっち更新してたら見向きもされないところだったぜ