□王都・採集者ギルド 【高位採集者】ねねこ
「――はい、ギルド登録の更新完了しました。おめでとうございます、ねねこさん」
「ありがとー。んーふーふー、これでますます稼いじゃうよー」
受付嬢さんから新しくなったギルドカードを受け取って思わずにんまりー。
カードに記載されたあたしの名前の頭には【高位採集者】のジョブ名が併記されてて、つまりあたしは遂に上級職に就くことができたんだよー!
……うん、結局上級職の一つは【高位採集者】にしちゃったー。
以前「慎重に考えないとなー」って言ってたのにそのまま【高位採集者】に決めちゃった理由なんだけど、これまたるーさんが原因なんだー。
それというのもねー、るーさんったらあれから更に狩りを重ねてレベルアップもしたんだけどー、成長するごとに段々グルメになってきたんだよねー。
もう低級の採集素材じゃあ全然物足りないらしくてー、最低でも高品質アイテムからじゃないとなかなか満足しなくなったんだよー。
でもそうなると【採集者】のままじゃスキルレベルが低くてレアアイテムはなかなか集められないし、より多くのアイテムをゲットしなきゃいけないから汎用性に長けた【高位採集者】に転職することを決めたのだー。
「ええ、頑張ってくださいね。ねねこさんのように熱心なメンバーが増えるのはギルドとしても喜ばしいことですから。早速依頼を確認されていきますか?」
「もちろんするよー。あ、それと採取道具も更新したいかなー。今の装備だとレベル帯的にそろそろ物足りないしー」
今のあたしは【従魔師】と【採集者】をカンストさせて【高位採集者】に転職したばかりだから合計レベルは一〇一。
レベル三桁の大台になるとどのジョブでも大幅な装備更新を図るタイミングだからー、ここで一気に装備を揃えていきたいよねー。
奮発してミスリル製の道具にしてもいいかもー。お金はジョブクエストをいっぱい達成してきたからじゅーぶんあるしー、そこは心配ごむよーだよー。
「ミスリル製ですか……ええと、少し待っててくださいね。――ダンカンさーん!」
その旨をナルさんに伝えると、ナルさんは少しだけ奥に消えて暫くして大柄なおじさんを連れて戻ってきたー。
あちこち煤が染み付いた腕を露出させた、タンクトップに首巻きタオル姿のおじさんは、あたしもよく知ってる人物でー、
「おう、ねねこ! 転職おめでとう! ミスリル製の道具が欲しいんだって!?」
「ダンカンさんこんにちはー。そだよー、せっかくだからいいもの揃えよっかなーってー」
見た目通りの大声で挨拶したのはダンカンさんー。
この採集者ギルドに各種道具を納品してる【鍛冶師】さんでー、いろんな道具を作ってきた腕利きの職人さんだよー。
あたしが【採集者】に転職したときに相談に乗ってもらってー、そこから依頼を通じて素材を納品したりして仲良くなったんだー。
採集者ギルドっていろんなところからいろんな素材を集めてくるからー、いろんな生産職ギルドとすっごく仲がいいんだよー。
鉱物とかなら【鍛冶師】や【鎧職人】だったりー、木材なら【木工師】や【大工】、植物なら【薬師】や【薬剤師】に【裁縫屋】とかー、とにかくいろんなところと仲良しー。あるいはずぶずぶー?
「いい判断だ! やっぱ仕事の良し悪しってのは本人の腕前もそうだが、道具の質も重要だからな! よぅっし、ここはオレっちがいっちょ用立ててやろうじゃねぇか!!」
「ひゅーひゅー、ダンカンさん太っ腹ー」
「太いのは腹だけじゃねぇぜ? この腕もよ!!」
ガッツポーズで力瘤を入れてみせるダンカンさんはムキムキだよー。
ダンカンさんに限らずこの世界の肉体労働者は皆リアルよりもずっとムキムキでー、たとえば肉屋さんなんて食肉用モンスターを直接仕留めて《解体》するから、そのまま戦闘もできるくらいステータスを伸ばしてるんだよー。
ダンカンさんは【鍛冶師】だからDEXとSTRを伸ばしててー、それでムキムキなんだねー。
「で、ねねこよ。お前さん予算はどれくらいある?」
「えっとねー……、――リルくらいかなー? これで一式足りるー?」
数十万くらいなら持ち合わせはあるんだけどー、どうかなー?
通常金属なら然程でもないんだけどー、ミスリルとかの幻想金属になると一気に価値が跳ね上がってー、お値段はそれ以上に跳ね上がるんだよー。
一式足りるか聞いてみたけど、流石にそれは苦しいかもー。言うだけならタダだから言ってみたけどさー。
「ふーむ……子供にしちゃよく稼いだ方だが、流石に足りねぇな。一式となると一〇〇万リルは下らねぇ。全身甲冑とかに比べりゃ大分値段も落ちるが……その予算だと主道具二つまでが限度だなぁ」
「うー……思ってたよりお高い~……」
あたしからしてみればン十万リルなんてすっごく大金なのにー……お金って使うところではすっごく使うんだねー……。全然心配ごむよーじゃなかったよー。
うーん、今の貯金で主道具二つかー……ほんとに高くつくなー。かといって更新しない選択肢は無いから、ここは買える分だけ更新して、あとはまた貯金しながら少しずつ更新かなー?
「ハッハッハッ! 目ン玉飛び出そうな値段だろ? オレっちも初めて幻想金属に触れたときは値段を聞いて震え上がったもんだ! 親方に「屑鉄にしやがったらぶっ殺す」って脅されてよぅ……嫌でも必死になるってもんだな!」
「世知辛いねーるーさんー」
『…………』
『需要と供給のバランス、希少性を考えると極めて妥当な相場価格である』って……。
るーさん、そういうことどこで覚えてくるのー? ほんとにもー日に日に賢くなっちゃってー、飼い主としてはもっと可愛げを見せてほしいなー。
「うー、仕方ないから買える分だけに……」
「まぁ待て待て、そうしょげるな! オレっちがちょいと意地悪だったぜ。今のはあくまで普通に買うならの話で、場合によっちゃあもうちょいなんとかなるもんだぜ!」
「というとー?」
何やら秘策アリって感じのダンカンさんに尋ねると、ダンカンさんはちらちらと周囲を見てから、人目を避けるようにあたしを手招きした。
そしてひそひそ声で「ここだけの話だぜ?」と切り出して話し始める。
……でもすぐ傍でナルさんが見守ってるし、ダンカンさんがオーバーアクションだから全然内緒話になってないよー。
「オレっちのダチが【錬金術師】なんだがよ、上級職への転職のために【銀】を必要としてんだわ。なんでも《ミスリル錬金》のために大量にいるそうでよ。かといって自分で揃えるには元手がねぇってんで、何とか採ってきてもらう伝手は無いかってオレっちに相談があったのさ」
「ほうほう。……つまりあたしに【銀鉱石】を採ってきてほしいってことー?」
「そうそう。【銀】への《精錬》はオレっちが担当して、そうして出来上がった【銀】をダチが【ミスリル】に《錬金》して、その【ミスリル】でねねこの採集道具をオレっちが鍛えるって寸法よ」
「つまりあたしは採集、ダンカンさんは《精錬》と《鍛冶》、お友達は《ミスリル錬金》でそれぞれレベル上げと転職条件達成ができるってことだねー? いわゆる三方良しー」
「おう、そういうこった! どうよ、悪くない提案だろ?」
最後の大声で完全に内緒話じゃなくなったなー。
それはともあれ、確かに悪くない話かもー。ううん、それどころかちょー好都合ー。
採集者系統は文字通りアイテム採集でレベルもスキルもガンガン上がるし、生産職も文字通り生産活動とたまの高品質アイテム生成でレベリングするから、そういう意味で三人ともとっても美味しい話だよねー。
あたしとしても転職したばかりでレベリングは急務だしー、【採集者】のときは極々稀にしか手に入らなかった【銀鉱石】も、【高位採集者】の今ならずっと楽に手に入りそうかもー。
身の安全はるーさんがいるから問題無いしー、これは断る理由はどこにもないよねー。
「いいよー、その話乗ったー。ノリノリだよー」
「よしきた! それじゃあねねこ、上手く集めてくれよ! オレっちもダチも待ってっからよ!」
「あ、でも今すぐには無理だよー。いっぱい必要になるから、レベルも上げないときっと集まらないしー。なるべく早く集めるつもりだけど、そこのとこよろしくねー」
「おうよ、そう急かしはしねぇから安全第一に頼むぜ! まぁ流石に一年二年ってなるのは勘弁だがな!!」
「さすがにそれはのんびりすぎだよー」
「御二人とも話は纏まったようですね」
ダンカンさんと約束を交わすと、今まで見守っていたナルさんが書類を取り出して言った。
もう内緒話なんて最初から無かったからいいけどー、ナルさんも空気読めるよねー。
流石は敏腕受付嬢ー、採集者ギルドの華だよー。
「それではこちらの書類にサインを。今回はねねこさんへの指定依頼とさせていただきますね。依頼概要と期限、そして依頼者と受注者の署名をお願いします」
「あいよ……っと、これでいいな!」
「あたしもー。ね……ね……こ、とー。はーい」
「……はい、問題ありませんね。では今回の依頼は
「はーい」
「頼んだぜ、ねねこ!」
難易度:三【調達依頼―【銀鉱石】大量採集】
【報酬:ミスリル製採集道具一式】
『【銀鉱石】の調達を頼む。量はあればあるほどいい! 余った分はこっちで買い取るし、場合によっちゃあ色も付ける。よろしく頼んだぜ!』
……ダンカンさんらしい大雑把な概要だなー。
でも無事ジョブクエストも発行されたし、あたしも頑張るよー!
◇
「えっとー、【銀鉱石】の採掘地は……<トトラ廃鉱>の深部かー」
ジョブクエストを受注したあと、あたしは効率良く【銀鉱石】を採掘できる場所を調べたー。
といっても近隣の採掘地なんて粗方調査済みだからー、今更新しい場所なんて見つからないんだけどねー。
<トトラ廃鉱>も過去に何度も潜った採掘地だけど、今回違うのは今まで通ってた表層とは違って、もっと奥まったところで採掘しようとしてる点かなー。
<トトラ廃鉱>自体が脅威度の低い自然ダンジョンなんだけど、深部は表層よりも危険なモンスターが棲み着いてるらしくて、初心者のうちは行かないほうがいって注意されてたんだよねー。
とはいえ<トトラ廃鉱>そのものは脅威度の低い自然ダンジョンとして認識されてて、深部といっても少しだけ初心者の手に余る程度のモンスターが出没する程度らしいから、合計レベルが一〇〇を越えた今なら十分適正レベルのはずだよー。
それにあたしにはるーさんもいるしねー。並大抵の相手ならスライムの特性とるーさんの機転でどうにでもなるしー、これは油断じゃなくて余裕ってものだよー。
「あ、でもひょっとしたらアンデッドとか出る可能性あるかもー? ゾンビ系ならともかくスピリット系は相性悪いよねー」
実体があってそれを破壊すれば倒せるゾンビ系とは違って、スピリット系は実体が無い上に《物理攻撃無効》のスキルをデフォルトで持ってるからー、聖属性の武器や魔法が無いとどうにもならないんだよねー。
るーさんの攻撃手段も今は物理手段オンリーでー、同じ物理無効同士でも方向性の違いでスピリットだけは太刀打ちできないかなー。
アンデッドが出没したって情報は今のところないけど、もしかしたらってこともあるしー、一応警戒だけしておこーっと。
「ピッケルよーし。シャベルよーし。食糧よーし。【アイテムボックス】よーし。……うん、準備かんりょー」
最後にもう一度所持品を指差し確認して、忘れ物が無いことを確認ー。
……あ、【安全ヘルメット】を忘れるところだったよー。これが無いと天井が崩れてきたときに危ないもんねー。
えーと……うん、他の安全用具は大丈夫ー。これで今度こそ準備万端だよー。
「それじゃーるーさん、いこっかー。また移動よろしくねー」
『…………!!』
<トトラ廃鉱>までるーさんの足なら一時間ちょいくらい。
初めて王都の外に出たときはゲームらしからぬ移動所要時間にびっくりしたけれど、今となっては慣れたものだよー。
そしてあたしはるーさんの上に乗っかって、そのまま<トトラ廃鉱>に向けて出発した。
◇◇◇
□<トトラ廃鉱>・深部
それからしばらくして<トトラ廃鉱>に到着すると、いつもの表層を通り過ぎて更に奥……幾つかの分岐路を越えた先の深部に潜り込んだー。
あたしの《採取》や《採掘》が表層とは比べ物にならないくらいビンビンに反応してるからー、ここはまさしく素材の宝庫だよー!
試しに適当な地点をピッケルで掘ってみると、すぐに【鉄鉱石】がポロポロ手に入って、高品質の割合も表層よりずっと高いみたいー。
きっと【銀鉱石】もじゃんじゃん掘れるはずだよー。これは張り切るしかないねー。
「よーっし、るーさん。はりきっていくよー! 採掘中の護衛はよろしくねー」
『…………!』
るーさんにそう告げてから、《採掘》が反応を示す地点を手当り次第に掘っていくー。
といっても無闇矢鱈に掘っちゃうと崩落の危険性もあるから、そうならないようギリギリのラインを見極めて掘っていくよー。
【採掘師】に派生するルートだとそういう危険性や安全に採掘できるポイントをスキルで見極めることができるんだけどー、【高位採集者】になった今なら下級職の【採掘師】と遜色ない精度でそれも可能だから、今更生き埋めになるなんて心配は無用だよー。
これが【高位採掘師】ならもっと精確に判断できて、ずっと効率良く採掘できるんだけどねー。それは専門職の特権ってことでー。
「おおー、ザクザク掘れるよるーさんー! 【鉄鉱石】がよりどりみどりー、【銀鉱石】もちらほらー」
『…………』
しばらく掘り進めていると出るわ出るわ鉱石系アイテムの山ー。
ほとんどは【鉄鉱石】だけど高品質の割合が多くて、【銀鉱石】もやっぱり表層の倍以上が採れるみたいー。
この調子なら一ヶ月もあれば【アイテムボックス】いっぱいまで集まりそうかもー。そしたら一端納品して様子を見てみてもいいかもねー。
「あ、るーさんー。【銀鉱石】以外は食べちゃってもいいよー。今は他にクエストも受けてないからねー、食べ放題だよー」
『…………!!』
今の状況だと【鉄鉱石】まで回収してる余裕は無いから、あたりに散らばったそれらをるーさんにあげることにするー。
【鉄鉱石】も回収してたらすぐパンパンになっちゃうしねー。王都まで片道一時間以上だから何度も行き来するのはしんどいしー、護衛を頑張ってくれるるーさんへのご褒美だよー。
◇
「うーん、結構奥まで来ちゃったなー」
それから何時間か作業し続けて、気付けば深部でも大分奥の方まで進んでたー。
道中遭遇したモンスターはどれも既知のものばかりで、るーさんのおかげで鎧袖一触だったけどー……さすがにここまでくるとちょっぴり不安だねー。
空気の方はあちこちに設けられた通気孔のおかげで問題ないけどー、明かりの方はもうとっくに届かなくなってるから持ち込んだランタンを点けてるー。
ちなみにこのランタンは火を灯すんじゃなくて、ちょっとした光属性魔法で周囲を照らすようになってて、普通のランタンよりもずっと広範囲を照らせて、しかも燃焼しないから一酸化炭素も排出しない優れものなんだよー。
これなら可燃性ガスへの引火や一酸化炭素中毒の心配も無くて安心だねー。それにいざとなったら酸素マスクもあるから、毒ガスが蔓延しててもある程度までは平気だし塵肺とかの鉱山病も防げるんだよー。
採掘道具に魔法のランタン、それと酸素マスクは採掘師系統の三種の神器だねー。これもリアルには無い魔法技術の賜物だよー。
「心配してたアンデッドは出てこなくて一安心だよー。ここは鉱山事故で閉鎖されたわけじゃないからかなー? なんにしてもよかったー」
リアルには無いと言えばアンデッドで、こっちだと凄惨な事故で廃棄された場所には犠牲者の怨念が集ってアンデッドが発生することもあるんだってー。
所謂心霊スポットってやつがほんとにそのまま生まれてきてー、ちゃんと下調べしておかないと凶暴なアンデッドに襲われてそのまま仲間入りすることも珍しくないんだってさー。
特に鉱山なんかは地中に潜む魔獣や魔蟲系のモンスターの巣とかち合うこともあって、そうして遭遇したモンスターに襲われて命を落とす事例もしょっちゅうで、それによって採算が取れないと判断されて廃棄された廃鉱なんかは、こことは比べ物にならない程危険なんだよー。
その点<トトラ廃鉱>は単純に事業展開する上で採算が見込めなくなって廃棄された場所だから、危険度はグッと下がるんだよねー。そういうこともあって初心者用採掘地としてギルドでも紹介されてるんだけどー。
ちなみに意外にも崩落事故とかで廃棄っていうパターンは多くないみたいー。
それというのもこれまた魔法が関係していて、地属性魔法なら崩れたところでぱぱぱーっと修復できるし、そもそも崩落しないよう坑道そのものの強度を上げたりすることもできるから、リアルと比べてずっと危険は少ないんだってー。
あたしが崩落を警戒してたのは、ここはとっくの昔に公的には廃棄されてて、そうした予防策も切れてる中を個人的に採掘しようとしてたからだねー。
これが今も現役で稼働してる鉱山とかなら、専属の地属性魔法使いやモンスター駆除の戦闘職なんかが警備してて、もっと大勢の人手で大規模に採掘するんだよー。
あたしはそういうところはまだ見たことないけどー、ギルドで受けた講習でそう説明されたー。
つまり個人で採掘に潜る場合は成果は丸ごと自分のものにできるけどー、その分全部自己責任ってことだねー。
だからティアンだとこうやって個人で潜る人は少なくてー、あたしみたいな<マスター>でもないとなかなか難しいみたいー。
<マスター>なら<エンブリオ>の存在もあってティアンより確実に強いしー、万が一生き埋めになっても自害機能で復帰できるからー、お互いの特性上当然の住み分けってやつだねー。
まー自害すると所持品を大量にロストしちゃうみたいだからなるべく避けるに越したことはないけどー、あたしも気をつけないとねー。
「あ、また【ジャイアントモール】だー。るーさん、食べちゃってー」
『…………!』
そうこうしてると地中から大きなモグラが飛び出してきて、採掘してるあたしに襲いかかってくる。
【ジャイアントモール】はその名の通り人間サイズのおっきなモグラでー、地中の生物や鉱物を主食とする【採掘師】の商売敵として有名だよー。
厳密に言うと鉱物を主とする雑食性で、地中以外にもいろんなところに出没しては農作物や果樹なんかも荒らして食べちゃうから、害獣として生産職からも目の敵にされてるんだけどねー。
向こうも向こうでこっちのことをご飯を奪っていく外敵としてみてるからー、遭遇イコール敵対は免れないのだー。
つまりサーチアンドデストローイ、見つけ次第駆除だよー。
とはいえあたしにはるーさんがついてるからー、あたしが指示を出すまでもなく飛び出たるーさんに呑み込まれて、そのままるーさんのご飯になっちゃうー。
といってもこのゲームでは倒したモンスターはドロップアイテムを遺して消えちゃうから、そのまま消化吸収ってわけじゃないんだけどねー。
でも散らばったモンスタードロップはそのままるーさんにあげちゃうー。【ジャイアントモール】の場合爪や毛皮、それと肉類が主なドロップアイテムだけど、るーさんならどれも食べれちゃうからねー。
大抵のモンスターはるーさんにとって敵ではなく餌でしかないのだー。やっぱりうちのるーさんは最強だよー。
「それにしても【ジャイアントモール】の数が多いなー。表層だとあんまり見なかったのにねー」
『…………』
今言った通り、深部で採掘を始めてから、表層とは比べ物にならないほど【ジャイアントモール】の出没頻度が上がってる気がするー。
これでもう二〇匹くらいは倒してるよー。表層だと何度も通って一匹遭遇するかしないかくらいだったのにさー。
ひょっとして近くに巣でもあるのかなー? 【ジャイアントモール】の巣は元がモグラだから人目のつかない地中にあるから、うっかり掘り当てちゃうと所謂モンスターハウスみたいになって酷いことになるって聞いたよー。
「うーん、そろそろ切り上げ時かなー? でも少しずつ駆除していかないとこの先掘る時にも邪魔だよねー」
『…………』
王都の近くで他に【銀鉱石】を採掘できる場所は知らないし、あったとしてもここより条件が良いとも限らない。
【ジャイアントモール】との遭遇が多いからといって此処を諦めるにはもったいないしー……うーん、どうしよっかなー……。
「るーさんはどう思うー? 期限はまだまだあるから、るーさんのレベルアップついでに並行して狩っていくのもいいけどー、……るーさん!?」
『…………!!』
あれこれ悩んだ末にるーさんにも相談してみようと思って声をかけてみたら、そのるーさんにいきなり突き飛ばされた。
いきなり何をするのかと思って、尻もちつきながらるーさんに抗議しようと振り返ると――さっきまであたしがいた場所を、地中から飛び出た
『GMOOOOOOOOOOOO!!!』
「ぎゃー!? でたー!!?」
それは熊よりも大きな、鋭い爪を生やしたモグラだった!
見た感じ【ジャイアントモール】のお仲間っぽいけど明らかにそれよりも凶暴そうー!?
え、なにこれなにこれなにこれー!? こんなのがいるなんて聞いてないよー!?
「るーさん! るーさんー!! どこー!? 早く助け……ぎゃー!?」
『GMOOOOOOOO!!?』
もしかして……るーさん食べられちゃった?
あ、よく見たらデカモグラの口元にるーさんの破片がくっついてる……これは、まずいかもー……!?
デカモグラは明らかにあたしを殺そうと爪を振り下ろして、間一髪それを避けたけど……ふえぇ、こんなの食らったら一発アウトだよぉ……!
今のは運良くギリギリ避けられたけど、ステータスの低いあたしじゃすぐに息切れしちゃってすぐにデカモグラのご飯に……るーさんも食べられちゃったぁ……!!
「うわーん、るーさん、るーさーん!! あたしを置いてっちゃヤダー!!」
『G、MO、OOOoooo……!?』
やばい、うっかり泣きそうかもー……ていうかもう泣いちゃう……。
せっかくここまで順調に遊んでて、るーさんも育ててこれたのに……こんなのってあんまりだよー!?
でもでもだからってあたしじゃどうにもできないし……うぅ、こんな罠があるなんて聞いてない~!!
デンドロやっぱクソゲーだよー!?
……と、思って目を瞑ったんだけど……あれ?
『…………』
「な、なにー……? なんなのかなぁ、もー……」
デスペナルティの恐怖に目を瞑っていると、いつまで経ってもデカモグラの攻撃が来ないことに気づいて、恐る恐る目を開ける。
さっきまであたしも悲鳴を上げてたから気づかなかったけど、最初に威嚇の声を上げたあとのデカモグラは、段々様子が変になってたかもー。
苦しげに鳴き声を途切れさせて、今は威嚇姿勢のまま沈黙してあたしを見下ろしてる……。
さすがに直接触れるような度胸は無いし、かといって逃げようにも完全に腰を抜かしちゃってじりじりと後退りするしかできないー……。
結局様子を見守るしかできないままデカモグラを見上げて、ふと頭上の名前表記がいつものモンスターとは形式が違うことに気づいたところで、更に変化が起きた。
「ぎゃー!? 破裂したー!!?」
沈黙していたデカモグラがいきなり内側から破裂して、血や臓物を撒き散らして死んだー!?
思わぬグロ映像に絶叫すると、その中からもぞもぞと見覚えのある影が現れる。
『…………』
「……るーさん? るーさん、生きてたー!!」
デカモグラの亡骸を掻き分けて現れたのは、少しだけちっちゃくなったるーさんだった!
るーさんの方もあたしを認めるとぷるりと大きく震えて、ぴょーんとあたしに向けて飛び込んでくる。
あたしは思わず感激して、るーさんが血塗れなのも構わず抱きとめると、るーさんの無事を喜びながらなでなでした。
「ううぅ、るーさん生きててよかったよー! 先に食べられて死んじゃったかと思って怖かったよー!!」
『…………』
「るーさんが気づいてくれたおかげで無事だったんだねー、ありがとーるーさん……るーさんはやっぱりいい子だよー!」
最初にるーさんがあたしを突き飛ばしたのは、あたしを奇襲して食べようとしてたデカモグラを察してのことだと今更気づく。
口では油断大敵といってても目先のことに注意散漫になってる間も、るーさんはずっと護衛に徹してくれてたんだねー。
うう、こんないい子を一瞬だけとはいえ疑おうとした自分が情けないよー……やっぱりあたしにはるーさんが居ないとダメダメー……。
「それにしてもるーさん、丸呑みにされてもヘーキだったんだねー。……ヘーキとは違うか、ちょっぴり消化されちゃったみたいだしー。それでも無事でよかったよー!!」
『…………』
「倒し方はちょっとだけグロテスクだったけどー、命には代えられないもんねー。るーさんお手柄だよー、いい子いい子ー」
『…………!』
頑張ってくれたるーさんを労る目の前で、デカモグラの亡骸が光の塵になって消えていく。
見たこともないモンスターだからどんなドロップアイテムが手に入るのだろうとわくわくするけど、せっかくだからるーさんへのご褒美になるようなやつがいいなー。
そう思って見守ってると、今度は突然通知が鳴り響いて……、
【<UBM>【貪食土竜 グリーモール】が討伐されました】
【MVPを選出します】
【【ねねこ】がMVPに選出されました】
【【ねねこ】にMVP特典【すーぱーきぐるみしりーず ぐりーもーる】を贈与します】
そんなアナウンスのあと、あたしの目の前にデフォルメされたモグラの着ぐるみが現れた。
「……えっと、なにこれー?」
『…………?』
当然るーさんが知るはずもなく、あたし達は揃って疑問符を浮かべるのだった。
To be continued
(・3・)<……はい
(・3・)<<UBM>でした(過去形)
(・3・)<相手が非実体系やエレメンタル系でもなけりゃ苦戦する理由もないのであっさり
(・3・)<強敵をスライムのチート性能であっさり討伐!
(・3・)<これはなろうですね(デンドロはなろう定期)
(・3・)<本作はなろう成分増し増しでお送りします