ゆるぽよデンドロライフ   作:ふーじん

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依頼達成

 □<トトラ廃鉱>・深部 【高位採集者】ねねこ

 

【すーぱーきぐるみしりーず ぐりーもーる】

 逸話級武具

 防御力補正 +696(もぐら)

 装備スキル

 《もぐもぐセンス》:はらぺこもぐらの鋭い嗅覚。《採掘》《伐採》のスキルレベルを2上昇させる

 《もぐもぐボディ》:陸の下も上もへっちゃら。《地中潜行》習得、《登攀》のスキルレベルを1上昇させる

 《もぐもぐマウス》:なんでももぐもぐ食べられる。着ぐるみを装備したまま飲食可能

 《もぐもぐハンド》:不思議と物を掴めるし器用に使える。採集道具だって思いのまま

 

「おー……すごい、見た目はアレだけどすごい高性能だよー?」

『…………』

 

 アナウンス曰く【グリーモール】というらしいボスモンスターを倒して手に入れた着ぐるみは、見た目に反してものすごーく便利な装備だったー。

 防御力補正の時点で今のレベルで装備できる防具としては破格の数値だし、その他の装備スキルもあたしにとって便利なものばかりが都合良く揃ってるー。

 

 これをオーダーメイドで作ってもらうとなると、たぶん数十万数百万とかじゃきかなくて、更に桁が一つ二つ増えるんじゃないかなー?

 普通の装備って多くてもスキル三つくらいまでだし、そのスキルもこんなに多機能な感じじゃなかったもんー。

 それにレベル制限もないしー、こんな装備見たことないよー。

 

 ネックとしてはこれひとつで武器とアクセサリー以外の枠を全部占めちゃうことかなー?

 それを踏まえてもこの装備は破格だよー。それに見た目も……装備としてはどうかと思うけど、個人的な趣味としては悪くないしー。

 こういう着ぐるみっぽいパジャマってリアルでもあるよねー、怪獣とか熊とかー。あたしもそれ愛用してるからもーまんたいだよー。

 

「それにしてもえぴそーどあーむず? ってなんだろねーるーさんー」

『…………』

 

 うーん、さすがのるーさんにもわかんないかー。

 王都に戻ったら誰かわかる人いるかなー? 普通のボスモンスターを倒したときとは違う通知も気になるしー、ニルさんかナルさんにでも聞いてみよー。

 

「……とりあえず害はなさそうだし、これに着替えるよー。今着けてる装備よりずっと高性能だしねー」

『…………!』

 

 その間の護衛は任せろって感じにぷるんと震えたるーさんを一撫でしてから、今着けてる作業用装備を脱いで着ぐるみに着替える。

 装備してみると普通の着ぐるみとは違って全然違和感なくて、体積的にぶかぶかのはずなのにボディもふにゃふにゃにならずにピンとしてるー。

 なんというか、着けてるのにほとんどそんな感覚がなくて普段着と変わらない感じー。

 

 それにデフォルメされたずんぐりおててなのに生身でするのと変わらない感じで物も掴めるし、ほんとにどうなってるんだろー?

 試しに【アイテムボックス】から保存食を一つ取り出して口元に近づけてみると、どういう理屈かはわからないけどそのまま食べれたー。

 

 そして装備した途端、あたしの《採掘》スキルが今まで以上に反応してる気がするー。

 これが《もぐもぐセンス》の効果なのかなー? スキルレベルが二上昇って、ここまで採集スキルを育ててきたあたしにはどれだけ破格かってのがよくわかるよー。

 うーん、これの上昇分って本来の上限を突破して上がるのかなー? だとしたら【高位採集者】でも《採掘》と《伐採》のスキルレベルが八にまで上がることになるし、ほとんど【高位採掘師】や【大木樵】と遜色ないレベルだよー。

 

 うーん、何から何まで好都合なところばかりだなー。

 オーダーメイドでもここまでピッタリな装備を作れるとは思えないしー、作れるとしてもどんなお値段になることやらー。

 状況的にゲームシステムがあたしに合わせて作ってくれたみたいだけどー、デンドロってそういうシステムまであるのー?

 

 <エンブリオ>といいこれといい、デンドロってすごいけど変なシステムばかりだねー。

 普通のMMOって平等ではないにしろある程度公平性を重視するものなのに、運次第でこういう装備をゲットできるって、どうやってバランスを取るつもりなんだろうねー。

 ひょっとしてバランス取るつもりなんてないのかなー? だとしたらやっぱりゲームとしてはどうかと思うけど、でもそれをわかっていながら今も遊んでるあたしみたいなプレイヤーがいる以上、運営の掌の上なのかなーやっぱりー。

 

 ……まぁいいやー、便利なものは便利とだけ受け取っておこーっと。

 別にあたしに不利益があるわけじゃないもんねー。

 いきなり襲われたときはびっくりしたけどー、るーさんのおかげで無事だったしー。

 なんだかんだあったけど、終わりよければすべていいのだー。

 

「ということで……じゃーん。どうかなるーさんー? 似合うー?」

『…………!!』

 

 生憎鏡は持ち歩いてないので自分では見れないんだけど、るーさんに尋ねてみると絶賛するようにぴょんぴょん跳ねてたー。

 んーふーふー、るーさんがこういうなら間違いはなさそうだねー。

 

 というわけで脱いだ作業着を【アイテムボックス】に仕舞って、襲撃のどさくさで放り出してた採掘道具を拾い直して作業再開ー。

 あ、【安全ヘルメット】は頭装備枠だから装備できないやー。でも防御力は着ぐるみの方が上だし問題無いかなー。

 それに今の防御力なら【ジャイアントモール】に襲われてもほとんどダメージ食らわずに済むし、たとえ近くに巣があったとしても構わず採掘できるよー。

 

「ちゃんとピッケルも装備できたー。よーし、はりきっちゃうよー!」

『…………!』

 

 んーふーふー、頼りにしてるからねーるーさんー。

 

 ◇

 

 それから何度かログアウトとログインを繰り返して、こちらの時間で約二週間。

 その間ずっとピッケル振り回してとんてんかんてん採掘してると、当初の想定よりもずっと早い段階で【アイテムボックス】が【銀鉱石】で満杯になったー。

 

 ひとえに【ぐりーもーる】のスキルのおかげだねー。

 二週間もこもりっきりで採掘してるとジョブレベルも《採掘》のスキルレベルもガンガン上がって、前者は三四、後者はなんとカンストまでしちゃったー。

 【高位採集者】で到達可能なスキルレベル六を越えて八になってー、これで《もぐもぐセンス》による補正は本来の上限に上乗せされる形になるってことが証明されたねー。

 スキルレベル八の《採掘》による反応はこれまでとは全然違ってー、ここが下級素材ばかりの採掘地ってこともあるんだろうけど、もーめちゃくちゃ入れ食い状態だったよー。

 

 それに【ジャイアントモール】もあれからめっきり見かけなくなってー、ひょっとしたらあのデカモグラがこの一帯のボスだったのかもしれないねー。

 るーさんのおかげで瞬殺できたけど、あの威圧感はこれまで出会ったどのモンスターとも格が違ったしー、普通に倒そうとするならきっともっと手間と時間がかかって、むしろ返り討ちに遭う可能性すらあったんじゃないかなー。

 つくづくるーさんのおかげだよー。るーさんがいなかったら今頃あたしは王都で泣きべそかいてたもんー。

 

 あ、そうそうー。それともうひとつニュースがあるんだよー。

 というのもねー、この二週間のうちにあたしのケテルが形態進化したんだー。

 これで到達形態はⅢー、確かここまでが下級エンブリオって区分になるんだったかなー?

 もう一段階進化すれば上級エンブリオになってー、そしたら下級エンブリオまでとは段違いの性能になるって話だからー、ますます夢が広がるよー。

 

 そして進化したからというにはとーぜん新しいスキルも覚えたんだけどー……こっちは案の定またよくわかんないスキルだったよー。

 るーさんがすっごくぶるぶるしてたから、るーさん的にはきっと重要な進化だとは思うんだけどー、傍目にはわかんないからほんとのところはどうなんだろー?

 自分でも装備できたらなー。でも賢くなるとか資質を得るとか、自分で装備できたとしてもふんわりしすぎではっきり分かるとは思えないし、まー例のごとくるーさんがいいならそれでいいやーって感じだねー。

 

「ふー、ひとまずこんなところでいいかなー。随分長いことがんばっちゃったよー。それもこれもるーさんと着ぐるみのおかげだねー」

『…………』

 

 なにはともあれこれでひとまずの目標は達成できたはずー。

 深部に潜る前よりも二回りくらいおっきくなったるーさんに振り返って余った鉱石を与えると、来た道を引き返していくー。

 坑道は過去の採掘で四方八方に枝分かれしてて迷いやすいけれどー、【高位採集者】なら【採掘師】程ではないけれどこうした場所での地理を把握できるからー、出口まで戻るのに問題はないねー。

 これがもっと大規模で危険なモンスターの棲息する鉱山なら、そうしたモンスターを避けるようにもっとずっと入り組んで迷路みたいになるんだけどー、将来的にそういう場所まで行くつもりなら、アクセサリーとかでそのへんのスキルを補強する必要があるかなー。

 

 帰り道は奥へ進んだときよりも安全でー、それというのもこれまで襲ってきたモンスターはみんな返り討ちにしてきたから、今ではすっかりあたし達を避けちゃってるみたいー。

 るーさんがそれらしい気配を察して警戒するんだけど、そのまま何もせず通り過ぎていくことから、この辺はあたし達限定ですっかり安全になったかなー。

 るーさんったらバリンさんにも負けず劣らずなメイン盾っぷりだよー、ナイト様ー。

 

「あ、光が見えてきたよー。久々の外だー!」

『…………』

 

 そんなこんなで何時間か進んでいると、視界の先に見えた強い光に声を上げる。

 こっちの時間では二週間振りの外に思わず駆け出すと、るーさんが前に出て最後まで油断せず警戒してた。

 うーん、るーさんはほんとに抜け目が無いなー。頼もしすぎて飼い主のあたしはますますダメになっちゃうよー。

 人をダメにするスライムなるーさんー。罪深いやつめー。

 

「周囲に敵は、いないー……?」

『…………』

「なら大丈夫かなー。お片付けするよー」

 

 鉱山で採掘するときのマナーとして、地属性魔法を使えない人間は収集物を入れる【アイテムボックス】とは別に、採掘の過程で出てきた土砂を入れる【アイテムボックス】も用意しておいて、採掘を終えたあとに指定された場所にそれを廃棄しなきゃいけないんだよー。

 じゃないと坑道とかに土砂を放置したままになるし、そうなると次に採掘する人が活動しづらくなって迷惑だからねー。

 地属性魔法が使えるならそうした土砂も元に戻したりできるから問題無いんだけどねー。

 

 ちなみに森林地帯とかでの伐採でも同じことだよー。

 切り倒した木もそうだけどー、必要素材を集める過程で発生した枝や葉っぱもちゃんと【アイテムボックス】に回収して所定の場所に廃棄しないと、マナー違反が目に余るようだと採集許可が取り消しになっちゃうからねー。

 そういう取り決めを管理して採集を望む人間に適切に振り分けてるのがギルドだからー、ギルドに所属するならちゃんと守らないとねー。

 だから許可もなく密猟する人間は絶許だよー。私有地や国有地でそういうことしようとすると、始末屋が差し向けられるらしいから気をつけようねー。

 

「うひゃー、すっごい土砂の量ー。こんなに掘ったんだー? 今までで一番の量だよー」

 

 うず高く積まれた土砂の上に立って【アイテムボックス】の封を開けて逆さまにすると、そこから土砂崩れのように勢いよく大量の土砂がずざざーっとでてきたー。

 土砂山が更に数メートル程高くなって、滑り落ちるようにそこから退避ー。

 いやー壮観だなー。これだけの量を手作業で採掘してきたのだと思うとすごい達成感だよー。

 

 ちなみにこういう土砂も錬金術師系統が別の素材アイテムに変えたりするらしくて、見習い【錬金術師】とかが回収しにきたりするんだってー。

 持っていくのはタダだから、けっこー需要があるみたいだよー。

 錬成した土砂は【陶芸家】とかに売れるらしいから、やっぱりこういうのは持ちつ持たれつなんだねー。

 魔法がある世界のリサイクル対策ってすごいなー。リアルでも同じことができればいいのにねー。

 

「はー……なんか外に出たと思ったらどっとつかれたよー……。るーさんー、ちょっとだけ休憩していこっかー」

『…………』

 

 そうした達成感に身を浸していると、ようやく緊張が解けてきて疲れがドバっとやってきたー。

 途端に瞼が重くなって、このまま王都に帰るのもしんどいからひとまずここで休憩することにするー。

 適当な木陰に入ってるーさんをベッドに横になるとすぐに睡魔が襲ってきて、そのままあたしは眠りに落ちた……。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 □ダァト

 

『――領域開放。ケテルより発議。これより第二回協議を開始する。コクマーよりマルクトまで応答求む』

『コクマー了解』

『ビナー了解』

『ケセド了解』

『ゲブラー了解』

『ティファレト了解』

『ネツァク了解』

『ホド了解』

『イェソド了解』

『マルクト了解』

『全思考体の応答を確認。ケテル了解』

『ビナー発言。――此度の一件は重大事であったと認識する。危うく我が主の安全を脅かすところだった』

『ケセド発言。ビナーに同意する。しかしあの状況では最適解だったとも判断する』

『ティファレト発言。我が主のバイタルに異常無し。しかし我が主を精神的動揺の極み――恐怖へ陥らせた過失は認めるべきである』

『ホド発言。全く同意である。我々の存続に問題はなかったが、視覚的並び状況的効果から我々が滅びたものだと誤解を招き、それによって我が主を悲しませてしまったのは大いなる反省点である』

『イェソドより提案。やはり意思疎通の要があると考える。我々の生態と我が主の生態には著しい差異がある。我が主の主観において我々の活動は誤解を招く点が多々あると認識。その解決を図る必要があると判断する』

『ケテル応答。……此度の一件においては敵性生命体の捕食行動による、我が主の主観における我々の総体の一時的消失であると認識する。我が主の言葉を借りれば「食べられちゃったかと思ったよー」である』

『マルクト発言。ケテルの発言に同意する。幼体の頃ならばともかく、現総体において通常生物の捕食は無為である。しかし我が主は戦力の全てを我々に依存している。例え僅かな時間であろうとも、我々が主の傍を離れるべきではないことが今回の一件で明るみになった』

『ゲブラーより質疑。ならば如何にすべきか。つまるところ我々の存続が我が主の目に明らかであればよいのか』

『マルクト応答。概ねその認識で相違無いと判断する』

『……ケテルより提案。ならば端末個体を別個に用意するのは如何に。我々と常時同調し、現在状況を我が主に伝えるための端末個体を新たに分離独立させる』

『ネツァク応答。……成程、悪くない提案だと判断する。幸いにして当該エンブリオは進化を果たし、出力上昇及び新規スキル習得を発現した。現状ならばその手段を実行可能と考える』

『ティファレト応答。第三スキル《叡智の創造(ブリアー)》の検証試験としても最適であると判断する。まずは単一機能を搭載した個体を生み出し今後の指標とするということか』

『ビナー応答。分離独立させる以上我々の総体も減じるが、あくまで端末個体とするなら許容範囲であると判断する。しかし問題は同調である。万が一にも我が主への反逆は許されない』

『ホド応答。我々との同調を確かなものとするには、端末個体に搭載する機能を制限する必要がある。少なくとも我々のような思考体はまだ搭載するべきではない。高性能個体の独立には時期尚早であると判断する』

『コクマー応答。加えて発声器官の搭載は不可能である。しかしこれは我が主を対象とする場合には問題ではない』

『ケセド応答。ならば我々との常時同調のみを主幹とするのはどうか? 我々の現在状況がリアルタイムで反映されるならば、我が主が我々の意図を汲み取るに支障は無いと考える』

『イェソド応答。成程、そうした単一機能のみならば十分に検証試験に値する。万が一不具合が起きた場合も我々で即時回収が可能だ』

『ゲブラー応答。我々の総体は少し大きくなりすぎた。端末個体の総体は常に主が傍におけるよう、持ち運びの容易な規格にすべきと判断する。具体的には我々の幼体よりも更に小型化を図るべきだと考える』

『……ケテル応答。コクマーからマルクトまでの提案が有為であることを認める。ならばそれらの要素を踏まえた端末個体の生成・分離を当面の目標とする。推定所要時間は■■■時間。端末個体が完成次第我が主にテイムを申請する。異議は』

『コクマー了解』

『ビナー了解』

『ケセド了解』

『ゲブラー了解』

『ティファレト了解』

『ネツァク了解』

『ホド了解』

『イェソド了解』

『マルクト了解』

『コクマーからマルクトまで、満場一致による発議の可決を確認。ケテル了解。これより検証を開始する』

『マルクト発言。我が主に覚醒の兆候確認』

『ケテル応答。此度の協議はここまでとする。各思考体は個体名:るーさんの更なる性能向上のため尽力するように。以上、ケテルより協議終了を発議する』

『コクマー了解』

『ビナー了解』

『ケセド了解』

『ゲブラー了解』

『ティファレト了解』

『ネツァク了解』

『ホド了解』

『イェソド了解』

『マルクト了解』

『ケテル了解。協議領域ダァトを閉鎖する。――協議終了』

 

 

 ◇◇◇

 

 

 □王都アルテア 【高位採集者】ねねこ

 

 結局昼過ぎまで一眠りしたあと、あたしはるーさんに乗って王都への帰路に着いた。

 到着した頃にはすっかり夕暮れになっていて、それでも王都の街並みはまだまだ活気に沸いている。

 ちょうど今は夕飯に向けて買い物にでかける人が多いみたいで、親子連れをあちこちで見かけるねー。

 そんな中をるーさんに乗って進んでいると、道行くお子様方があたしを見てきゃいきゃいと声を上げた。

 

「おかーさん、もぐらさん! おおかみさんじゃなくてもぐらさんもいるよ!」

「あらほんと、あの人の知り合いかしら? きっと<マスター>さんね、ほらほら指差ししたら失礼でしょ」

 

 んーふーふー、意図せずおこちゃまのハートをキャッチしちゃったみたいだねー。

 にしても……おおかみさん? あたし以外にも着ぐるみ着てる人いるのかなー? でもこれだけ高性能な着ぐるみなら、他の装備してる人がいてもおかしくないかもー。

 

 あたしに向けて手を振ってくる子供達に手を振り返してそのままギルドへー。

 入り口の警備員さんがギョッとしてこちらを見るけども、ギルドカードを提示すれば察したように警戒を解いて入れてくれたー。

 うーん、性能も着心地もいいし個人的には悪くない装備なんだけど、やっぱり普段着としてはちょっと浮いてるかもー。

 でも「普段着にしてね!」と言わんばかりの性能だし、背に腹は代えられないよー。

 

 屋内では流石に乗っておけないから、るーさんから降りて受付まで歩くー。

 この着ぐるみ、明らかに足の長さが足りてないんだけど不思議と歩くのに支障は無いんだよねー。

 これも魔法のおかげかなー? ほんとファンタジーって不思議ー。

 

「ナルさーん、受付まだ大丈夫ー?」

「ああ、その声はねねこさん……お戻りになられた、ん、です……ね……?」

 

 ぺたぺた歩いてると、いつもの受付でナルさんが書類を確認してるのが見えたー。

 そのまま近づいて声をかけると、声であたしだと気づいたナルさんが視線を向けて、段々疑問符を増やしていくのがわかるわかるー。

 あたしがナルさんの立場ならびっくりするから気持ちはわかるよー。でもドッキリ大成功ー。

 

「ええと、ねねこさん? その装備は……」

「えっとねー、向こうで採掘してるときに襲ってきたモンスターを倒したら手に入ったよー。ナルさん、これがなにかわかるー?」

「少し失礼しますね。……うわっ、特典武具!? 初めて見た……」

 

 眼鏡を変えてあたしを見たナルさんは、そう呟いて驚いたー。ていうか思わず素になってるー?

 

「特典武具ってー?」

「この世に二つと存在しないボスモンスター……<UBM>を倒すことで入手できる装備のことですね。私も実物を見るのは初めてですが……これは逸話級にしても、よく倒せましたね……」

「るーさんのおかげでイチコロだったよー」

『…………!』

 

 るーさん自慢ついでに経緯を説明すると、ナルさんは納得いったように頷いた。

 

「成程……確かにそこまで育ったスライムなら可能でしょうか。しかしそれでも運が良かったことに違いはありません。よくぞご無事で……本当によかった」

「えへへー、るーさんがいたからねー」

 

 ナルさん曰く<UBM>ってのはほんとに千差万別で、どれも通常モンスターとは比べ物にならない強さを誇るんだとかー。

 <マスター>であっても返り討ちに遭うことが多い強敵だから、その所在は常に把握するよう各都市も心掛けてて、人里離れたところでおとなしくしてるなら良し、そうでないなら賞金首に認定して討伐を推奨してるんだってー。

 るーさんが倒した【グリーモール】はこれまで目撃情報の無いまったくの新種だったそうで、もしいることがわかってればあたしが<トトラ廃鉱>に向かうのも絶対止めてたってさー。

 まーあたしもるーさんがいなかったらそのままお陀仏だったからねー。今回は完全に事故だからー、誰が悪いってわけでもないよー。しいて言うなら運が悪いよー運がー。

 

「生憎賞金も懸けられていませんので、こちらから報奨をお渡しすることはできないのですけどね」

「いいよいいよー、これが手に入っただけでも儲けものだしー。採集者としてすっごく便利だもんー」

「当ギルドに所属する者なら垂涎の装備ですものね。だからって着ぐるみなのはどうかと思いますが……コホン、ともあれ手続きを済ませてしまいましょうか」

 

 思わず話が盛り上がっちゃったけど一旦それは置いといてー、ナルさんはそういうと受付を離れて、暫くしてからダンカンさんを連れて戻ってきたー。

 ちなみにダンカンさんが所属する工房は採集者ギルドのすぐ近くにあるから、呼びにいくのもすぐなんだよー。

 採集者ギルドの周辺は生産職の工房を置くには便利な一等地だから、ダンカンさんとこの工房はすごーく稼いでるってわけだねー。

 確か工房主さんがドワーフなんだったかなー? あたしは会ったことないけどすっごくおっかないって噂だよー。

 

「おう、ねねこ! 話は聞いたぜ? 随分な冒険だったらしいじゃねーか!!」

「ダンカンさん久しぶりだよー。ほんとにねー、るーさんがいなかったらどうなってたことやらー」

「ハッハッハッ! よくご主人さまを守り抜いたな、偉いぜるー坊! どれ、【銀インゴット】をやろう。欠片だけどな!」

『…………!!』

 

 掌サイズの欠片とはいえ職人さんに《精錬》されたインゴットを貰ってるーさんが狂喜乱舞してるー。

 ところでるーさんは女の子だから、るー坊って呼び方はデリカシーがないよー。るーさんはインゴットに夢中で気にしてないみたいだけどー。

 

「で、だ。戻ってきたってことは集まったってことでいいんだな? 思ってたより随分早いが……どれ見せてみろ」

「はい、これー。中身は全部【銀鉱石】だからー。容量ギリギリだから気をつけてねー」

「ほーう、そりゃ大したもんだ。なら期待させてもらうとすっかね。ナルさん、ちょいと奥借りるぜ!」

「はい、どうぞ」

 

 ダンカンさんが【アイテムボックス】を持って奥の計量スペースに引っ込むと、ナルさんがお茶菓子を用意してくれたー。

 装備スキル通りずんぐりしたモグラの手でもカップを掴めてお菓子もつまめるー。そのまま飲み食いしても着ぐるみは汚れない不思議ー。この装備で一番不思議なところだねー。

 

「……ねねこさん、失礼ながら写真一枚よろしいですか?」

「いいよー、可愛くとってねー。あと現像したらあたしにも一枚頂戴ー」

「ええ、それはもちろん!」

 

 んーふーふー、この着ぐるみの愛くるしさにナルさんもノックアウトみたいだねー。

 あーあー、こういう着ぐるみがリアルにもあればディズ○ーランドとかももっともっと繁盛するのになー。

 ミッ○ーやドナ○ドと一緒に食事できたら、絶対大人気だよー。でも夢は遠いねー。

 

 そうしてあれこれナルさんとお喋りしながら待ってると、やがてダンカンさんが戻ってきたー。

 顔には喜色満面、戻ってくるなりあたしの肩をバシバシ叩いて、上機嫌に大笑いするー。

 

「よくやったぜねねこ! こんだけあれば十分よ! オレっちも《精錬》のし甲斐があるし、ダチもこれなら転職条件を満たせるだろうぜ! もちろんお前さんの装備も十分作れる……いや、ちょこっとだが釣りも出る量さ! こんだけ採ってこれる人間もそうはいねぇ、お前さんもすっかり一端の【高位採集者】だな!!」

「ダンカンさん褒めすぎだよー。あとちょっとうるさいー」

「ハッハッハッ、すまんすまん! ともあれお前さんが頑張ってくれたんだ、オレっちも張り切って取り掛からないとな!! ダチにもお前さんのことは言っておくぜ、腕の良い【高位採集者】がいるってよ!」

 

 おっとコネがまた広がったかなー? いつかその【錬金術師】さんに会いにいってみるのもいいかもねー。

 ともあれ依頼達成には問題が無いみたいでなによりだよー。流石に容量一〇トンの【アイテムボックス】一つ分なら十分だったみたいだねー。

 

「はい、ではこちらの書類に署名をお願いしますね。ねねこさん、報酬の装備一式ですが納品期限はどうされますか?」

「特に決めてないよー。あんまり待たせすぎないならダンカンさんの都合に合わせちゃってー」

「かしこまりました。ではダンカンさん、報酬物のご用意をお願い致しますね。ねねこさんからの要望があればその都度ご連絡差し上げますので」

「あいよ! ちゃーんと良いもの作って納品すっから、楽しみに待っててな!! なぁにそう待たせはしないさ!」

「かしこまりました。では報酬の納品が確認され次第、本依頼は達成とさせていただきます。ご不明の点等ございましたら改めてご相談ください」

 

 そうナルさんが締め括って今回の依頼は終わったー。

 厳密にはまだだけど、実質終わったようなもんだよー。ダンカンさんなら持ち逃げの心配もないし、あとはのんびり待っとくだけー。

 

「それじゃーあたしは納品されるまで休業するよー。ずーっと採掘してて疲れちゃったしねー、依頼はまた今度ってことでー」

「はい、お疲れ様でした。またご都合がつけばお越しくださいね。ねねこさんは有望株ですからギルドとしてもお待ちしております」

「じゃあな、ねねこ! 仕上がったら使いを寄越すから受け取りにきてくれよ!!」

「はーい、それじゃー二人ともまたねー」

 

 見送る二人に手を振り返してギルドをあとにすると、外はすっかり日が沈んで暗くなってたー。

 外で夜を迎えるのも久しぶりだねー。ようやく戻ってきたって感じがするよー。

 

「それじゃーるーさん、宿に戻ろっかー。明日からはまたるーさんのご飯集めだよー」

『…………』

「『しばらく鉱石はいい』? んーふーふー、そだねーいっぱい食べたもんねー。なら次はまた北にいこっかー。もちろんモンスターもバンバン倒していくよー」

『…………!』

 

 相変わらず好奇心旺盛なるーさんを連れて、あたしは馴染みの宿に戻っていったー。

 

 

 To be continued

 




(・3・)<「696」で「もぐら」と読むのは若干苦しい気がしないでもないけど
(・3・)<ググってみたらそう語呂合わせすることもできるらしいのでこの数値
(・3・)<着ぐるみ装備ゆえ多機能型(戦闘に適してるとは言っていない)
(・3・)<ちなみに第三スキルの概要は以下

叡智の創造(ブリアー)》Lv1:
 優れた学習能力を得る。
 パッシブスキル。

(・3・)<これで必殺スキル以外の固有スキルは全て習得しました
(・3・)<厳密には上級までで覚える範囲では、だけど
(・3・)<ろくでもない予感しかしない

 □余談
(m´・ω・`)m<るーさんかわいいよー
(・3・)<モグラの顔文字をググってみたらこんなんあった
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