銀色の革命者外伝 星色の花は天使の手に 作:ヒロ@美穂担当P
私は何回も言いますがライブ行ったことないです。
というわけでライブの話。
今日俺は朝早くから入念に準備をしている。何の準備かって?相葉ちゃんとライブに行くんだよ。
ペンライトや法被をリュックに入れて準備完了。よーっし、行くか。
集合時間2時間前にはライブ会場へ到着した。
早すぎじゃね?と思うだろう。でも「万が一」がないように俺は出てきた。
「津上くーん!」
来たよ来たよ天使ィ!相葉ちゃん来たァァァ!! 相葉ちゃんの服装は涼しげ。彼女らしさを最大限発揮している。
「少し早く来ちゃった……」
大丈夫、俺は2時間前からいるから。
「大丈夫だよ。むしろ俺が遅れる方がダメだと思って」
女の子より早く動く。これが女の子が男に求める事だと俺は思っている。夢斗、オメーはダメだ。
ライブ会場内は大勢の人が。狭い。
「相葉ちゃん大丈夫?」
「私は大丈夫。津上君は……っ!?」
相葉ちゃんが転びかけ、俺は慌てて相葉ちゃんを受け止める。
「ごめんね、津上君」
「平気。相葉ちゃんが怪我する方が一大事だし」
アイドルが怪我なんてしたらヤバい。上手く言えないけどとにかくヤバい。
ライブ開幕。
イグニッションZEROのメンバーがステージに現れた。
「さあみんな!あたし達の歌を聞けーーー!!」
「「「「「わあああああああっ」」」」」
観客の声が波のように押し寄せる。
「すごいな……」
光ちゃんのMCは完璧。観客達のボルテージをアゲるのが上手い。
「光ちゃーん!!」
なんかやけに目立つ中年のおじさんがいる。法被にペンライトなどフル装備。コール並の大声で呼びかけている。
どうしようかな……と思った瞬間。
そのおじさんが隣にいた別の観客と揉め始めた。騒ぎが大きくなっていく。
「ねぇ……大丈夫かな」
「アレはダメなパターンだな……」
そのおじさんは周りの声が届いてないらしく、自分の意見だけを押し通そうとしている。ああいった感じはすぐにスタッフが駆けつけるパターン。
程なくしてスタッフの方が来ておじさんに注意。しかし……
今日のライブ最後の曲になる「君の青春は輝いているか」。光ちゃんが好きな特撮番組のカバー曲だそうだ。
「ほんとうの自分を隠してはいないか〜」
光ちゃんが歌うのに合わせて大声が聞こえる。俺が声が聞こえた方を向くと……やはり。先程のおじさんだ。
「静かにしろよ!!」
「うるせえ光ちゃんを応援するんだよぉ!」
「それはただの迷惑行為だ!」
再び揉め始めた。それが先程よりも大きくなり会場全体にまで広がる。
ステージ上の光ちゃんも思わずそちらを見ていた。
「やめろーーーーっ!!」
光ちゃんの声が会場全体に響く。混乱していた会場中が静まり返る。
「あたし達を応援してくれるのは嬉しいさ!でも!」
「守るべき物は守る!それがヒーローじゃないか!もちろんルールだって!!」
光ちゃんの言う通りだ。例え正義のヒーローだって普通の人のように守る物は守る。ヒーローだけがルールを破っていいなんてそんなのナイ。
「俺はぁ!光ちゃんだけを見ているんだよ……っ!?」
騒いでいたおじさんが後ろから羽交い締めにされる。
「うるせえな。ルールが守れないで何が大人だ」
「この……!」
「光ちゃんだって子供なんだ。俺達大人が子供の前で格好悪くてどうする」
ヒゲを生やしたおっさんと言うべき男性がおじさんを押さえ込んでいた。
やがて再びスタッフがやってきておじさんは退場させられることに。
あのおっさんカッコよすぎだろ。
ライブ終了後。
「大変だったね……」
「でもライブはこういう事はつきものだよ。何事もない方が珍しい気がするくらい」
普段俺が行くライブでもスタッフが来るようなレベルでなくとも迷惑行為が全くない訳ではない。
小さい物で済む物もあればスタッフに退場させられるような事も。
何故注意書きを守らないのか。これは俺以外にもここに来ている人達みんなが思ってる事だろう。
駐車場に戻ってきた俺と相葉ちゃん。
「乗ってく?」
「うん」
また相葉ちゃんが俺のFDに。やったぜ。
そんな内心ウキウキの俺の前に赤い車が。
「お……FC」
俺の乗っているRX-7(FD)の先代のモデル通称FC。今やFD以上にタマが減ってきているのだ。俺が知る人があれと同じ車を作っていたけど……。
乗っていたのはなんとさっきのおっさん。
「シブいな……。ますますカッコいいぜ」
そしておっさんと目が合った。目と目が逢う〜(突然流れ出した目が逢う瞬間)
この後相葉ちゃんを送って帰った。
数日後、あのおっさんと再び会った。俺はFCに乗り続けて20年以上になるというおっさんから話を聞いていた。
「兄ちゃんのFD悪くはないけどな……。なんか足りねえな」
「俺もわかってます。けどどうすればいいか全くわかんなくて」
おっさんの指摘は的確。
「パワーどんくらいだ?」
「だいたいブースト1.2kgで450馬力ってとこですね」
「悪くはないな。でももう少し高くてもお前は問題ないだろう」
「俺はバランスよく仕上げてるだけです」
「バランス……とにかくパワーが出てりゃあいいっていうヤツもいるさ。お手本のようにまとまってるのも悪くないがつまらなくないか」
「俺は……今はこれでいっぱいいっぱいで」
おっさんが俺のFDのボンネットを開け、エンジンを見た後。
「俺のFCを追ってみろ。なにか掴めるといいが」
横羽線上り。
赤いFC3Sのテールランプを追う俺の青いFD3S。
(あれがFCなのか!?)
前のFCの動きは歴戦の猛者の動き。一瞬でも気を抜いたら……そう考えないようにFDを走らせる。
「嘘ではないみたいだな」
あのFDは本当にバランスよくチューンしているのがわかる。
ライトチューンであれ程やれているのがいい。趣味で休日にサーキットを走る人がやるような軽めのチューン。
それだけなのに高いレベルの性能を持つ。いいセンスだ。
「く……っ。張り付くしかねぇか」
FDをFCに当たるギリギリまで近づける。スリップストリームの効果を得るために。
「上手いな……。タダのコゾーってわけでもないらしいな」
FDは上手くFCの後ろに張り付く。
大パワー車を低パワー車で追うのには絶対なくてはならないテクニックがスリップストリーム。
空気抵抗を前方の車両で軽減し、自分の速度を上げる。前の車が作り出したエアポケットの中で加速するのだ。
FDのドライバーの腕に感心する。あの若さでこれ程の腕とは。
「だが……経験値が違う」
FCが先程よりも速度を上げていく。
浩一はFCの丸いテールランプを見ることしかできなかった。
「だめかよ……」
合流後。
俺はおっさんからアドバイスを受ける。
「踏むかどうか躊躇してる瞬間があるぜ……。ソレ自分でもわかってるだろ」
「……ええ」
攻めるか悩む瞬間。超高速バトル中の躊躇は状況が一気に悪い方向に進む一番の原因だ。
「あなたは……何者ですか」
俺は問う。おっさんは明らかに俺とは違う次元の速さを持っている。
「内藤健二。車バカでドルオタのおっさんさ」
「ドルオタってことでひとつ聞く。この間相葉夕美ちゃんを乗せてただろ……どういう関係だ」
「クラスメイトですけど」
「お忍びで来てただろう!?」
「そうですよ?」
「ほー……。わかったぞ、兄ちゃんは相葉夕美ちゃん推しだろう」
「大正解です」
俺と内藤さんはドルオタ同士の熱い握手を交わした。
「俺の工場にいつでも来い。FD見てやるぜ」
「ありがとうございます。あ、俺は津上浩一って言います」
「浩一か……。ドルオタ同士仲良くしようや」
こうして俺は内藤さんと知り合った。これ以降もライブの際にちょくちょく会うようになった。
後に聞いた話で内藤さんは南条光ちゃん親衛隊のリーダーだと判明。
光ちゃんのライブの時に迷惑行為をする輩を注意しているそうだ。
ヒーローはステージ外にもいると俺は学んだ。