銀色の革命者外伝 星色の花は天使の手に 作:ヒロ@美穂担当P
「湾岸ミッドナイト」からFDマスター登場!!
俺は以前知り合った内藤さんの工場に向かっていた。
最近FDのタービンの調子が悪く、内藤さんなら相談に乗ってくれるかと思ってだ。
「こんにちはー」
「お、来たか」
内藤さんが俺を出迎える。
「今日はなんだ?」
「FDのタービンの調子が悪くて……。フケが悪くてパワーが出ないんですヨ」
「……ほーん。んじゃ、試しに吹かしてくれ」
ヒュウアアアアアァァァァァァァッ
「コンプレッサーかなんかだと思うけどな……。作業してるからちょっと待ってろ」
内藤さんはFDのタービンを外し、タービンを分解し始めた。
その間、俺は工場の中を歩いて回る。
工場の中にあるのはパジェロやハイエースなど街中でもよく見る普通の車の他にも……
「コスモスポーツ……」
世界で初の量産型ロータリーエンジンを搭載したマツダの「コスモスポーツ」が。
コスモスポーツ以外にRX-8や
「内藤さんの……」
工場の奥には内藤さんの赤いFC3Sが。歴戦のマシンである事は見るだけでわかる。そういう修羅場をくぐり抜けてきたオーラが出ている。
「?なんだこれ」
FCの隣にひとつだけ置かれているダンボール箱。中身は結構大きいらしく、ダンボール箱のサイズはでかい。
俺はフタが開いてるダンボール箱の中身を見てみる。
「ミッションか?」
箱の中にはトランスミッションが。FCのパーツだろうか。
「それはな、俺の残した情熱だ」
いきなり声をかけられ、振り向くと内藤さんが立っていた。手袋をつけた右手にはFDのタービンが。作業が終わったらしい。
「情熱……?どういう事ですか」
「このFCはな、現役じゃねえんだ」
「そんな、あれだけの走りができるのに?」
「ああ。もう過去に取り残されてるんだよ」
内藤さんが言う事に衝撃を受ける。
「このシーケンシャルミッションは俺の狙っていたヤツに迫るための秘密兵器だったんだ。でも、
内藤さんは過去を振り返るように語る。
「それよか、やっぱりコンプレッサーがダメになってた。圧縮空気が漏れていた」
「コンプレッサー周りはリビルト品に交換した。これで大丈夫だろう」
内藤さんがFDにタービンを付ける。
「んじゃ、やります」
シートに座り、エンジンを始動させる。
エンジンが元気よくかかり、何度かアクセルを軽く煽ってみてもエンジンは高回転域までスムーズに回る。
ピラー周りに設置されたブーストメーターの針は正圧を指し、快調である事を示した。
「ありがとうございました」
「いつでも大丈夫だ。困ったら来い」
俺は元の調子を取り戻したFDに乗って工場を後にした。
「よかったんですか?チューンの勧めとかしなくて」
「いいんだ。アイツは自分なりに車を作っていくさ。俺が口出ししてもしょうがねえだろ」
「ふふっ、健さんらしくないな」
事務室奥から出てきた美世。
美世は普段こんな事を言わない内藤に違和感を感じた。
「浩一はな、目指してるんだよ。目標をよ」
「お前だって迅帝狙ってるだろうが。それと同じな」
「浩一は……トレースが上手い。ちょっと前にアイツと走ったが俺の走り方を上手く自分の物にしていたんだ」
「健さんの走りをね……」
「でも浩一は自分の走り方を知らないんだよ。追うのが上手いのは認める。でも誰かがいてこそその方法が通じるだけで自分一人の走り方は行方不明なんだよ」
浩一の走りは夢斗など自分の前を走る人の走り方を模した物。だから一人だけだと速くない。
「久しぶりに行っちゃう?」
「だな……」
「新しいあたしのRに置いてかれないように頑張ってくださいね」
「ぬかせ、10年早い」
久しぶりに首都高へ上がった俺。
横浜方面へ向かっていると青いFD3Sが見えた。
「すごいな……確実に速いって見ただけでわかる」
「ん、FDか。首都高慣れしてるみたいだナ……」
「久しぶりに本気で走ってみるか」
「なんだ!?3速から置いていかれる!」
ベイブリッジ上でバトルを始めた2台のFD。しかし、浩一のFDは前のFDに離されていく。特に4速以降でパワー負けが顕著。
「なんで……あれだけのパワーが出てるんだ!?」
「なら、こっちだって!!」
俺のFDの秘密兵器。これは夢斗も知らない。
ミサイルスイッチをオン。するとECUに予め入れていた特別な設定に切り替わった。
点火系や燃調などをギリギリまで追い込んでの出力アップだ。
これにブースト1.8kg掛けて570馬力を絞り出すのだ。
しかし、かなりの負担がかかってしまうため使用可能な時間はわずか10秒。
実戦では恐ろしく不安だ。しかも使ったことが無い。
でもあのFDに対抗するにはこれしかない。
「行くぜっ!!」
アクセルオン。すると先程までとは全く違う加速が俺をシートに押し付ける。
一気に250kmオーバー。だが加速は終わらない。
「追い上げてきた!?……無理してまで勝ちたいか!?」
後ろのFDの異常な追い上げ方。無理してるとわかる。
「はぁーっ、はーっ」
今ので4秒。
前のFDに近づいた。後はスリップストリームで迫れば……!!
生麦付近。並び合うFD。
「ここでーーーーーっ」
残った6秒をここで使う。
「俺が前だーーーーーーー」
だが。
「油圧が……!?」
無理な加速により、油圧が低下していきパワーダウン。
やがてノッキングが起きたため俺はスローダウン。
「くっそぉ……」
パーキングエリアで前のFDと合流。
乗っていたのは恐らく内藤さんより少し年上の男性。
「すごいな、君」
「……全然ダメですよ、俺」
「そうじゃない。君は本気の走りができている。今首都高でバトルするようなヤツは少ないだろう」
「だからこそ君のその姿勢をすごいと思ったんだ」
「あなたは一体?」
「俺は荻島信二。GTカーズって聞いた事ないかい?」
「読んだことはありますけど」
「俺はそこの編集者だった。今は『カー&ロード』にいるが」
「それならよく読みますよ」
「そうか、嬉しいナ」
「君は運転ができる。でももっと車の知識が欲しいと思わないかい?」
「欲しいです。俺はシロウトですから」
「カー&ロードでバイトしてみないか?」
「えっ」
「俺が教える。君が目で見た物、感じた物全てを自分の知識に変えるんだ」
「遠慮はいらないさ。控え目にしていても意味がナイ。看板を背負ってるからな……例え控え目にしていてもみんなが個人を見るからだ」
「個人の声は『看板』の声になるんだ。みんなを見て、動かせ」
悩んだ末、俺は決めた。
「やってみたいです。たくさんの事を知るために俺は東京に来たから」
地元群馬を出てまで
それは車が多く走る都会での車の姿を知るためだ。
家族が乗るようなファミリーカーはもちろん、物流を支えるトラックだとか様々な車の姿を。
地元にも大学がある。自動車学校が。
でも俺は日本の中心で人が集まるところである東京で知りたいと思ったからだ。
「よろしくお願いします」
「ああ、こちらこそ」
こうして俺はバイトをする事になった。
ちゃんと時給も出るし、働くって事で社会人としての経験も得られる。
翌日俺は夢斗にこの事を話した。
夢斗は「面白そう」と言ってた。アイツ本当に子供っぽいとこあるな。アイツ働く気ないだろ。
でも夢斗ならどうにでもなりそうだ。アイツは……自分の特技で輝くだろうから。