銀色の革命者外伝 星色の花は天使の手に 作:ヒロ@美穂担当P
ロータリーエンジンに魅せられた者達の走りは浩一にどんな物を残すのか?
俺は荻島さんに案内されてカー&ロード編集部に来ていた。
中々立派なオフィス。緊張しながら俺は進んでいく。
社長室に来た俺と荻島さん。
「ここが社長室だ。しっかり挨拶してこい」
俺は挨拶した。社長はとても人が良さそうだった。
挨拶が終わるまで俺はガチガチに緊張してた。職場体験とかでそこで働く人達に挨拶するのって妙に緊張するよね。
面識がない人に挨拶。これだけでかなり緊張する。「なんだコイツ」みたいな視線を送られるって考えるのが怖いじゃん?
編集室に向かうとデスクが。
ちゃんと「津上浩一」ってネームプレートが置かれてる。
バイトとはいえここで働くっていう実感が湧いてきた。
「お前の初仕事は俺のアシスタントだ。自動車評論家の城島さんのインタビューをするから手伝ってくれ」
「はい」
いきなり責任重大です。
インタビュー場所へ荻島さんのFDで向かう。
「このFDってRGOでチューンしてもらったんですか?」
「ああ。今もたまに寄っていくよ」
このFDを初めて見た時ウィンドウに「RGO」とあった事にびっくりした。俺はずっとその事を聞こうと思っていた。
やがてインタビュー場所に到着。
そこには俺が知る人が仕上げたFCに似た白いFCが止まっていた。
「……なるほど。アレか」
「知ってるんですか?」
「面識はないが……彼の名前は知ってる。過去に筑波サーキットのアタックをやっていたと聞いている」
「その際に使われていたクルマがあのFC3Sだそうだ」
「すごいな……」
談話室で待っていると人が入ってきた。
俺はこの人が今日インタビューする人だと直感でわかった。夢斗のような「本物」というオーラが出ていたからだ。
「はじめまして、城島洸一です」
「城島洸一さんですね。俺は荻島信二です」
「荻島信二……。ああ、あなたが『FDマスター』と呼ばれた……」
「知っているのは嬉しい(笑)」
「荻島さん、彼は?」
「ホラ、自己紹介」
荻島さんに言われて俺は精一杯の自己紹介。
「俺は津上浩一っていいます!バイトですけど『カー&ロード』で働いてます!」
「彼もロータリーを知ろうと努力している。ロータリーに情熱を注いだ城島サンならわかるんじゃないですか?」
「だな……。俺が最も走りにのめり込んでいた時……今から20年以上も前の時点で周りに置いていかれていたFCを速く走らせるために様々な事をやった」
「たくさんの人と出会い、FCも、そして俺自身も変わって……目指した。悪魔をさ」
荻島さんは城島さんが言ってる言葉の意味がわかってるように続けた。
「『悪魔』……Zは今でも走ってるそうですヨ」
「アキオは……元気にやってるだろうか」
「さぁ……そこまでは俺もわかりません」
インタビュー開始。
城島さんが言ったことを荻島さんがメモ帳に記していく。
俺はボイスレコーダーで城島さんの発言を録音。
もし荻島さんがメモ内容を原稿にする時に間違いがないように正しい発言を残すためだ。
城島さんが話す事をメモしていく荻島さん。
「俺の持論では大体20年サイクルでクルマはガラリと変わると思うんだ」
「スカイラインGT-R……国内だけでなく世界にもその名を轟かせたクルマ。スカイラインの名を捨てて今のGT-Rになる」
「現在のGT-RはR35型。スカイライン時代のようにボディ流用は行わず、GT-R専用のボディを持つ」
「スカイラインGT-Rといえば言わずと知れたR32だろう。R34やR33もイイけど」
「RB系GT-Rの始まりであるBNR32が生まれたのは1989年。今年で23年か」
「R35は……何年だっけ?」
「確か……2007年です」
俺が城島さんに伝える。
「18年か。とまあ大きな変化があるのはほぼ20年おきだ」
城島さんのインタビューは続いた。
40分程でインタビューは終了。
城島さんと雑談する俺達。城島さんと荻島さんは思い出話をしている。
思い出話の中には悪魔のZの事が必ず入っていた。
RGOの協力もあって完成したという荻島さんのFD、FCのエンジンを調整したリカコさんの事を話す城島さん。
城島さん達は悪魔のZという共通点で繋がってるようだ。
編集部に戻ろうとした俺達に城島さんが声をかけた。
「話を聞いていたら久しぶりに走りたくなった。そちらのFDを追えるかはわからないが……」
「『FDマスター』の腕を見てみたくてね」
荻島さんは返す。もちろんOKだと。
「ZEROのFCをこの目で見る事が出来たことが嬉しくて。ぜひ走りたい」
C1エリア外回り。
荻島さん曰くMAX400馬力のFDがFCを追う。全盛期では500馬力を叩き出したという城島さんのFC。今は少しだけパワーが抑えられてると言うが荻島さんのFDといい勝負をしている。
そしてFCを操る城島さんのテクニック。エンジンのパワーに負けてシャーシが浮き足立っているFCでコーナーを攻めていく。
軽くFDが流れる。コーナーの立ち上がりは互角と言ったところか。
「シャカリキに攻めてる訳では無い……。最短ラインを確実になぞる走りなんだ」
「ラインを……」
「しっかし羨ましいぜ。メカに強いし走りもウマくてさ。俺はメカは頼りきりだったからさ。大田サンがいなきゃ俺は全然だ(笑)」
「大田さんはいつからロータリーをヤるようになったんですか?」
「わからない。けど大田サンはごく初期の走り屋だ」
「え、何乗ってたんですか」
「確かサバンナだと聞いたけど……。真っ赤だったって聞いた」
「その頃から……」
「さすがFDマスター……一筋縄ではいかないか」
「また、会えないだろうか」
城島は蒼いZを駆った男を思い出した。
下道に降りた。
俺達は早く編集部に戻らないといけない。時間があっという間に過ぎていたのだ。
「やべー……。忘れてた」
「これアウトな感じしますけど」
「だな……。俺が悪かった」
「首都高……走りで繋がる世界」
「彼もまた……悪魔のZに関わるのか。直接でなくとも周りに関わっている人物がいるかもしれない」
城島は呟いた。
帰ってきた俺達を待っていたのは編集長のお説教だった。般若の面を被ってそうなキレ顔だったよ。そんな事口が裂けても言えんわ。